狂乱のカリフォルニア州知事選を制するのは誰だ!?
笑っちゃうほど過激な政局エンタテインメント


 つい先日、わが国でおこなわれた衆議院選挙は、歴史的な結果となりました。どの陣営も死力を尽くした選挙戦への関心の強さは、投票率の高さが物語っています。
 今回紹介するトロイ・クックの第2作『州知事戦線異状あり!』も、選挙を扱った小説です。争われるのは、前任者の不祥事で空席となったカリフォルニア州知事の座。泡沫候補まで含めると総勢123名にものぼる候補者たちは、わが国のセンセイ方同様に死力を尽くして選挙戦に臨みます。ただ惜しむらくは、その死力を尽くす方向が、全力で間違っているのでした。

 そもそものきっかけは、ある有力候補が公開討論会中に不慮の死を遂げたことでした。それを見ていた、別の有力候補がとんでもないことを思いつきます。「残る有力候補たちが死ねば、死んだ分だけ自分の当選確率が上がるではないか!」
 そこで悪い有力候補は殺し屋コンビを雇い、自らの思いつきを実行に移すのですが、ただひとつの誤算は、雇った殺し屋コンビというのが、ちょっぴり……いや、相当に使えない間抜けな連中だったこと。彼らが大小さまざまなミスを積み重ねた結果、本書の主人公たる私立探偵(もどき)のジョン・ブラックに不審を抱かれてしまいます。

 実の母親は上院議員、姉は現職ロサンゼルス市長にして知事選有力候補のひとりという政治家一家の出であるジョンは、大の政治嫌いだったため、政治とは縁もゆかりもない仕事をしています。しかし、姉の命が狙われているとあっては、見過ごすわけにはいきません。頼れる相棒のハーリー(趣味は拷問。ただし対象は悪人にかぎる)とともに、“州知事戦線”のまっただ中に飛びこんでいくのでした――

 前作『最高の銀行強盗のための47ヶ条』で見せた長所はそのままに、さらにスケールアップしたトロイ・クック会心の第2作をお届けします。個性的な候補者たち(中にはどこかで見たような人も)、間抜けな殺し屋、風変わりだけど頼りになる私立探偵たちがくり広げる、狂騒のエンタテインメントをお楽しみください。
 トロイ・クック『州知事戦線異状あり!』は9月29日刊行予定です。

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 総勢123名もの人間が立候補したカリフォルニア州知事選挙も投票日まで残り二週間。とある有力候補が、自らの当選確率を上げるため、ほかの有力候補に殺し屋を差し向けることを思いつく。
 個性豊かな候補者たちに、どうにも間抜けな殺し屋コンビ、暗殺を阻止しようとする私立探偵たちが入り乱れる、なんでもありの場外乱闘の行方は?
 才人クックが政治をとことん笑いのめす、破天荒な犯罪小説の傑作。
(2009年9月7日)

 

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