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    <title>桜庭一樹読書日記｜Webミステリーズ！</title>
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    <updated>2012-01-06T06:16:51Z</updated>
    <subtitle>ミステリ・ＳＦ・ファンタジー・ホラーの専門出版社・東京創元社が配信する月刊Webマガジン</subtitle>


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    <title>またまた桜庭一樹読書日記　【第18回】（最終回）［2012年1月］</title>
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    <published>2012-01-06T02:00:06Z</published>
    <updated>2012-01-06T06:16:51Z</updated>

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        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webmysteries.jp/">


   
      
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle">
<img height="239" alt="ドラゴンヘッド" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1201.jpg" width="320" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tr>
<td align="center"><font color="#000000" size="1"><b>【ドラゴンヘッド】</b>久しぶりに再読……。七巻のこの黒いとこがやっぱりすごくこわかった。（桜庭撮影）</b></font></td></tr></tbody></table></td></tr>

<tr>
<td><br />
<font size="3"><b>12月某日</b></font><br /><br />
<b>
「まわりを見てみろッ!!　こんな闇の中にいてどうやったらわかるんだ!?　テレビも新聞も何もねえんだぜッ!!<br />
　人間なんてのは自分の目以外に頼るもんがなかったら　隣の家や部屋で何が起きたかって程度のことさえわからねえような存在なんだぜッ<br />
　本来　俺たちにゃテレビとかに頼らずに数万キロも離れた先での出来事を知るなんてこたあ不可能なんだッ（略）<br />
　俺たちゃものごとを本当に判断するにはあまりにも小せえ存在なんだよッ<br />
<br />
　無力なんだよ」<br />
<br />
　僕は見たいんだッ!!<br />
　自分のこの目で<br />
　この闇の奥でなにが起こってるのかを……ッ!!<br />
　この恐ろしい出来事の正体を<br /></b></font></p>
<br /><div align="right"><font size="3">――『ドラゴンヘッド』</font></div><br />
</td></tr>
<tr>
<td><font size="3">
<br /><blockquote>
Ｍ宅氏「ぼくのこと“男祭り”って言いましたね？」<br />
わたし「えっ……（ガシャン！）。い、言ってないですよ、やだなぁ、もう……（と、テーブルを拭き拭き）」<br />
Ｍ宅氏「いーや、言った！　あなたは言った！（と、煙草を吸う）」<br />
</blockquote><br />
　年の瀬も迫った、すごい寒波の日。<br />
　雨がいまにも雪に変わりそうな夕方。新居近くの駅前にある喫茶店に、角川書店の<strong>〈野性時代〉</strong>編集長、Ｍ宅氏がきてくれた。<br />
　先日、Ｋ子女史と話して、つぎの長編作品を角川書店で書こうとしてて、じゃ、<strong>〈野性時代〉</strong>の連載にしましょうかということになったのだ。で、その打ち合わせのはず……なんだけど……。<br />
　のっけから、件のＫ子女史と話してた「Ｍ宅氏が編集長になってから、誌面がグッと渋く男っぽくなりましたよね」「そういえばそうですね～」「男祭りですよね」という会話が筒抜けだったらしく、本人から叱られて（？）いる。<br />
<br /><blockquote>
わたし「（しぶしぶ）確かに、言いましたけど……。でもね、それはあくまでも……陰で言ったんですよ！」<br />
Ｍ宅氏「わはは」<br />
</blockquote><br />
　冷汗を拭く。Ｋ子女史め……。（尾ひれもついて伝わってるかもしれないけど、こわくて聞けない……）<br />
　それから、気を取り直して（？）、新居の話とかになった。相変わらず、本が多いし部屋に並べると圧迫感があるので、廊下にズラッと本棚を置いてるんですよ、と話す。廊下を計ってピッタリサイズの本棚を買ったと話してたら、とある作家さんの新居の話にもなった。<br />
<br /><blockquote>
Ｍ宅氏「こうこう、こうなってて、リビングの壁一面が本棚になってましたよ。で、本がビッシリと……」<br />
わたし「いいなぁ。それもやってみたいですね」<br />
Ｍ宅氏「で、こないだね、編集者で連れだって、その新居にお邪魔したんですよ。それでその夜、Ｇ司が血まみれになったんです」<br />
わたし「へぇ、Ｇ司さんが……。エッ、なんですか、いま“血まみれ”って言ったような気が……」<br />
Ｍ宅氏「そう」<br />
</blockquote><br />
　うなずいている。真顔だ。<br />
<br /><blockquote>
Ｍ宅氏「Ｇ司は料理もうまいんで、ぼくがツマミを作りますよって、颯爽とキッチンに入っていったんですよ。そして、数秒後。片腕を高く掲げて、黙って、すぐにキッチンから出てきたんです。おやっ、どうして挙手してるのかなと思って、腕を見上げたら……」<br />
わたし「……」<br />
Ｍ宅氏「手からダラダラと、真っ赤な血が……」<br />
わたし「し、新居で、流血……」<br />
</blockquote><br />
　と、思い浮かべてみる。ちょっとこわい、かも……。<br />
<br /><blockquote>
Ｍ宅氏「しかし、惨劇はそれだけでは終わらなかったんです」<br />
わたし「えっ、まだあるんですか？　き、聞きたいような、聞くのが怖いような……」<br />
Ｍ宅氏「ほら、ゴロゴロがついてて、両腕でつかんで、腕たて伏せのポーズみたいにして前方に向かってゴローンとやっていく、上半身の筋力を鍛える器具みたいなの、あるでしょ。リビングであれをみつけたＳ戸が、ぼくこれできますって言って、つかんでうつぶせになってゴローンとやったら、確かに最初はできてたんですけど、酔ってるし、最後のところでツルリと滑って……。床で額を強打したんです」<br />
わたし「それはいたい！」<br />
Ｍ宅氏「そしたら、額がパックリ割れて、お酒を飲んでたから血行もよかったみたいで、Ｓ戸もダラダラと流血し始めたんです」<br />
わたし「新居で、むくつけき男たちが、流血……（←と、つい怪我人より引っ越したばかりの作家の気持ちに）」<br />
Ｍ宅氏「しかし、惨劇はそれだけでは終わらなかったんです」<br />
わたし「なにっ、まだあるんですか!?」<br />
Ｍ宅氏「それを見てたらですね、ぼくも、ムラムラと、酔ってはいるが自分にならできるという気がしてきて……」<br />
わたし「エッ、まさか。……でも、Ｍ宅さんって、そういやそういうとこありますよね。確か前もＧ司さんのあいふぉんで……（小声）」<br />
Ｍ宅氏「（聞いてない）で、交代して、はりきってやってみたんですよ。やってみたことないけど。そしたら、途中まではいけそうなんだけど、あれって後半、急にツルンと滑っていくんですよ。ぼくも、新居の床で額を強打して……。で、やっぱり飲んでて血行がすこぶるよくて。額からダラダラと血が……」<br />
</blockquote><br />
　男三人（しかも全員、出版社のかなりえらい人）がつぎつぎ流血し始めた、小説家の新居の夜を、黙って思い浮かべてみる。<br />
　で、ここは言ってやる、と思って、こぶしを握り、<br />
<br /><blockquote>
わたし「“男祭り”で正解じゃないですか！　なんという世界観だッ！　<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4253053092/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4253053092" target="blank">『バキ』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4253053092" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>みたいぢゃないかっ！」<br />
Ｍ宅氏「わはは（←真顔タイム、終わり）」<br />
</blockquote><br />
　まぁ、それはともかく……。<br />
　連載の打ち合わせもちゃんとする。年が明けてからで、ちょうど一〇〇号記念の月があるから、まにあったらそこから始められるといいんだけど、とか……。<br />
　で、帰り際。立ちあがったＭ宅氏をしみじみと見る。<br />
　黒いハイネックのセーターにグレーの細身のパンツ、しゃれた黒革の靴。背が高くてシュッとしてて、やっぱりイケメン編集長だ。愛読書はヘミングウェイで、誌面作りは男っぽく渋い。でもその割に、口を開くと<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4063619362/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4063619362" target="blank">『ゴリラーマン』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4063619362" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>を一気読みした話とか、額が割れた話とか……。ウーン……？と思いながらも、打ち合わせも無事に終えて店を出る。<br />
　と、雨の中を、サイレンを鳴らしながら救急車が走ってきた。で、さっき喫茶店に入ったとき、ほら、ここから見えるあのパン屋、すごく美味しいんですよー、とわたしが指差したパン屋の前に、なぜか停まった。それを見たＭ宅氏が、長い足でもって小学生のように飛びあがって「アッ、桜庭さんが好きなあのパン屋で、誰か倒れましたよ！」と指さす。ウーン……。<br />
　傘をさして、救急車を横目で見ながら、うちに帰った。<br />
　そろそろつぎの物語の準備だ……。<br />
　と、次第に心の中にも雨が降ってくる。<br />
　春に<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4087714020/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4087714020" target="blank">『ばらばら死体の夜』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4087714020" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>新刊インタビューで、榎本正樹さんに指摘されて、初めて気づいたことがある。これまでの作品を順番に見ると、どうやら自分は長編を書きながらどこかを目指しているらしい。一つ一つ違う作品だけど、繋がってる部分がある。<br />
　まず女の子が死んだ。つぎの子は、一心同体だった父親と分かれて、でも相手が死んだかどうかはわからなくて、そのつぎには一心同体だった母親が消えて（でも死んだかどうかはやっぱりわからなくて）、さらにつぎに、ばらばら死体にして逃げたところだ。この後に出す<strong>『傷痕』</strong>は、日本版のキング・オブ・ポップを国中で力を合わせて葬るお話だ。「つまり、ばらばら死体にまでしたけど、それはまだ死んでないってことですね」という指摘で、自分がなにかを葬ろうとして、書いては、また蘇ったそれを埋めようとしてるらしいと気づいた。主人公に殺人者が多いことも、いままでインタビューでどうしてですかと聞かれて答えられなかったけど、ようやく見えてきたような気がする。<br />
　それで、いま書こうとしてるのは、お祈りしすぎちゃってとうとう死者が蘇ってくるお話だ。<br />
　……まだ、“それ”を殺せてないのかな。<br />
　この戦いが、続くのかな。<br />
　そして、あるときふっと成功したら、もう書かなくてもすむようになるんだろうか。それとも“それ”はけっして死なないように、あらかじめ丈夫にできてるのかな……。<br />
　なんてことを考えながら、帰った。この日の打ち合わせが年内最後で、後はもう、誰にも会わずに執筆だけをする予定だ。帰り道の途中からもう、歩きながら、小説の世界にズブズブ沈んでいった。<br />
　帰宅して、夜。<br />
　十年以上ぶりだけど、急に読みたくなって買ってきた<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/406323519X/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=406323519X" target="blank">『ドラゴンヘッド』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=406323519X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>全巻を床に積んで、一気に読んだ。<br />
　こんな恐ろしい設定の話、今年の春や夏ならぜったい読み返したくなかっただろうな、と思うけど、なんだかもう一度あの道行きを行きたくなったのだ。<br />
　列島を覆ったとつぜんの闇。<br />
　助けあう人たちと、自我を爆発させる弱者、カルトに走る集団。闇に飲みこまれるか、それともその奥に、変わらぬ自分を再びみつけることができるか……？<br />
　リアルタイムで読んでたあのときより、“危機に陥ったときの人間”を恐れずに読んでいる気がした。闇を進む主人公と一緒にゆっくりと彷徨い始めた。<br /></font> 
<br /></div>
<div align="right"><font size="3">（2012年1月）</font></div></td></tr>
</font></td></tr></tbody></table><br />
<hr color="gray" size="1">
<div style="FLOAT: right; WIDTH: 150px"><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024680"><img height="203" alt="本に埋もれて暮らしたい" hspace="12" src="http://www.tsogen.co.jp/img/cover_image_m/2468.jpg" width="138" vspace="10" border="1" /> 
<div style="TEXT-ALIGN: center"><img height="18" alt="書籍の詳細を見る" src="http://www.webmysteries.jp/images/shosekishosai.jpg" width="100" border="0" /></div></a></div><font color="navy" size="2">■ <b>桜庭一樹</b>（さくらば・かずき）</font><br /><font size="2">1999年「夜空に、満天の星」（『AD2015隔離都市　ロンリネス・ガーディアン』と改題して刊行）で第1回ファミ通えんため大賞に佳作入選。以降、ゲームなどのノベライズと並行してオリジナル小説を発表。2003年開始の〈GOSICK〉シリーズで多くの読者を獲得し、さらに04年に発表した『推定少女』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が高く評価される。05年に刊行した<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488472016">『少女には向かない職業』</a>は、初の一般向け作品として注目を集めた。“初期の代表作”とされる<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488472023">『赤朽葉家の伝説』</a>で、07年、第60回日本推理作家協会賞を受賞。08年、『私の男』で第138回直木賞を受賞。著作は他に『荒野』『ファミリーポートレイト』<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024505">『製鉄天使』</a>『道徳という名の少年』『伏－贋作・里見八犬伝－』、エッセイ集<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488070649">『少年になり、本を買うのだ　桜庭一樹読書日記』</a><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488070663">『書店はタイムマシーン　桜庭一樹読書日記』</a><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024529">『お好みの本、入荷しました　桜庭一樹読書日記』</a><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024680">『本に埋もれて暮らしたい　桜庭一樹読書日記』</a>など多数。</font></td></tr></tbody></table>

<br />

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<br />
<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/searchresult.html?mgen_id=134" target="_blank">本格ミステリの専門出版社｜東京創元社</a><span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"></span>]]>
        
      
    


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    <title>またまた桜庭一樹読書日記　【第17回】（1/2）［2011年12月］</title>
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    <id>tag:www.webmysteries.jp,2011://6.1261</id>

    <published>2011-12-05T02:49:01Z</published>
    <updated>2011-12-05T04:08:59Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webmysteries.jp/">


   
      
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle">
<img height="317" alt="迷探偵の推理メモ" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1112.jpg" width="237" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tr>
<td align="center"><font color="#000000" size="1"><b>【迷探偵の推理メモ】</b>こんな謎メモを４、５枚、持参……。（桜庭撮影）</b></font></td></tr></tbody></table></td></tr>

<tr>
<td><br />
<font size="3"><b>11月某日</b></font><br /><br />
<b>
　夜中になって、ふたりは街をよこぎって家にかえった。子ども時代のたくさんの思い出がつぎつぎとうかんできた。ずいぶんとむかしの話だ。しかしすべてここでおきたことだった。今夜歩いているこの通りでの話だ。二十年まえに、いっしょに学んだ仲間はどうしているだろう。その後をしっている者もいるが、ほかはどうなったのだろう。ふたりの頭上では星がかがやいていた。あのころとおなじ星だ。<br />
<br />
「涙は絶対禁止！　涙は絶対禁止！」<br /></b></font></p>
<br /><div align="right"><font size="3">――『飛ぶ教室』</font></div><br />
</td></tr>
<tr>
<td><font size="3">
　新しい部屋の生活にも、だいぶ慣れてきた！<br />
　前のところは、日が射さなくって昼間でも薄暗かったので、日当たり優先で新居を探したのだけど、どうもそれがよかったみたいだ。体調もすこぶるいい。あ、そうだ……。確か作家さんで二人、「日当たりのいい部屋に引っ越したら、とたんに朝型になった」「作風も明るくなった」と言ってた方がいて、ずっと気になってたんだよなー。<br />
<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4044281068/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4044281068" target="blank">『GOSICK』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4044281068" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>の後、<strong>『傷痕』</strong>も無事に書き終わって、ようやくののんびり充電月間である。とはいえ、そういう時期は身軽になって、ハッと気づくと、けっこういろいろ引き受けているものだ……。<br />
　で、この日は日帰りで京都に行って、<a href="http://fes.storyville.jp/" target="blank">京都造形芸術大学での朗読とトークのイベント</a>に出た。司会が新元良一さんで、あと柴田元幸さん、デニス・ジョンソン、リン・ティルマン出演だった。<br />
　作家の自作朗読って、外国の映画とかでときどき見るけど、日本ではあまり聞かないなぁ。聞いてるぶんにはかなり面白い（自分がするのは大変……。口からたちまちエクトプラズマが……）。<br />
　イベントが終わった後、控室で、朗読の話題から〈声〉の話になった。デニスとリンは小説を書くときにたった一つの〈ヴォイス〉が降りてくるのを待つ、と語ったけど、そういえば日本の作家からそう聞くことは少ない。もしかしたら、それは彼らが一神教で、日常的に〈神とわたしの一対一の対話〉をしているからじゃないか、という話だった（たしか……）。<br />
　むむ。そう聞くと、さっきのイベントのときにお客さんから質問されて、わたしが訥々と答えた「えぇと、空中に無数の〈声〉があって、でも作品ごとにピッタリのものがちがうので、毎回、正しい〈声〉の主を探します。で、それを間違えるとうまく書き進められないので、えーと、最初にもどって、〈声〉探しからやり直して……」は、日本っぽい……八百万の神っぽい発想なのかな、とも思った。<br />
　お客さんの質問を聞いてると、作家たちが〈声〉というからどうもわかりづらくて、登場人物の〈台詞〉とごっちゃになりがちなんだけど、じつはそうじゃない。うーんと……。つまり……。〈文体〉に近い。書いているときは、地の文が音楽のように聞こえてて、台詞のところは逆によく聞こえないのだ。だから、アニメ化されて「声優さんの声のイメージは合ってますか？」と聞かれると、ほんとはわからない（聞いたことがないから）。声優さんたちの解釈を受けて、「なるほどなー。うまい！」と感心して納得する、という感じだ。<br />
　いつものように本好きの人たちがたくさんいる空間だったけど、普段、読んで接してるところとは微妙に空気が違って（京都だけどどことなくニューヨークの匂いがした）、小説の世界ってほんっと広くて面白いなーと思いながら、また東京に帰ってきた。<br />
　新幹線の中で、出かけるときにワサワサと鞄に放りこんだ、でっかい文字の児童文学<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4334751059/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4334751059" target="blank">『飛ぶ教室』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4334751059" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>を開いた。先月、ツヴァイクを読んだ後で急に気になり始めて<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4001140608/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4001140608" target="blank">『点子ちゃんとアントン』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4001140608" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4001141388/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4001141388" target="blank">『ふたりのロッテ』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4001141388" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4001140187/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4001140187" target="blank">『エーミールと探偵たち』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4001140187" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>と読み進めているところなのだ。<br />
　クリスマス休暇を控えたギムナジウム。舞台劇の稽古をする少年たち。それぞれの個性。二人の大人。――ギムナジウム物をいろいろ思いだして、これが原点だったのか、逆の順番で読んじゃった、と思った。そういやアントンを読んだときも<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4891768703/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4891768703" target="blank">『地下鉄のザジ』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4891768703" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>や<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B003UTHU92/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B003UTHU92" target="blank">『アメリ』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=B003UTHU92" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>を連想したんだった……。いろんなものに影響を与えてる木の幹みたいな作家なのかもしれない……。<br />
　読みながら、ときどき顔を上げて、窓の外を見た。<br />
　京都かぁ……。<br />
　ふっと、これからいろんな土地に住んで、移動して、書いてみたいなぁと思った。どこにも根を下ろしたくないなぁ。窓の外を、景色が過去の雪に溶けるように行き過ぎていく。<br />
</font></td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
<li><a class="current" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba1112-1.html">1</a></li>
<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba1112-2.html">2</a></li>
</ul>
<br />

