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    <title>桜庭一樹読書日記｜Webミステリーズ！</title>
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    <updated>2010-08-05T05:40:00Z</updated>
    <subtitle>ミステリ・ＳＦ・ファンタジー・ホラーの専門出版社・東京創元社が配信する月刊Webマガジン</subtitle>


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    <title>またまた桜庭一樹読書日記　【第１回】（1/3）［2010年8月］</title>
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    <published>2010-08-05T05:30:00Z</published>
    <updated>2010-08-05T05:40:00Z</updated>

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        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><img height="240" alt="変なＴシャツ" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1008_01.jpg" width="320" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【変なＴシャツ】</b>文春Ｉ井氏からの誕生日プレゼント。達筆な謎Ｔシャツ。下は同じく文春Ｓ藤女史からの入浴剤「くたばるな、わが身！」。チアリーダーのコスプレのおばあさんが、瀕死のおじいさんを応援している写真つき。そんなこんなでまたひとつ齢を取ったのだった。くたばるな～、わが身～！（しかし猛暑～あち～）（桜庭撮影）</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>
<tr>
<td><br />
<p><font size="3"><b>　洗濯が苦手なので、下着は新しく買って、今まで着ていたものを橋の上から川に捨てるという話も聞いた。私はその話を聞いた時、思わず喝采した。チマチマと小さな常識に腕を通してまとっている自分を嘲笑したのだ。（略）<br />
　公園の地下に、茉莉さんの白い下着がずらっと眠っている絵柄が浮かんでくる。地中のパンツ達が地上の凡庸な喧騒を笑っているのだ。それを思うと愉快になってくるのである。<br />
<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『劇的な人生こそ真実』</font></div><br /></td></tr>
<tr>
<td><font size="3"><b>７月某日</b></font><br /><br /><font size="3">
　チクワを縦半分に切ったのの天ぷらがあったので、箸ではさんで口元に持っていき、齧った。<br />
　すると……。<br />
<br /><blockquote>
わたし「バナナだ！？」<br />
</blockquote><br />
　お昼の十二時過ぎ。<br />
　場所は飯田橋のホテル内の和食屋さん。個室の黒い長テーブルに大人が八人も座り、和食のコースをもぐもぐと食べている。目の前にいるのは、作家の辻真先さんと貫井徳郎さん。あとは東京創元社の編集さんたちである。<br />
　今日はミステリー短編の新人賞「<a href="http://www.tsogen.co.jp/tanpensho/index.html">ミステリーズ！新人賞</a>」の選考会だ。今回、生まれて初めて選考委員なるものをやることになった。緊張と、あと普段は昼まで寝てることもあって、けっこう寝不足である。<br />
　貫井さんが重々しくうなずいてみせて「そうなんですよ。チクワじゃなくてバナナだったんです。ぼくもさっき齧ってびっくりした」と言う。それを聞いた辻さんが、（えっ、ほんとにバナナなの！？）と警戒するように天ぷらをみつめる。<br />
　前から不思議に思っていたんだけど、いろんな賞の選考会で「コースのごはんを食べながらみんなで侃々諤々」って、食べてるのかしゃべってるのか、なにがなんだかわからなくならないのだろうか。と、初めてなのできょろきょろしながら見ていたが、みんなでぽんぽんと議論していて、ふっと天使が飛んだ瞬間、Ｉ垣女史が「まぁ、お食べになって」とほんわかと言うので、はっとして、ガラス鉢の中で冷えた茄子や、ぴちぴちのお刺身などに箸を伸ばす。そのあいだずっと八人の頭上に天使がぐるぐる飛び続けていて、なんとなく、みんなこの皿を食べ終わったな、というころに、誰ともなく「しかしこの書き手のよいところはですね……」と議論を再開する。すると天使がふっとかき消える。その繰りかえしで粛々と時が過ぎていく。<br />
　って、こうなってたのか！<br />
　発見である。そーうーかー。<br />
　で、議論のほうはかなり意見が分かれた。これまで、好きな本はただただ「好きだっ！」できたけど、こういうお仕事も請けるようになったら、どこがよいのか、逆にこの作品はなぜだめなのか、ちゃんと言語化できないといけないなぁ、と思った。あと、自分の読書傾向とちがうものも真っ白になって読んで、フェアに判断できないといけない……（だけどそれってたいへんむずかしい……）。<br />
　三時間ちょっとかかって、選考会が終わった。喫茶室でみんなでケーキやパフェをもりもり食べて、帰ってきた。<br />
