現代アメリカ異世界ファンタジイの女王
マーセデス・ラッキー
〈ヴァルデマール年代記〉の世界へようこそ!


〈ヴァルデマール年代記〉とは?
 アメリカのファンタジイ界で女王の名にふさわしいマーセデス・ラッキーが精力的に書き続けている、ヴァルデマール国を中心とした壮大な異世界ファンタジイのシリーズ。世界設定はそのままに、時代や主人公を変えながら、おもに三部作仕様で書かれたサブシリーズは現在までに8つ以上。それらを総称して〈ヴァルデマール年代記〉と呼びます。建国紀元前1000年から建国紀元後1376年にいたるまで、2000年以上にわたる世界構築をこころみており、今後いかようにも発展の余地をのこした、作家ラッキーの野心的なシリーズといえるでしょう。

 最新作である、『銀の鷲獅子』をふくむ〈魔法戦争〉3部作(第1部『黒き鷲獅子』第2部『白き鷲獅子』)のほかに、本文庫でお楽しみいただけるのは、建国紀元750年ころ、統治者エルスペス1世の時代、伝説の魔法使者ヴァニエルの生涯を描いた〈最後の魔法使者〉三部作、建国紀元後1270年あたりの女傭兵コンビ/タルマとケスリーのシリーズ(二部作+短編集)。その100年後、ケスリーの孫娘ケロウィンが登場する単品『運命の剣』。そして、ヴァルデマール国の王女のエルスペスと、シリーズ初のヒーロー〈暗き風〉の物語である〈ヴァルデマールの風〉三部作(『宿命の囁き』 『失われし一族』 『伝説の森』)その続編で、勢いを増す魔法嵐に立ち向かう人々を描く〈ヴァルデマールの嵐〉三部作(『太陽神の司祭』『帝国の叛逆者』『魔法使いの塔』)です。

年表 ヴァルデマール国の歴史的変遷



銀の鷲獅子 下
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銀の鷲獅子 上
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●最新刊『銀の鷲獅子(シルヴァー・グリフォン)』上
〈魔法戦争〉第3部

「ついに本物の任務だ!」銀鷲獅子団の若き隊員タドリスは歓声をあげた。
 初めての監視なしの任務。しかもホワイトグリフォンと同盟国ハイリィ連合国の共有の領地の中でも、もっとも遠い第五歩哨地での六ヶ月の任務だ。
 タドリスと人間の相棒〈銀の刃〉は、心配する両親たちを尻目に大喜びで出発した。ちょっとした冒険行のはずだった。〈銀の刃〉と荷物を入れた籠を装着して跳んでいたタドリスが、なぜかコントロールを失い墜落するまでは……。

 そのころ、銀鷲獅子団の司令部は大騒ぎになっていた。予定を一日過ぎているのに、タドリスと〈銀の刃〉が任務地に着いていないのだ。遠話装置による連絡もない。普通ならとっくに到着していてもいいはずなのに。
〈銀の刃〉の父親〈琥珀の竜〉と、タドリスの父スカンドゥラノンは心配のあまり半狂乱だった。安全な任務ではなかったのか?
 急いで複数の捜索隊が組織され、そのなかのひとつ、スカンドゥラノン率いる隊は、二人の消えた地点に向かった。そこで彼らが見たのは、使えなくなった魔法の装置、荒らされた装備だった。
 
 一方森に墜落したタドリスと〈銀の刃〉は、大怪我を負いながら姿の見えない追跡者から逃げていた。誰が、いったい何の目的で彼らをつけ狙うのか。鷲獅子と人間、その体力と知力の全てを使って、姿なき敵に立ち向かう……。

〈ヴァルデマール年代記〉の古代史を描く、〈魔法戦争〉三部作ついに完結。



初めてお読みになる方へ──マーセデス・ラッキーの既刊紹介

女神の誓い
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『女神の誓い』
タルマ&ケスリー・シリーズ

 女剣士タルマと女魔法使いケスリーが運命的に出会い、女ふたりで傭兵稼業に手を染める、という前代未聞のコンビが誕生。ふたりは〈血の誓い〉を立て、山賊に皆殺しにされたタルマ一族の復讐を果たし、〈鷹の子ら〉一族の再興を誓ったのだった。傍目には変わり者の遊牧民タルマと、魔法の剣(傷ついた女性に反応、いついかなるときでも助けにいかなければならない!)をたずさえた、これまた不思議な魔法使いケスリーは行く先々で耳目を集め、厄介な吟遊詩人のへぼ歌によって伝説化され、ギャップに悩まされる。