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    <title>またまた桜庭一樹読書日記　【第16回】（1/3）［2011年11月］</title>
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    <id>tag:www.webmysteries.jp,2011://6.1229</id>

    <published>2011-11-07T02:03:01Z</published>
    <updated>2011-11-07T07:47:46Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webmysteries.jp/">


   
      
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle">
<img height="317" alt="女の上がりは……" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1111.jpg" width="237" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tr>
<td align="center"><font color="#000000" size="1"><b>【女の上がりは……】</b>薙刀Ｆ嬢の新作イラストをいただく。「女の上がりは銅像」というのは、本人の発言……らしい（未確認……）。せっかくなので新居の本棚の前で撮影。（桜庭撮影）</b></font></td></tr></tbody></table></td></tr>

<tr>
<td><br />
<font size="3"><b>10月13日</b></font><br /><br />
<b>
「悪は善なしでは生きられないんだよ」<br />
<br />
「あなた、すごくおもしろいんですのよ。その娘はいろんな人形たちとおしゃべりするんですけど、その陰には一人の男がいるわけでしょ。それがまた幻の男で、だれも姿を見たことがないんですよ。きっと気違いみたいにその娘を愛してるんでしょうね。（略）」<br /></b></font></p>
<br /><div align="right"><font size="3">――『七つの人形の恋物語』</font></div><br />
</td></tr>
<tr>
<td><font size="3">
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「ぼくのドＳって、イギリスのドＳだと思うんですよねぇ……（真顔）」<br />
わたし「イギリス？」<br />
Ｆ嬢　「イギリス？」<br />
</blockquote><br />
　飯田橋のイタリアンのお店である。<br />
　引越のどたばたも片付いて、<strong>『傷痕』</strong>の単行本用の改稿作業もようやく終わって、いつになくのんびりしている。で、今日は三人でごはんである。<br />
　お酒を選びながらフンフンと聞いていると、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「ジーヴス執事に似てるとは、前から言われてましたけど、さいきん、メリー・ポピンズにそっくりだとも言われたんですよ」<br />
わたし「ホントだ、似てる……！　確かにＫ島さんのドＳは開拓者のドＳじゃないですものね。なるほど、イギリスかぁ」<br />
</blockquote><br />
　感心して、うなずく。ワインを頼みながら、チムチムチェリ……チムチムチェリ……私は～、煙突の～、掃除屋さん～、という歌とともに、コウモリ傘を広げて、本を抱えてフワリフワリと飛んでくるＫ島氏を思い浮かべる。<br />
　違和感は、ない……。<br />
　と、屋根に着地して、いそいそとコウモリ傘をたたみながら、Ｋ島氏がふと思いだしたように、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「イギリスと言えば、桜庭さん、昔、チャーチル元首相の本読んでませんでしたっけ？　<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4044281068/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4044281068" target="blank">『GOSICK』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4044281068" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>の資料とかで」<br />
わたし「あぁ、<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4309462138/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4309462138" target="blank">『第二次世界大戦』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4309462138" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>ですかね。懐かしい～。あれ、面白かったなぁ！　とつぜんセンチメンタルで、独特で」<br />
Ｋ島氏「まぁ、ノーベル文学賞ですからねぇ」<br />
わたし「えぇ。……は？　なに！？」<br />
Ｆ嬢　「しっ、知らずに読んでたんですかっ」<br />
</blockquote><br />
　し、知らなかった……。ほんとに……。<br />
　ときどき、すごいことを知らないまま一冊読み終わっちゃって、しかもそのまま生き続けてることがある……。<br />
　と、びっくりしながら帰ってきた。<br />
　この夜は、お風呂で中崎タツヤのエッセイ<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4864100497/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4864100497" target="blank">『もたない男』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4864100497" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>を読んで、出てきてから、最近、再読ブーム中のポール・ギャリコを手に取った。昨夜は<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4102168028/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4102168028" target="blank">『スノーグース』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4102168028" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>で、今夜は<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4042404049/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4042404049" target="blank">『七つの人形の恋物語』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4042404049" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>だ。<br />
　数日前、矢川澄子訳のギャリコをっ、と近所の本屋さんに探しに行ったら、1980年代から90年代に出た本ばかりなのに、書店員さんが「あぁ、ギャリコの単行本だったら、なくなるとまた補充されて棚ざしになってるから、今日もあると思いますよー。……ほら、あった！」「わっ、ホントだ！」と、意外とすぐにみつかった。<br />
　所はパリ。セーヌ河に身投げしようとしていたみっともない痩せっぽちの少女ムーシュは、７体もの不思議な人形たちに話しかけられて、彼らの人形劇団とともに旅することになる。が、優しく個性豊かな人形たちを陰で操る人形遣いミシェルは、そうとうひどい男で、これでもかとムーシュを虐め倒すのだった……。<br />
　少女の成長物語という少女小説っぽさと、苦しみから生まれた多重人格を統合するという心理小説っぽさと、非道な男がじつはヒロインを愛していて、愛の成就によって救済されるというロマンス小説が同時に入ってて、なんだか、この物語自体が多重人格みたいだ。確か小学校の高学年のころに読んで、「？」と、面白いけど解釈しづらかった理由は、それかな……。<br />
　少女小説（少女が自分なりの指針を持って誇り高く生きるが、事件や人との関わりで変化もし、成長する。<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/410211341X/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=410211341X" target="blank">『赤毛のアン』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=410211341X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>とか）と、ロマンス小説（女が自分を肯定してくれる存在と出逢って救われる。<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4863320132/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4863320132" target="blank">『トワイライト』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4863320132" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>とか）は、ベクトルが違うものだ。それを同時にフンガッと成立させた、当時のギャリコの書き手としての腕力と、魅力の元でもあるあの正体不明の混沌、ときどき未整理で投げだされたままになるなにかを思いながら、酔ってるし……ばたっと寝た。<br />
</font></td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
<li><a class="current" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba1111-1.html">1</a></li>
<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba1111-2.html">2</a></li>
<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba1111-3.html">3</a></li>
</ul>
<br />

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    <title>またまた桜庭一樹読書日記　【第15回】（1/3）［2011年10月］</title>
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    <published>2011-10-05T05:31:14Z</published>
    <updated>2011-10-04T09:24:21Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle">
<img height="317" alt="類は友を呼ぶ……" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1110.jpg" width="237" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tr>
<td align="center"><font color="#000000" size="1"><b>【類は友を呼ぶ……】</b>恐ろしげな本には、同じオーラの本と一箇所に固まりたがる性質が……？（桜庭撮影）</b></font></td></tr></tbody></table></td></tr>

<tr>
<td><br />
<font size="3"><b>９月某日</b></font><br /><br />
<b>
　そうか<br />
　数千の天使を殺さないと<br />
　大きな橋が目に見えてこないのか<br />
　真昼の世界と<br />
　影の世界を<br />
　つなぐ<br />
　大きな橋<br />
<br />
　ぼくは遊びに行かなくちゃ<br />
　数千の天使を殺し<br />
　数千の天使を殺してから<br /></b></font></p>
<br /><div align="right"><font size="3">――『誤解』</font></div><br />
<br />
<b>
「私をこんな運命に連れこんだのはあなたです」須賀の瞳が憎しみを込めて訴えているのを倫は知っている。<br /></b></font></p>
<br /><div align="right"><font size="3">――『女坂』</font></div><br />
</td></tr>
<tr>
<td><font size="3">
　お昼に起きて、仕事して、夕方。女性誌のインタビューがあるので、出かけた。<br />
　じつは、ようやく仕事に余裕が出てきたので、念願の引越を計画してて、それがなんと翌日なんだけど……。天まで届けと本が積みあがる部屋（洋服は段ボール二箱なのに……）にげっちょりしてきて、なかば逃げるように出かけた。<br />
　とはいえ、行く先もまた本屋である。中目黒の「カウ・ブックス」。<strong>〈暮しの手帖〉</strong>の現編集長、松浦弥太郎さんのお店らしい。<br />
　広めのワンルームぐらいの店内は、四方の壁が天井まで本棚になってて、真ん中には大テーブルがひとつ。ほんとは洒落てる本屋さんがちょっと苦手なんだけど（本屋は泥臭くて中身みっしり詰まってるのが好きだ……）、この店は松浦さんの好きな本を置いてるのか、知らない人の脳内の知識の襞に迷いこんだようで、楽しい。みっしり。ちょっと年上の、男の人の本棚かなぁと思いながら探索してて、帰り、腕が肩からもげるほどたくさん買ってしまった。<br />
　レジのお兄さんに、買った中の一冊、田村隆一の詩集<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000J8RP88/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B000J8RP88" target="blank">『誤解』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=B000J8RP88" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>について「田村さんは早川書房で編集者もされてたんですよ」と教えてもらって、びっくりする。「えぇ、ホント！？」「ミステリの翻訳もされてたし。ほら、こっちの本（ロアルド・ダールの<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150712557/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150712557" target="blank">『オズワルド叔父さん』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4150712557" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>の単行本版も買った）の訳者……」「あっ、田村さんだ。むむ、詩情とミステリの人だったのか……」<br />
　お店を出て、インタビュアーさんとわかれて、付添いの創元Ｓ嬢と新宿に向かった。紀伊國屋書店新宿本店の一階で、Ｋ島氏と待ち合わせ。Ｓ嬢は入れ替わりに会社に帰っていった。<br />
　伊勢丹のレストラン街で洋食を食べよう、という話になり、Ｋ島氏と歩きだす。わたしが大荷物なので「ずいぶん重そうですね。半分持ちましょうか」「いやだっ！」「あぁ、またこのパターンか。ある意味めんどくさい……」ともめながらお店に入った。<br />
　わたしは引っ越しの準備で、Ｋ島氏は編集作業で忙しくて、どちらもお腹が空いている。がっつりお肉を食べたい、ということで、ステーキサラダ、鳥の唐揚げ、羊のロースト、牛サーロインステーキ、チーズと無花果のピザ、巨峰アイスを頼んだ。モリモリ食べる。<br />
<br /><blockquote>
わたし「あぁ！」<br />
Ｋ島氏「どうしました？　もぐもぐ」<br />
わたし「日本のシートン（かな？）、椋鳩十の古本、買い忘れた！　最初にみつけて、見失わないようにって棚から二センチぐらい出しておいたのに……。こんなに買ったのに、本命を……。いや、独り言です。あぁもう、しまった……」<br />
Ｋ島氏「ふーん？　それより桜庭さん、お腹いっぱいになってきたら残していいですよ。ぼくが片付けますから。（……ふと）あれっ、もしかしてこんな言い方をすると？」<br />
わたし「お腹いっぱいなんかじゃありません。わたしはまだまだ食べられます。そんなに食が細くなってるなんて誤解されるのは心外ですよ。もぐもぐ、もぐもぐ」<br />
Ｋ島氏「じゃあ……『食べろっ！』と言ったら？　……あぁ、やっぱり食べるのか。あきらかにもうお腹いっぱいの顔なのに。どう言っても、反応がひとつしかないなんてー。ある意味、面倒くさいー」<br />
わたし「………（もぐもぐもぐ……）」<br />
</blockquote><br />
　来年の刊行予定とか、いま持ってる原稿のことなどを聞く。相変わらず忙しそうだ……。わたしのほうは<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4044281068/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4044281068" target="blank">『GOSICK』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4044281068" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>のばたばたも終わって、ようやく長編<strong>『傷痕』</strong>の連載も終わるところで、ずっとしたかった引越もとうとうできそうで、ようやく一段落だ。<br />
　帰宅して、撮影のときにされた化粧を落として（彫りが浅くなった）、お風呂で、買ってきた<strong>〈ぱふ〉</strong>1979年５月号をぱらぱらした。20年以上前の大島弓子のインタビュー記事がお目当てだったんだけど、べつの記事でも、寺山修司がじつは萩尾望都を愛読してたとわかったりして面白かった。<br />
　で、お風呂を出てから、読みかけの円地文子<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4101127026/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4101127026" target="blank">『女坂』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4101127026" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>を手に取った。<br />
　明治初期、夫の行友の妾をスカウトするため、一人で上京した良家の奥様、倫さん。須賀というかわいい女の子をみつけて屋敷に連れ帰ると、夫は大喜び。だがしばらくすると、夫が自分でみつけてきた二人目の妾、由美もやってきた。あれっ……。須賀と由美がたちまち仲良しに。そして月日は経ち、夫が長男の嫁の美代ともワケアリになったり、でも長男がボーッとしてていっこうに気づかなかったり、由美が使用人と所帯を持って屋敷を出ていったり、わっ、美代が急に倒れたり……。<br />
　お昼のメロドラマみたいなジェットコースター的展開と、はっとさせる文学的な語りが忙しく混在してて、エンタメとも純文学ともつかないんだけど、ラスト近くになって……。倫さんが病気でもう長くないとわかったときに、幼かった自分を妾にスカウトしやがった倫さんをずっと恨みながらも、ひたすら従順に、無気力に生きのびてきた須賀が、<br />
<br />
<strong>「旦那さま、（略）奥さまの御容態いかがなのでございます」<br />
「いかんそうだ」<br />
「まあ、どうしてでございます？」<br />
　うすぐらい中で須賀は膝をすりよせて斜め横から行友の顔をみつめた。行友は須賀の顔に眼を移して、何かに驚かされたように顔を背けた。<br />
「そんなことはございますまい。あんなお丈夫な奥さまが……そんな、そんな……」</strong><br />
<br />
　と、悪鬼のように笑う（とは書いてないけど）。<br />
　書かれていない、この顔が、きっと竹中直人の「笑いながら怒る人」みたいなことになってたんだろう、心配だって言いながら破顔したな、なんて恐ろしくって素晴らしいシーンなんだ、とフルフルしながら、ふっと西村賢太<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4101312818/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4101312818" target="blank">『暗渠の宿』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4101312818" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>のラストシーンを思いだした。あれもまた、見知ったはずの善良な女の顔に、瞬間、本音という、得体のしれぬ悪鬼が宿ってしまう（とは書いてないけど）話だった。<br />
　文学……。と思いながら、本を閉じて、寝た。<br />
</font></td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
<li><a class="current" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba1110-1.html">1</a></li>
<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba1110-2.html">2</a></li>
<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba1110-3.html">3</a></li>
</ul>
<br />

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<entry>
    <title>またまた桜庭一樹読書日記　【第14回】［2011年9月］</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba1109.html" />
    <id>tag:www.webmysteries.jp,2011://6.1165</id>

