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2014.08.08

女子のホンネが炸裂! 『ねじまき片想い』刊行記念座談会「柚木麻子作品を語る」

all1.jpg 『ランチのアッコちゃん』(双葉社)が10万部を超えるベストセラーとなり、『伊藤くん A to E』(幻冬舎)と『本屋さんのダイアナ』(新潮社)が直木賞候補となった、今話題の著者、柚木麻子の最新刊『ねじまき片想い ~おもちゃプランナー・宝子の冒険~』が東京創元社から8月11日に刊行されます。

この刊行に際し、東京創元社では、いち早くお読みになりたい方を対象に、発売前のプルーフ版の読者モニターを募集し、さらにその中から数名をお迎えして座談会「柚木麻子作品を語る」を行いました。

2014年7月15日(火)、柚木麻子作品を愛する女性読者五名をお招きし、皆さんの柚木麻子作品への愛を語っていただきました。
座談会の司会には自らも「柚木麻子作品の大ファン」と語る、伊藤春香(はあちゅう)さんをお迎えし、『ねじまき片想い』の舞台となっている浅草にあるカフェで、主人公の宝子が通勤に使っている水上バスを眺めながらの座談会となりました。


◆自分の足で立つヒロインが好き!
伊藤 : 今日のメインテーマのひとつである「柚木麻子さんが描く女性像」について、ご自身の好きな作品や場面について語りたいと思います。

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「手帳に書き写した言葉もある」と語る伊藤春香(はあちゅう)さん

私の場合は『けむたい後輩』が一番好きですね。柚木さんが描く女性の、壊れそうなところに、すごく惹かれるんです。主人公の真実子が、先輩にずーっと振り回されていて、不憫でしょうがないのですが、彼女の言葉を通して勇気をもらった気がします。
渡部 : 私は『あまからカルテット』が一番好きです。彼氏が自分の前で本音を喋っていないことを、たった一杯のハイボールで見抜いてしまう。女性は「寄り添いたい」生き物なのに、それが出来ずどんなに辛いか、胸にストン落ちるように描いてくれています。
江口 : 柚木さんの作品に出てくる料理は、とにかくおいしそうですよね。『けむたい後輩』に出てくるおにぎりも、『その手をにぎりたい』のお鮨も、『ランチのアッコちゃん』や『本屋さんのダイアナ』にはいろんなお料理が出てくるし。
伊藤 : 柚木さんご自身が食べることやお料理が好きなのかもしれませんね。『あまからカルテット』で好きなひとを探す決め手が黒糖! という展開も、料理するひとじゃないと分からない。
江口 : 『終点のあの子』が好きです。私は女子校出身なので「あの子もこんな気持ちだったのかな」と昔の友達のことを思い出しました。
伊藤 : 女子の人間関係が描かれることが多いですよね。
江口 : 女子校から引きずっている、“こじらせた感じ”が恋愛観に出ているよう主人公もいますね。
渡部 : コンプレックスや憧れがしっかり描かれるのは女性作家ならではかも。男性はもっと憧れの女性を見たいのかもしれないし。
伊藤 : 柚木作品の中で一番好きな言葉は、「年上のくせに葛藤のレベルが低くないですか?」です。先輩が自分のできないところを正当化するんですよ。それに対して「みんな同じなのに、なんであんただけそれで威張ってるんだ」と言い返すところに、胸がスカッとしました。
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「モンゴメリなど少女文学をずっと読んできた」
と語る松本さん

松本 : 「『結婚したいな』とか『彼氏出来たら仕事辞めちゃいたいな』と思っている普通の女の子だって、自分の足で立てるんだよ」と言ってくれている気がします。この年になるとそれがいかに大事なことかと分かるから。自己啓発本やダイエット本やグルメ本だとかを読むくらいなら、柚木さんの本を読んだ方がためになると思う。多くの女性が共感できるような言葉がたくさん並んでいて、スッと心に入ってきますし。それに『本屋さんのダイアナ』をはじめとする作品に、小さい頃に読んでいた『大草原の小さな家』や『丘の上のジェーン』などの名作がさらっと出てきて、そこにひっかかった人が読み返してくれたらいいなって読みながらいつも思うんです。
伊藤 : 松本さんの好きなキャラクターは誰ですか?
松本 : 私一番好きなのは『嘆きの美女』の耶居子です。柚木作品には美女がいっぱい出てきて、女の子が女の子に憧れる場面もたくさんあります。私は「自分がもうちょっと可愛かったらよかったのに」とずっと思っていたので、耶居子の気持ちがよくわかりました。たぶん世の中の女の子って「自分はちょっと可愛いんじゃないかな」「やっぱりブスかな」と二つの気持ちの間で揺れながら生きている部分があると思います。耶居子はドブスだけど、自分の力でしっかりと生きていく。柚木さんの作品には、女の子に対する信頼感が常にあるような気がします。
江口 : ブスを言い訳にして、後ろ向きに生きてきたことを肯定している自分に「はっ」と気がついて、前向きに生きていくところが私も好きです。
松本 : 「私ブスだから」って言っている子は一生ブスのままなんですよね。
伊藤 : 誰かがこの前言っていました。「ブスはブスでつるんで、ブスであることに対して肯定しているからブスから抜け出せない」って。
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「『早稲女、男、女』で初めて柚木作品を
手に取った」と語る江口さん