裁きの門
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『裁きの門』
タルマ&ケスリー・シリーズ

 一族を再興し、それを維持していくためには資金が欠かせない。ゆえにタルマとケスリーの傭兵稼業はまだまだつづく。名高い傭兵隊〈太陽の鷹〉への入隊を試み、推薦状を片手に向かったふたりの運命は? ケスリーには生涯の伴侶との出会いという大きな変化も訪れる。



誓いのとき
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『誓いのとき――タルマ&ケスリー短編集』
タルマ&ケスリー・シリーズ

 タルマとケスリーの物語、そもそものはじまりは短編「剣の誓い」(『女神の誓い』所収)だった! 本短編集には長編である前2作の裏話や、外伝(日本版のみ)も含まれ、エピソードの尽きないふたりの魅力を余すところなく伝えてくれる。


運命の剣 下
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運命の剣 上
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『運命の剣』上

 女傭兵コンビ〈タルマとケスリー〉の時代から約100年後の世界。女魔法使いケスリーの孫娘ケロウィンを主人公とした単独作。タルマとケスリーは明らかに100歳をすぎたいまも「健在」、豊富な知識と経験を若きケロウィンにしっかり伝授し、彼女を傭兵として独り立ちさせる役目をになう。活動的とはいえひとりの少女にすぎなかったケロウィンが、一人前の傭兵として、楽ではない人生を歩み始める。彼女が直面する、立場のちがいを超えた恋のゆくえも大いに気になるところ。舞台はひろがり、ヴァルデマール国の姿が見えはじめる!


宿命の囁き 下
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宿命の囁き 上
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『宿命の囁き』上
〈ヴァルデマールの風〉第1部

 アンカー王との戦いに勝利してから5年、ヴァルデマール国で王女エルスペスが刺客に襲われた。一命はとりとめたが、暗殺者は魔法によって送りこまれた可能性が高く、強大な障壁を誇るこの国では起こるはずのない事態。危機感を覚えたエルスペスは自ら魔法使いを探す旅に出た。──いっぽう、“ペラジールの森”では、元魔法使いの〈暗き風〉が憂えていた。一族が去り、谷が死んだように静かなのは、自分の起こした事故のせいだと。以来、魔法を使うことをやめ、通り名も変えた。森に迷いこんだエルスペスを救ったとき、〈暗き風〉に重大な変化が……。緻密に構築された世界が徐々に明かされる、〈ヴァルデマールの風〉新3部作の幕開け。


失われし一族 下
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失われし一族 上
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『失われし一族』上
〈ヴァルデマールの風〉第2部

〈隼殺し〉の攻撃は撃退され、ヴァルデマール国の王位継承者エルスペスは、〈鷹の兄弟〉のもとで魔法の修行をすることになった。彼女を指導する魔法使いは〈暗き風〉。だが、彼はエルスペスに複雑な感情を抱いており、二人はぎくしゃくしてうまくいかない。
 一方、行方不明になっている一族の半分との再会を果たすべく、〈暗き風〉の放った救援要請に応えてやってきたのは、圧倒的な力と美貌を兼ね備えた癒しの達人〈炎の歌〉。抗いがたいまでの魅力と自信に溢れた彼の存在は、否が応でもエルスペスを魅きつけ、〈暗き風〉の嫉妬心をあおる。
 そんななか、正体不明の攻撃が谷を襲った。死んだはずの〈隼殺し〉が生きていたのか? 混乱のなか癒しの達人は、驚くべき提案をする。〈鷹の兄弟〉一族の命運を賭けた計画は果たして成功するのか。


伝説の森 下
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伝説の森 上
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『伝説の森』上
〈ヴァルデマールの風〉第3部

 はるか昔の魔法戦争以来、失われていた一族が戻り、ク=シェイイナ族は住み慣れた〈谷〉を彼らに明け渡して新たな〈谷〉に移住した。
 残ったエルスペスとスキッフは、〈共に歩むもの〉、〈暗き風〉、〈炎の歌〉そして鷲獅子たちと共に、ク=トレヴァ族を訪ねる……はずだった。だが〈門〉を通って出たのは、見知らぬ森の中。驚き、とまどう一行を迎えたのは透き通った身体の不思議な人物。彼こそ、伝説の〈魔法使者〉ヴァニエル、エルスペスと〈炎の歌〉の先祖ヴァニエルだった。

