今月の本の話題

2012.05.08

幻想の紡ぎ手 パトリシア・A・マキリップ『アトリックス・ウルフの呪文書』[2012年5月]

●伝説の魔法使い、白き狼
最新作『アトリックス・ウルフの呪文書』

 ペルシールに攻め込んだカルデス大公の軍は、ペルシールの王城を取り囲んだまま冬を迎えていた。このままではカルデス軍がペルシールを打ち砕き、ふたつの大国に挟まれた魔法使いと学者の国ショームナルドを呑み込むのも時間の問題だ。ショームナルドの年老いた魔法使いアトリックス・ウルフは、戦をやめさせるために魔法をかけた。呪文でつくりあげた恐るべき姿、双方の兵士が震え上がるような闇の乗り手を。だが、その戦場でペルシール王は殺され、カルデス軍も戦場から逃げ出した。戦場で何が起きたかは、誰も知らない……。
 戦から二十年後、現ペルシール王の弟タリスは、魔法学校の背後に聳える山の頂で、白き狼、伝説の魔法使いアトリックス・ウルフに出会った。

 美しき森の女王、白き狼、闇の乗り手、そして魔法。幻想の紡ぎ手マキリップのきらびやかなイメージに満ちた魔法譚。


●すべての謎の答がここに
『風の竪琴弾き』〈イルスの竪琴3〉

 イムリスにおける戦は、その範囲を拡大しつつあった。
 彼らが戦っているのは、不思議な術を使い、ときに死者の姿さえ借りる、強大な力を持つ変身術者たち。
 イムリス、アン、ヘルン、アイシグ、オスターランドと、五つの領国は次々と戦火に呑まれ、モルゴンの故郷、のどかな島国ヘドさえも、変身術者たちの無気味な影に脅かされていた。
 エーレンスター山にいるはずの偉大なる者はどこにいってしまったのか、変身術者とはいったい何者なのか。数々の謎の答えを求めてモルゴンとレーデルルは、生き残った魔法使いたちがいるはずのランゴルドへ向かう。
 モルゴンの額の星と対をなす、三つの星を帯びた竪琴と剣を作った魔法使いイルスもそのなかにいるはず……。
 だが、執拗にモルゴンを狙うギステルウクルオームの、そして変身術者たちの手がふたりに伸びる。

 すべての謎の答がここに、ファンタジー史に燦然と輝く、稀代の三部作完結。


●アンで二番目に美しい女
『海と炎の娘』〈イルスの竪琴2〉

アンの王女レーデルル、アンで二番目に美しい女。レーデルルは謎かけ試合でペヴンの王冠を勝ち取ったモルゴンの許嫁だった。
 ヘドの領主にして星を帯びし者モルゴンが、偉大なる者に会うためにエーレンスター山に向かったまま消息を絶って一年、領国支配権が世継だった弟に移ったという知らせがアンの宮廷にもたらされる。
 領国支配権が世継ぎに移るのは、支配者が死んだときだけだ。モルゴンは死んだのか? モルゴンを殺したのは誰か? なぜ偉大なる者は何もしてくれなかったのか? そしてモルゴンに同道していたはずの、偉大なる者の竪琴弾きはどこにいったのか?
 レーデルルはいくつもの謎の答えを求めて、自ら偉大なる者のもとへ旅立つ決心をする。
 謎が謎を呼ぶ、ファンタジーの金字塔シリーズ第2弾。


●額の星に秘められた謎
『星を帯びし者』〈イルスの竪琴1〉

 小さな島国ヘドの若き領主モルゴンは、両親の急逝後、ケイスナルドの大学から呼び戻されて領主となった。
 領主となってまだ間もないというのに、モルゴンは世継ぎである弟にも告げずに大国アンに赴く。何世紀ものあいだ挑戦者の命を奪ってきたという幽霊との謎かけ試合に挑んで王冠を手に入れるためだった。
 モルゴンは試合に勝ち、無事王冠を手に入れヘドにかえった。王冠は誰にも知られぬまま、ベッドの下にしまい込まれた。
 だが、この世界の掟を司る“偉大なる者”の竪琴弾きデスが、ヘドにとんでもない知らせをもたらした。アン王は、幽霊との謎かけ試合で王冠を勝ちとった者に、王女レーデルルを与えるという誓いをたてているというのだ。
 モルゴンは、偉大なる者の竪琴弾きと共にアンに向けて旅立つ……。
 モルゴンの額にある三つの星。はるか昔に、彼の出現を予期していたかのように造られた、三つの星をはめ込んだ竪琴。執拗に彼の命を狙う、不気味な変身術者たち。
 数多の謎の答えをもとめ、星を帯びし者モルゴンは偉大なる者のもとへ。
 ファンタジーの金字塔、謎の紡ぎ手マキリップの代表作〈イルスの竪琴〉三部作復活!