江口 : 一人の男性を素敵!と思ったり、最悪!と思ったり。女子は揺らいでいる生き物なんですよね。柚木さんの作品は女性の面倒くさい心の動きをちゃんと描いてくれるので、嬉しいです。
伊藤 : 『伊藤くんA to B』は、それぞれの女性に対する伊藤君が見せる表情が全部違って、まるで別人みたいなところが面白くって。柚木作品の男性像についてはどう思われますか。
江口 : 私は伊藤くんが好きですね。自分が素敵だと思っても、別の人から見ると、この人の見え方が違うんだろうなっていうのがリアルです。
岩崎 : なんだかちょっと不安になりませんか? 私に見えている人が、他の人からはそう見えてないかもしれないと思うと、本当に好きになっていいのかな、と。
渡部 : でも柚木作品に出てくる男性は、完璧に見えても実はそうじゃない男性のほうが多いから、「いるいる、こういう男」みたいに感じるんじゃないかな。
松本 : ダメな男を掴まないための指南書的という側面もありますよね。柚木さんの描く素敵な男性は、女性の邪魔をしない男だと思います。自力で歩くのを支えてくれる男の人を良しとしているというか。『ダイアナ』に出てくる肉屋の金髪の彼氏や、耶居子を好きだっていってくれた男の子とか、あったかく支えてくれて、なおかつ一番大事な「食べる」ことについても理解がある。食べる好みが合うってことは、人生を送っていく上で大事なことだから、「ちゃんとこういう男を選びなさいよ」的な柚木さんからのアドバイスがあるのかなって。
◆“5年間片想い“は出来るのか?!
伊藤 : 最新作に関してはみなさんいかがですか。
私は最初、「五年間片想い」という主人公の設定に共感できなかったんです。
渡部 : 宝子はむしろ片想いを楽しんでいたんじゃないかと思います。片想いを原動力として、何かをしてあげたい。
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一番好きな作品は『本屋さんのダイアナ』、
子どもたちに読んでほしいと語る岩崎さん

岩崎 : 好きな男性に何かをしてあげたい女性ってすごく多いですよね。この作品でも、邪魔になる物は取り除いてあげようなんて、すごい発想!
江口 : 妄想の世界で満足している女性は多いですよね。会社の集まりに好きな人が来るからってすごい前に準備を始める人、私の周りにもいる。でもそれがすごく楽しい。つらいって自分ではこぼすんですけど、ひとり安全の中で妄想し続けるのはすごく楽なんじゃないかって。
渡部 : 片想いも、ある意味ひとり遊びですよね。
松本 : リアルな恋人だと、「何時に会える?」とか「次の日曜日どこ行く?」とか、仕事に障るじゃないですか、宝子の場合だとね。でも片想いだと、「今頃何してるかしら」って思いながら仕事できるわけでしょ。
伊藤 : ネタバレになるので言えないのですが、最後の最後の展開にぐっときました。最初は追いかけるところから始まって、最後に宝子の心の成長が感じられて。
岩崎 : 宝子の恋は周辺の人にはバレバレで、みんなこっそり応援しているのに、本人はバレていることに気づかない、というところがすごく可愛らしくて、応援してあげたい気持ちになりました。がんばれがんばれって。
伊藤 : 五年間一途に好きっていうのはすごいですよね。中学生ならまだしも、宝子はアラサーなので。
松本 : きっと慣れちゃうんですよね、片想いしていることに。仕事が忙しいからどんどん時間だけ過ぎちゃって。気づいたら五年だったんでしょう。
岩崎 : 怖いですよね、踏み出すのは。告白する前はみんな同じような気持ちを味わったことがあるんじゃないかな。
――片想いの方が楽だということは、極端な話、宝子はどんな男でも良かったのかな、と思いましたが、だめですか。
江口 : 外見と、夢の見方によりますね。あと簡単に手に入っちゃうとだめな気がします。
松本 : 友だちから、婚外恋愛になってしまった話を時々聞くんですが、落とし穴に落ちたような感じ、って言うの。「落とし穴に落ちたらそこにいたの」って。この作品を読んでいて、その“落とし穴説”を思い出しました。でも、出会いってそういうものですよね。
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「年代的も柚木さんと同年代なので、
共感できるところが多くて」と語る渡部さん