    <published>2011-09-05T04:01:20Z</published>
    <updated>2011-09-12T02:25:03Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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        <![CDATA[<p>＜PR＞<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024680" target="_blank"><strong>読書日記第４弾『本に埋もれて暮らしたい』発売中</strong>【ここをクリック】</a><br /></p>
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle">
<img height="328" alt="犬" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1109.JPG" width="244" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【犬】</b>引き続き犬がいます……。（桜庭撮影）</font></td></tr></tbody></table></td></tr>
<tr>
<td><br />
<font size="3"><b>８月某日</b></font><br /><br />
<p><font size="3"><b>「悪いのよ！　もうわたしたちの顔がわからないの……壁紙のぶどうの葉が緑色の鳩に見えるなんていうこともいわなくなったのよ……いつものベスの面影がなくなったわ……そしてだれもわたしにこのつらさを忍ぶ力を与えてくれる人がいないのよ。かアさんもおとうさまもいらっしゃらないし、神さまだって遠くへ行ってしまって、見付からなくなってしまったわ」<br />
　哀れジョーのほおには涙が滝のように流れてくるのであった。<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『若草物語』</font></div><br />
<br />
<p><font size="3"><b>「チェット、いっそマジでばかになろうぜ」<br />
　ぼくは大賛成だった。<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『ぼくの名はチェット』</font></div><br />
<br />
</td></tr>
<tr>
<td><font size="3">
　知らないあいだに、あれ、もうお盆休みである。<br />
　缶詰になって原稿を書き続けるのが終わって、でも走り続けたせいで急に止まれなくて、ジョギングのクールダウン的に、エッセイを片付けたりと働いてるうちに、ふぅっ……と、灯りが消えるように、辺りが静かになった。<br />
　で、とくに予定もないので、のんびり仕事したり、ゴロゴロしたりしている。<br />
　先月末の「<a href="http://www.tsogen.co.jp/tanpensho/index.html">ミステリーズ！新人賞</a>」選考会で犬の話をしたら、後日、Ｉ垣女史が<strong><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488013271">『ぼくの名はチェット』</a></strong>を送ってくださった。探偵の飼う大型犬チェットが語り手のライトミステリーで、犬の描写（人間より理性的で頼りになると思うと、あれっ……自分でも知らないうちにバウバウ吼えてたり、意識がおやつに飛ぶ）が愛ある面白さだ。これはいいなー、と床に寝転んで、にやにや読んでいた。<br />
　と……。<br />
<br /><blockquote>
わたし「クシュン！」<br />
――ゴンッ！<br />
</blockquote><br />
　部屋の隅、エアコンの風がちょうど当たる位置で同じくゴロゴロしていた小型犬が、人間のクシャミにおどろいて振りむこうとして……鼻先を壁に打ちつけた瞬間を、確かに見た。ちいさな頭がぼぅんっとはねかえって見えるほど、思い切りの失敗だった。<br />
　……細い背中が、恥じている。<br />
　いまのは見なかったことにしておいて、<strong>『ぼくの名はチェット』</strong>にもどった。うわ、チェットのほうはドゥンッと車にはねられたぞ。大丈夫か……？<br />
　しかし、と考え始める。犬が自分の鼻の長さを忘れるなんてことがあるのか？　そういえば、トイレの位置もすぐ覚えたけど、前足をトイレの真ん中に踏ん張って、ドヤ顔で、ぷりぷりぷりっ……と、いつもトイレからはみだして気づかない。鼻だけじゃなく、胴の長さもわからないのかな。むー、あれ、こんな話、昔どこかで読んだな……と本を床に置いて考える。<br />
　小学生のころに読んだポール・ギャリコの<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/410216801X/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=410216801X" target="blank">『ジェニィ』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=410216801X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>だ。急に体が猫になっちゃった男の子の、猫世界での冒険譚。まず祖母が読んで、面白かったからと貸してくれたのだ。<br />
　じーっと犬の後ろ頭を見る。<br />
　もしやまだ犬の体に慣れないのか？　獣医さんによると「こりゃ歯が若いな、さてはまだ１歳前後だぞ」とのことだったけど……。<br />
　本を途中までにして、近所の喫茶店に行って、仕事の続きをちゃちゃっとした。隣のテーブルで４、５０歳の男女グループが、昼間からビールを飲みながら熱心にしゃべっていた。<br />
<br /><blockquote>
女性「象って、１日200万円で借りられるのよ」<br />
男性「象？」<br />
女性「市川に象センターがあるのよね。わたし知ってるの。盛りあがるわよー。パーティーに象がきたら！　ねっ？」<br />
男性「ウーン……」<br />
</blockquote><br />
　なんのパーティーの相談だろう……？　あぁ、ここは東京なんだなぁ、へんな日常を送る大人が普通にいるもの……と思いながら、粛々と仕事を片付けて、帰宅した。<br />
　また同じ位置に寝転がって、本を読む。<br />
　読み終わって、日も暮れてすこし涼しくなってきたので、犬を散歩に連れていった。犬はさっきまでアンニュイだったのが、別人のように元気になり、ピョンピョン飛び跳ねながらマンションを出て、騎馬隊の馬みたいに行進していく。<br />
　お盆休みの新宿は、大通り以外はとても静かだ。と、開店直後のガラガラの立ち飲み屋の前に、１３、４歳のお洒落な女の子が二人立って、口喧嘩……というか、一人が烈火の如く怒って、もう一人が呆然と立ち尽くしていた。<br />
<br /><blockquote>
女の子１「もっと世間を知りなさいよ！　ていうか、一般常識が足りない。いい加減にして。この、世間知らずーッ！」<br />
女の子２「………（泣きそう）」<br />
</blockquote><br />
　怒ってる子のほうの、茶金色のポニーテールがブンブン揺れている。蛍光色のＴシャツとミニスカに包まれた全身が、研ぎたての刃物みたいに眩しく光る。<br />
　その後ろを、３０代半ばらしきよれよれジャージ姿の男性が、使いこまれた水色のヨーヨーをすばらしく華麗に操りながら、ゆっくり、ゆっくりと通り過ぎた。<br />
　犬が電柱めがけて金色のおしっこをし始めた。<br />
　お腹が軽くなったからと、犬がはしゃいで走りだそうとしたとき、横のマンションから５、６０代の男性３人組が出てきた。カランッと軽い音に続いて、男性の絹を裂くような悲鳴。<br />
<br /><blockquote>
男性１「きゃーっ」<br />
男性２「ウクレレが壊れた！」<br />
男性３「あぁっ……」<br />
</blockquote><br />
　３人の足元に、遠目でよくわからないけどウクレレらしき茶色いものが転がっている。ケースの蓋がちゃんと閉まってなくて、転がりでてしまったらしい。「うそだろ！」「こんな大事な時に……」「あぁ、あぁ」悲しげな声がビブラートで響くのを、犬が不思議そうに耳をぴくつかせて聞いている。<br />
　……一般常識、か。まだ激しく喧嘩してる女の子たちと、ヨーヨーの男性がゆっくりと遠ざかっていく背中を見ながら、なんか、いま、わたしも入れて「この中で誰がいちばん大人でしょうクイズ」みたいだったぞ、と思う。<br />
　帰宅して、汗びっしょりなのでシャワーを浴びて、出てきてご飯食べて、犬にもゴハンあげてから、さてもう一冊読もうと積本をゴソゴソした。先月<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4334751288/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4334751288" target="blank">『秘密の花園』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4334751288" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>が大当たりだったので、続けて<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4102082018/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4102082018" target="blank">『あしながおじさん』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4102082018" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4042212018/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4042212018" target="blank">『少女パレアナ』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4042212018" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>と再読してて、その流れで買った<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4102029036/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4102029036" target="blank">『若草物語』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4102029036" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>を開いた。<br />
　これも小学生のときに読んだっきりで、わたしは三女のベスが「湖に落ちたのがもとで猩紅熱になり、死んだ」と長らく思いこんでいて、なにかのインタビューでそうしゃべったところ、それを読んだ書評家の三村美衣さんが、飯田橋の角川書店の前でばったり会ったときに「ベスは死んでなーい！」と言いながら全力疾走してきた、という記憶がある……。<br />
　読み返すと、確かに、湖に落ちたのは四女のエミリで、ベスは別件で猩紅熱になったけど、一命を取り留めている。エミリの事故のところはスッと終わるけど、ベスの闘病の描写は長く、重たく、すさまじい。<br />
　物語のいちばん最初の四人姉妹紹介シーンで、ベスのところだけ、<br />
<br />
　<b>世の中にはたくさんのベスがいる。恥ずかしがりやで、静かで、だれかに呼ばれるまではすみのほうにすわっていて、他人のためにのみ働き、炉ばたのこおろぎが歌うのをやめ、陽気な愛らしい姿が沈黙と暗い影をのこして消え去ってしまうまでは、だれもそのぎせいに気づかないのである。</b><br />
<br />
　と、まるでもう死んでしまったかのような描き方をされてて、書き手の抱える正体不明の悲しみが伝わってくるようだ。<br />
　この違和感を抱えたまま読み終わって、解説に目を落としたら、著者オールコット自身も四人姉妹の次女で、元気いっぱいの作家志望の次女ジョーは自身がモデル、とあった。２３歳のときに<strong>『花物語』</strong>でデビューしたが、その年の終わりごろに三女ベスが病死してしまった、とある。その１２年後に、出版社からの“少女向きの健全な家庭小説”というオファーを得て書かれたのがこの本だ。これが大ヒットとなり、父の負債（作品内と同じだ）を返し、絵を描くのが好きな四女メイ（これも作品内のエミリと同じ）にイタリア留学をさせた。<br />
　そうか、やっぱりベスは死んでたんだ、物語の外で……と思うと、この幸福な家庭小説になんともいえない読後感が残った。これは<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/433475113X/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=433475113X" target="blank">『ジェイン・エア』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=433475113X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>のローウッドにおけるヘレン・バーンズの死と同じじゃないか。<br />
　物語の中で誰かが死ぬとき、外の現実世界でもすでに誰かが死んでいるのかもしれない。また、物語の中で誰かの命が危うく助かるとき、外の世界ではすでに死んでいることもあるのだろう。<br />
　物語は時に誰かの個人的な鎮魂の祈りであり、知らない誰かの墓標でもある。<br />
　そう、しんみりと本を置こうとして、それにしても原題<strong>『リトル・ウィメン』</strong>（編集者エッツェルによってフランスで出版されたときは<strong>『マーチ博士の四人の娘』</strong>になった）から、<strong>『若草物語』</strong>という邦題にした人はうまいなぁ、<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/410209704X/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=410209704X" target="blank">『嵐が丘』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=410209704X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>や<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4102091017/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4102091017" target="blank">『風と共に去りぬ』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4102091017" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>、<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/410211341X/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=410211341X" target="blank">『赤毛のアン』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=410211341X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>（もともとは<strong>『グリンゲイブルスのアン』</strong>と、住むことになった家の名前がついてた）もだけど……と考えて……ふいに、また……飯田橋〈鳥どり〉のお座敷で、地団駄を踏んでむずがるＫ島氏のイメージが浮かんだ。えっ、なんでだ……？　少女小説の話なんてＫ島氏としたことないけど……。それにしても激しい足踏みだ。まるでうどんの生地をこねるような動き……。<br />
　あっ、わかった、８キロ痩せたのとはまた別のときに、ミステリの話になって、<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4151708014/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4151708014" target="blank">『マーチ博士の四人の息子』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4151708014" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>を面白いとキャッキャと騒ぎ、Ｋ島氏に「見損ないましたよ！　桜庭さん！」と本気で叱られたことがあったのだ。<br />
<br /><blockquote>
わたし「でもブリジット・オベールの作品って、わたしパタリロの絵柄で脳内再生されて、笑っちゃうんです。ギャグとして面白くって大好きですけど……」<br />
Ｋ島氏「……（ふるふる、ふるふる、ふるふる、ふるふる）」<br />
わたし「あとリチャード・マシスン<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4594051979/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4594051979" target="blank">『奇術師の密室』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4594051979" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>も。表紙がなぜ魔夜峰央じゃなかったのかが理解できないぐらい、登場人物の口が全員ひし形の状態で、最後まで一気に……」<br />
Ｋ島氏「<strong>『奇術師の密室』</strong>まで褒めるんですか！？　見損ないましたよっ……」<br />
</blockquote><br />
　わたしの脳内でパタリロで再現される面白ミステリは、Ｋ島氏のお気に召さない、という法則を発見する。<br />
　えへへ、楽しいなぁ。すごく怒ってたなぁ……。<br />
　遅くなったので寝た。<br /></div>
<div align="right"><font size="3">（2011年9月）</font><br /><br /></div></td></tr><tr>
<td>

<hr color="gray" size="1">

<div style="FLOAT: right; WIDTH: 150px"><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024680"><img height="203" alt="本に埋もれて暮らしたい" hspace="12" src="http://www.tsogen.co.jp/img/cover_image_m/2468.jpg" width="138" vspace="10" border="1" /> 
<div style="TEXT-ALIGN: center"><img height="18" alt="書籍の詳細を見る" src="http://www.webmysteries.jp/images/shosekishosai.jpg" width="100" border="0" /></div></a></div><font color="navy" size="2">■ <b>桜庭一樹</b>（さくらば・かずき）</font><br /><font size="2">1999年「夜空に、満天の星」（『AD2015隔離都市　ロンリネス・ガーディアン』と改題して刊行）で第1回ファミ通えんため大賞に佳作入選。以降、ゲームなどのノベライズと並行してオリジナル小説を発表。2003年開始の〈GOSICK〉シリーズで多くの読者を獲得し、さらに04年に発表した『推定少女』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が高く評価される。05年に刊行した<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488472016">『少女には向かない職業』</a>は、初の一般向け作品として注目を集めた。“初期の代表作”とされる<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488472023">『赤朽葉家の伝説』</a>で、07年、第60回日本推理作家協会賞を受賞。08年、『私の男』で第138回直木賞を受賞。著作は他に『荒野』『ファミリーポートレイト』<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024505">『製鉄天使』</a>『道徳という名の少年』『伏－贋作・里見八犬伝－』『ばらばら死体の夜』、エッセイ集<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488070649">『少年になり、本を買うのだ　桜庭一樹読書日記』</a><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488070663">『書店はタイムマシーン　桜庭一樹読書日記』</a><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024529">『お好みの本、入荷しました　桜庭一樹読書日記』</a><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024680">『本に埋もれて暮らしたい　桜庭一樹読書日記』</a>など多数。</font></td></tr></tbody></table>

<br />

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    <title>またまた桜庭一樹読書日記　【第13回】（1/4）［2011年8月］</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba1108-1.html" />
    <id>tag:www.webmysteries.jp,2011://6.1141</id>

    <published>2011-08-05T03:29:58Z</published>
    <updated>2011-08-05T02:26:46Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webmysteries.jp/">


   
      
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle">
<img height="320" alt="ここが新宿か……" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1108.jpg" width="239" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tr>
<td align="center"><font color="#000000" size="1"><b>【ここが新宿か……】</b>ふっ、なんてことのねぇ街だぜ……。マッ、仕方ねぇ！　しばらくいてやるとするか（と、葉巻をくわえる）。（桜庭撮影）</b></font></td></tr></tbody></table></td></tr>

<tr>
<td><br />
<font size="3"><b>７月15日</b></font><br /><br />
<b>小説を書いているときの、すべてが小説に没入して全能感に満ち溢れている姿はまさしく幸せとしか言いようがありませんでした。しかし、一方で精神を病み、自分自身を認めることのできない拒食症の奥さんにとっては、生きていることそのものが苦行だったのです。しかも幸福と不幸のどちらも少女のもの、大人になることのない少女の持つ幸・不幸なのでした。<br /></b></font></p>
<br /><div align="right"><font size="3">――「いちばん不幸で、そしていちばん幸福な少女」</font></div><br />
</td></tr>
<tr>
<td><font size="3">
　７月前半までに、外に出かける用事をたくさん入れて、毎日ばたばたしていた。年末締切の回から松本清張賞の選考委員になるので、それについて石田衣良さんと対談したり（そうだ、去年の受賞作<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4163807209/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4163807209" target="blank">『白樫の樹の下で』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4163807209" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>が素晴らしかった、寒気がした）、本屋さんで広告用の写真を撮ったり、各社の新担当さんと顔合わせしたり……。で、その後、<strong>〈小説現代〉</strong>の<strong>『傷痕』</strong>連載原稿のために、またまた籠っている。<br />
　この日。夕方まで原稿を書いて、ゴロゴロしてから、気分転換にと思って近所のシネコン、バルト９まで歩いていった。話題の<strong>『スーパー８』</strong>を観るのだ、観るのだ。<br />
　優しかった主人公（中学生？）のママが、工場の事故でとつぜん死んでしまう。オタク仲間と自主映画を作ってた主人公だけど、仲間は「映画作りで元気づけてやろうぜ」「でもスプラッタ映画でか？　あいつのママ、ぺっちゃんこになって死んだんだぞ」とオロオロ。そんなある日、軍の貨物列車の事故を目撃したことから、主人公とオタクな仲間たちは、宇宙からの旅人を巡る不可思議な冒険に巻きこまれていく……！<br />
　涙あり、ラブあり、冒険あり、少年の成長あり、家族愛あり……で進んで、２時間弱でハッピーエンド。いやー、面白かったなーとにやにやしながらエンドロールを観ていたら、急に椅子が小刻みに揺れ始めた。<br />
　あぁっ？<br />
　これ、地震……！？<br />
　こんなところ（地上11階のビル）にいるからベリー怖いし、ちょうど映画も終わったところだし、でも……エンドロールに、主人公たちが造った抱腹絶倒の自主映画（子供がトレントコート着て聞き込みしてたり、白衣着て科学者だったり、怪しい企業の名前がロメロ化学だったり。おおげさな効果音もいちいち面白い……！）が流れて、どうしてもどうしても観たい。でも、揺れもどんどん大きくなってくる。二重の動揺が映画館中に広がるのが、肌にチリチリと伝わってくる。<br />
　……結局、ほぼ満席の映画館で、座席も床もけっこう激しく揺れてるのに（震度４だった）、なんと一人も席を立たなかった。みんなばかだなぁ。<br />
　ようやく面白エンドロールが終わったときには、揺れも収まってて、いや、俺たちよくがんばった、最後の自主映画最高だったよね～、という無言の一体感にへんに高揚しながら、ぞろぞろとバルト９を出てきた。また家に帰った。<br />
　帰宅して、風呂に入りながら<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150310327/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150310327" target="blank">『グイン・サーガ・ワールド１』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4150310327" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>を読んだ。栗本薫の旦那さんが始めた連載エッセイ<strong>「いちばん不幸で、そしていちばん幸福な少女」</strong>（今岡清）の評判を聞いて、内心気になってたのだ。<br />
　作家として精力的に創作する傍ら、自身の矛盾した行動や衝動に苦しむ奥さんのために、寝る前に話して聞かせるようになった「村の話」について。<br />
<br />
　<b>夜はもうとっぷりとふけてまいりましたよ。<br />
　あちらのおうちもこちらのおうちも電気が消えて、みんなねんねのお時間です。</b><br />
<br />
　で始まるこの寝物語で、奥さんのこの行動をとった人物、あの行動をとった人物、と、行動ごとにべつの村人にして、旦那さんが整理していく。物語を産む職業であるはずの奥さんが、毎夜、それを聞きながらようやく安心して眠りにつく。長い時間、くりかえし語られるうちにすこしずつ人物も出来事も変わって、上書きされていって……。<br />
　アイルランドに行ったときに聞いた吟遊詩人の話や、文字で残さないジプシーたちの歌や、そういう昔ながらの“物語”そのものの姿で、読みながらぞーっとした。これこそ物語、本来見ることも触れることもできないぐらい奥のほうにあるはずの人の深層心理にやすやすと到達し、その人だけのオーダーメイドの世界でありながら、他者の耳に入ったときには普遍的なエンターテイメントでもある……。<br />
　日記によると、亡くなる前の晩にも「村のお話」の最新バージョンを語って聞かせたらしい。<br />
「村のお話」はどこかでまだ続いてるような気がする……。<br />
　短い連載を幾度も読んで、それからようやく風呂から出て、ばったり。茹だった。<br />
</font></td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
<li><a class="current" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba1108-1.html">1</a></li>
<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba1108-2.html">2</a></li>
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</ul>
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    <title>またまた桜庭一樹読書日記　【第12回】（1/5）［2011年7月］</title>
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    <id>tag:www.webmysteries.jp,2011://6.1116</id>

