第二次世界大戦末期、捕虜収容所で
こんなミステリを書いたフランス人がいました!


 戦前から、クリスティ、バークリー、クイーン、カーなどの作品を英語で読んでいたミステリ・マニアのフランス人、マルセル・ラントームが、第二次大戦末期、捕虜収容所で書き上げたのが本作『騙し絵』です。
 本格マニアの面目躍如! なんと本作には《読者への挑戦》があるのです!
 ポール・アルテより前に、こんなものを書いていたフランス人がいたのですね。
 戦後、本作を含む三作をラビラント叢書で刊行したのですが、フランスでは受け入れられず、いやけがさした(?)ラントーム氏は、ほかの原稿を燃やしてしまったというのですから、もったいない。大傑作があったかもしれないのに(?!)。

 最近では、ミステリ批評家として活躍するロラン・ラクルブによる密室ミステリのガイドブックでも取りあげられていますし、同じくラクルブの編集によるアンソロジー『閉ざされた謎』Mysteres a huis clos(2007)にも収録されたりしています。再評価が進んでいる様子です。
 ちなみに、探偵ボブ・スローマンのスローマン slowman という名は、slow man フランス語にすれば、lent homme →ラントーム →Lanteaume だそうです。
  
(2009年10月5日)

 

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