――柚木さんが設定する「ヒロインが惚れる男性像」って目に見えてわかりやすいかっこよかったり、ステレオタイプの男ではない。男としては読んでいて微妙気持ちになる時があります。
伊藤 : そこがリアルだと思います。仕事を持って自立している女性って、バリバリ仕事をしている男の人だと、対抗心が出てくるので。
江口 : この話にも出てきますが、男性よりもあえて自分が仕事できない風にはしてしまうところは共感できる。
伊藤 : 「東大女子心理」という言葉があるんです。東大の女子って合コンで「東大出身です」って言わないんですよね。男の人がひいてしまうから。
岩崎 : この作品の刑事さんがわたし結構好きだったんです。
松本 : そうそう。私、どうしてこの刑事さんに行かないんだろうって思ったもん。
渡部 : 片思いされるよりもする方がやっぱり好きなんですよね。
江口 : 柚木作品は予想通りにならない作品が多いなって思います。
伊藤 : 現実もそんなに予想通りいかないですよね。

◆柚木作品のここに憧れる!
伊藤 : 柚木さんの作品のここに憧れる! というところはありますか?
江口 : 仕事と恋を両立させている女性が素敵です。私も忙しい仕事をしているから。『あまからカルテット』の中で、編集者が働きづめで疲れきったときに、友だちに助けを求める場面があって、「自分ひとりじゃなくて周りも頼って、生活を両立させていくのがすごく大切だよ」とメッセージを受け取った気がしました。

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松本 : 「仕事を手放したらだめ」って言ってくれている気がします。それに女友達の大切さ。昨日も高校の友だちとゴハン食べて、座談会に出るんだよって自慢してきました。価値観や嗜好が似ていて、最終的に今も続いている友だちは、柚木作品のような関係です。
伊藤 : 女性誌を読んでいるような気持ち良さもありますよね。『ねじまき片想い』に「ベランダからミントを摘んでモヒート作ろう」という場面があって、本当に可愛くておしゃれ。
松本 : 私は富山の田舎に住んでいるので、どこの家にも庭があります。うちにはブルーベリーが四本生えていますよ(笑)
江口 : それは素敵ですね(笑)『あまからカルテット』では、お取り寄せに関してすごく詳しく書かれていますよね。女性誌でもよく「お取り寄せ特集」が組まれていて、よく読みます。
松本 : 私は地方出身で、東京には全く縁がなかったんですが、池波正太郎さんの『散歩のとき何か食べたくなって』に出てくる資生堂パーラーがどうしても食べたくなって行ったことがあります。作家の足跡をたどってみたい。だから柚木さんが普段食べているものが気になります……。
岩崎 : 小説とは違った楽しみ方というか、女性のブログ読んでいるような感じ。
渡部 : 私は数年前までファッションやお料理のブログやっていたんです。やっぱり共感してコメントくださるのはみんな女性なんですよね。セールに行ってこんなの買ったよ、とか。そういうの読んでいてすごく楽しいって感じます。
伊藤 : 女性誌で言えば『CLASSY』とからへんの、手の届く贅沢という感じがします。
渡部 : 日常に取り入れて、着こなしている感じがありますよね。無理していない。グッチに包まれて私はハイクラスな女よ、という贅沢じゃなくて、私は好きだからローラアシュレイのものを持っている、とか、少女っぽいワンピースを着ている、とか、すごく肩の力が抜けて、心地が良い。
伊藤 : 柚木さんは「こういうライフスタイルがあるんだよ」と教えてくれている気がします。『その手をにぎりたい』で、高級なお鮨屋さんでの注文の仕方に始まる振る舞いや、お店とのお付き合いの仕方を教わりました。
――知り合いに『その手をにぎりたい』を読んで、お鮨を食べに行けるようになったという人がいます。それまでは一人鮨なんてとんでもないし、ましてや女の子で! と。でも読んだら行ってもいいような気がしてきた、と言っていました。
伊藤 : 柚木さんについて語ったことなんて初めて。みなさんとても読み込まれていて柚木さんへの愛を感じます!

お話を聞きながら思わず「うんうん」と頷かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
多くの女性を惹きつけてやまない柚木麻子作品ですが、8月11日刊行の『ねじまき片想い ~おもちゃプランナー・宝子の冒険~』(東京創元社)でも決して期待を裏切らないとお約束します。是非ともよろしくお願いいたします。

暑い中にもかかわらず、柚木麻子作品を語るためにお集まりいただいた皆様、ありがとうございました。

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cafe.jpg 会場のご提供:
カフェ ムルソー
CAFE MEURSAULT
東京都台東区雷門2-1-5 中村ビル

東京メトロ銀座線「浅草」駅 4番出口から 徒歩1分
都営浅草線「浅草」駅 A2a出口 徒歩1分
浅草駅(東武・都営・メトロ)から151m
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