    <published>2011-07-05T04:01:50Z</published>
    <updated>2011-07-05T09:09:07Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle">
<img height="248" alt="魚" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1107.jpg" width="332" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tr>
<td align="center"><font color="#000000" size="1"><b>【魚】</b>（桜庭撮影）</b></font></td></tr></tbody></table></td></tr>

<tr>
<td><br />
<font size="3"><b>６月12日</b></font><br /><br />
<b>一人の死者も置き忘れてはならない。<br />
<br />
「何という民族だ！」将軍は言った。「だが、ひょっとするとこんな民族というのは、傷の痛みよりも美しいものにずっと弱いのではないかな」<br /></b></font></p>
<br /><div align="right"><font size="3">――『死者の軍隊の将軍』</font></div><br />
</td></tr>
<tr>
<td><font size="3">
　ようやく<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4044281211/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4044281211" target="blank">『GOSICK VIII　―ゴシック・神々の黄昏（上／下）―』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4044281211" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>を書き終わった！<br />
　久々に、かなりのぎりぎり締切である。（311の後、書き上げた最初の本だが……。し、７月25日に出る下巻を、この時期まだ書いてたのだ……）<br />
　日曜だけど、原稿をメールで送って、夕方、祝杯を上げようぜと担当Ｋ子女史と待ち合わせた。近所の居酒屋に行くだけなのに、テンションが上がって髪をコテでクルックルに巻く。顔に装飾（化粧）までした。勇んで出かける。<br />
　と、待ち合わせ場所で、走ってきたわたしを見て、なぜかＫ子女史が舗道に崩れ落ち、くの字に曲がりながら笑った。<br />
<br /><blockquote>
わたし「ど、どうしました？（不審……）」<br />
Ｋ子　「いや、だって……。ついにシリーズ最終巻の原稿が上がって、感動の再会のつもりだったのに……桜庭さんが走ってくる姿が、もう“なにもかもおかしい”から……」<br />
わたし「し、しつれいな！？」<br />
Ｋ子　「それに、信号が赤なのを見て、心の底から『解せない』って顔をしたのを見たら、たまらず……。笑わずにはおられない！　だって、ここは東京なんだし、赤信号でちょっと渡れないぐらい普通ですってば！」<br />
わたし「むむ……」<br />
</blockquote><br />
　はっ、そういえば、と、出版社を訪ねると入口のところで受付嬢に不審がられて（？）、なかなかすんなり入れないことを思いだす（そうか、“なにもかもおかしい”からだったのか……）。<br />
　それはともかく、近所の「どんじゃか」に入って、サワーとチーズハムカツとにんにく揚げとポテトサラダで乾杯である。<br />
　しばし小説の話をして、恋愛の話もして、あと道徳の話（子供のころ、親からは「共同体で要領よく生きろ」と、先生からは「受験では友達もライバル」と教育されて……じつは正義や自己犠牲の概念を習ったのは、実在の大人からじゃなくて、本からだった気がするよ、ジャン・バルジャンとかコルベ神父とかさ、という話）をした。お酒が進む。<br />
　ついで、とある事件の話になった。<br />
<br /><blockquote>
Ｋ子　「同僚のＡ女史が、ほんのちょっとのあいだ、編集部の机から離れたときの事件なんですがね（と、おそろしげに）」<br />
わたし「フン、フン……（←探偵？）」<br />
Ｋ子　「もどってきたら、机の上のアンパンの袋が開けられていて、誰かに半分食われていたんですよ」<br />
わたし「そ、それはまた凶悪な……！　食べものの恨みは怖いですからねぇ。とくに女性は。なんとも命知らずな犯人ですね」<br />
Ｋ子　「そして袋に、犯人からのメッセージを書いたポストイットが貼ってあったのです。“ごちそうさま～　社長より”って……」<br />
わたし「！？」<br />
</blockquote><br />
　サワーのグラスを持ったまま、どんじゃかのカウンターの椅子から床に転がり落ちそうになる。<br />
<br /><blockquote>
わたし「エッ、犯人は社長？！　角川書店の？？　えっ、そんなことが現実に起こりえますか？　いや、それとも、社長を騙る真犯人が編集部のどこかにいる……？　口の周りにアンコをつけた同僚とか編集長がいませんでした？」<br />
Ｋ子　「いえ」<br />
わたし「むー」<br />
Ｋ子　「それに、目撃者もいないのです」<br />
わたし「め、迷宮入りかぁ……。残念！」<br />
</blockquote><br />
　あと、角川書店の新社屋には会議室が14個あって、干支の名前がついている、という話もした。「今日は戌（いぬ）会議室で３時から……」とか「申（さる）に集合！」とか、どうも不思議な感じらしい。<br />
　18時から飲み始めて、外に出たら午前２時。土砂降りの中で慌ただしく、改稿の締め切りは15日中ですよー、といった打ち合わせをして（８時間もしゃべってたのになぜかこのタイミングで……）、帰宅。<br />
　泥酔してるのでお風呂はやめて、読みかけだった<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4879842729/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4879842729" target="blank">『死者の軍隊の将軍』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4879842729" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>（イスマイル・カダレ著）を開いた。<br />
　1936年に生まれて幾度かノーベル文学賞候補になったことのあるアルバニアの作家イスマイル・カダレの代表作。28言語に翻訳されたが、日本では長らく未訳で、０９年にようやくお目見えした。<br />
　第二次世界大戦から10数年後のアルバニアに、（たぶん）イタリアの将軍がやってくる。祖国のために戦い、いまもこの地に眠る兵士たちの遺骨を集めて持ち帰るためだ。死者たちが首から下げた金属の認識票（死後、身元が分かるように身に着けていた）を確認しては、旅から、旅へ……。<br />
　そして、将軍とお供の司祭との会話（これがまた不条理の笑いを呼び起こすかみあわなさ！）からは、イタリアで待つ遺族たちのドラマが、現地で出会う人々からは、アルバニア独自の文化や深い民族性が……短い演目となって交互に上演される。<br />
　当初は自分たちの正当性をまっすぐに信じていた将軍が、道が進むごとに過去の戦争の新たな局面を発見して、迷い、怒り、傷つき、どんどん“世界との接続が切れていく”様が、こわいはずなのになぜか心地いい。戦地に持っていった携帯電話が「アンテナは立ってるのに繋がらない！？」みたいに、道の奥に行くたび、ほんの一瞬、もとの世界と接続されては、またもや圏外になってしまう……。<br />
　読みながら、「あぁ、小説ってこういう感覚のことなんだよなぁ」と思った。<br />
　世界との接続がときどき切れてないと、誰も小説を書き続けることはできない。死なない程度によく息が止まらないといけない。そのうえで、アクセルを踏むだけじゃなく、ブレーキの定期検査も怠らないのがプロなんだろう。<br />
　おっかねぇ作業だよな、と思いながら、でも今夜だけはもう店じまい。明日からまた戦場だけど、いまほんの一瞬でも安心して丸くなって寝たい、と思って電気を消して、酔いもぐるぐる回って、気絶するように眠った。<br />
</font></td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
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<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba1107-3.html">3</a></li>
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    <title>またまた桜庭一樹読書日記　【第11回】［2011年6月］</title>
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    <published>2011-06-06T03:14:13Z</published>
    <updated>2011-06-06T02:43:42Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle">
<img height="239" alt="マキューアンが出てきた" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1106.JPG" width="320" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【マキューアンが出てきた】</b>３１１の揺れたときに本棚の本がにょーんと出てきたのですが、なぜかマキューアンの『贖罪』とか、変態っぽい本（？）ばかり前に出てきていたので、なんだか気になってまだそのままにしてあります……。（桜庭撮影）</font></td></tr></tbody></table></td></tr>
<tr>
<td><br />
<font size="3"><b>５月１日</b></font><br /><br />
<p><font size="3"><b>「この戦争が終わる前に」と、ウォルターは言った――「カナダじゅうの男も女も子供も一人残らず戦争を感じるようになるだろう――メアリー、君も感じるようになるよ――骨身にこたえて感じることになるだろう。戦争のために血の涙を流すことになるのだ。笛吹きがきたのだよ――世界のすみずみまでその恐るべき拒むことのできない笛の音が渡るまで笛吹きは吹きつづけることだろう。死の舞踏が終わるまでには何年もかかるだろうよ――何年もだよ、メアリー。そしてその年月がたつうちに何百万もの胸が張り裂けることだろう」<br />
「まあ、驚いた！」<br />
　と、メアリーは言った。<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『アンの娘リラ』</font></div><br />
<br />

</td></tr>
<tr>
<td><font size="3">
　なんだかうそみたいだけど、もうＧＷだ。<br />
　近所の土俵公園（なんとまだ土俵があるので、このままずっとあるのかもと思ってこっそりそう呼ぶようになった……）のベンチに座って、好物のポンジュースをかたむけながら、新緑を眩しく見上げてみたりしている。<br />
　連休中の公園には、走り回る子供たちがあふれている。<br />
　と、男の子を連れたお父さんの真面目な声が聞こえてきた。ふっと耳を澄ます。<br />
<br /><blockquote>
父親「おまえもな、小４だろ。これから小５、小６とあっというまだからな。ちゃんと勉強しないといけないぞ。だから、まずはな……」<br />
</blockquote><br />
　ふんふん、とうなずきつつ、しかし息子の返事がいっこうに聞こえてこないので、顔を上げる。ワッ、びっくりした！！　お父さんは右手と左手の人差し指で、けっこうな激しさで両の鼻をほじりながらお説教を続けていた。息子は聞き流していた。<br />
　日が、ゆっくりと傾いてきた。土俵公園のベンチから立ちあがる。喫茶店によって、今日の分の原稿を読み直したりあれこれチェックをした。それから、またぷらっと店を出て、うちに帰った。<br />
　４月の後半ぐらいからかな、とつぜん前と同じようにどこどこどこーっ……と本が読めるようになった。すると、書き始めた<strong>『GOSICK VIII』</strong>の原稿も、とたんに飛ぶように進みだした。<br />
　どうも、やっぱり、書く→読む→書く→読むというサイクルが自分には大事だったみたいだ。とはいえ読書傾向は、戦争の本、にやけに偏ってる。いまの状況を、脳のどこかで“戦争状態”と変換しているのかもしれないし……。各出版社が、品切れになっていた関東大震災や三陸海岸の津波、原発問題についての本に重版をかけたり復刊したりして、微妙に関係ありそうな本（<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062725010/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4062725010" target="blank">『地震がくるといいながら高層ビルを建てる日本』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4062725010" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>とか<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/410115354X/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=410115354X" target="blank">『身近なもので生き延びろ』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=410115354X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4101034060/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4101034060" target="blank">『黒い雨』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4101034060" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>とか）が書店にダーッと並んでいるけれど、気になりつつ、どうしてもまだそれは手に取れないので……。代価行為なのかもしれない、とも思う。<br />
　この日は、夜、寝転がって、小学生の時に読んだきりだった<strong>『赤毛のアン』</strong>シリーズの最終巻<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4102113509/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4102113509" target="blank">『アンの娘リラ』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4102113509" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>を開いた。2008年に100周年を迎えて、新潮文庫から新装版になっていたらしい。<br />
　じつはアンシリーズは、どえらく長い大河小説でもある。ちいさな孤児としてプリンスエドワード島にやってきたアンに、家族ができて、友達ができて、初恋、進学、家族との別れ、就職、結婚、出産、また出産、なんと子供６人……と、島のあちこちに移転しつつ進んでいって、最終巻では、思春期を迎えた末娘リラを語り手に、第一次世界大戦に翻弄される市井の人々の姿を描いている。子供のころは、最終巻だけとつぜん戦争の話になっちゃって、そこはあまりピンときていなかったのだけど……。いま読むと、市井の人々の動揺や、助け合い、誇り高い行動と、恥ずべき隣人への糾弾、いろんなことが、いっそこわいほどのリアリティで、真っ黒な虫の大群みたいに頭の中にぐんぐんぐんぐん飛びこんでくる。<br />
　前巻<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4102113495/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4102113495" target="blank">『虹の谷のアン』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4102113495" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>のエピローグで、まだ幼かったアンの子供たちが遊ぶ虹の谷で、ちいさな詩人たる次男ウォルターが見た“笛吹き”の幻。そのおそろしい音色がこの巻すべてに響き渡っていて、それぞれの大事な人たちがまたたくまに戦地に去ってしまう。むじゃきでわがままな子供だったはずのリラは、おそるべきスピードで大人に変わっていく。苦しみが少年少女たちの成長促進剤になったのだ。その姿を誇りに思いながらも、母のアンは、じっくりと時間をかけて大人になっていった、とてつもなくのどかだった、かつての自分の青春時代と比べて、心を痛める……。<br />
　アンは語る。<br />
<br />
<b>「あのグリン・ゲイブルズの時代から何百年もたったような気がするわ」<br />
「あの時代は全然別の世界よ。戦争という間隙のおかげで人生は二分されたわけね。この先どんなことが待っているのかわからないけれど――でも、過去とはまるっきり違うでしょうよ。わたしたちのように半生をもとの世界で送った者が新しい世界になじめるかしらと思うわ」<br /></b>
<br />
　このアンの畏れと、ミス・オリバー（先生）の、<br />
<br />
<b>「お気づきになりましたかしら、戦争前に書かれたものもみな、今からかけはなれたものに思えるじゃありませんか？　まるで大昔のイリアッドの時代のものを呼んでいるような気がしますわ。このワーズワースの詩ですわ――最上級の生徒たちの入試問題に出たんですよ――わたし、ざっと目を通したのですけれど。行間に漂う古典的なのどかさと安らぎと美は別の惑星に属するものであり、現在のこの動乱の世界にとっては宵の明星のように関係のないものに思えますわ」</b><br />
<br />
　言葉は、40歳のころに第一次世界大戦を体験したはずの著者モンゴメリ自身のおそろしい実感にも思える。<br />
　一方で、末娘リラと、ついに出征することになった兄ウォルター――家族の中でもとくべつ仲良しの若い二人は、思い出の立ちこめる虹の谷で、ひっそりと、不安とともに確かな希望の薫る、こんな会話を交わしていた。<br />
<br />
<b>「あたしたち――もととおなじようには――幸福になれないわ」<br />
「そう、もととおなじようにはね。この戦争に関係した者はだれももととおなじふうな幸福にはなれないだろうよ。しかし、よりよい幸福だと思うね、リラちゃん――僕らがかちえた幸福だもの。戦争前の僕らは非常に幸福だったね。炉辺荘のような家があり、うちの父さんや母さんのような両親があれば幸福にならないわけにはいかないではないか？　しかし、あの幸福は人生と愛情の賜物であって、真に僕らのものではなかったのだ。僕らが自分の義務として自分の力でかちえた幸福は人生には奪い去ることはできない。（略）」</b><br />
<br />
　自分の義務として自分でかちえた幸福、というところで、目線が止まって、そのままずっと考えていた。幸福ってなんだろう。与えられた幸福、そしてかちえた幸福……。しかし不幸だってそうだ。<br />
　昔、読んだときは「オチが面白いなー。大河小説のラストがあえてこの一言だなんて……」と思ったぐらいなんだけど、いまはなぜか、モンゴメリの体験した嵐が、本を持った自分の周りで時を超えて吹き荒れて、さまざまなものの粒が膚に直接、降ってくるようだった。そして、この体験を描きながら、あくまでも“娯楽小説”の枠内にきちんと立っていることの、その決死のバランス、著者の放出した気力体力に畏れを感じた。<br />
　そして、わたしは作中人物ではなく、読者だから……不遜なことに、結末を知ってる……。この中に一人、死んでしまう人がいると、神のように卑小に未来を知ったまま、シリーズの中でも高い人気を誇るはずの、ウォルター少年の勇敢で詩的でいまでは失われた言葉と、その後の行動を噛みしめながら……。夜が明けてきたので、布団にもぐって寝た。<br /></div>
<div align="right"><font size="3">（2011年6月）</font><br /><br /></div></td></tr><tr>
<td>

<hr color="gray" size="1">

<div style="FLOAT: right; WIDTH: 150px"><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024680"><img height="203" alt="本に埋もれて暮らしたい" hspace="12" src="http://www.tsogen.co.jp/img/cover_image_m/2468.jpg" width="138" vspace="10" border="1" /> 
<div style="TEXT-ALIGN: center"><img height="18" alt="書籍の詳細を見る" src="http://www.webmysteries.jp/images/shosekishosai.jpg" width="100" border="0" /></div></a></div><font color="navy" size="2">■ <b>桜庭一樹</b>（さくらば・かずき）</font><br /><font size="2">1999年「夜空に、満天の星」（『AD2015隔離都市　ロンリネス・ガーディアン』と改題して刊行）で第1回ファミ通えんため大賞に佳作入選。以降、ゲームなどのノベライズと並行してオリジナル小説を発表。2003年開始の〈GOSICK〉シリーズで多くの読者を獲得し、さらに04年に発表した『推定少女』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が高く評価される。05年に刊行した<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488472016">『少女には向かない職業』</a>は、初の一般向け作品として注目を集めた。“初期の代表作”とされる<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488472023">『赤朽葉家の伝説』</a>で、07年、第60回日本推理作家協会賞を受賞。08年、『私の男』で第138回直木賞を受賞。著作は他に『荒野』『ファミリーポートレイト』<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024505">『製鉄天使』</a>『道徳という名の少年』『伏－贋作・里見八犬伝－』『ばらばら死体の夜』、エッセイ集<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488070649">『少年になり、本を買うのだ　桜庭一樹読書日記』</a><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488070663">『書店はタイムマシーン　桜庭一樹読書日記』</a><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024529">『お好みの本、入荷しました　桜庭一樹読書日記』</a><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024680">『本に埋もれて暮らしたい　桜庭一樹読書日記』</a>など多数。</font></td></tr></tbody></table>

