Science Fiction

2018.01.17

SF不思議図書館 愛しのジャンク・ブック 第1回(1/2)

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SF不思議図書館 愛しのジャンク・ブック
はじめに 不思議な海外SFを探したり読んだり

小山 正 
tadashi OYAMA


 私は長年、内外のミステリを読み、それに関する原稿を書いてきた。そのせいかミステリの専門家と思われているが、実は、SFの世界も愛してやまない。
 わたしのSF体験は、偕成社から刊行された子供向き〈SF名作シリーズ〉の『火星のプリンセス』に始まる。九歳の時、クリスマスのプレゼントに貰ったこの本の表紙画が、武部本一郎画伯だった。八本足の馬にまたがるジョン・カーターと“プリンセス”・デジャー・ソリスの雄姿が、子供ながらに刺激的だった。
 やがて、集英社〈ジュニア版世界のSF〉の一冊『滅びゆく銀河帝国』(野田昌宏訳!)を読み、遠い未来の壮大な宇宙ドラマに感動する。この頃、筒井康隆編纂の入門書『SF教室』(ポプラ社)に出会い、このジャンルから抜けられなくなった。
 その後、大人ものへ移行。創元推理文庫のSFマーク、ハヤカワ文庫SF、ハヤカワSFシリーズ、サンリオSF文庫等を渉猟し、〈SFマガジン〉〈SF宝石〉などの雑誌をなけなしの小遣いで買った。
 内外のSFに接するうちに、翻訳モノだけでは飽き足らず、ある時から原書にも手を伸ばすようになる。
 その端緒は一九八〇年、私が十七歳の時。アメリカのノースカロライナ州を訪れ、私は大きなカルチャーショックを受けた。滞在したのが小さな田舎町だったにもかかわらず、ちゃんとSF専門の書店があったのだ。フィリップ・K・ディックのペーパーバックがズラリと並び、そのほとんどが未訳本! ほかにも、知らない作家だらけ!
 大学生になって、ニューヨークの「サイエンス・フィクション・ブックショップ」にも行った。小さな本屋なのに熱気がスゴイ。髪の長い三十代くらいの店長が、気さくに声をかけてくれた。
 ロサンゼルス郊外の専門書店「デンジャラス・ヴィジョン」も懐かしい。広く落ち着いた店構えで、日本から来たと言ったら、大歓迎された。本と一緒に店のロゴがプリントされた緑色のTシャツを購入した。
 とまあ、SFカルチャーが日常に深く根付いていた当時のアメリカは衝撃的だった。インターネットの時代となり、リアル書店が次々に消えてゆく昨今、こんな情景にはもう出会えないだろう。
 かくして、英語もままならないのに、背伸びをしながら洋書を渉猟する日々が始まる。今はなき都内の洋書店、銀座の「イエナ」や高田馬場の「ビブロス」でペーパーバックを漁り、日本橋の「丸善」や神保町の洋古書店に行くたびに、新旧の原書を探した。海外に出向けば古本屋に必ず立ち寄るし、最近はネット全盛のおかげで、世界中の書店から直接購入することも度々だ。
 蔵書の量に比例して、不思議な本や変わった周辺書も増えてくる。中には、「こんなSFが出ていたのか!」と、ビックリするようなものもあれば、「このSF作家がどうしてこれを書いたのかしら?」と疑問を抱く謎の本もあったりする。それらをまとめてみたら、SF史の番外地のような本棚ができてしまった。
 というわけで、この欄では、私の書棚に眠る風変わりなSFをご紹介してゆきたい。国内で刊行された本に関しては、北原尚彦氏の『SF奇書天外』のような好著があるので、私は主に洋書に特化しようと思う。しばしの間、よろしくお願いします。

(2018年1月17日)



■ 小山 正(おやま ただし)
1963年、東京都新宿区生まれ。ミステリ研究家。慶應義塾大学推理小説同好会OB。著書に『ミステリ映画の大海の中で』(アルファベータ刊)。共著に『英国ミステリ道中ひざくりげ』(光文社)。編著に『越境する本格ミステリ』(扶桑社)、『バカミスの世界』(美術出版社)、他。





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