 いっぽう、一向に進展しないヴァルデマールとの戦いに苛立ちをつのらせる、ハードーン国王アンカーは、魔法の力を試そうとして、あろうことか、エルスペスらが虚空に追いやった〈隼殺し〉を呼び込んでしまう。〈隼殺し〉の力を手中に、自らの魔法の師ハルダを出し抜こうとする アンカー。だが〈隼殺し〉もまた、アンカーを利用しようと策をめぐらす。
意外なことに、かつて〈隼殺し〉に身体を乗っ取られた若者アン=デシャの心は失われてはいなかった。ヴァルデマールに戻ったエルスペスらが、ハードーン国との戦いに備えるその裏で、〈隼殺し〉の身体の中での、アン=デシャの秘かな戦いが続く。
〈ヴァルデマールの風〉三部作いよいよ完結!


太陽神の司祭 下
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太陽神の司祭 上
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『太陽神の司祭』上
〈ヴァルデマールの嵐〉第1部

ヴァルデマールとカース、過去何百年にもわたって敵対し、壮絶な戦いを繰り返してきた宿敵同士が、共通の脅威ハードーンを前に同盟を結んだ。
 驚天動地のこの事態に、カース国の使節に同行している書記官の若者カラルは混乱をきたしていた。
 この男があの〈白い悪魔〉のひとり? ヴァルデマール国境からずっと案内してくれていた親切なヴァルデマール人が、故郷カースでは〈白い悪魔〉として怖れられているあの〈使者〉だったとは。カラルは、これまで信じこんできたことがことごとく覆されるのを目のあたりにしたのだ。
 一方ヘイヴンでは女王をはじめ、王女エルスペス、ティレドウラスの〈達人〉、そして伝説の生き物鷲獅子までもがカースの使節を待ち受けていた。
 ハードーンのアンカーは斃れたが、その混乱に乗じて〈東の帝国〉がハードーン国境を侵略してきたのだ。帝国の侵攻をいかにくい止めるか、魔法使いたちが協議を重ねるそんなさなか、奇妙な“魔法嵐”がヴァルデマールを襲った。
 一見、無作為に周囲のものを変質させ、魔法を制御不能にする不思議な魔法の波動。これは〈帝国〉による新手の攻撃なのか?
 一方、かつて〈隼殺し〉に身体をのっとられていたアン=デシャは困惑をつのらせていた。解放されたとはいえ、自分の中にまだ〈隼殺しが〉隠れているのではないかという疑念にずっと苛まれ続けていたのだ。
 そのうえどういうわけか、助けてくれたティレドゥラスの魔法使い〈炎の歌〉と恋人同士になってしまった。
 自分のなかに眠る、〈隼殺し〉の残した知識と強力な魔法の資質。危急存亡のときにそれが役立つはずなのに、アン=デシャは怯えるばかり。
 そんなアン=デシャに、共感能力者タリアはカースから来た若者カラルを紹介するのだった。


帝国の叛逆者 上
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『帝国の叛逆者』上
〈ヴァルデマールの嵐〉第2部

〈東の帝国〉の皇帝に派遣された帝国軍の指揮官トレメイン大公は、大勢の部下とともにハードーン国で途方にくれていた。原因不明の魔法嵐の悪化によって、本国側との連絡がまったく取れなくなってしまったのだ。皇帝は、派遣軍を見捨てるつもりなのか? それとも後継者候補とみなされている自分を試しているのだろうか? 敵地に孤立したトレメインの不安は増すばかりだった。
 そのうえ、これまですべてにおいて頼ってきた魔法が、ほとんど使えないのだ。こうなったら魔法に頼らず、この地で生き延びていくしかない。トレメインは取り乱す部下たちを叱咤激励し、現地ハードーンの民と共存していく方策を模索し始めた。
 そして彼らのこの動きが、ヴァルデマール側同盟軍の知るところとなる。

 一方カース国からヴァルデマールに派遣された使節カラルは悩んでいた。正規の使節であった師ウルリッヒが帝国の暗殺者によって殺されたために、自分が使節の務めをこなさねばならなくなったのだ。
帝国の叛逆者 下
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 ヴァルデマールの女王、並みいる〈使者〉たち、そしてのレスウェランやシン=エイ=インなど同盟国の使節に交じり、カース国を代表して会議で発言し行動しなければならない。歳より若く見えるうえに、もともと補佐役の書記官であったカラルの意見など、誰が重んじてくれるだろう。案の定、ハードーン国で孤立している〈東の帝国〉の軍隊を攻撃しようという意見に反対するカラルを、シン=エイ=インの使節が目の敵にしはじめたのだ。