<br />

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    <title>またまた桜庭一樹読書日記　【第10回】（1/4）［2011年5月］</title>
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    <id>tag:www.webmysteries.jp,2011://6.1067</id>

    <published>2011-05-06T04:14:18Z</published>
    <updated>2011-05-06T04:34:45Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
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        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle">
<img height="320" alt="よろしくお願いしますガォー" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1105.jpg" width="239" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【よろしくお願いしますガォー】</b>某社の担当さんから届いた書類の封筒、ふっとソファにおこうとしたら封のところに、こ、このようなシールが……。あわててすぐ開けて、読んだ。（桜庭撮影）</font></td></tr></tbody></table></td></tr>

<tr>
<td><br />
<font size="3"><b>４月７日</b></font><br /><br />
<b>　夜の七時から停電になった途端に、脳髄から背骨にかけて別次元の電流が走った。それは闇のユートピアを浮遊する感覚で、はるか昔の自分へ戻ったのだった。闇のスイッチが入って、忘れていた記憶の彼方へさらわれていく。こいつは格別の快感だ。<br />
　深く帽子をかぶり、ツタンカーメンの柄がついたステッキを持ち、外套をはおって外へ出た。<br /></b></font></p>
<br /><div align="right"><font size="3">――「コンセント抜いたか」</font></div><br />
</td></tr>
<tr>
<td><font size="3">
<br /><blockquote>
わたし　「あっ、金色になってる？！」<br />
Ｋ子女史「……エッ、今頃、言う！？」<br />
</blockquote><br />
　夕方。<br />
　角川書店二階の会議室である。<br />
　このところ、５月頭に出る<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4087714020/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4087714020" target="blank">『ばらばら死体の夜』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4087714020" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>と、３月末に新刊が出た<strong>『GOSICK』</strong>シリーズのインタビューデーが交互にはいってることが多い。この日はゴシックのほうだ。どちらの日も、面識のあるインタビュアーさんとカメラマンさんのことが多くて、もちろんインタビューのやりとりには緊張が伴うけど、でも、知ってる顔に会うって、じつはこんなにほっとすることだったんだなーと思う。<br />
　４月になった。<br />
　相変わらずニュースや雑誌で、被災地の様子と原発のことを追ってる。あと、個人から物資を募るボランティアに送ったり、風評被害のある地域の商品を買ったりもするけど、一人でできることはすごくちょっとだ……。<br />
　東京の街は、節電のためだけじゃなくて、悼みの気持ちに覆い尽くされてるみたいで、昼間から靄がかかったようにずっと暗い。夜になるほどさらに濃い闇に浸かっていく。スーパーに入ると、薄暗い店内に「納豆は一人一パックまで」「水は二本まで」「ティッシュは……」「トイレットペーパーは……」と書かれていて、節電のために止まったエスカレーターをよじよじと上って買い物する。<br />
　街頭ビジョンに“今日の放射性物質の値”が流れてたり、うちに帰ってテレビをつけて、料理番組やってるなと思ったら“ライフラインを絶たれた時の料理法”だったりもするらしい。家族で西のほうに疎開する人や、東京に残ったけど、怖がって部屋からほとんど出られなくなった人も、ときどきいる。<br />
　昨日、話した編集さんによると、とあるミュージシャンの対談に同席していて「東日本にいる作り手は、あの日の前にはけっしてもどらないだろうし、これ以降の物づくりになっていくのだろう」と聞いたらしい。東と西でまたちがう空気が流れているのかもしれないけれど、でも、これからの経済の低迷は日本全部にやってきちゃうのかな……。<br />
　と、そんな空気に覆われていたこの日、インタビューが終わってふっと顔を上げると……Ｋ子女史の髪の毛が……シャチホコみたいな見事な黄金色になっていた！<br />
<br /><blockquote>
わたし　「エッ、いつからその色に……？　エッ、今ですか……？」<br />
Ｋ子女史「まったく、なにを言ってるんですか。一時間半も前、会った瞬間からこの色でしたヨッ。もう！」<br />
</blockquote><br />
　き、気分転換、かな……？<br />
　飲みに行こうとみなでゾロゾロ神楽坂の飲み屋に移動しながら、この髪は桜庭さんがイケメン許せるようになったのと同じ（あとＩ本女史がシイタケ食べられるようになったのとか）変化なのかな、というような話をする。むむ、なる、ほ、ど……？<br />
　ビールや梅酒やいろいろを飲みながら、みんなで、三月から四月にかけての話をした。どうも震災の後、一度「がんばろう」と元気が出て、でも出口の見えない原発問題に耐えられなくなって、静かに疲弊してきてる感じ……の人ことのほか多いみたいだ。<br />
　Ｋ子女史は、ここ二週間ぐらいがいちばんきついかなぁという。<br />
　西に出張に行くと、明るい空気にほっとするけど、なぜか東京にもどりたくなる。東京も危ないから疎開するべきだと意見されたりもするけど、なるべく離れたくないというこの気持ちを、うまく説明できない。もちろん、被災して、暮らしていた町ごと失ったたくさんの人たちの思いとは、比べるべくもないぜいたくすぎる生活だ。それに、それぞれに故郷もある。だから……。<br />
“望郷の念”ともちがう。地方出身で、自分の意志で東京に流れでてきた人の、この街へのユラユラした感情には、きっとまだ名前がないのだろう。<br />
　Ｍ宅氏がもそっと「腕をだんだんもがれてくような感じかなぁ？」と言った。<br />
　と、Ｋ子女史がそれで思いだしたのか「腕をガラス張りにして中で熱帯魚を飼うアクアマリンアームというのをテレビで見た。オランダかどこかでやってた。金髪のつぎはぜひあれもしたい」と言い出す。みんな一斉に「夢だよ！」とつっこむけど、Ｋ子女史は「わたしは震災の後、浅い眠りが続いて夢を見なかったもの。それにここ二週は熟睡しすぎて、逆に夢を見てないもの」と言い張る。むむ、そうか……。<br />
　そういえば、最近はへんな夢を見てうなされたという話題が多い。知ってる書店員さんは「ブォォォーと地鳴りとともに、ディーゼル車を運転してどこかに向かう桜庭さんを見送ったよ。でも、いったいなにしにどこ行ったの？」（わ、わからん……）と言ってたし、じつはわたしも、角隠しをかぶってフルメイク、首から下は普段着の友達に「打ち掛け隠したの、おめぇだろ！」とガミガミ怒られる夢を見た……（ぜったいちがうー、と思いながらユサユサ揺すられていた……）。<br />
　それぞれが、ひたひたとき続けるなにかに耐えながら働いて、笑ってみせながら、それぞれの生活を続けてるようだ。被災地のことを考えると、わずかでも傷ついていること自体を傲慢に感じるし、大人だから、悲しい気持ちは飲みこんで、地に足をしっかりつけて暮らさないといけない。<br />
　……でも、みんな子供だから、苦しかったら助けあわなきゃ、とも思う。<br />
　都会は永遠の中学校のようだ。<br />
　飲んでたら、また余震がきた。右に左に揺れてるお互いをぼーっと見ながら、さいきんクジラの背中に街を作って生活してるみたいだなぁ、とか考えた。<br />
　近未来のアジアンゴシックＳＦ世界に迷いこんだような、暗い赤色に沈む東京の街を、午前二時にタクシーにて切り裂いて、うちに帰った。ジョボジョボとお風呂を入れてる間に、読みかけの<strong>『アンジェリーナ・ジョリー』</strong>という本人非公認の伝記（あ、あやしい）と、<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4103267313/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4103267313" target="blank">『ガサコ伝説』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4103267313" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>をぱらぱらした。それから、最近はもっぱらお風呂では週刊誌なので、<strong>〈週刊朝日〉</strong>を片手にちゃぽんとお湯につかった。<br />
　嵐山光三郎さんの<strong>「コンセント抜いたか」</strong>という連載エッセイの奇想っぷりがとてもよくて、夢中で読みふける。計画停電の街で、ツタンカーメンのステッキを片手に繰り出せば、朧月夜に、少年探偵団の気配。信号の消えた交差点、あの無人のバスは冥土行か？　巡査の乗った自転車も死者のようで朧としている。<br />
　いまでも夢に見る、子供のころの秘密の森、白亜のマンションが建ってからは足を踏み入れていないそこに、薄闇に誘われて約六十年ぶりに足を向ける。すると、屈折しながら蜃気楼みたいに浮いた建物に、いわく言い難い愛しさ――“望郷の念”がこみあげてくるのだ……。<br />
　魔にとりつかれたかのようにけぶる嵐山さんの文章も、とろりと月光に溶けるような南伸坊さんの挿絵も、素晴らしい回だなぁ。<br />
　あぁぁ。これが物書きの仕事だ。深い畏敬の念を持った。<br />
　よいものを読めたので、不思議と穏やかな気持ちになって、ときどきまた揺れてるけど、よく寝た。<br />
</font></td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
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</ul>
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    <title>またまた桜庭一樹読書日記　【第９回】（1/5）［2011年4月］</title>
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    <id>tag:www.webmysteries.jp,2011://6.1023</id>

    <published>2011-04-05T04:22:57Z</published>
    <updated>2011-04-05T10:47:08Z</updated>

    <summary>＜PR＞読書日記第４弾『本に埋もれて暮らしたい』発売中【ここをクリック】 ＜PR＞『製鉄天使』の特設ページを公開中【ここをクリック】 【頭のネジ？】地震の後、仕事机の横にゴロンッと転がっていた謎のネジ...</summary>
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        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle">
<img height="320" alt="頭のネジ？" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1104.jpg" width="239" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【頭のネジ？】</b>地震の後、仕事机の横にゴロンッと転がっていた謎のネジ（けっこうでかい。手の小指大？）。いったいどこから落ちたんだろう、机か、椅子か、書棚か、引き続きここに座っててダイジョウブなのか？　と心配してたら、たくさんの人から「桜庭さんの頭のネジだよ」と言われたのだった。あ、頭にもどさねば！（桜庭撮影）</font></td></tr></tbody></table></td></tr>

<tr>
<td><br />
<font size="3"><b>３月11日</b></font><br /><br />
</td></tr>
<tr>
<td><font size="3">
　その日。<br />
　……ということは知らずに、いつも通り昼に起きて、ＰＣに向かって仕事していた。夕方から<strong><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024680">『本に埋もれて暮らしたい』</a></strong>のインタビューが入っていて、東京創元社に行く予定だったので、若干、ばたばたである。執筆を終えて、着替えて、メールチェックもして、返事を書きながら、インタビュー中にお腹がすかないようにと同時にうどんを茹でていた。<br />
　アッ、地震だゾ。<br />
　さいきん多かったので、またかぁと思ってぼーっと様子を見ていたら、どんどん激しくなってきたので、これはいかんと、生まれて初めて机の下にもぐった。と、体が横揺れして、右に、左に翻弄され始めた。机が一度倒れてきたので、しゃがんだまま両手でヨイショともとにもどした。<br />
　床に積んだ本の山と、壁際においたマウンテンバイクと、おっきな姿見がどーんと倒れるのが見えた。コタツにおいたコーヒーのマグカップが飛んで、床にびしゃーっとなる瞬間も、目を見開いて、スローモーションみたいに見た。<br />
　揺れは止まらないどころかどんどんおおきくなってくる。遊園地にあるガタガタ揺れるちいさい乗り物みたいな浮遊感を感じながら「ついにきたんだ……！」と思った。このときは、あんまり揺れが大きいものだから、千葉とか茨城とか、東京に近い関東地方が震源地だろう、これは、いつかくるくると長らく言われていた関東地方の大地震なんだと思っていた。<br />
　ずいぶん経って、揺れが、止まった。<br />
　机の下から這い出て、逃げなきゃっと、エアコンを消して、鞄に財布と携帯電話を入れて、ロングブーツを両手に一本ずつ握って、裸足のまま飛びだした。エレベーターは止まってるので、マンションの階段を降りて近くの公園まで走った。<br />
　ちいさな公園に近所の会社の人達がぎゅうぎゅうに集まっていた（百人以上いた）。あと、相撲大会をやる予定だったらしくて真ん中に巨大な土俵がドーンとあった。インド料理屋のお兄さん三人と並んで、四人目みたいな立ち位置でぼーっとしていた。それから土俵に座りこんで、ゆっくりブーツを履いた。<br />
　三十分ぐらい経った。<br />
「あっ、あれ見て！」と誰か女の人が空を指差すようなポーズをしたので、つられてみんなで見上げた。<br />
　連なるビルの、すごく縦長の細いビルだけが、ういろうをたてに持って思いっきり揺らしたように、冗談みたいに左右にぶらーんぶらーんと揺れてた。「細いからだね」「ドア見てよ……」最上階の、誰かが飛びだして逃げた後らしい開けっ放しのドアが、見えない手で激しく叩きつけられてるように（「おまえとはもうお別れだーっ！　あばよーっ！」みたいな）すごい勢いで閉まったり開いたりし続けていた。<br />
「あっちのビルも……」「よく折れないなぁ！」「揺れてる、揺れてる」<br />
　足元の地面もブルブル震えていた。<br />
　電話もメールも不通だけど、なぜかツイッターだけがつながった。創元のＭ澤氏から「インタビューは中止ですっ」とリプライがきていたので「了解！」と返事をする。<br />
　おおきな余震がまたくるかもしれない、しばらく公園にいよう……と思ったところで、うどんを茹でっぱなしだったことを思いだす。迷って、火事を出しちゃいけないし、走ってマンションにもどって階段を駆けあがった。ガスは消えていた。アワワ、またおっきい余震がきた。……止まった。このまましばらくもどってこられないかも、と急にこわくなって、分厚いセーターに着替えた。崩れた本の山から、新刊<strong>『ばらばら死体の夜』</strong>にからんだインタビューや対談の席で聞いて入手したばかりの<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4623040798/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4623040798" target="blank">『あの薔薇を見てよ　ボウエン・ミステリー短編集』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4623040798" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>（エリザベス・ボウエン）と<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4773810025/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4773810025" target="blank">『嘘から出たまこと』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4773810025" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>（マリオ・バルガス＝ジョサ）と<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4794212259/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4794212259" target="blank">『動かないで』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4794212259" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>（マルガレート・マッツァンティーニ）をつかんだ。<br />
　部屋を飛びだして、公園にもどった。<br />
　人がまだたくさんいる。<br />
　ワンセグでテレビの映像を覗いている人たちもいる。固唾を呑んでなにかを見てる。<br />
　一時間ぐらい経った。<br />
　お腹がすいたので、余震がこわいけどコンビニに行こうと、公園を出た。新宿通りに出たら、歩道いっぱいに、冗談みたいにたくさんの大人が歩いていた。お花見シーズンの新宿御苑の閉園時間みたいだ。そのときはなぜだかわからなかった。ぽかーんとしたまま、パンとあったかいお茶を買って、公園にもどった。<br />
　人がすこし減っていた。<br />
　日暮れが近くなって、散歩の時間らしく、犬を連れた人達がつぎつぎやってきた。非日常に日常が混ざって、よくわからなくなる。余震は減ってきた気がする。もう、もどろうかな……。もういちどコンビニに向かうと、さっきと同じく、大通りに人の行進が続いていた。コンビニのトイレに行列ができていて、それに、ん……さっきまであったパンやお弁当やカップラーメンが棚から魔法のように消えていた。<br />
　ツイッターのタイムラインを見て、地震の影響で首都圏の交通手段がなくなってると気づく。だから新宿通りを新宿駅に向かって歩いているのだ。<br />
　でもＪＲも停まっていて、つぎつぎ駅周辺でストップしてるらしい。タカシマヤとかいろんな施設が帰れない人を臨時で収容し始めていて、情報が飛びかう。創元の人たちも会社に泊まるらしい。近所の書店員さんたちが足止めされてるので、女性二名、仕事場に泊まってもらうことにする。電話は通じないしメールも遅延するので、ツイッターが役に立つ。倒れた家具をうんしょともどして、本の山の崩れたのを部屋の隅にエイエイためた。<br />
　お腹減ったけど、なんにも作る気になれなくて、もう一回コンビニに行った。お惣菜コーナーはほとんどカラのままで、あれ、ホッケだけ一パック残っていた。あと真っ白な棚にノリタマが一コ置いてきぼりになっていた。フィリピンバナナを１本みつけて買って、通りに出た。<br />
　時計を見たらもう九時近いけど、<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4594004539/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4594004539" target="blank">『死のロングウォーク』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4594004539" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>みたいなスーツの行進は途切れても減ってもいなかった。地面がまだときどき揺れてる。公衆電話の前に行列ができてる。上空をヘリコプターが飛んでいる。道路は大渋滞で、タクシーやバスもところどころにあるけど、いまいる場所から一ミリも動けないみたいだ。<br />
　書店員さんたちが到着する。お湯を沸かしてカップラーメンを食べつつ、うちはああだった、ここはこうだったと話す。一緒にテレビを見ているうちに、津波の映像や震源地の情報から、ようやく、関東地方の地震なんかじゃない、東京であれだけ揺れて、それなのに震源地からこんなに離れているということは、本当におおきな地震が起こったんだ、と理解し始める。でも映像がすごすぎて、数字が大きすぎて、なかなか心の奥に入ってこない。<br />
　書店員さんたちは明日は朝九時出社だと言う。一時過ぎに、とりあえず寝ようということになる。<br />
　手の爪が十本とも、割れたりヒビが入ってることに気づいた。でもなんでなのかわからない。つめきりを捜して、短く切る。<br />
　急ぎの仕事を機械的に片付けた。<br />
　本を読まずに、寝た。<br />
</font></td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
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</ul>
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<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/searchresult.html?mgen_id=134" target="_blank">本格ミステリの専門出版社｜東京創元社</a>]]>
        
      
    


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    <title>またまた桜庭一樹読書日記　【第８回】［2011年3月］</title>
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    <published>2011-03-07T04:00:01Z</published>
    <updated>2011-03-07T07:07:55Z</updated>

