Science Fiction

2015.07.20

文庫化記念特別企画・その4 “異形の天才”の素顔に迫る! 酉島先生に20の質問

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文庫化記念特別企画:【その1】【その2】【その3】

第2回創元SF短編賞受賞
第34回日本SF大賞受賞
『SFが読みたい!』ベストSF2013国内篇 第1位

『皆勤の徒』
酉島伝法
2015年7月21日発売
ISBN:978-4-488-75701-4
定価:1,037円
装画:加藤直之
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。

【内容紹介】
高さ100メートルの巨大な鉄柱が支える甲板の上にその“会社”は建っていた。 語り手はそこで日々、異様な有機生命体を素材に商品を作る。社長は“人間”と呼ばれる不定形の大型生物だ。
甲板上と、その周りの泥土の海だけが語り手の世界であり、日々の勤めは平穏ではない──第2回創元SF短編賞受賞の表題作にはじまる全4編。 デビュー作品集ながら第34回日本SF大賞を受賞した、現代SFの到達点にして世界水準の傑作。
本文イラスト=酉島伝法 解説=大森望



文庫化記念特別企画・その4 “異形の天才”の素顔に迫る! 酉島先生に20の質問

●7/21(火)発売! 文庫版『皆勤の徒』

質問1 まずは、近況報告も含めた簡単な自己紹介をお願いします。

 酉島伝法(とりしまでんぽう)と申します。主に小説や絵の仕事をしています。最近では、『群像』4月号の「三十八度通り」『SFマガジン』6月号の「痕の祀り」『現代詩手帖』5月号の「橡(つるばみ)」といった短篇を書きました。

質問2 単行本が世に出てから約2年が経ちますが、振り返ってみていかがですか。生活に変化などはありましたか。

 日本SF大賞を頂戴したり、新垣隆さんと吉田隆一さんのデュオによる楽曲「皆勤の徒」が発表されるなど、望外の出来事がありました。おかげさまで依頼は増えてきたのですが、一定して遅筆なのが悩みで、次の単著を出せていないことに愕然としています。励みます。

質問3 ついに文庫版『皆勤の徒』が発売となりますが、単行本版との違いや「ここに注目してほしい」という部分を教えてください。

 電子書籍版とPhantasm Japanの英訳版に追加した二枚に加えて、新しい挿画を三枚描いたので、単行本と比べると五枚挿画が増えました。本文との相乗効果で楽しんでいただければ嬉しいです。内容の方も若干ですが加筆した箇所があります。
 表題作はもともと言葉による極限労働のインスタレーションを目指して書いたものなので、場面場面を体感するように楽しんで(苦しんで)いただければ。もしも挫折しそうになった時は、大森望さんが解説で仰っているように、もふもふ生物のでてくる「百々似隊商」から読んでいただくと、世界に入りやすいかもしれません。ちなみに「洞の街」は学園もので、「泥海の浮き城」は昆虫ハードボイルドです。時代を遡る連作になっていますが、それぞれ独立した話ですので、お好きな順序で読んでも大丈夫です。

●酉島先生ご自身について

質問4 子供の頃、好きだったテレビ番組や映画がありましたら教えてください。

『サンダーバード』『謎の円盤UFO』『宇宙空母ギャラクティカ』『透明人間ジェミニマン』『超人ハルク』などの海外特撮ドラマを良く見ていました。アニメだとタツノコプロ、サンライズ、国際映画社の新番組がいつも楽しみでした。あとは宮﨑駿や大塚康生が絡んでいる気配を感じると、居住まいを正していた気がします。映画では『吸血鬼ゴケミドロ』が衝撃的でした。青白い高英男の額がパカっと割れてアメーバ状のものが流れ出てくる場面や、あまりに救いのないラストが恐ろしく、眠れなかったことを覚えています。

質問5 『皆勤の徒』に登場するもふもふの生き物「百々似(ももんじ)」は、昨年の日本SF大会で「手作り百々似講座」が開かれるなど、人気キャラクターとなっていますが、酉島先生ご自身は動物がお好きなのでしょうか? また、現在飼っている/これから飼ってみたい動物はいますか?

 子供の頃は《ドリトル先生》が大好きで、大人になったら色んな動物に囲まれた生活をしたい、と願っていましたが、いまは何も飼っておらず、植物を無節操にたくさん育てています。無花果の実や、枇杷の葉が見ていて気持ちよくて。水鳥が好きで、川辺でよく眺めます。

質問6 最近読んで面白かった本を教えてください。

 SFでは倉田タカシ『母になる、石の礫で』、オキシタケヒコ『波の手紙が響くとき』、牧野修『月世界小説』が、それ以外ではロベルト・ボラーニョ『2666』やパトリック・デウィット『みんなバーに帰る』が素晴らしかったです。昔からアントニオ・タブッキが大好きなのですが、久々に『遠い水平線』『供述によるとペレイラは…』を読み返しながら、文体の牽引力について考えてます。

質問7 最近みた面白い夢がありましたら教えてください。

 夜明け前に、博物館らしき建物の長い廊下をなにかに追われて走っており、焦りながら全身を包帯でぐるぐる巻きにして展示されたミイラを装い、展示棚の暗い隙間に隠れてやりすごそうとしたのですが、両手を突き出した本物のミイラ男がずるずると音をたてながら近づいてきて、とうとう気づかれてしまい、取っ組み合ったままぐるぐる回り続けて「ああっ、やられるっ! 」と叫びながら目が覚めました。前に読んだジョー・R・ランズデール『ババ・ホ・テップ』のせいかもしれません。

質問8 好きな食べ物を教えてください。

 年を重ねるにつれ好みが均されて、最近は極端に好きなものがなくなってしまいました。ただ、レストランやファーストフード店では、目玉焼きや茹で卵がついている方をどうしても選んでしまうので、卵が好きというか、ハリガネムシに寄生されたカマキリ的に操られているというか、そのうち体の中で何かが孵るんじゃないかと不安になることがあります。

質問9 苦手なもの(生き物、食べ物、場所etc.)はありますか?

