今月の本の話題

2009.11.05

早熟の天才による、忘れがたい物語 ガイ・バート『ソフィー』[2009年11月]

〈楽園〉の最後の夏、 ぼくは11歳になった。

――もし、もっと姉さんのことがわかってたら、こんなことにはなってなかった。

――姉さんはなぜ、あんなことをしたんだ?

 昏い密室の中、対話する二人の男女。姉の方は縛られ、弟から激しい語調で、何かを問いただされている。
『ソフィー』は冒頭、緊迫した場面から始まりますが、男が幼き日の思い出を語り始めたとたんに、一転して牧歌的な田園風景が立ち現れます。

 かつてイギリスの田舎町で育った幼い姉弟、ソフィーとマシュー。廃坑で遊び、隠れ処で本を読み、化石拾いや暗号の日記、飛行機模型製作など、子供が望みうる限りの様々な遊びに夢中になって暮らしていた。
 だが、2人の〈楽園〉には時折不穏な影が差す。子供たちに干渉しない母、滅多に家に帰らない父、マシューの夢に出てくる謎の男。マシューにとって最も謎めいているのが、非常に高い知能の持ち主でありながら、それを周囲に知られぬよう注意深く生きる姉のソフィー。
 やがて、過ぎゆく時間は少しずつ〈楽園〉のひずみを露にしはじめ、そして――。

〈楽園〉はなぜ崩壊したのか? かつてソフィーとマシューの間には、なにが起きたのか?
 そして今、二人の間に起きていることとは?
 過去と現在、独白と対話が交錯する中で明かされる、周到に作りあげられた美しい世界が秘める驚愕の真実――それはぜひ、本書で直接お確かめください。

 早熟の天才が描く、幻惑と郷愁の魔術的小説。11月20日発売です。

*翻訳者の黒原敏行さんも、『翻訳ミステリー大賞シンジゲート』にて『ソフィー』を「自薦イチ押し本」として紹介されています。あわせてご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20091102/1257134334
(2009年11月5日)

 

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