 対魔法嵐の作戦で要となっている、ティレドゥラスの癒やしの達人〈炎の歌〉は、恋人アン=デシャの変化に戸惑っていた。アン=デシャは、もともと〈隼殺し〉といわれた邪悪な魔法使いに身体を乗っ取られていたのだが、〈隼殺し〉が滅ぼされたときに解放され自らを取り戻したのだった。はじめは自分に頼りっきりだったアン=デシャが、次第に自分から離れていくのに、〈炎の歌〉は嫉妬しいらだちを深めていたのだ……。

 人気の異世界ファンタジー〈ヴァルデマールの嵐〉第二部ついに登場。風雲急を告げる〈ヴァルデマール年代記〉正史第2部。


『魔法使いの塔』上
〈ヴァルデマールの嵐〉第3部

 遙かな伝説の時代、偉大なる沈黙の魔法使いアーゾウと、その宿敵だった邪悪な魔法使いマ=アルが熾烈な戦いの末共に斃れ、それが原因で恐ろしい崩壊が世界を襲ったという……。(このあたりの話は別の三部作〈魔法戦争〉に詳しく描かれています)
 だが、それは単なる伝説ではなかったのだ。度重なる魔法嵐に危機感を覚え必死で対策を模索していたヴァルデマール国とレスヴェラン、カースの同盟国の面々。ヴァルデマール国内では技術者たちが魔法に頼らず最先端の技術を駆使して対策をたて、〈使者〉たちも〈共に歩むもの〉とともに同盟国へと向かう。
 一方〈炎の歌〉ら一行は、ついに伝説の大魔法使いアーゾウの塔を見つけた。喜んで中に入った一同が見たのは……。
魔法使いの塔 下
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〈東の帝国〉の皇帝の命令でハードーン征服に差し向けられたトレメイン大公は、魔法嵐のために帝国からは完全に切り離され帝国からも見捨てられたにもかかわらず、自力で現地の人々の人望を集めていた。
 荒れ狂う魔法嵐を前に、少しでも同盟国を増やしたいヴァルデマールの王女エルスペスは、過去のわだかまりを捨て、使者として大公と接触する。
 そこへ、これまで謎に包まれていた国イフテルから意外な使節が到着、魔法嵐に対する協力を申し出る。
 ヴァルデマールで、ハードーンで、カースで人々が魔法嵐と対抗すべく立ち上がる。
 そして古の魔法使いの塔で魔法嵐を食い止めるべく奮闘する〈炎の歌〉やアン=デシャ、カラルたちにいは意外な味方が加わっていた。

 著者が長年書き続けていた【ヴァルデマール年代記】の正史の集大成。世界を破壊しようとする恐るべき魔法嵐に立ち向かう人々の姿を描く3部作感動の大団円。


魔法の使徒 下
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魔法の使徒 上
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『魔法の使徒』上
〈最後の魔法使者〉第1部

 アシュケヴロン家の当主の跡取り息子ヴァニエルは、父をはじめ一族皆から、美しい容貌を鼻にかけた軟弱者と馬鹿にされていた。唯一の理解者だった姉も遠くに行き、周囲からいっそう孤立するヴァニエル。
 豪胆をよしとする父は彼を疎み、ヴァルデマールの〈使者〉である伯母サヴィルのもとで教育させると称し、都ヘイヴンに追いやってしまう。
 新しい環境にもなじめず、吟遊詩人になりたいとの希望も絶たれてひとり絶望するヴァニエルに、救いの手をさしのべたのは、サヴィルの愛弟子、〈使者候補生〉タイレンデルだった。

 ようやく心通じ合う相手に出会い、タイレンデルと愛し合うようになったヴァニエル。だが、このことが父に知れれば、怒りをかうのは間違いない。ふたりは自分たちの関係を、なんとか世間の目から隠そうと苦心する。
 そんなある日、タイレンデルの双子の兄が暗殺された。タイレンデルの一族と確執のあった別の一族の仕業だった。離れていても、互いに深く繋がっている双子の絆、その半身の死に苦悩し、悲嘆にくれるタイレンデル。そしてヴァニエルの彼に対する一途な愛ゆえに、事態はいっそうの悲劇を招きよせることに……。

 前作『伝説の森』にも登場した、ヴァルデマール最後の〈魔法使者〉、伝説のヴァニエル・アシュケヴロンの波乱の生涯を描く、〈ヴァルデマール年代記〉の新たな三部作ここに開幕!