    <summary>＜PR＞読書日記第４弾『本に埋もれて暮らしたい』発売中【ここをクリック】 ＜PR＞『製鉄天使』の特設ページを公開中【ここをクリック】 ２月某日 　完成した作品だけでなく、製作過程を知らないと、勝手な思...</summary>
    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
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        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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        <![CDATA[<p>＜PR＞<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024680" target="_blank"><strong>読書日記第４弾『本に埋もれて暮らしたい』発売中</strong>【ここをクリック】</a><br /></p>
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td><br />
<font size="3"><b>２月某日</b></font><br /><br />
<p><font size="3"><b>　完成した作品だけでなく、製作過程を知らないと、勝手な思い込みや誤読に陥る危険があるのです。本書では、絵画の研究がスケッチや秀作、Ｘ線で見える描き直しの跡を調査するように、シナリオの草稿や企画書、関係者のインタビュー、当時の雑誌記事などに当たって裏付けを取りました。<br />
　たとえば『２００１年宇宙の旅』には、人類の祖先が敵を殴り殺した骨を空高く放り投げると、それが宇宙に浮かぶ「宇宙船」につながる有名なシーンがあります。どの映画解説書にも「骨から宇宙船までの進歩を一瞬で表現した場面」と書かれている部分です。<br />
　しかし、これは本当は「宇宙船」ではありません。核ミサイルで敵国を狙う軍事衛星なのです。スタンリー・キューブリック監督が書いたシナリオでは「大国同士が核ミサイルを突きつけ合って、全面戦争勃発寸前」という趣旨のナレーションが流れることになっていました。つまり、「人間は棍棒を核兵器にまで進歩させてしまった」という不気味な場面なのです。<br />
「そんなこと言われても」と文句を言いたくなる人もいるでしょう。<br />
「完成した映画にはナレーションがないし、ＢＧＭに『美しき青きドナウ』が流れるので、逆に文明の進歩を謳歌しているようにしか見えない。いちいちシナリオまで探さないと理解できないなんて面倒くさすぎる」<br />
　ご安心を。それを代わりに調査するのが本書です。映画に関する文章でメシを食う者の仕事です。<br />
<br />
　問いかけは続きます。『猿の惑星』は「人間は猿にも劣るのではないか？」、『イージー・ライダー』は「本当の自由はどこにあるのか？」、『未知との遭遇』は「夢と家族とどっちを取るのか？」……。<br />
　答えは映画のなかにはありません。簡単に答えの出る問いではありません。映画館を出た後もその問いは残ります。たぶん一生。<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『〈映画の見方〉がわかる本』</font></div><br />
<br />

</td></tr>
<tr>
<td><font size="3">
　大雪の夜である。<br />
　とぼとぼ～と歩いている。<br />
　ＪＲ飯田橋の駅を降りて、片手に傘、片手に自慢のあいふぉんを握りしめて、画面に出ている地図を覗きながら行く。むむ、今日も方向音痴だなぁ……。<br />
　ニュースによると、場所によっては電車が停まったりしてるようなので、移動用のショートショート<strong><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488605018">『未来世界から来た男』</a></strong>（フレドリック・ブラウン）のほかに、長時間閉じこめられたとき用の分厚い辞書みたいな書物（<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4791760298?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4791760298" target="blank">『中国美味礼讃』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4791760298" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>っていう中華料理の歴史本）を鞄に忍ばせている。<br />
　おやっ、遠くから陽気で悲しげなお囃子が、ぴょろりろーと聞こえてくる。経験上、道に迷ってるときにお囃子が聞こえるとなぜか不安が倍増する。犯人（？）は、角を曲がったところにある居酒屋のチェーン店だった。待てよ、この居酒屋、地図にあったぞ。ということはもうちょっとまっすぐ行けば……。<br />
　あった！<br />
　と、待ち合わせの店に到着する。今夜は、なんとなくこの日予定が空いてた人で集まってのご飯会である。うろうろ迷ってた割には一番乗りだったので、さきにサワーを頼んで飲みながら、ボーッと待つ。……おっ、Ｋ子女史がきた。続いてＫ島氏とＦ嬢が、あと書店員さん二人も到着した。<br />
　書店員さんお勧めの<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4480804307?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4480804307" target="blank">『こちらあみ子』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4480804307" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>が面白かった話とか、シバリョー占いに続いて、貴志祐介さんのどの作品が好きかで性格がわかる〈貴志祐介占い〉を開発してみたりとか（ちなみにわたしは<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4041979064?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4041979064" target="blank">『青の炎』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4041979064" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>……）、なんだかんだ言ってるうちに、ふっと、<br />
（今夜はＫ島氏がおとなしいな？）<br />
　と異変（？）に気づいた。わたしが隣でなにを言ってもニコニコうなずいているし、「えぇ」「はい、はい」と肯定の相槌がやけに多いぞ。……おかしい。なにかいいことあったのか？　いや、ちょっとばかりいいことがあったぐらいで、好々爺みたいになるなんて、本読みの風上にもおけない（？）……。<br />
　とつぜん向きなおって、怒りながら、<br />
<br /><blockquote>
わたし「どうしたんですかっ！」<br />
Ｋ島氏「い、いや、どうって……。年末年始も都内にいたんですけど、先週いっぱい、ようやく休みが取れて故郷の函館に帰省してたんですよ。雪が積もってる中、毎日、おいしいものを食べて……あっ、これ、おいしかったものの写真です～（と、お刺身の写真を見せつつ）……読みたい本をたらふく読んでたら、心が浄化されて、いつになく、こぅ、真っ白な気持ちにですね……」<br />
わたし「真っ白ぉ！？（顔、こわばる）」<br />
</blockquote><br />
　Ｋ島氏は胸の前で両手を合わせたマリア様のようなポーズで、かつモナリザみたいな微笑を浮かべ、小首をかしげたままこっちを見ている。<br />
　その肩をつかんで乱暴に揺さぶり、<br />
<br /><blockquote>
わたし「はやくもとにもどってくださいーっ！」<br />
Ｋ島氏「あははは」<br />
</blockquote><br />
は、函館でいったいどうしちゃったんだ……。たった一週間で……。<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00007IGB0?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B00007IGB0" target="blank">『カッコーの巣の上で』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=B00007IGB0" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>とか<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B003EVW6B8?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B003EVW6B8" target="blank">『時計じかけのオレンジ』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=B003EVW6B8" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>とか、恐ろしい映画の名シーンの数々が不吉に胸をよぎる。もしくは<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B001DJ905S?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B001DJ905S" target="blank">『暴力脱獄』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=B001DJ905S" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>……。<br />
　と、唖然としているわたしを置いてきぼりに、ご飯会はなごやかに進んだ。喫茶店に移動してケーキかパフェでも食べますかー、と立ちあがって、コートを着たり鞄を持ったりしていたら、Ｋ島氏が座ったままコートを羽織って、グレーのカーディガンのフード部分をコートから出し、頭にふわっとかぶった。<br />
　その様がなにかに似てるなーと首をかしげながら、さきにレジに向かって歩き出そうとして、はっと気づいて、張り切ってタターッともどった。指差して「市橋容疑者っ！」とおっきな声で言うと、ここ二時間ほど菩薩のようだったＫ島氏の顔が、とつぜんキリキリとひきつった。<br />
　おっ、と期待して、おそるおそる見下ろしていると、フードの下から鬼神のような形相が現れた。紅蓮の炎をたぎらせてこちらを睨みあげ、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「桜庭、さ、ん……」<br />
わたし「はい？」<br />
Ｋ島氏「おっ、おっ……」<br />
わたし「はい、はい」<br />
Ｋ島氏「覚えて、らっしゃい！」<br />
わたし「あーっ、すみません……」<br />
</blockquote><br />
　プンスカ、プンスカと怒りだしたＫ島氏に、腰をカックリと九十度曲げて謝りながら、気づかれないようにこっそり、にやにやする。こうじゃなくっちゃ。これからも、Ｋ島氏が白くなろうとしたら、腹が立つようなことを言って、全力で阻止するゾー。<br />
　と、にやにや謝っているわたしの横を通り過ぎながら、書店員さんたちが「それより、桜庭さん。ズボンの穿き方まちがってない？」「へん、へん！」と、揃ってわたしの股を指差した。へっ、と一同、わたしのズボンに注目する。<br />
　年末に買って以来、気に入ってヘビロテしている紺のカーゴパンツ。きっと尻周りの奇抜な飾りだろうと思って股にくぐらせていた二本のヨレヨレした紐状のものを、全員で指差して、一斉に「それ、飾りじゃないですよ」「どう見てもサスペンダー」「どうして股にくぐらせようなんて思ったんですか？」「へんなのー」とダメだしする。そ、そうだったのか……。<br />
　サスペンダーを股にくぐらせたままの、帰り道。<br />
　Ｋ島氏は一瞬白かったけど、すごむし、わたしも股の間にサスペンダーをくぐらせててへんだし、時の経過で変わっていくものはあるけど、でもやっぱりここにいる……と思いながら、満腹の腹を抱えて帰ってきた。<br />
　ごろーんと横になって、枕元においてあった<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4896916603?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4896916603" target="blank">『〈映画の見方〉がわかる本　「2001年宇宙の旅」から「未知との遭遇」まで』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4896916603" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>を手に取った。<br />
　映画評の書き手で個人的に好きなのが、四方田犬彦さんと沢木耕太郎さんと、この町山智浩さんだ（小説だと、北村薫、辻原登、若島正、松浦寿輝とかかな……）。シリーズ二作目の<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4896919742?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4896919742" target="blank">『〈映画の見方〉がわかる本　80年代アメリカ映画カルト・ムービー篇　ブレードランナーの未来世紀』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4896919742" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>を読んですげー面白くて、新宿中の本屋で一作目のこれを探したんだけどみつからなかった。それを書店員さんに話したら、「データを調べたら、名古屋の支店に一冊あった！」と、新宿の店舗まで取り寄せてくれたのだ。<br />
　わたしはレンタルビデオ屋にべったり貼りついては、昔の映画を時系列ばらばらに摂取した世代で（もっと年上だと、名画座とかに行かないと昔の映画は観られなかったのでは）、恵まれてる一方で、どういう経緯でこういう映画が生まれた、とかの歴史にはうといのだ。この本を読むと、60年代、ハリウッドの大作が若者たちに受けいれられなくなって、70年代にかけて、作家性の強いニューシネマ（<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B004E2YUJM?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B004E2YUJM" target="blank">『イージー★ライダー』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=B004E2YUJM" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B003EVW5F0?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B003EVW5F0" target="blank">『俺たちに明日はない』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=B003EVW5F0" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00438QB2G?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B00438QB2G" target="blank">『卒業』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=B00438QB2G" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>などアンハッピーエンドの青春ドラマ）が流行って、そしてその流れから76年に出てきたスタローンの<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B003KK0MMS?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B003KK0MMS" target="blank">『ロッキー』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=B003KK0MMS" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>によって、再びアメリカの若者にハッピーエンドが受け入れられるようになって、ニューシネマは終焉を迎え……。という歴史がわかって、そしたら頭の中に長年、ゴッチャゴチャに詰めこんだままだった映画の記憶が、いまになって小気味いいぐらいすっきり収納されていった。<br />
　深い知識と、さらなるデータ収集。ジャンルへの偏愛。それを武器に、自分なりに歴史を再構築していく想像力の“力技”。客観と主観、冷と熱のバランスがすごく好きで、こういう評論っていいよな……と思いながら、遅くなったけど最後まで一気に読んで、映画がやっぱり大好き、と思いながら、ばたっと寝た。<br /></div>
<div align="right"><font size="3">（2011年3月）</font><br /><br /></div></td></tr><tr>
<td>

<hr color="gray" size="1">

<div style="FLOAT: right; WIDTH: 150px"><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024680"><img height="203" alt="本に埋もれて暮らしたい" hspace="12" src="http://www.tsogen.co.jp/img/cover_image_m/2468.jpg" width="138" vspace="10" border="1" /> 
<div style="TEXT-ALIGN: center"><img height="18" alt="書籍の詳細を見る" src="http://www.webmysteries.jp/images/shosekishosai.jpg" width="100" border="0" /></div></a></div><font color="navy" size="2">■ <b>桜庭一樹</b>（さくらば・かずき）</font><br /><font size="2">1999年「夜空に、満天の星」（『AD2015隔離都市　ロンリネス・ガーディアン』と改題して刊行）で第1回ファミ通えんため大賞に佳作入選。以降、ゲームなどのノベライズと並行してオリジナル小説を発表。2003年開始の〈GOSICK〉シリーズで多くの読者を獲得し、さらに04年に発表した『推定少女』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が高く評価される。05年に刊行した<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488472016">『少女には向かない職業』</a>は、初の一般向け作品として注目を集めた。“初期の代表作”とされる<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488472023">『赤朽葉家の伝説』</a>で、07年、第60回日本推理作家協会賞を受賞。08年、『私の男』で第138回直木賞を受賞。著作は他に『荒野』『ファミリーポートレイト』<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024505">『製鉄天使』</a>『道徳という名の少年』『伏－贋作・里見八犬伝－』、エッセイ集<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488070649">『少年になり、本を買うのだ　桜庭一樹読書日記』</a><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488070663">『書店はタイムマシーン　桜庭一樹読書日記』</a><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024529">『お好みの本、入荷しました　桜庭一樹読書日記』</a>など多数。最新刊となる読書日記第４弾<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024680">『本に埋もれて暮らしたい　桜庭一樹読書日記』</a>は好評発売中。</font></td></tr></tbody></table>

<br />

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<a href="http://www.tsogen.co.jp/">ミステリ小説、ＳＦ小説｜東京創元社</a>]]>
        
      
    


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    <title>またまた桜庭一樹読書日記　【第７回】（1/2）［2011年2月］</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba1102-1.html" />
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    <published>2011-02-07T04:06:31Z</published>
    <updated>2011-02-07T02:35:07Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webmysteries.jp/">


   
      
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><img height="320" width="239" alt="似てる？" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1102_01.jpg" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1">
<b>【似てる？】</b>『本に埋もれて暮らしたい』刊行にあわせて、某書店さんでフェアをしていただけることに。で、店内配布用ペーパーに書店員さんが四コマ漫画を描くことになって、打ち合わせ中にわたしの似顔絵を練習し始め……「あれっ。いろいろやってみたけど、目や鼻を描いてないのっぺらぼうバージョンがいちばん似てますねぇ」「えーっ、まさかそんな……って、ほんとだ！？」と一同、おどろいたのだった。（桜庭撮影）</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>

<tr>
<td><br />
<font size="3"><b>１月某日</b></font><br /><br />
<p><font size="3"><b>おれたちの仲間で床の上で死ねれば極楽じゃ。たいていの者は旅で死んだ。その場で埋められて木の十字架は立っても、あとは雨や風に曝されるばかり。そして誰からも忘れられるんじゃ。牛の暴走に巻き込まれて、土と血でこねた肉団子のようになったアリンド、牡牛角にかけられ三メートルも放り上げられ、腸を垂れ流して死んだジョゼ、酒の上で口論し決闘して二人とも死んだ奴らもいる。破傷風でひきつりもがいても手当の法もない、無法者ぞろいが肩ひじをはり、思いのままのことをしておったが、みんな消えていきよったわい<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『うつろ舟』</font></div><br />
<br />

</td></tr>
<tr>
<td><font size="3">
　むくっ。起きたぞー。<br />
　あっ、今日、テレビだ。<br />
<strong>「週刊ブックレビュー」</strong>の収録である。特集コーナーで<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/416329760X?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=416329760X" target="blank">『伏　贋作・里見八犬伝』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=416329760X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>をやってくれるのだ。コーヒー飲んで、ご飯食べて、着替えて、ちょっとだけ仕事する。<br />
　出かけようと鞄にあれこれ荷物を入れながら、ふっと脳裏をよぎる記憶があった。もう何年か前……書評ゲストとしてこの番組に出た後、実家からかかってきた、電話だ……。<br />
<br /><blockquote>
母　　「見たわよー。近所の人たちも、みんな見たわよー。ねぇ、あんた、年配の人たちに、とってもウケがいいわよ！　なんだか昔の子みたいだからかねー（←褒めてるつもり？）」<br />
わたし「……」<br />
母　　「アッ……（そわそわ）」<br />
わたし「……それって、垢抜けないってこと？」<br />
母　　「……アッハッハッハ！　だって、うちの周り（鳥取）にもさ、あんたみたいな感じの子、もう一人もいないのよー」<br />
わたし「あんた、みたいな……？」<br />
母　　「アッ……。いけ、ない……。ほんとに、もう……。<strong>『笑点』</strong>が始まっちゃう！！」<br />
</blockquote><br />
　ガチャン！<br />
　と、ちゃんと怒る前に電話は切れてしまったのだった……。い、いかん、やなこと思いだしちゃったよ……。<br />
　ま、気を取り直して、元気に出かける。<br />
　収録は無事に終わって（書評ゲストの堀江敏幸×豊崎由美×いしいしんじの掛け合いが面白かった！）、近いので徒歩で文藝春秋に向かって、<strong>〈週刊文春〉</strong>のインタビューを受けてから、本屋によって、てろてろと帰ってきた。<br />
　1936年に、19歳でブラジルに渡った日系移民、松井太郎の小説<strong><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4879842850?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4879842850" target="blank">『うつろ舟』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4879842850" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></strong>を、寝っ転んで読み始めた。<br />
　農場主の息子ツグシは、父の死後、悪妻を得て物狂いを起こし、農場を妻とその一族に盗られてしまう。家を出て一人になり、ちいさな借地で暮らしながら、過酷な自然の中で生きるが、ある日、その土地もまた出て行かねばならなくなった……。<br />
　自然描写の荒々しさの中で、獣のように寡黙な主人公ツグシの傍らにいつしか寄り添って、うなずきながら読んで、この、主人公を信じたり心配したりしながらいつのまにか自分も寡黙に、自然の只中に放りだされたような心地になっていくこの感じって、なにかに似てるなぁと考えていて、途中で、あぁ、子供のころのシートン動物記だっ、と思いだした。孤独な銀色狼や、獰猛な灰色熊、弱くて強いちいさな鳥の話……。<br />
　主人公は自然に追われるように、流れ、流れて、死んだ女の連れ子を育て、裏切られ、またどこかに流れていく。運命のきまぐれな命令みたいに、けっしてひとところにずっと居られない。獣に安住の地がなく、生き延びる戦いが日常として続くように。<br />
　松井太郎は、息子がサンパウロにスーパーマーケットを出したのを機に隠居し、以降、70年代から30年以上にわたって小説を書き、自ら装丁、定本した全集を出し続けている。解説によると<strong>“彼の静かな存在は、ブラジルの日本語文学の最後の光芒のように思える。現実主義におおいつくされたかのようなブラジル移民文学の、べつの可能性を終盤になって示し、たそがれる太陽の残光がひときわ眩しく見えるように、その最後の特異点として輝いている。”</strong><br />
　日本で刊行されないと、なかなか読めないから、出てくれてよかった……と思いながら、だんだん眠くなってきて、ばたっ。寝た。<br />
<br /></font></td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
<li><a class="current" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba1102-1.html">1</a></li>
<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba1102-2.html">2</a></li>
</ul>
<br />