　でも、あれっ、まだ夕方である。ようやく四時を過ぎたところじゃないか。<br />
　床にごろごろしてちょっと寝て、起きた。読みかけの<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4103168129?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4103168129" target="blank">『劇的な人生こそ真実　私が逢った昭和の異才たち』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4103168129" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>があったので、手を伸ばしてつかんで、読み始めた。数日前にＩ垣女史からお勧めのメールをもらって、「これは！」とさっそく買ってきたのだ。<br />
　萩原朔太郎の孫で、萩原葉子の息子である萩原朔美が書き記した、昭和の七つの風景。著者は高名な文学者の家に育って、それに写真を見るとびっくりするほど端整な、絵になる美男子（ドリアン・グレイみたいな）だ。若いころから年上の人たちにかわいがられて、アイビーファッションに身を包んで、渋谷パルコのタウン誌「ビックリハウス」を創刊したり、寺山修司の劇団「天井桟敷」や暗黒舞踏の土方巽の舞台で演出を任される。<br />
　その若い日の萩原に、タウン誌を任せてくれたパルコの創設者、増田通二に関する章が、面白い。増田は高校生のときに空襲に遭って、自分の家も駅も商店もなにもなくなった空間を目撃した。「何にもないんだ。広い公園なんだ」「無くなるんだ街は」そして、大人になった彼がつくったデパート、渋谷パルコは、渋谷駅を出て坂をのぼったところにある。彼はいちど街を、建物もなにもなくしてただの空間にして見てから、企画を立てる癖があった。坂の上にいいもの（お城？）があって、そこに向かって女の子たちがのぼっていくイメージでパルコは造られた。そして“パルコ”とはイタリア語で“公園”のことなのだ……。<br />
　ほかにも、母の友人、森茉莉と子供のころから仲がよかったり、<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4877287817?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4877287817" target="blank">『家畜人ヤプー』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4877287817" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>の発表前からなぜか沼正三と親交があったり（新潮社校閲部の名刺をもらったって……えー……）と、見えるようでなかなか見えない、昭和のアングラの世界がぱかぱかと口を開けて「こうだったんだよー」と教えてくれる。<br />
　こりゃ、おもしろい……。たしかに……。と思いながら、選考疲れか、一冊読み終わったら気が抜けて、いつもより早く、まるで知らない人に首の後ろの電源ボタンをとつぜんぽちっとＯＦＦにされたように、ぱたっと寝た。<br />
<br /></font> </td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
<li><a class="current" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba1008-1.html">1</a></li>
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<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba1008-3.html">3</a></li>
</ul>
<br />

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    <title>また桜庭一樹読書日記　【第13回（最終回）】(1/3)［2010年7月］</title>
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    <published>2010-07-05T05:00:00Z</published>
    <updated>2010-07-05T01:24:44Z</updated>

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        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webmysteries.jp/">


   
      
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><img height="240" alt="ランチョンの男" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1007_01.jpg" width="320" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【ランチョンの男】</b>〈小説すばる〉の長編が神保町を舞台にしてるので、缶詰になりつつ、夕方からこの町をウロウロ。と、大通り沿いの洋食屋〈ランチョン〉のウインドウに不審な男（？）発見！　これはイケメンなのか……。わ、わからん。識者の指導が待たれる。（桜庭撮影）</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>
<tr>
<td><br />