魔法の誓約 下
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魔法の誓約 上
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『魔法の誓約』上
〈最後の魔法使者〉第2部

 最愛の人タイレンデルを失って10年以上がたった。17歳の傷つきやすい少年だったヴァニエルも、今ではヴァルデマールでも屈指の強力な〈魔法使者〉となっていた。
 その間に隣国カースとの激しい戦いで、ヴァニエルのよき理解者にして友人のマルディクとドニをはじめ多くの〈使者〉が亡くなり、生き残ったヴァニエルは、孤独を埋めてくれる恋人ができるどころか、休む暇もないほどの忙しさで戦いにかり出されていた。
 そんな彼が、久々にとったまとまった休暇。父ヴィゼン卿からの要請で、避け続けていた故郷フォルスト・リーチに里帰りすることになってしまった。折り合いが悪かった父も少しずつだが、ヴァニエルのことを認め、頼りにするようになってきたのだ。
 どうやらフォルスト・リーチと境を接している小国リニアとベアーズで、きな臭いことが起きてているらしい……。

   そんな故郷でのある夜のこと、真夜中にすさまじい悪夢がヴァニエルを襲う。
 いてもたってもいられず〈共に歩むもの〉イファンデスに導かれるようにして駆けつけた先は、隣国リニアの都だった。
 そこでヴァニエルが見たのは、半狂乱になった一頭の〈共に歩むもの〉と、追い詰められて怯えるタイレンデルそっくりの少年の姿だった。少年を追い詰めているのは、なんとヴァニエルと同じ〈使者〉の白服に身をかためたヴァルデマールの特使。
 その少年がリニア王宮の人々を皆殺しにしたというのだ。〈共に歩むもの〉に選ばれた少年にそんなことができるのか? 
 ヴァニエルは少年を保護したが、相手は心を閉ざしたまま。いったいなにがあったのか?

伝説の〈魔法使者〉ヴァニエルの生涯を描いた三部作第2弾。


魔法の代償 下
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魔法の代償 上
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『魔法の代償』上
〈最後の魔法使者〉第3部

 ヴァルデマール国王ランディルの病は、日に日に重くなっていた。そんな国王の苦しみを和らげるために連れてこられたのが、若き〈大詩人〉見習いステフェンだった。
 いくら才能があるとはいえ、たかが一介の見習いに何ができる。半信半疑の宮廷の人々。だが、藁をもつかむ思いで、ヴァニエルは見守った。ところがどうだろう、ステフェンが歌うと国王の苦しみがたちまち薄れたではないか。ヴァニエルは、喜んでステフェンを宮廷に迎え入れる。
 若く魅力的な詩人に、思わず心惹かれるヴァニエル。そしてステフェンも、またヴァニエルに焦がれるようになっていた。

 ステフェンの歌でかろうじて保ってはいるが、国王はいまや政務を執るのもやっとという有様。世継ぎのトレヴェンは若く経験もない。そのうえもともと戦の絶えなかった隣国カースでは、太陽神の司祭が魔法を目に敵にして魔法使いを追放しているらしい。
 そんななか、人々は次第に〈魔法使者〉にばかり頼り、魔法をもたない〈使者〉を軽んじるようになっていた。
 そんな状況に危惧をおぼえたヴァニエルは、将来にわたってヴァルデマールを魔法の攻撃から守護するために、大がかりな術をほどこすことにした。
 術は成功したが、その陰で見えざる敵の密やかな攻撃がヴァニエルに、そして〈魔法使者〉たちに迫っていた。

 ヴァニエルの新たな恋の行方は? 内憂外患のヴァルデマールの将来は? 伝説の〈魔法使者〉ヴァニエルの生涯を描く三部作いよいよクライマックス。


黒き鷲獅子(グリフォン)上
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『黒き鷲獅子(グリフォン)』上
〈魔法戦争〉第1部