 血液型を聞かれるのが苦手です。

質問10 血液型を教えてください。

 ギョヴヴグェプ、ヴヴ――

質問11 普段、書籍は書店/オンラインストアどちらで購入されることが多いですか?

 書店を訪れると延々と居続けてしまうのですが、近所には全くないので、オンラインストアが多めです。

●創作について

質問12 一日の生活スタイルを教えてください。夜型でしょうか、朝型でしょうか。また、執筆にかかせないアイテムがありましたら教えてください。

 静かで集中しやすいのでどうしても夜が多くなってしまいます。執筆に欠かせないのはコーヒーくらいですね。書いている作品のイメージに合う曲を集め、流しておくことも多いです。

質問13 執筆中、気分転換をしたいときは何をされますか?

 とりあえず本を読みますね。製作途中の絵にペン入れしたりもします。

質問14 酉島先生の作品には、人間ではない生き物が多く登場しますが、どのようにして異様な生き物を思いつくのでしょう? 「こういう生き物を出したい」と、構想の段階でだいたい決まっているのでしょうか。

 適当に線を描くうちに自然に形ができていくことが多いです。人間としての体がどうにもしっくりきておらず、本来のあるべき姿を無意識に模索しているのかもしれません。物語において重要な役割を持つ生物は、書くときに困らないよう構想の段階でじっくり練っておきますね。〈外回り〉は特に難しく、しっくりくる形になるまでに多くのスケッチが必要でした。ちなみに最初に描いた百々似のスケッチは、体がとても長くて、疣足がついており、ほとんど芋虫同然でした。

外回りスケッチ修正.jpg 百々似スケッチ.jpg
質問15 独特のイラストをお描きになりますが、作品を構想される時は、絵と物語、どちらが先に浮かぶのでしょうか?

 作品によってまちまちですね。絵と話が混ざり合った大きな塊として浮かぶこともありますし、別々に浮かんだ絵と言葉を掛け合わせて新たな絵や言葉に変え、さらに別の絵や言葉を、と繰り返して大きく育てることもあります。

質問16 イラストは平均でどのくらい時間をかけていらっしゃるのでしょうか。

 だいたい三日か四日くらいですが、中には二週間近くかかったものもあります。どれもシャープペンシルで描いた原画をスキャンして、Photoshopでレイヤーを重ねて完成させます。

質問17 作品の構想を練る際、綿密なプロットをつくってお書きになるタイプですか? それとも、書きながら考えていくことのほうが多いのでしょうか。

 作品によっては、細かい部分までプロットができている事もあるのですが、たいていは鍵となるアイデアを幾つか用意した上で、ぼんやりと書き始めます。いつも最初の二十~三十頁は、作品に応じた文体を作るために特に時間がかかるのですが、それがプロットを練る行為に近いようです。半分くらいまで書いたあたりで、ようやく全体のプロットが揃う感じです。

●これからについて

質問18 次回作について教えてください。現在構想中の長編は「酉島版ムーミン谷」だとの噂ですが。

 東京創元社の新刊ラインナップ説明会にて、巨大な大家さんや体の弱い神様などのスケッチを披露しました。ムーミン谷と『次郎長三国志』が融合した話になりそうです。

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質問19 これから書いてみたいテーマはありますか?

 テーマではないですが、絵と言葉で面白い試みができないかはよく考えます。あと、もふもふを手で触れる百々似絵本ができればすてきだろうな、と。

質問20 今後のご予定(刊行予定・雑誌掲載予定など)を教えてください。

『SFマガジン』6月号初出の短篇「痕の祀り」が、7月23日刊行の『多々良島ふたたび──ウルトラ怪獣アンソロジー』に収録されます。パワードスーツ的なものが登場する怪獣解体のお仕事小説です。8月には大阪で執筆陣の出演するイベントがあります。それから7月27日刊行の『ユリイカ』8月号の江戸川乱歩特集に、「摩天の軽業師」というオマージュ短篇が掲載される予定です。よろしくお願いいたします。

これまで四回にわたってお届けしてきた文庫化記念特別企画は、今回が最終更新となります。
いよいよ本日、文庫版『皆勤の徒』が発売です!
(電子書籍版も同時発売です)

どうぞお楽しみください。

【著者紹介】
酉島伝法(とりしま・でんぽう)
1970年大阪府生まれ。大阪美術専門学校芸術研究科卒。フリーランスのデザイナー兼イラストレーター。
2011年、「皆勤の徒」で第2回創元短編賞を受賞。第2作「洞(うつお)の街」は第44回星雲賞日本短編部門の参考候補作となる。また単発作「環刑錮」も第45回星雲賞日本短編部門の候補となった。
13年刊行の第1作品集『皆勤の徒』『SFが読みたい! 2014年版』の国内篇で第1位となり、さらに第34回日本SF大賞を受賞。
(2015年7月21日)


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