●森に棲むのは怖ろしくも美しい女王
『夏至の森』

 祖父が亡くなったとの知らせをうけ、七年ぶりに故郷に帰ったシルヴィア。
 そこで彼女を待っていたのは、鬱蒼とした森に抱かれた懐かしいリン屋敷と、年老いてしまった祖母、そして曾曾曾祖母にあたるロイズ・メリオールの手記だった。
 屋敷を取り巻く森に棲んでいるのは、美しくも怖ろしい女王とその眷属たち……
 ロイズの手記を読んだシルヴィアは、祖母が主宰する村の女たちの謎の集まり、繊維ギルドに招かれる。繊維ギルドの集まりが、リン屋敷を森に棲むものたちから護っているというのだ。
 自分が属する世界に背を向け、都会に戻ろうとするシルヴィア。だが、従弟タイラーが消えて、取り替え子が現れるにいたり、森と屋敷の秘密が彼女をゆさぶりはじめる。

『冬に薔薇』に続く、詩人マキリップの幻想に満ちた妖精譚。


●謎の魔法使いと火の鳥が王国を襲う
『白鳥のひなと火の鳥』

 ロウ王国の女王が住む〈ロウ・ハウス〉は、会議のために王国の各領地から集まってきた代表たちですっかり混乱していた。
 ところがその肝心な会議のさなか、謎の魔法使いが〈ロウ・ハウス〉の護りを破り、門番の目をすり抜けて忍びこもうとした。その場にいたみんなが魔法にからめとられたなか、ひとり魔法使いを対峙する、〈白鳥のひな〉の守護者メグエット。
 どうやら魔法使いは〈ロウ・ハウス〉にある何かを探しているらしい。
 さらに翌日には突如火の鳥が飛来する。火の鳥の姿こそしているが、どうやら魔法にかけられた人間らしい。
 いったい彼らは何者なのか? その目的は?
   ロウ王国の象徴〈白鳥のひな〉の守護者メグエットは謎の魔法使いに、かつての沼の魔女にして、いまや〈白鳥のひな〉の継承者であるニクスは火の鳥に導かれて、見知らぬ土地、砂漠と魔法とドラゴンの国に足を踏み入れる。

 名手マキリップが贈る、魔法と不思議に満ちた『女魔法使いと白鳥のひな』続編登場。


●遊び唄に秘められた謎が王国を揺るがす
『女魔法使いと白鳥のひな』

 いつもの年と進路を変えて南の沼地に入った〈道の民〉は、魔法にかけられたかのようにその地に囚われてしまった。
 黒髪ぞろいの〈道の民〉の中ただひとり淡い色の髪をもつはみ出し者のコール。彼は幼なじみの恋人の制止を振り切り、皆を脱出させようと目の前に忽然と現れた小さな黒い家の扉をくぐる。
 遊び唄に出てくる黒い家。そこに住んでいるのは〈黄金の王〉。いかけやの姿をした〈黄金の王〉は、コールにある取引をもちかける。コールが承知すれば、仲間を沼地から解放するというのだ。 〈盲目の女〉〈白鳥のひな〉〈血の狐〉……。謎かけのような取引に応じたコールを昔語りの星座が翻弄する。
 あてもなく探索をつづけるコールは、沼地の魔女と呼ばれる〈ロウ王国〉の女王の末娘ニクスに出会った。
 かわりものの魔女ニクス、ニクスのいとこで、コールと同じ色の髪をもつメグエット、そして女王自身も巻きこんで、コールの探索が、王国の真髄をゆさぶる。

 幻想の歌い手マキリップが不思議な遊び唄に込めた、珠玉のファンタジー二部作開幕。


●魔法と歌に彩られた復讐譚
『バジリスクの魔法の歌』

 焼きつくされ、破壊されたトルマリン宮。
 無惨な姿をさらす骸のあいだ、炉床の灰に隠れ、ひとり生き延びた幼子がいた。
 グリフィンことトルマリン家の血を絶やさんとする容赦ない敵の探索を逃れ、幼子はルック・カラドリウスと名を変え、身内の手で辺境の地ルーリーにある吟遊詩人学校にあずけられた。
 その地で学び暮らすうち月日は過ぎ、ルックはルーリーで出会った娘とのあいだにひとり息子をもうけていた……
 一方ペリロンの都では、トルマリン家を滅ぼしたバシリスクことペリオール家の当主、ペリロン大公たるアリオッソ・ペリオールが権勢をふるっていた。そんな都で、水面下で密かに反撃の隙をうかがうトルマリンの残党がいた。
 そんなある日、カラドリウスのいる辺境の学院にグリフィンを名乗る若者が現れたことから、運命の歯車は大きく回りはじめる。

