4月14日

「ラクダとアルパカの混血」
(略)
「なぜそんな混血が……」
「時に、そういうことも起こり得る」
「本当に?」
「ああ。ついうっかり相手を間違える慌て者もいれば、種を超えて恋に落ちる純情者もいる」
「どっちが父親でどっちが母親?」
「ラクダが父でアルパカが母」
「そうか。アルパカがラクダの子を産むと、こうなるのか……」
 僕はその混血児を抱き上げた。


――「冬眠中のヤマネ」

 昼過ぎに起きて、コーヒーを飲んで、ご飯食べて、執筆といういつも通りの日だ。
 予定からすこし遅れたけれど、『GOSICK』8巻に取りかかり始めたところだ。
 原稿はきっちり書けるけど、自分を観察してると、いつもなら1週間ぐらい持つはずの集中力が3日で焼き切れて、いったん休憩~、になったりする。
 PCからふっと顔を上げる。
 街中にいる、一見、普通に働いてみせてる大人たちも、もしかしたらみんなこんな状態なのかなぁ、とふと考える。
 昼に小説を書いて、夜に本を一冊読む、というサイクルが乱れてるせいかもしれないな。ともかく粛々と働く。
 余震が続いてるせいか、PCもプリンタもFAXもずっと不調だ。なにかあって書きかけの原稿が消えたらと思うと心配なので、一章ぶん上がるたびに、K子女史にメールで送ることにした。
 ――夜。
 つい先日、読めなかった『人質の朗読会』をおそるおそる手に取ったら、途端に乗り物に乗って夜空を走りだしたみたいに、するするっ、と、急に無事に走りだした。
 いなくなってしまった8人の人質たちが、生前、物語に変えて互いについて語りあった録音テープが残っていて、それが8篇の短編として収められている、というお話。アルファベット型ビスケットの工場で、奇形のビスケットを省く仕事をする主人公と、不可思議な大家の交流を描く「やまびこビスケット」。受験戦士の男子中学生が、路上でぬいぐるみを売る謎の老人を背負って走ることになる「冬眠中のヤマネ」。危機言語と呼ばれる絶滅寸前の言語を知る人たちが集まって静かに語りあう「B談話室」……。
 緊張して固まってた心が、すこしずつだけど、柔らかくなってるみたいだ。
 一編読むたびに、休んで、また読んだ。心は小説を喜んでこっそりしっぽを振ってるけど、体はずっと夜空に浮かんでるようだ。なんかまだふわふわしてるなー。
 がんばっても、一冊読み切ることができなくって、途中で休もうと思って本を一度おいたら、そのまま、ぐぅ……。
 あれ……。
 寝ちゃった……。



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