セレブ探偵(と、その旦那様)華麗に?登場
サンフランシスコを舞台にした、痛快シリーズ第1弾


 本書の主人公、チャーリー・フェアファックスは34歳。自分の劇団(!)を持っている、大金持ちの自立した女性です。彼女はたったいま、演劇修業で留学していたロンドンから、故郷サンフランシスコに帰ってきたところでした。ロンドンで出会って電撃結婚した、すてきな旦那様ジャックとふたりで。
 なじみのホテルに泊まることとなった新婚ほやほやのチャーリーとジャック、さぁ幸せいっぱいの“ハネムーン”がスタート……というところで、いきなり水を差されます。ホテルのスイートで、大量のプレゼントと一緒に夫婦を出迎えたのは、バスタブの中で死んでいた、身元不明の女性の全裸死体でした。

 このショッキングな事件の捜査がろくろく進展もしないうちに、チャーリーの身辺ではさらなるおかしなできごとが次々と起きます。仲の悪い従妹が行方をくらましてしまったり、愛する劇団〈レップ〉でもトラブルが続出したり。
 おまけに、ジャックのことを快く思わない叔父のハリー(やっぱり大金持ち)が言うことには、旦那様のジャックには、ひた隠しにしている秘密があるというのですが……?
 そうしたあれこれに決着をつけるべく、チャーリーは持ち前の勝ち気さを発揮して、素人探偵として名乗りをあげるのでした――「自分のやることに、誰も文句は言わせない!」。

 本シリーズの魅力は、生き生きと描かれた登場人物たちにあります。主役のチャーリー、ジャックはもちろん、困った叔父のハリーや、チャーリーの友人たち、くせがありすぎる劇団〈レップ〉の関係者が、にぎやかにしゃべり、行動するさまをお楽しみください。
 また、著者のデュマス自身がサンフランシスコ在住ということもあり、作中に登場する店の大半は実在するものです。同じく作中に多数出てくる、実在のブランドなども楽しみながら、観光気分で読んでいただくのも一興です。
 
 なお、本書の原題は"Speak Now"といい、キリスト教式の結婚式で読みあげられるおなじみの一節「この結婚に異議のあるものは、いますぐ申し出なさい」から採られています。
 マーガレット・デュマス『何か文句があるかしら』は6月30日刊行予定です。

※  ※  ※  ※

 演劇修業で訪れたロンドンで電撃結婚したチャーリー。愛しい旦那様のジャックと一緒に、故郷サンフランシスコに帰還した彼女をホテルのスイートで出迎えたのは、身元不明の全裸死体だった。
 さらに親戚や、みずからの運営する劇団〈レップ〉をも災難が襲うにいたり、チャーリーは素人探偵として活動を始める。だが、旦那様にも何やら秘密があることを知って……。
 セレブな新婚夫婦の華麗なる?活躍、新シリーズ登場。

(2009年6月5日)

 

【2009年3月以前の「本の話題」はこちらからご覧ください】
推理小説の専門出版社|東京創元社