<p><font size="3"><b>それなら谷崎潤一郎が、人間以外のどんな動物に似ているか？　といえば「鯛」である。潤一郎は生前、鯛のさしみと、うしおをこよなく愛して賞味したけれど、そんなこととは関係なく谷崎潤一郎はどうしても鯛に似ているのだ。鯛といっても目の下一尺以上の桜鯛である。ガッと見開いた大目玉、八の字に結んだ分厚い唇、鋭い歯……。その人相はどちらかといえば傲慢な面構えとでもいうのだろうか？　そしてその身体を包むはんなりとした桜色のウロコこそ、谷崎文学を象徴するものだと私は思う。<br />
<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『わたしの渡世日記』</font></div><br />
<br />
<p><font size="3"><b>　私は、高峰秀子という人の半生を思う時、草原の只中で、生まれるとすぐに立ち上がるカモシカかキリンの子供を思い出す。すぐに立ち上がって走り出さなければ、ライオンやハイエナの餌食になってしまう、草食動物の子供。<br />
<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『高峰秀子の流儀』</font></div><br /></td></tr>
<tr>
<td><font size="3"><b>６月某日</b></font><br /><br /><font size="3">
　主に<b>〈小説すばる〉</b>の原稿で缶詰になっている。六章仕立ての五章を上げたところで小休止。<b>〈野性時代〉</b>用の短編を書き溜めているところに、<b>〈小説現代〉</b>Ｋ村女史からあいふぉんにメールが入った。<br />
<br /><blockquote>
にゃ～<br />
急用です。<br />
<div align="right"><b>〈小説現代〉</b>編集部　Ｋ村</div>
</blockquote><br />
　目を、疑う。<br />
　あのクール＆ストレンジなＫ村女史が。Ｉ本女史が隣でなにをしても、細い指にはさんだ葉巻がぴくりとも震えないＫ村女史が。にゃ～？<br />
　事件だ。<br />
　さっそく会うことにする。例によっていつもの日本酒バーである。……あれっ、先に着いちゃった。いつもは、約束の時間よりちょっと前にきて、まずビールを飲みながら本をめくり、打ち合わせ前の一人の時間を楽しんでいるＫ村女史が、まだきてない。<br />
　と思ってると、しばらくして、チェシャ猫の笑みを浮かべたＩ本女史ともつれあうようにして入ってきた。とはいえ、Ｉ本女史が進路に立ちふさがっていてなかなか近づいてこない。<br />
　ようやくカウンターについて、一息。<br />
　日本酒を冷やでやりながら、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ村女史「じつは、重大な報告がありまして」<br />
わたし「結婚するんですね（真顔）」<br />
Ｋ村女史「ぜんぜんちがいます（真顔）」<br />
わたし「……でも、“にゃ～”？」<br />
Ｋ村女史「あれは、先月から猫を飼い始めたんです！　かわいいんだにゃ～。写真見ますか。この子ですにゃ」<br />
</blockquote><br />
　携帯電話の画面につぎつぎ、尖った耳をした寡黙そうな外国の猫……こう、Ｋ村女史を猫にしたような……の写メが現れる。なんだ～と唸っていると、Ｉ本女史が、<br />
<br /><blockquote>
Ｉ本女史「昔から、猫を飼い始めたとたんにモテたり、恋人ができる女っているんすよねぇ。いったいなんでだろうと思ってたけど、そうか、これかと」<br />
わたし「ウン。このとつぜんの変化はいったい……。クールなＫ村さんの語尾がにゃ～とは。それでてっきり」<br />
Ｋ村女史「毎日、かわいいんですにゃ。でも今日は猫の話をしにきたんじゃありません」<br />
わたし「………………（考える）アッ、異動！？」<br />
Ｋ村女史「当たりです。六月から<b>〈群像〉</b>編集部にいきます」<br />
わたし「えー！？」<br />
</blockquote><br />
　もともと、単行本担当だったＭ澤氏が、ようやく一冊書くというときに<b>〈群像〉</b>編集長になって、担当がＩ本女史に替わった。で、書き下ろし（<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062151324?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4062151324" target="blank">『ファミリーポートレイト』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4062151324" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>）が出て、Ｉ本女史から「Ｋ村が待ってるからつぎは<b>〈小説現代〉</b>で書いて」と言われていたのだ。ウーン、ようやくだったのにな……。でも、聞くと副編集長になったようなので、出世である。よかった。<br />
　といった話をしみじみしていると、隣で、<br />
<br /><blockquote>
Ｉ本女史「フー！　よかった、今夜はこの話をするんで、緊張してたんっすよ！」<br />
わたし「えっ、緊張？」<br />
Ｋ村女史「ええ。Ｉ本は今日ちょっと変でしたにゃ」<br />
わたし「き、緊張……？」<br />
</blockquote><br />
　ふと、半年ほど前の、創元Ｋ島氏との会話を、ホワンホワンホワン……と思いだす。「いまは桜庭さんも特攻服を着てておもしろいですけど、このさき４５歳ぐらいになったら、こわくなってるんじゃないかと。新人の編集さんからしたら、やたら本読んでるし、どうも得体が知れないし……」<br />
