少年から大人へといちばん変化が大きい年頃である17歳の木村が出合った出来事と、東京の四季の移ろいを綴る。

 

 『刺青(タトゥー)白書』以来9年ぶりの最新刊『捨て猫という名前の猫』も好評な《柚木草平シリーズ》。

 今月は、シリーズ番外編として連作短編集『プラスチック・ラブ』をお届けします。青春ミステリの傑作である『ぼくと、ぼくらの夏』『林檎の木の道』の戸川春一や広田悦至と同じ、17歳の木村時郎が、今作品の主人公。少年から大人へといちばん変化が大きい年頃である17歳の木村が出合った出来事と、東京の四季の移ろいを綴った点が大きな特徴。町中にさりげなく配置された草木の描写を、じんわりと味わってください。

 しかも、表題作「プラスチック・ラブ」は、『刺青白書』に先んじて、木村時郎の目線で柚木草平のことを表現しており、貴重な作品といえます。今作品によって、現在までのことろ、柚木草平が登場するすべてが創元推理文庫に収録されることとなります。

 かつて一日だけデートしたことのある中学の同級生が殺害された事件を調べている木村と柚木の出会い。そして彼女の遺した“プラスチック・ラブ”の真の意味とは?

 ミステリ、青春小説など比較的バラエティー感のある8篇からなる本書を、どうぞよろしくお願いいたします。

(2009年6月5日)

 


推理小説の専門出版社|東京創元社