Science Fiction

2011.02.15

「ベストSF2010」1位『異星人の郷』マイクル・フリン氏のメッセージ

大好評発売中のマイクル・フリン『異星人の郷』(創元SF文庫)が、早川書房発行の『SFが読みたい! 2011年版』「ベストSF2010」の海外篇で1位に選出されました。

それを受けまして作者のマイクル・フリン氏よりメッセージが届きました。

 わたしの作品『異星人の郷』が、二〇一〇年の「SFが読みたい!」海外部門の一位になったという知らせを受け取りました! SF界に独自のすばらしい貢献をしていることでよく知られた国からのこの吉報を、たいへん名誉に思います。わたしにとっては大きな驚きであり、嬉しいと同時に、面映ゆい気持ちでもあります。
 驚く理由はいくつもあります。物語の時代と場所――中世ドイツ――は、日本の読者にはなじみのないものでしょう。中世ヨーロッパと日本の徳川時代には、騎士と侍、キリスト教と仏教など、けっこう共通点があります。しかしヨーロッパの荘園の生活は、徳川時代の人々の生活とは大きく異なっていたはずです。もしかすると、そこが日本の読者の異国情緒をかき立てたのかもしれません。欧米の読者からの反応には、中世ドイツの農民のほうが、巨大バッタ以上に異星人のようだったというものもありました。現代の西欧の読者にも、やはりなじみのない舞台だったのかもしれません。わたしたちが「SFが読みたい!」と思う理由の一つは、奇妙な、異国的な存在や場所に触れてみたいという欲求でしょう。なじみ深いものの中に奇妙さを見いだし、奇妙なものの中になじみ深さを見いだす――それがSFの醍醐味なのですから。
 作品が認められたことに驚いた理由の二つめは、言語の問題です。この作品には古典的な語彙を多用し、ほかにもドイツ語、ラテン語、ギリシャ語などをちりばめました。また、レビュワーたちからは、詩的な表現や、文章のリズムと文体を評価するコメントをいただきました。英語はドラムでビートを刻むような、強弱の明確な言語です。日本語はもっと均一な、流れの速い川の水音ような言語です――だからこそソネットと俳句はあれほど形式が異なり、どちらも原語で聞いたほうが、翻訳よりも美しいのです。『異星人の郷』を日本語に翻訳するのは、困難な作業だったに違いありません。この作品を「SFが読みたい!」の一位にするほどの仕事をした翻訳者は、大いに称賛されるべきです。
 孫娘はハイスクールで日本語を学んでいて、来年にはほかの生徒たちと日本を訪れる予定です。そのときは、わたしの本を日本語で読むことがあるかもしれません!  このような栄誉を授かったことに対し、東京創元社と、それを可能にしてくれた翻訳者の嶋田洋一氏に感謝します。

マイクル・フリン
訳:嶋田洋一

このメッセージは『SFが読みたい! 2011年版』に掲載されたものを再録しました。

その他の詳細は公式サイトをご確認ください。
■早川書房公式サイト
http://www.hayakawa-online.co.jp//

 


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