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2014.08.26

【3か月連続特別先行試し読み】ラフィク・シャミ/酒寄進一訳『愛の裏側は闇』(全3巻)2014年8月の発売に先駆け、3か月連続で特別先行試し読み!

アラビアでは、人生は大昔から相容れることのない宿敵同士、
つまり愛と死のあいだで翻弄されてきた。
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 いよいよ8月から、東京創元社創立60周年記念作品の『愛の裏側は闇』(全3巻)を刊行します。8月、9月、10月と連続でお届けする大作を、いちはやく読者のみなさまに読んでいただきたいと思い、3か月連続で特別先行試し読み企画を行うことにしました。

 本書の舞台はアラビア半島にあるシリア。現在、反政府運動及びシリアの国軍と反体制派による武力衝突が続いている激動の地は、イスラム教徒の国というイメージが強いのではと思います。しかし実は多くのキリスト教徒が住んでおり、社会や文化に大きな影響を与えています。

 著者であるラフィク・シャミはシリア出身のドイツ語作家で、ダマスカス旧市街のキリスト教徒居住区に生まれました。シリアにはイエスが話していたとされるアラム語を現在でも使用している旧村があり、この村は本書に出てくるマーラ村のモデルとなっています。ほかにも著者自身の体験を元にした出来事が数多く書かれており、構想30年の自伝的大河小説といえる作品です。

試し読み第1弾
 今回先行掲載するのは第1巻より、8章の「よそ者」。ダマスカスで育った主人公のファリードから見た、父親の故郷であるマーラ村について書かれています。また、この村に住む、同じキリスト教徒でありながら宗派を異にし、数十年にわたって血で血を洗う争いを続けるふたつの一族についても触れられています。まずは物語の一端を味わっていただけますと幸いです。

試し読み第2弾
 3か月連続先行試し読み第2弾は、41章をお届けします。シリアのマーラ村に住む、三世代にわたって血で血を洗う争いを繰り広げるムシュターク家とシャヒーン家。彼らは同じキリスト教徒でありながら宗派を異にし、祖父母の代からいがみあい続けています。

 この章では、随所に両家の争いと、アラブ世界の人々の行動と思考の一端がうかがえます。日本の読者から見たら「これは犯罪では?」という行いが、状況によっては褒め讃えられることとみなされる場合もあります。文化の違いを如実に感じ取ることができるのではないでしょうか。それこそが、本書の魅力のひとつとなっています。

試し読み第3弾
3か月連続先行試し読み第3弾は、2巻目より96章をお届けします。この章で描かれるのは、主人公ファリードの子ども時代。シリア、ダマスカスに暮らす子どもたちのあいだでキックスクーターが大流行し、ファリードは自作のキックスクーターを作るべく奮闘します。

 他愛のないエピソードですが、さまざまな魅力を持った子どもたちが登場し、彼らの生き生きとした様子が印象的です。シリアからドイツに亡命した著者が実際に体験した、幸せな子ども時代の回想です。

【本編内容紹介】

 キリスト教徒が多く住むシリアのマーラ村。この地には、数十年にわたり血で血を洗う争いを繰り広げるふたつの一族があった。ムシュターク家に生まれたファリードと、シャヒーン家のラーナは12歳で出会い、恋に落ちた。ふたりは一族の者に隠れて逢瀬を重ねていく。
 一方、1969年のダマスカスで、礼拝堂の壁にぶら下げられた籠の中から、首の骨を折られた男の死体が発見される。殺害されたのは秘密警察官だったマフディ・サイード少佐で、胸ポケットに〝ブーロスは我らの秘密結社を裏切った〟というメモが残されていた。

 ふたつの物語の断片が304の章を通してひとつになり、100年にわたるシリアの人々・風土・文化を描いた壮大なモザイク画が浮かび上がる。巨匠の自伝的大河小説!



ラフィク・シャミ Rafik Schami
1946年シリア、ダマスカス生まれ。ドイツ語を母語としないドイツ語作家に贈られるシャミッソー賞で、第一回(一九八五年)では奨励賞、一九九三年には本賞に輝く。本書の英語版に対してブック・オブ・ザ・イヤー賞銀賞(二〇〇九年)とIPPYゴールドメダル賞(二〇一〇年)、二〇一一年には全活動に対して「忘却に抗して――民主主義のために」という賞を受けている。邦訳は『夜の語り部』『ミラード』など。

(2014年6月17日)


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