主婦探偵ジェーンの自宅に突撃取材!?
地域行事に殺人事件で、クリスマス休暇は大忙し


 主婦探偵ジェーン・シリーズ、最新刊の登場です。
 第10作にあたる本書『カオスの商人』は原題を"The Merchant of Menace"といい、シェイクスピアの喜劇『ベニスの商人(The Merchant of Venice)』がタイトルの元ネタとなっています。

 さて、その今回は、シリーズ第2作『毛糸よさらば』と同じく、クリスマスのお話です。とはいえ、第2作からそれなりに年月も経過しているので、例えばジェーンの長男マイクは大学生になっておりますし、メル・ヴァンダイン刑事との交際は、メルが自分の母親アディと引き合わせようとするまでの段階に進展しています。もっとも、この対面がすんなり済んだかというと……。詳しくは本編で。

 毎回、等身大の主婦生活が見事に描かれている本シリーズですが、今回ジェーンが事件の捜査以上に時間と労力をとられるのが、聖歌の集いとクッキー交換パーティ、ふたつの地域行事です。どちらも大勢の地域住民が集まって、なごやかでにぎやかな時間を過ごせる催しのようで、真似したくなるような楽しさが伝わってきます。……とはいえ、準備段階でのジェーンの苦労を知ってしまうと、即座に実行に移すのはためらわれるのですが。
 そんなわけで、前作『飛ぶのがフライ』では、ジェーンの家族とのかけあいや主婦の日常が読めなくて残念だった、という人にも楽しんでいただける作品となっております。
 
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 もうすぐクリスマス! ジェーンはあわてふためいていた。大学生の長男マイクも帰省するし、恋人メルの母親もやってくるのに、聖歌の集いやクッキー交換パーティの準備が、どんどん時間を奪っていくのだ。
 とどめに、聖歌の集い当日、無理やり押しかけてきた嫌われ者のニュースレポーターが、隣家の屋根から落ちて死んでしまったから、もう大変!
 主婦探偵がトラブル続きの休暇を過ごす、人気シリーズ第10弾。
(2009年5月7日)

 

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