今月の本の話題

2009.07.06

現代英国ミステリの精華、〈シェトランド四重奏〉第2章 アン・クリーヴス『白夜の惑う夏』[2009年7月]

明るすぎる夜がもたらした悲劇
現代英国ミステリの精華、〈シェトランド四重奏〉第2章


 本書『白夜に惑う夏』は2007年に翻訳刊行され、好評を博した『大鴉の啼く冬』の続編にあたる作品です。前作をお読みいただいているかたなら、迷わず手にとっていただけるかと思いますが、未読のかたのために、シリーズの魅力と概要をお伝えしましょう。
 〈シェトランド四重奏〉という名前を冠したこのシリーズの舞台となるのは、スコットランドのはるか北東に浮かぶシェトランド諸島の島々。『大鴉』『白夜』の2冊ではそのうち、もっとも大きなシェトランド本島で起きた事件が扱われます。シリーズ第1作『大鴉の啼く冬』で語られたのは、冬に起きた女子高生殺害事件でしたが、本書『白夜に惑う夏』で取りあげられるのは、題名どおり夏に起きた殺人事件の顛末です。

 前作で知りあった画家のフラン・ハンターと地元警察のペレス警部は、フランが有名画家のベラ・シンクレアと開いた絵画展初日の夜、絵を前にして泣くひとりの男と出会います。ペレス警部に、自分は記憶喪失らしいと打ち明けた男は、その翌日、近くの桟橋にある漁師小屋で、首吊り死体となって発見されました。なぜか、道化師の仮面を顔にかぶった姿で……。
 検死の結果、他殺と判定された男の正体と加害者を突き止めるため、ペレス警部はイギリス本土から再度島を訪れたテイラー主任警部とともに、捜査にあたります。
 その捜査の過程で、事件の起きた小集落ビディスタの、少人数ゆえの緊密な人間関係にひそむさまざまな問題が浮かびあがってくるのでした――

 夏、それも白夜の時期は、シェトランドの島々に観光客が押し寄せる季節。彼らの熱気が伝播するのか、それとも決して沈まぬ日が感覚をくるわせるのか、島に住む人々はどこか浮き足立っています。そんななかで起きた悲劇をつづった本書は、英国推理作家協会(CWA)最優秀長篇賞を受賞した『大鴉の啼く冬』と同様、小説としての読みごたえと、精妙な謎解きとが併存した、現代英国ミステリの精華と呼ぶべき1冊です。どうぞお楽しみください。
 
 なお創元推理文庫では、残る〈シェトランド四重奏〉の2作 Red Bones および Blue Lightning も、引きつづきご紹介していく予定です。ご期待ください。

※  ※  ※  ※

 シェトランド島に夏がやってきた。観光客の一団が押し寄せ、人びとを浮き足立たせる白夜の季節が。
 地元警察のペレス警部が絵画展で出会った挙動不審の男は、次の日、桟橋近くの小屋で道化師の仮面をつけた首吊り死体となって発見された。身元不明の男を、だれがなぜ殺したのか。
 ペレスとテイラー主任警部の、島と本土をまたにかけた捜査行の果てに待つ真実とは?  現代英国ミステリの精華〈シェトランド四重奏〉第2章。

(2009年7月6日)

 

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