Science Fiction

2011.07.15

『異星人の郷』2011年度星雲賞受賞のことば[2011年6月]

各所で既報のとおり、日本SF大会参加者が選ぶ2011年度の星雲賞(第42回)が決定し(今年は試験的に、大会に先行しての発表となりました)、海外長編部門を、創元SF文庫刊『異星人の郷』(マイクル・フリン/嶋田洋一訳)が受賞しました。

他部門の受賞作など詳細は「日本SFファングループ連合会議」内のページをご覧ください。 http://www.sf-fan.gr.jp/awards/2011info.html

贈賞は、2011年9月3日(土)~4日(日)、静岡県コンベンションアーツセンター「グランシップ」で開かれる「第50回日本SF大会 ドンブラコンL」で行われます。詳細は「第50回日本SF大会 ドンブラコンL」公式サイトをご覧ください。 http://www.sf50.jp/

■ 著者、マイクル・フリン氏のコメント

 わたしの作品『異星人の郷』が、2010年の星雲賞(海外長篇部門)を獲得したという知らせを受け取り、欣快に耐えません。SF界にすばらしい貢献をしていることでよく知られた国からの授賞を、たいへん名誉に思います。これを可能にしてくれた東京創元社に感謝します。
 それ以上に、翻訳者の嶋田洋一氏に感謝します。翻訳書とはすべて原著者と翻訳者との共同作品ですが、英語版の Eifelheim には古い英語の語彙や、ドイツ語、ラテン語、ギリシャ語などがちりばめられています。この作品の魅力は詩的な表現と、文章のリズムや文体だとするレビュワーもいました。英語はドラムでビートを刻むような、強弱の明確な言語です。日本語はもっと均一な、流れの速い川の水音ような言語です。この作品を日本語に翻訳するのは、さぞ大変だったことと思います。星雲賞を受賞するほどの出来栄えで作品を翻訳した嶋田さんは、大いに称賛されるべきです。
 われわれがSFを読む理由の一つは、奇妙な、異国的な存在や場所に触れてみたいという欲求――なじみ深いものの中に奇妙さを見いだし、奇妙なものの中になじみ深さを見いだす楽しみでしょう。多くの欧米人読者の反応は、中世ドイツの農民のほうが、巨大バッタ以上に異星人のようだったというものでした! 日本人読者にとって、中世ドイツはどれほど異質な世界に見えたことでしょう。ただ、中世ヨーロッパと徳川時代の日本にはけっこう共通点があります。騎士と侍、キリスト教と仏教、皇帝/将軍に対する地方貴族/地方大名の権力など――そうはいっても、当時のヨーロッパにおける荘園と都市の生活感はずいぶん違っていました。日本の読者にとっては、このあたりが異国風味を際だたせたかもしれません。
 前に誰かが、どの国に住んでいても未来はそう違わないが、過去は大きく異なっていると言ったことがありました。日本人読者のみなさんが『異星人の郷』に投票したのは、翻訳者が提示した作品の魅力のせいだけでなく、それぞれが自分の中に、前述した「奇妙なものの中になじみ深さを見いだす」喜びを感じたからだと思います。ですからここに、最大の感謝を日本のSFファンのみなさんに捧げます。ホントウニアリガトウゴザイマス。(嶋田洋一訳)
(2011年9月5日)

■ 訳者、嶋田洋一氏のコメント

 7月10日、日本SFファングループ連合会議事務局員の牧紀子氏から、拙訳書『異星人の郷』(マイクル・フリン著、創元SF文庫)が今年の星雲賞海外長篇部門受賞作に決まったとの連絡をいただきました。
 この作品は2007年に横浜で開催された世界SF大会NIPPON2007の際、ヒューゴー賞の候補作となったものです。残念ながらヒューゴー獲得はなりませんでしたが、この大会中に東京創元社の小浜徹也氏から翻訳の打診があり、今回の受賞につながりました。
 一足先に原稿を読んだイラストレーターの加藤直之さんや校閲の方にも評判がよかったと聞きますし、刊行後も好意的に評価する声が多かったため、「ああ、これはひょっとすると……」という気持ちはありました。ただ、そうは言っても地味な作品で、根気よく読んでいただかないと、良さが伝わらないのではないかとの危惧があったのも事実です。
 今回、多くの方の支持をいただいて受賞に至りましたことに心から感謝するとともに、こういうタイプの作品もじゅうぶんに評価され支持されるのだということに、意を強くしたところです。
 あらためまして、本当にありがとうございました。

(2011年7月15日)


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