 名手マキリップが奏でる、幻想と復讐の物語。


●呪われた屋敷に住む青年の正体は?
『冬の薔薇』

 ロイズは風変わりな少女だった。人には見えないものを視る目をもち、森を気ままにさまよい歩く。
 ある日彼女は森の秘密の泉のほとりで、光の中からひとりの若者が歩み出てくるのを見た。彼の名はコルベット、廃墟となっていたリン屋敷の跡取りだという。
 だがリン屋敷は、かつて当主が息子に殺され、死にぎわに呪いをかけたといういわくつきの場所。若者が来て以来、村は呪いの噂でもちきりだ。
 ロイズは魅了されたかのように、コルベットと呪いの正体を探るが……。

 幻想の紡ぎ手マキリップが民間伝承をもとに織り上げた、こよなく美しいファンタジー。


●謎の文字が王国の運命をからめとる
『茨文字の魔法』

 レイン十二邦を統べる王の宮殿。その下うずくまる地下の王立図書館でネペンテスは育った。捨て子だったが、司書たちに拾われ、めずらしい文字を読み解く仕事をしていたのだ。
 ある日、ネペンテスが魔法学校の学生から預かった一冊の本。そこには互いに巻きついてもつれあう、茨のような謎の文字が綴られていた。ネペンテスは憑かれたように茨文字の解読をはじめる。
 そこに書かれていたのは、かつて世界を征服したという偉大な王と魔術師の古い伝説。
 おりしも前王の死と、年若い新女王の即位に揺れるレイン十二邦は、次第に運命の渦に巻き込まれていく。

 名手マキリップが織りなす、謎と伝説の物語。


●綺羅星のごとき短編集
『ホアズブレスの龍追い人』

「ホアズブレスの龍追い人」
龍が生み出す冬に封じ込められた、黄金と氷の街にやってきた、ひとりの龍追い人。

「音楽の問題」
古い血を誇る大領主のもとに派遣された、若き吟唱詩人がくだす決断。

「トロールとふたつのバラ」

きれいなものに目がない醜いトロールが出合った、世にも美しい白いバラ。

「バーバヤーガと魔法使いの息子」
ロシアの昔話に登場する魔女バーバーヤーガと魔法使いの弟子の若者とのおかしな出会い。

「ドラゴンの仲間」
ドラゴンにさらわれた、女王お気に入りのハープ奏者を捜す五人の女戦士の冒険。

「どくろの君」
砂漠のただなかに建つ塔で、騎士たちの訪れをうける孤独な女、どくろの君。

「雪の女王」
大人になったカイとゲルダの物語。

 ほか「灰、木、火」「よそ者」「錬金術」「ライオンとひばり」「ジャンキットの魔女」「悪い星のもとに生まれて」「心の中への旅」「ヒキガエル」収録。

 いかにも幻想の紡ぎ手マキリップらしい、絢爛たるファンタジー、誰もが知っている昔話や童話のマキリップ版、ちょっと怖い話、心あたたまる話からユーモラスな小品までバラエティに富んだ15の物語。  二度の世界幻想文学賞に輝くマキリップが、綺羅星のごとき15の物語を綴った、不思議と魔法が交錯する贅沢な短編集。


●謎と魔法の物語
『オドの魔法学校』

 両親をはやり病で亡くし、弟にも恋人にも去られ、ひとりぼっちで暮らすブレンダンのもとに、ある日、オドと名のる女巨人が訪れた。まわりじゅうに動物たちをまとわりつかせた不思議な女巨人は、植物の扱いに長けた彼に、都にある魔法学校の庭師になって欲しいと申し出た。
 悩んだ末にオドの求めに応じて魔法学校に行ったブレンダンだったが、故郷とあまりに勝手がちがう都の様に戸惑うばかりだった。一方、自らの魔法の力にまったく無頓着な彼に、魔法学校の教師たちは困惑を隠せない。
 都では、歓楽街“黄昏区”で興行する魔術師ティラミンの噂に、支配者たちが神経をとがらせていた。魔法は国王の名のもとに魔法学校で厳格に管理されているはず。果たして件の魔術師はただの興行師か、それとも本物の魔法使いなのか……。

 魔法の才をもつ青年ブレンダン、魔法学校の教師ヤール、王女スーリズ、魔術師ティラミンの娘ミストラル、黄昏区の警吏監アーネスト……ヌミスの都ケリオールの人々がおりなす魔法のタペストリー。
 幻想の紡ぎ手マキリップの、謎と魔法に満ちた珠玉のファンタジー。

(2010年1月6日/2012年5月8日)


 

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