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<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/searchresult.html?mgen_id=134" target="_blank">本格ミステリの専門出版社｜東京創元社</a>]]>
        
      
    


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    <title>またまた桜庭一樹読書日記　【第６回】（1/3）［2011年1月］</title>
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    <published>2011-01-06T04:00:45Z</published>
    <updated>2011-01-29T00:18:35Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webmysteries.jp/">


   
      
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><img height="324" width="242" alt="フリル王子とミンクのマフラー" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1101_01.jpg" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1">
<b>【フリル王子とミンクのマフラー】</b>『伏－贋作・里見八犬伝－』サイン会当日のフリル王子。装丁にあわせた赤紫色のミンクのマフラーとスカート。お話に合わせた犬模様のネクタイ。女性陣完敗（100対ゼロぐらいで……）の夜……。（桜庭撮影）</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>

<tr>
<td><br />
<font size="3"><b>12月某日</b></font><br /><br />
<p><font size="3"><b>　あやまらない。誰にもあやまらない。たとえ兄に最悪のことがあってもだ。他人が兄やわたしをどう思おうと、兄さん、わたしはあやまらないわよ。もしもどこかで道に迷いそこから出てこられなくなったのだとしたら、それは兄さんが自分で望んだ時だけだ。<br />
<br />
「厭になっちゃう」<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『海炭市叙景』</font></div><br />
<br />
<p><font size="3"><b>「この体におまえを宿した日を一生呪うわ」<br />
<br />
　つまりは、この自分も両親に負けず劣らず異常だったというわけか。<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『罪深き愛のゆくえ』</font></div><br />
<br />
<p><font size="3"><b>「中国の昔話に超猿（スーパーエイプ）の話があるのを知っているな。人間ってのは、結局、あの猿なんじゃないかね？　どんなに遠くまで行っても、《神》の掌から逃げだすことはできないのさ」<br />
<br />
「それが、《神》のやりくちなんだ。かれと取りひきしようとひとりの人間が考える――その結果、おそろしく多勢の人間が苦しむ羽目になる」<br />
<br />
《神》のユーモアを、私は憎悪する。<br />
<br />
〈われわれと共にいる神は、われわれを見捨てる神〉<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『神狩り』</font></div><br />
<br />

</td></tr>
<tr>
<td><font size="3">
<blockquote>
プロデューサーさん「そのエリンギ……」<br />
わたし　　　　　　「エリンギ！？」<br />
プロデューサーさん「邪魔だから、どかしていいですか？」<br />
わたし　　　　　　「む、むむっ……」<br />
</blockquote><br />
　師走には、まだまだ早いものの、街にはクリスマスソングが溢れ始めて困ったなぁ、というころ。
<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/416329760X?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=416329760X" target="blank">『伏－贋作・里見八犬伝－』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=416329760X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>が無事に刊行されて（よかった……）、週末に開催されたサイン会も終わって、週が明けた日。<br />
　いまでは普通のカーテンがかかっている仕事場に、ＴＶクルーがどやどやとやってきた。<b>「王様のブランチ」</b>の撮影隊だ。<br />
　前日、へろへろであちこちを掃除したものの、無駄に広いせいでなにがなんだかわからない。どこかに掃除し忘れてるところはないか、目が慣れてるせいで自分だけ気にならないけど、じつは異様なものが転がってたりしないか、と心配しながらクルーを招きいれたとたん、「そのエリンギ……」と床を指差されて、固まった。<br />
　なに、エリンギ？<br />
　担当Ｓ藤女史も、ライターさんも、リポーターさんも、わたしと一緒に女四人、そろってちょっとだけ中腰になり、せわしなくキョロキョロする。<br />
　しばしの間をおいて、<br />
<br /><blockquote>
プロデューサーさん「あっ、まちがえた！　デロンギだった」<br />
わたし　　　　　　「…………あぁ！」<br />
</blockquote><br />
　と、デロンギヒーターを、エイエイと蹴ってどかす。<br />
　撮影は二時間ちょっとで無事に終了して、その後、文春の編集さんたちと試写会を観にいくことになった。時間があるので、Ｓ藤女史と軽くご飯を食べて、ブータンノワールのムースというのを「なんだかわからんけどめちゃうまいすね」「自分では作れないご飯ってうれしいですねー」と薄切りの外国のパンにのっけてもりもり食べながら、さいきん面白かった本の話をした。<br />
　わたしは、ちょうどいま山田正紀祭りを開催中。なぜかというと<b><a href="http://www.gosick.tv/" target="blank">「GOSICK」</a></b>のアニメの監督がファンクラブに入ってたというほどの読者だ、と聞いたからだ。担当のＫ子女史も好きらしくて、お勧めを聞いたのだけれど、初期作品は<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150309949?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150309949" target="blank">『神狩り』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4150309949" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>の新装版が今年の春に出てるものの、監督一押しの<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4199050515?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4199050515" target="blank">『チョウたちの時間』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4199050515" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>と、Ｋ子女史偏愛の<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4894564610?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4894564610" target="blank">『宝石泥棒』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4894564610" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>は、残念ながらいま手に入らないのだ……。<br />
<br /><blockquote>
Ｓ藤　「じゃ、古書で買うとか……？」<br />
わたし「むー。でも、いままでの経験から言って、一生懸命捜してようやく手に入れたとたんに、どこからか、ヒョイッと復刊するわけですよー。あのパターンにまた引っかかって、おなじみのガックリポーズをするのもなぁぁと思って、微妙に静観中なのです。でも、結局、捜して買っちゃうのかも……」<br />
</blockquote><br />
　Ｓ藤女史のほうは、これから観る映画<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4094085564?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4094085564" target="blank">『海炭市叙景』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4094085564" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>の原作小説をさいきん読んで、とても気に入ったらしい。芥川賞に五度ノミネートされた作家の、自死によって未完に終わった最後の作品だ。<br />
　映画館に向かって、試写会を見て、帰り道。どこかで一杯飲みますか～、と言っていると、そういえば久しぶりに会った紋別君（いまは<b>〈月刊文藝春秋〉</b>編集部）が、<br />
<br /><blockquote>
紋別君「あれーっ、怪我したんですか？」<br />
わたし「ヘッ？」<br />
紋別君「指に絆創膏が、ほら、ぐるりと（指差す）」<br />
わたし「（見る）これは指輪です」<br />
紋別君「………しまったッ！（と、顔色が変わる）」<br />
</blockquote><br />
　編集部にいちどもどるとかで、急いで横断歩道を渡りながら、振り向いた。黒縁眼鏡を光らせながら、なぜか、<br />
<br /><blockquote>
紋別君「いまの失言、フリルにだけは、ぜったい、ぜったい、言わないでくださいよーッ」<br />
</blockquote><br />
　と、作家に口止めして、茶色いコートの裾を煙のように揺らしながら、雨の渋谷を颯爽と走り去っていった……。<br />
　い、いまの、なんだったんだろ……（たしかフリル王子は一年後輩）。<br />
　その後、二、三杯飲んで、軽く酔っぱらって、一時過ぎにタクシーで帰宅した。雨だなーと思いながら窓の外を見ていると、車内でラジオがかかっていて、世界の天気予報が静かな声で流れてきた。「伯林は、雨。マイナス５度……。リオデジャネイロは、雨。23度……。東京は、雨……。８、度……」目を閉じた。あぁ、今夜は世界中が雨だ。<br />
　帰宅して、風呂に入って、出てきて、誰かが（また誰から聞いたのか忘れちゃった……）“ロマンス小説界のケッチャム”だとお勧めしていたアナ・キャンベルのデビュー作<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4576091506?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4576091506" target="blank">『罪深き愛のゆくえ』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4576091506" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>を読んだ。<br />
　舞台は十九世紀のロンドン。弟妹を育てるためにいやいや高級娼婦になったヒロインは、魔性の女ソレイヤと、信心深くおとなしいヴェリティという二つの人格を意図的に使い分けて２８歳まで生きてきた。ある日、年増になったので引退しようと失踪するが、ソレイヤに恋するイケの伯爵が執拗に追いかけてきて、彼女を拉致し、すごい古城に監禁する……。<br />
　そして、延々、美男美女の大喧嘩が続く……（そうとう、続く……）。<br />
　ヒロインが当初の反骨心から、誘拐犯への愛情に侵食されていく“ストックホルム症候群”の流れと、狂気の血筋に生まれ、父親からの虐待の記憶と、自らの危険で残虐な衝動に苦しむ伯爵の心の謎が、双方から語られて、盛りあがる！　……読みながら、美男美女じゃなくてどちらかが不細工で、欠落と過剰のぶつかり合いになったら、自分にとってはもっと“面白狂おしい”気がして、ソレイヤは絶世の美女だが伯爵がエレファントマン、と脳内で変換してみた。すると禁忌と生理的嫌悪感がつのってきて、さらに盛りあがる。<br />
　著者の二作目は、ポテポテと歩いていた美人の未亡人が、娼婦と間違えられて誘拐されて、叔父によって監禁されていたイケの若い伯爵のもとに連れていかれて、いがみあいながらも次第に惹かれあう<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4576101471?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4576101471" target="blank">『囚われの愛ゆえに』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4576101471" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>らしい。じゃ、こっちでは未亡人のほうを<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B004BLKB5S?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B004BLKB5S" target="blank">『ペネロピ』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=B004BLKB5S" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>のクリスティーナ・リッチにしてみたらどうかなぁ……いや、<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B0021ZMHMQ?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B0021ZMHMQ" target="blank">『ゴーストワールド』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=B0021ZMHMQ" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>のソーラ・バーチとか……と、いちど本をおいて、目を閉じ、贅沢にも“ちょうどいい苦しみ”を捜して、いつまでも、あーだこーだと考えていた。<br />
<br /></font></td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
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<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba1101-2.html">2</a></li>
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</ul>
<br />

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<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/searchresult.html?mgen_id=134" target="_blank">本格ミステリの専門出版社｜東京創元社</a>]]>
        
      
    


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    <title>またまた桜庭一樹読書日記　【第５回】（1/3）［2010年12月］</title>
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    <id>tag:www.webmysteries.jp,2010://6.906</id>

    <published>2010-12-06T04:19:02Z</published>
    <updated>2010-12-06T05:52:55Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><img height="242" alt="伏せる爪" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1012_01.jpg" width="324" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1">
<b>【伏せる爪】</b>『伏』のサイン会にあわせて爪に髑髏犬を書いてみた。タ、タイトルも入れてみた……。ちいさいけど気づいてもらえるじゃろうか？（桜庭撮影）</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>

<tr>
<td><br />
<font size="3"><b>11月某日</b></font><br /><br />
<p><font size="3"><b>　胸くそ悪いな。エドワードのいうとおりだ――ベラは（略）典型的な殉教者タイプだ。生まれてくる世紀を完全にまちがえた。大義のために生贄としてライオンのエサにされるような時代がお似合いなのに。<br />
<br />
「大丈夫だよ、すぐに冷めるさ。“一時的に熱くなってるだけ”なんだから」<br />
　信じられない。あたしは頭を振った。めまいがする。「（略）まさかあなたまでそんなこというなんて」<br />
「でも、そこが人間のすばらしいところなんだよ」エドワードはいった。「物事はうつろい、変わっていくものなんだ」<br />
<br />
ここから出たくてたまらない。人間の世界へもどりたい。すさまじいむなしさを感じる。ジェイコブに会いたい。<br />
<br />
「心配ないよ。きみは人間だ。きみの記憶は指からこぼれる砂のように消え落ちていく。すべての傷は時がいやしてくれるさ」<br />
<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『トワイライト』</font></div><br /></td></tr>
<tr>
<td><font size="3">
　夕方まで仕事してから、<b>〈週刊文春〉</b>で、２００１年から十年間の国内ミステリーを振り返る座談会、という企画があって、出かける。<br />
　文藝春秋の受付ロビーで待っていると、フリル王子（新婚）が、背中に羽でも生えてるかのような軽やかさで階段を駆け降りてきた。「こちらですー」と、エレベーターホールに案内され、「めっきり寒くなりましたねぇ」などと話しながらエレベーターに乗った。<br />
<br /><blockquote>
わたし　　「なに着たらいいのかわかりづらい季節ですよね。秋と冬の間ってのは、まったくねぇー（と、ばーさんみたいに）」<br />
フリル王子「そうですねぇ。今日なんて、とくに目上の方々の座談会ですから、失礼のないような格好と思うと、さらにむずかしいです」<br />
わたし　　「むっ……？」<br />
</blockquote><br />
　まじまじと、隣の美青年を見る。<br />
　本日のフリル王子は、かわいい模様が散った赤いネクタイに、キタキツネみたいなもこもこした毛のベスト。光沢あるラメのジャケット。足元はというと、シンデレラのガラスの靴みたいな銀色のシューズで、どことなく、地面からきらきらと数センチ浮いて見える。<br />
　えっと……？<br />
　――チーン！<br />
　返事をする前に、九階に着いた。と、ショートヘアで細身のジーンズにスニーカー、少年のような女の子（文藝春秋の専属カメラマン）が、勇ましく乗った脚立の上から「あっ、こんちはー！」と言う。わたしも男っぽい服装でぷらぷら歩いてることも多いし、誰が男で女で、何歳で、って最近どんどんあいまいになっている気がするなぁ。なんだか近未来にいるみたいだ……。<br />
　座談会は笠井潔さんと杉江松恋さんと三人で、国内ミステリーの話題だった。無事に終わって、帰り道。余談で出た刑事コロンボの話題（コロンボの口癖「うちのかみさん」が、あれだけいつもかみさんの話をしてて、もしも実在しなかったら？　番外編「ミセス・コロンボ」は別人で……。という話になって、サイコパスバージョンのコロンボが、とつぜんみんなの脳内でうごうご、うごうご動きだした）を、いつまでもうごうご、うごうご考えながら、神保町でふらりと電車を降りた。<br />
　スマトラカレーの共栄堂に入った。ポークカレーを頼んで、さっそくもりもり食べていると、隣のテーブルに３０歳前後ぐらいのスーツの男性二人組が座った。<br />
　そろって大盛りタンカレーを頼んで、うれしそうに食べながら、<br />
<br /><blockquote>
男１「カレーってうまいよな」<br />
男２「同感」<br />
男１「なぁ、俺の彼女ってさ、食べ物の好みがちがうんだよね。カレーほとんど食べないんだ。俺の好きなものを好きじゃないって、どう思う？」<br />
男２「肉食と菜食、みたいなちがいの話？」<br />
男１「ちがう、純粋にカレーの話」<br />
男２「失礼」<br />
男１「あぁ、あと、スシとスパゲティも……」<br />
男２「ふぅん」<br />
男１「……（もぐもぐ）」<br />
男２「（とつぜん顔を上げて）じつはさ、俺の彼女もなんだよ。カレーを食べないんだ。で、二人とも食べたいものっていうと、もう焼肉しかなくってさ」<br />
男１「（ニヒルに笑い）毎回焼肉って、高くつくだろ」<br />
男２「二人で６０００円ぐらい。……で、払うのは俺だし。たいへんだよ」<br />
男１「カレーを食べないなんてっ！　だいたいおまえも、なんでそんな相手とつきあってんだよ！（←と、激高）」<br />
男２「はぁ、若気の至りだよ……」<br />
男１「（ため息）」<br />
男２「（肩すくめる）」<br />
</blockquote><br />
　……なんだいったい？　カレー同好会かなにか？　もう一回、ちらっと様子を窺う。いや、内気そうな、ごく普通の色白の青年二人である。<br />
　激高する白い青年たち（肉食系でも草食系でもなく、カレー系……？）がタンカレー大盛りをかっこむカレー屋をそっと出て、神保町の交差点付近にある映画館で映画を観て、さぼうるでコーヒーを飲みながらパンフレットを熟読して、夜中になってようやくうちに帰ってきた。<br />
　風呂に入って、出てきて、さいきん気になって読み続けている<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4863320132?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4863320132" target="blank">『トワイライト』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4863320132" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>シリーズの３作目を取りだして、めくった。ちょうど一年前の<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024505" target="_blank">『製鉄天使』</a></b>の大阪でのサイン会で、Ｋ島氏が釘付けになってるのを偉そうにさんざん笑った、あれだ。なぜ一年後のいま、わたしが読み始めたのかさっぱりわからないけど……。<br />
　人をひきつけるエンターテイメント作品にあるのは、優れた設定と、しかしそれとは矛盾してしまう、ある種の破綻なんじゃないかと考えたことがある。このシリーズを読むと、とくに。<br />
　舞台は北米の田舎町フォークス。家庭の事情で、フロリダのママの家から、雨と霧に囲まれた町にあるパパの家に越してきた女子高校生ベラは、危険な匂いのする――のもそのはず、じつは吸血鬼の――少年エドワードと恋に落ちる。あなたと永遠に一緒にいたいからと、自分のことも吸血鬼にしてくれと頼むベラ。物語の骨格は、二人の禁断の恋を盛りあげて最後に成就させるという、固定されたハッピーエンドに向かってきっちりとつくられている。<br />
　でも、ベラを取り巻く人びと、個性的な母親や不器用だが優しい父親、新しい友達と学校生活、再会した幼馴染ジェイコブ（じつは狼人間！？）との日々、そして彼らとともに歩んでいくはずのベラの未来の、平凡だけれど幸福な輝き……が、物語をあたたかく包み始めて、決められたハッピーエンド（恋人とともに吸血鬼になって、永遠に十代のまま夜の世界に隠れて生きる。ゴスっ子の夢だ）に抗い始める。幼なじみの少年は、その悲劇を全力で阻止しようと力いっぱい説得し続けるし、作者も、読者も、ベラも、そしてまさかの吸血鬼本人までもが、やっぱり君は吸血鬼になるべきじゃないよ、と同調する。それは、時の流れとともに成長していくことを拒否して“ここではないどこか”へ逃げることだから、でも君の“いまここ”はこんなにも愛と希望に満ち溢れて輝いているのに、と……。<br />
　二巻から、進むべきエンターテイメントの骨格（ゴス・ワールド）と、作者のポジティブな人生観が、もう、がっぷり四つに組んで、大迫力の相撲を取り始めている。登場人物も、読者も、否応なく相撲に巻きこまれる。吸血鬼と狼人間の戦いは、他人事じゃない。十代の少年少女の奥で起こる、死と生、永遠と成熟、逃亡することとここに留まることの、激しいせめぎあいでもあるのだ。そして三巻で、両者の戦いは最高潮に達し……。<br />
　抗う物語を、是が非でも当初の予定通り完結させねばならんと、作者ステファニー・メイヤーが、抵抗する自分自身や、じたばたいやがるキャラクターたちを乱暴に両脇に抱えて、壊れたブルドーザーのように、ハッピーエンドに向かって、雄たけびを上げながら走っていく。もうもうと上がる土煙。みんなの悲鳴。破綻から生まれた勢いとリアリティあふれる叫びが、読者を動揺させ、興奮させる。<br />
“しっかりした骨格”があって、でもそれが“どこかで破綻”し、さらに、“作者にそれをごまかしきる気力と体力と意地がある”とき、物語は呪術のような感染力を得て、伝説的なエンターテイメント作品になる……。<br />
　小説でも映画でも、破綻をみつけると、ついついドヤ顔で指摘したくなるけど、でも、ちがうんだな。そういえば人間も、ブルドーザーみたいに、矛盾した行動をとってるときにものすごくうつくしいことがある……と思いながら、目を閉じて、自分の中でも続いている永遠と成熟の間の長くて苦しいハルマゲドンの轟音にそーっと耳をすませた。<br />
<br /></font></td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
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<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba1012-2.html">2</a></li>
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</ul>
<br />

