幼児連続殺人を妨害する謎の男の正体は?
大型新人が放つ感動作



 とにかく理屈抜きに楽しめるエンターテインメントが読みたい! そんな方にぴったりの作品をご紹介いたします。上下巻の長さも全く感じさせず、手に汗を握る展開に一気読み確実の『時限捜査』は、夜の公園を双子の少女が逃げまどうという、緊迫した場面から始まります。

 アメリカの西海岸を北上する幼児連続殺人犯〈クレイドルラバー〉が人々を震撼させる中、双子の少女・キャロリーとキャロリンは家路を急ぐあまり、夜の公園の近道を利用したところ、ティーンエイジャーの少年グループに捕まって暴行に遭いかける。だが危機の直前で、謎めいた青い肌の老人が現れ、双子を救い出した。彼はキャロリーに一枚の紙片を託し、それを警察に渡すよう伝えて消える。そして再び家を目指して走っていたキャロリーは、いつの間にかキャロリンも老人とともに消え失せていることに気がつく。彼女が男から託された紙片には、今し方起きたばかり事件の詳細と、姉妹が少年たちに「殺された」あとに起きたことが、まるで新聞記事のように書き連ねていた。

 追って、かつて幼い娘を失って以来アルコール依存症に陥っていた敏腕刑事カイル・ソマーズの元に、〈クレイドルラバー〉のしるしとともに十代の少女の遺体が発見されたという一報が入る。〈クレイドルラバー〉特捜班班長に任命されたカイルは、キャリア復活を賭して捜査に挑む。 以後も事件を予知したかのように現場に現れ、子供を救い続ける〈青い肌の男〉。起きたばかり事件の詳細を書いた紙片を現場に残してゆく、謎の男の目的と正体とは……

 捜査班内の確執に抗い、亡き娘への負い目に苛まれながら捜査を続けるカイルが見いだした「あり得ない真実」とは? そして彼は、犯人との対決を前に、一人の少女と多くの人名を天秤にかける究極の「選択」を迫られます。警官であり、かつて「父」であった男が選んだ解答とは――ページをめくる手が止まらなくなる読書を保証いたします。

(2009年7月6日)

 


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