今月の本の話題

2009.06.05

先王の王女にして弁護士、修道女フィデルマの推理が冴える ピーター・トレメイン『修道女フィデルマの叡智』[2009年6月]

世界中の読書家に愛される〈フィデルマ・ワールド〉
先王の王女にして弁護士、修道女フィデルマの推理が冴える
『修道女フィデルマの叡智』


●最新刊『修道女フィデルマの叡智 修道女フィデルマ短編集』

 先王の王女にして法廷弁護士、裁判官の資格をももつ美貌の修道女フィデルマが、もつれた事件の謎を痛快に解き明かす傑作短編集。

 巡礼としておとずれたローマの教会で、聖餐杯のワインを飲んだ若者が急死、居合わせたフィデルマが急遽謎を解くことになる「聖餐式の毒杯」、夫と幼い息子を殺したと告発され、窮地に陥った幼なじみを救うべく奔走する「ホロフェルネスの幕舎」、旅の途中で偶然立ち寄った宿での幽霊騒動に巻きこまれる「旅籠の幽霊」、アイルランドの大王位継承に欠かせない剣カラハーログの紛失をめぐる事件に挑む「大王の剣」、アイルランド代々の大王の廟所で起きた奇怪な殺人を解決する「大王廟の悲鳴」のバラエティ豊かな5編を収録。

 世界中の読書家を魅了した〈フィデルマ・ワールド〉の入門編ともいうべき日本オリジナル短編集。



『蜘蛛の巣』上下

緑豊かなアラグリンの谷で、その地を支配する氏族の族長エベルが殺された。現場にいたのは血まみれの刃物を握りしめた若者モーエン。犯人は彼に間違いない。事件はごく単純なはずだった……。だが、族長の妻の要請で都から派遣されてきた裁判官フィデルマは、この事件に納得できないものを感じていた。
 殺人現場で捕らえられた青年は、目も見えず、耳も聞こえず、口もきけなかったのだ。そんな彼が本当に、族長と、幼い頃から育ててくれた母親同然の女性を殺したのだろうか?
 フィデルマは、同行した修道士エイダルフと共に、さっそく捜査を開始する。

 没落した高貴な一族の血をひく、族長の誇り高き未亡人、族長の後継者に指名されていたまだ若い娘、ローマ・カソリックの教えを厳しく説く神父、年老いたドルイドの隠者……。そして、フィデルマをあざ笑うかのように、次なる殺人が。
 白日のもとに次々とあばかれる、アラグリンの人々の秘められた真実。果たして平和な谷に巣くう恐るべき蜘蛛の正体は?

 古代の雰囲気を色濃くたたえる7世紀のアイルランドを舞台に、王の妹にして、裁判官、弁護士でもある美貌の修道女フィデルマが、その明晰な頭脳で次々と事件の糸を解きほぐしてゆく。



『幼き子らよ、我がもとへ』上下

 疫病が国土を蔓延するなか、王の後継者である兄に呼ばれ故郷の城に戻ったフィデルマは、驚くべき事件を耳にする。モアン王国内の修道院で、隣国の尊者ダカーンが殺されたというのだ。このままでは隣国が責任を追及してくることは必定。二国間の戦争にも発展しかねない。さっそくフィデルマは、兄の要請で現地の調査に向かう。
 途中、村が襲撃される現場に行き会い、助かった修道女と、数人の孤児を連れ修道院に向かうのだが……。
 従兄が院長を務める殺人現場の修道院で、早速調査を始めるフィデルマ。

 尊者ダカーンは、そこで何を調べていたのか? 人々の証言で次第に浮かびあがる、人格者といわれるダカーンの真の姿。そして、調べ進むうちに、どういうわけか絡まり合った幾本もの糸が、モアンと隣国の間に位置する小王国につながっていく。
 裁判が開催される、大王の〈大集会〉の開催が刻々と迫るなか、必死の捜査が続く。
 フィデルマは、モアン王国の危機を救うことができるのか?

 裁判官、弁護士でもある美貌の修道女フィデルマが、もつれた事件の謎を解き明かす! 『蜘蛛の巣』に続く7世紀のアイルランドを舞台にしたケルト・ミステリ第2弾。

(2009年6月5日)

 


推理小説の専門出版社|東京創元社
バックナンバー