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    <title>またまた桜庭一樹読書日記　【第４回】（1/3）［2010年11月］</title>
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    <published>2010-11-05T04:30:00Z</published>
    <updated>2010-11-08T13:47:20Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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        <![CDATA[<p>＜PR＞<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024529" target="_blank"><strong>最新刊、読書日記第３弾『お好みの本、入荷しました』発売中</strong>【ここをクリック】</a><br /></p>
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><img height="240" alt="ポジション・デ・ピエの一番" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1011_01a.jpg" width="320" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1">
<b>【ポジション・デ・ピエの一番】</b>飯田橋の「鳥どり」のお座敷で。やおら立ちあがったＫ島氏が華麗に見せてくれたバレエのポーズ。</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>

<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><img height="240" alt="ポジション・デ・ピエの五番" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1011_01b.jpg" width="320" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1">
<b>【ポジション・デ・ピエの五番】</b>そしてポーズその２。や、やわらかい……！</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>

<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle">
<img height="240" alt="トゥ" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1011_01c.jpg" width="320" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【トゥ】</b>ポーズその３。つま先で立ったー！？（桜庭撮影）</font></td></tr></tbody></table></td></tr>
<tr>
<td><br />
<font size="3"><b>10月某日</b></font><br /><br />
<p><font size="3"><b>　修道女たちはわたしたちを騙していたのだと結論を下す、もうひとりのわたしがそこに立ち会っていた。僧服を着る男と、ズボンをはく男の両方が生きている中間の世界が存在するのか、もしくは僧服の衣の下でなされていることをわたしが知らないだけだったのか……。<br />
<br />
「善」と「悪」の中間は存在しなかった。<br />
<br />
わたしは生まれて初めて「世界」の真の自然というものを理解できたのである。もしかしたらそれは「悪」の領分だったのかもしれないが、「知識」の領分でもあったのだ。<br />
<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『誇り高い少女』</font></div><br /></td></tr>
<tr>
<td><font size="3">
<br /><blockquote>
Ｆ嬢　「いたい！　紙で手を切りました……」<br />
Ｉ川君「えーっ、手のどこですか！（と、机によじ登らんばかりに身を乗りだす）」<br />
わたし「あっ、心配してるの？」<br />
Ｉ川君「いえ、あの、前から、なんとなく、Ｆ先輩の血の色って赤じゃないような気がしてて、ついコーフンしちゃって……」<br />
Ｆ嬢　「むむっ（睨む）」<br />
わたし「あぁ！」<br />
</blockquote><br />
　夕方である。<br />
　東京創元社の一階に、今年になって突如出現した（というか改築した）ぴかぴかの応接室。<br />
　刊行されたばかりの<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488472023">『赤朽葉家の伝説』</a></b>文庫をテーブルいっぱいに真っ赤に積んで、ごそごそとサイン本の作成中である。編集部と営業部から交代でお手伝い人員がきてくれては、お喋りして、また去っていく。いまは編集Ｆ嬢と、営業Ｉ川君、ＳＦ班Ｋ浜氏である。このＩ川君はおそらく三年ぐらい前に新人で、読書日記のサイン本を作っているときに「あ、これもお願いします」と色紙を渡されてサインしているとき、Ｋ浜氏がふっと「ん、これはどこに飾るの？」「いや、これはぼくが家に持って帰ります」で、一同ドリフのコントみたいに倒れた、というやりとりがあった男の子……だと思う。（いや、人違いかも？）<br />
　Ｋ浜氏が「そういや、前、時間ＳＦ傑作選<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488715038">『時の娘』</a></b>を褒めてくれてたよねぇ。中村融の編纂だったらホラーＳＦのアンソロジー<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488715014">『影が行く』</a></b>もオススメ！」と教えてくれる。メモメモ。……そういや、アンソロジストで選ぶ読書っていままであんまりしてなかったな？<br />
　さいきん編集さんたちと話しているうちに、だんだんわかってきたのだけれど、アンソロジーの編纂にはどうやらいろいろな切り口があるらしい。ひとつめの方法は、傑作短編をかっちりそろえること。みんなが読んではずれなしのお買い得に仕上げるのだ。もうひとつは、傑作の間にゆるやかな（？）作品もさしこんで、全体のバランスをとる方法。……あれっ、これってなんだか音楽のアルバム作りに似てるなぁ。ということは、ダウンロードの増加で、アルバム買いから好きな曲だけバラ買いする方法が増えたように、短編小説もバラ買いされることが増えていくのかしら。うーん。<br />
　サイン本はようやく半分ぐらい片付いたところだ。そうだ、トイレに行こう、と一階の裏口を出て、ゴス心を熱く刺激するでっかい倉庫（罅割れたコンクリート、謎の機械、生きてるものの気配のなさ！）を横切って、トイレに入った。……うぉっ！　ここも改築されてるぞ！　『２００１年』の宇宙船みたいな、四角くて真っ白な空間がとつぜん目前に現れた。まるでコックピットのような真新しい洋式便器が、静かな狂騒状態で鎮座している。あれっ、れれっ、いつものちっちゃい和式便器は……？　昭和から近未来にうっかりタイムスリップしちゃったみたいだ。<br />
　う、ぃ、ぃ、ぃ、ん……と震えながら便器の蓋が開いたので、こわごわ、座る。すると、どこからか電子のクラシック音楽が流れだした。うわぁぁぁ！　びびってトイレを出て、ゴス倉庫を抜けて、応接室にもどった。あれっ、Ｆ嬢が、黒魔術みたいに縮んだ！……んじゃなくて、いつのまにかオカッパで小柄な新人Ｓ嬢と交代していた。トイレが、トイレが、トイレがね、と言うと、「ふふふ、四階と五階のトイレも改築したんですよ」と得意そうに胸を張り、ちょこちょことエレベーターにわたしをのせて、四階に連れて行ってくれた。<br />
　おぉ、ここにも宇宙船のコックピット的なトイレが……。「じつはですね、内蔵音楽の四番は『残酷な天使のテーゼ』なのですっ」とぽちっとボタンを押すと、なるほど、懐かしい『エヴァンゲリオン』のテーマ曲が流れだした。<br />
<br /><blockquote>
わたし「えーっ。これって、最初から入ってた曲なんですか！？」<br />
Ｓ嬢　「いいえ。製作部のＳ谷氏が入れました。彼は昔から『エヴァンゲリオン』のファンなのです」<br />
わたし「おぉ！」<br />
</blockquote><br />
　しばらく遊んでから、一階にもどって、サイン本の山の残りを片づける。<br />
　時計を見ると六時をすこし過ぎていた。編集部からふらふらと下りてきたＫ島氏と、Ｆ嬢と三人で、いつもの「鳥どり」に行って一杯飲むことにする。<br />
　わたしは生チュー。Ｆ嬢はハイボール。Ｋ島氏は……なにかよくわからないけど、すっごく甘そうな飲み物。そういえばＫ島氏が飲むグラスにはいつも、この南国のピンクのでっかい花（ブーゲンビリア？）が一輪、ささってるなぁ。あの秘密の飲み物はなんだろう。<br />
　そういえば、先週、サラ・ウォーターズの新刊<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488254070">『エアーズ家の没落』</a></b>を読んだ角川書店Ｋ子女史から、「あのラストの解釈は○○○○でいいのかな？」と聞かれたことを思いだす。そのときはたしか、わたしが頭を洗濯機の脱水みたいに絞りまくって、<br />
<br /><blockquote>
わたし「うーむ、古典的ゴシックホラーにはお作法みたいなのがあってね。<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488596019">『ねじの回転』</a></b>（ヘンリー・ジェイムズ）とか<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150404496?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150404496" target="blank">『黒衣の女』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4150404496" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>（スーザン・ヒル）とか。いろいろな解釈ができるんだけど、ミステリーのようにどれが真相、と決めすぎないというか。だからエアーズ家も、幾つかの選択肢を出しながらもその中のひとつを選ばせないし、べつの説に誘導した伏線を、ミスリードでしたーと回収することもない。どれが真相かを決めすぎると、無粋になる……。えーと……。そうですね……。やっぱり専門家（って誰？）に聞いてくださいよ！（急に自信喪失）」<br />
Ｋ子　「ええー」<br />
わたし「って、なんでいやそうなんですか。だいたいわたしに聞くなんてさ！（逆ぎれ？）」<br />
</blockquote><br />
　ということがあった。そうだそうだ、ここに専門家（？）のＦ嬢がいるじゃないかと気づいて聞くと、ハイボールをお代わりしながら、<br />
<br /><blockquote>
Ｆ嬢　「桜庭さんがいまおっしゃったのは、“朦朧法”といいましてね」<br />
わたし「あっ、聞いたことある？　でも誰から？　それなんだっけ？　……あぁ、ワカラナイ」<br />
Ｆ嬢　「朦朧法とは、作中で起こる怪奇現象の原因を明らかにしないで、読者の想像にゆだねることで、恐怖を増すという方法のことです。ヘンリー・ジェイムズやデ・ラ・メアが代表と言われてますが。エアーズ家もまた、犯人を特定する証拠を、おそらくですが意図的に提示せずにいるので、この方法論による作品と言えるのではないかと」<br />
わたし「はー。なるほどー」<br />
</blockquote><br />
　そのあと書評の話になって、Ｋ島氏がとつぜん、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「やはり、坂東齢人の書評は素晴らしかった。後にノワール作家として鮮烈にデビューした馳星周の、書評家としての筆名ですが。ぼくは昔、彼の書評に魅せられて<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062633906?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4062633906" target="blank">『天下を呑んだ男』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4062633906" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>（中村隆資）を読んだんですよ」<br />
わたし「あぁ！　書評家・坂東齢人の伝説はよく聞きます。でもじつは書評じたいを読んだことはなくって……」<br />
Ｋ島氏「彼が、笠智衆のバー『深夜プラス１』のバーテンダーをしながら、書評を書いていたころ……」<br />
わたし「……」<br />
Ｆ嬢　「……」<br />
Ｋ島氏「彼が、内藤陳のバー『深夜プラス１』のバーテンダーをしながら、書評を書いていたころ……」<br />
わたし「……」<br />
Ｆ嬢　「……」<br />
Ｋ島氏「うるさいですよッ！」<br />
わたし「えっ、なにも言ってないのに！？　なぜわたしだけ怒られる！？」<br />
Ｋ島氏「いや、でも、顔が……。桜庭さん、さいきん、お気づきになってないかもしれないですけど、顔芸が発達してて、そこだけべつの生き物のように不気味に動くんですよ……」<br />
わたし「そういやこないだ、マキメさんからも『顔の中からもうひとつ顔が出てきてコワイです』って褒められた（？）けど……。<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4336046379?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4336046379" target="blank">『白い果実』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4336046379" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>（ジェフリー・フォード）の顔面凶器みたいだ……。でもさ、だってさ、うっかり笠智衆と内藤陳を言いまちがえるなんて、そんなことがほんとにあるのかって、驚愕したんですよ！　しかも、わたしならともかく、しっかり者のＫ島氏が……」<br />
Ｋ島氏「ぼくは、疲れてるんですよッ！　やってもやってもゲラの山が。それに原稿が、今週は長編一本、短編四本、いろんな作家さんから一気に届いたりして。いや、ありがたいんですけど……。あっ、そこでコソコソなにしてるんですか！？」<br />
</blockquote><br />
　よれた紙ナプキンに、ボールペンでこっそり“ないとうちん”と書いたところを、Ｋ島氏にみつかり、さらに怒られる。<br />
<br /><blockquote>
わたし「いや、なにも……。わたしは、ただ……読書日記のネタにしようと思って……。忘れないように、その、メモを……」<br />
Ｋ島氏「くぬっ！　こやつの前で口を滑らすと、こうだ！」<br />
</blockquote><br />
　武将のように悔しがる。あはは、ないとうちんー。<br />
　その後、わたしがとつぜんダンスを習いたいと言いだし、するとＦ嬢が、Ｋ島氏が遠い昔、五歳ぐらいのときに函館でバレエを習ってたと暴露する。踊って見せてと女二人でやいやい言っていると、しばし無言で、肩で耐えていたＫ島氏だが……やおら立ちあがり、「鳥どり」のちっこいお座敷で、びっくりするほど華麗に、「ポジシオン・デ・ピエの一番」と「五番」と「トゥ」を見せてくれた。す、すごい……！　足が軟体動物みたいだぞ……！<br />
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「そして、これが……ピルエットー！！（くるくるくるーっ）」<br />
わたし「あわわわ！」<br />
Ｆ嬢　「ブ、ブラボー！」<br />
</blockquote><br />
　そういやＦ嬢もバイオリンが弾けるし、チェロが弾ける編集長もいるし、編集者の副業というか、副特技はなかなかあなどれないのだ……。<br />
　終電間際まで呑んで、地下鉄の改札で二人と分かれた。<br />
　一人になった途端に、すーっと辺りの空気が冷えていって、同時に、あれっ、でもまだ、あの二人に聞いてないことがあるぞ、大事なことを……でも思いだせないおかしいな……という気持ちになった。<br />
　本を読む人たちと会うと、別れ際に、ときどきこういう気分になる。本とは一人で読むものだし、すすんで孤独になる装置だけど、そうやって一人で読んで歩いていって、ときどき曲がり角で再会した誰かに、あの、あれはさ……と聞いたり、師匠すじみたいな人をみつけると、教えを請いたいことがあるのだ。<br />
　でも、問いが思いだせない。理想とする答えも、いまだわからぬ。ぼんやーりした夢の中をずっと、目も見えず、音も聴こえないまま歩き続けてるみたいだ。<br />
　地下鉄に揺られて、帰った。<br />
　鞄に放りこんでいた<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4846010511?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4846010511" target="blank">『誇り高い少女』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4846010511" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>（シュザンヌ・ラルドロ）を読みながら帰って、家についてからもぐいぐいと夢中になって読んだ。<br />
　第二次世界大戦終了後、フランスには無数の“ボッシュの子”（ナチス・ドイツ軍兵士の子）が残された。カトリック社会で、異国の血を引く父なし子を生んだ若い母親たちは責められ、子供たちの多くは修道院の運営する孤児院につめこまれて、貧しく苦しい暮らしを余儀なくされた。著者のシュザンヌもその一人。現在では五十歳を過ぎ、安定した職につき、夫と子と孫に囲まれる彼女は、だが、当時は“誇り高すぎる”という謎の理由で里親にも捨てられ、孤児院でナイトメアじみた不思議な灰色の暮らしを送っていた。<br />
　ノンフィクションだけど、大人版<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4042212018?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4042212018" target="blank">『少女パレアナ』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4042212018" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4334751288?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4334751288" target="blank">『秘密の花園』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4334751288" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>といった、少女ジュブナイルらしい冒険と反骨精神に満ちていて、苦しいけど、ずっと楽しい。孤児院の暮らしと、正反対の性格の少女との友情が、<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4102098011?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4102098011" target="blank">『ジェーン・エア』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4102098011" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>の少女時代のジェーンとヘレンを思いださせる。ジェーンのように卒業していけないまま、使者とともに、永遠にローウッドに閉じこめられているような……。<br />
　訳者解説によると、現在、フランスには“ボッシュの子”が約二十万人いるという。シュザンヌのようにひどく差別されて育った孤児もいれば、家族の“愛情による沈黙”でそのことを隠されて育ち、五十年も経ってから真実を知る場合もある。後者の立場の女性が記した、その名も<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4396650396?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4396650396" target="blank">『ボッシュの子』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4396650396" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>という本も同じ訳者で刊行されている。<br />
　ひどく酔いが回ってきた。読み終わって、寝た。<br />
<br /></font></td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
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</ul>
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