 時をはるかに遡る、伝説の大魔法使いアーゾウと邪悪な魔法使いマ=アルの戦いの時代。

 何度も繰り返されるマ=アル軍の執拗な攻撃に、〈沈黙の魔法使い〉アーゾウの軍は、次第に疲弊していた。
 アーゾウが作り出した優美で賢い鷲獅子(グリフォン)を猿まねして、マ=アルが作り出した残酷で狡猾な殺し屋マカール。個々の能力は低くても、使い捨てといっていいほどに数が多い。兵士たちの犠牲を厭わないマ=アル軍の戦いに、アーゾウの軍は苦戦を強いられていた。
 アーゾウの創造物たちのなかでも、とりわけ優れた能力をもつ(そして少々自惚れ屋でもある)黒鷲獅子スカンドゥラノンは、マ=アル軍の恐るべき新たな兵器を調べようと密かに敵の陣地に潜入した。
 作戦は成功したが、無茶な潜入で傷だらけになった黒鷲獅子スカンドゥラノンは療養中に、たったひとりで三頭ものマカールを倒した雌鷲獅子の話を耳にする。
黒き鷲獅子(グリフォン)下
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 その雌鷲獅子ザニールは非常に小柄で、それゆえに周りからは出来損ないと思われていた。だが小回りのきく身体と機敏な動きを生かして、考えられないほどの見事な戦法を編み出していたのだ。彼女はただの出来損ないなのか、それともアーゾウが創り出した新種なのか? 賢く柔軟なザニールに惹かれていくスカンドゥラノンだったが、〈沈黙の魔法使い〉アーゾウの軍に、マ=アルのさらなる魔の手が迫っていた。
 黒鷲獅子スカンドゥラノン、雌鷲獅子ザニール、そしてアーゾウ軍にいる人間たち。ケストゥラ=チェルンの〈琥珀の竜〉、治療者〈冬の鹿〉、そして〈沈黙の魔法使い〉アーゾウ。
〈ヴァルデマール正史〉において、繰り返し語られる、はるか昔の〈魔法戦争〉の時代。伝説の大魔法使いアーゾウと宿敵マ=アルとの壮絶な戦いの物語が、ついにそのヴェールを脱ぐ。

 新たな三部作〈魔法戦争〉開幕。



白き鷲獅子(グリフォン)
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『白き鷲獅子(グリフォン)』上
〈魔法戦争〉第2部

 魔法戦争の末、鷲獅子の創造主である大魔法使いアーゾウも、邪悪な魔法使いマ=アルも死んでしまった。
 すさまじい魔法嵐を逃れたアーゾウの民は、新たな街ホワイトグリフォンを建設し、新たな秩序を打ち立てていた。危ないところで最後の瞬間に〈門〉をくぐり、爆発から命からがら逃げ仰せた鷲獅子スカンドゥラノンだったが、自慢の漆黒の羽毛はなんと純白になってしまった。
 ホワイトグリフォンではスカンドゥラノンは英雄として崇敬され、街の統率者に祭り上げられたが、統治にまつわる際限ない雑事のおかげで、運動不足で太り気味になりストレスが溜まり、ほとほとうんざりしていた。
白き鷲獅子(グリフォン)
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 そんなある日、広大な領土と強い力をもつ黒き人々の国、ハイリィ帝国の船がホワイトグリフォンの港に入ってきた。彼らの街がハイリィ連合国の領土の聖域権を犯しているというのだ。
 ホワイトグリフォンの街の存在を認めてもらうべく、外交使節としてハイリィ帝国を訪れたホワイトグリフォン代表団。スカンドゥラノンと妻のザニールは、人間と同じような知性をもつ動物の存在に慣れていないハイリィの人々を驚愕させる。
 一方、〈琥珀の竜〉はハイリィ王に仕えるケストゥラ=チェエルンの師〈銀の帳〉に再会。だがそんなとき、宮廷で残忍な殺人事件が起きる。しかも一見すると鷲獅子の仕業らしい。なんとか疑いをはらしたものの、スカンドゥラノンは、監視をうけることになってしまった。
 一方〈琥珀の竜〉の妻である〈冬の鹿〉は、皇帝シャラマンから求婚され、困惑していた。
 交渉の行方は? そして殺しの犯人の思惑は?

 伝説の時代を描く〈魔法戦争〉3部作第2部。

(2010年7月5日/2017年9月28日)

 

【2009年3月以前の「本の話題」はこちらからご覧ください】

ファンタジーの専門出版社|東京創元社