　あと、走馬灯のように、２ヵ月ほど前のある焼肉屋さんでの情景も思いだした。そのころ文春でも異動があって、<b>〈別冊文藝春秋〉</b>の担当さんが新人のかわいらしいお嬢さん、Ａ井嬢に変わった。大学のミステリ研究会出身ですと聞いて、なにげなく「好きな作家は？」と聞いた。クイーンとかクリスティとかを連想したポワンとした質問だったけれど……たちまち、ピンクのほっぺにピシッと緊張が走った。<br />
<br /><blockquote>
Ａ井嬢「あの……イギリスの……変態作家が好きです」<br />
わたし「オーッ、変態？　どこらへんですか？（のりだす）」<br />
Ａ井嬢「……（絶句）」<br />
Ｉ井氏「ちょっと、桜庭さん！　Ａ井は変態なんて一言も言ってません！　現代！　現代作家って言ったの！」<br />
わたし「……（絶句）」<br />
</blockquote><br />
　とＩ井氏に注意され、同時に、Ａ井嬢の目からあの怖れが魔法のように消えた（ような気がした）けど、でも、最初の五分ぐらいはなにかよそいき感のある緊張を感じていたのだった。<br />
　これから年齢も上がっていって、新人っぽい感じからベテラン風に代わっていくと、Ｋ島氏曰く、どんどん“得体が知れなく”て“こわく”なっていくのかなぁ、と考える。Ｉ本女史も今日はいつになく緊張していたというし。<br />
　そう考えると、ベテラン編集、Ｉ本女史のスットコドッコイも、緊張の緩和とかその場の空気を明るくするためとか、つまり、得体の知れぬ作家たちと対峙する、頭脳明晰なワーキングウーマンによる“生きるためのスットコドッコイ”だったのかもしれない……。ゴツン！　いたい！　むずかしいことを考えてるわたしの頭に、なにかが当たった。<br />
<br /><blockquote>
Ｉ本女史「だから、騎士っていうのは次男、三男、四男なんっすよ！　悲哀なんです。中世の貴族の男の！　長男しか結婚したり相続したりできないから、次男は馬に乗って国中をうろうろして、人んちの奥さんを、力いっぱい応援するわけですよ！　こうやってね！（と振り回す右手が作家の後頭部に炸裂）」<br />
わたし「……いたい」<br />
Ｉ本女史「人んちの美人の奥さんを、城の外から、毎晩、ヒューヒュー！」<br />
Ｋ村女史「フム。騎士というのは、中世ですね……（←やけに詳しい）」<br />
</blockquote><br />
　そのまま日本酒がヒューヒューと回ってきて、もうぐにゃぐにゃで帰宅。<br />
　眠いけど、きっとすぐには眠れないので、枕元にあった読みかけの高峰秀子の自伝<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4167587025?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4167587025" target="blank">『わたしの渡世日記』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4167587025" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>を手に取った。<br />
　さいきん出た<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/410322231X?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=410322231X" target="blank">『高峰秀子の流儀』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=410322231X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>（斉藤明美）がおもしろかったので、同じ著者による<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4167656582?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4167656582" target="blank">『高峰秀子の捨てられない荷物』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4167656582" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>も探してきて、続けて読んだところだった。こっちの著者は<b>〈週刊文春〉</b>の「家の履歴書」コーナーなどでもよく名前を見かける女性のライターさん。高峰夫婦との親交も深くて、それだけに、読者にとってずっと銀幕の向こうにいた高峰秀子の普段の姿がよくわかるし、なにより「母ちゃん！」と呼んで秀子を慕う斉藤さん本人の人となりにも惹かれる。高峰をときに庇い、ときに批判し、わからないことについてはいつまでもいつまでも考え続ける。まるで、大事な地蔵を磨くように……舐めて、ハーッと息を吹きかけて、絹のハンカチでキュッキュッと磨くの如く……ひたすら愛し続ける。それは、若い女が日々自分の未熟さを痛感しながら、年上の女性を尊敬する、ということを越えて、むしろ男が母を愛するような、もう身も世もない慕い方と思える。<br />
　その著書の中で繰りかえし、銀幕のスター女優だった高峰自身の文才のお話が出てくるので、興味が出てきて、ご本人の手になる自伝もみつけてきたのだ。<br />
　高峰秀子は大正十三年生まれ。幼いころから子役として活躍して学校にほとんど通えなかった。小学校の先生が、動きだした列車を追いかけてまで渡してくれた絵本や、自力でみつけた本で、一字一字ほとんど独学で文字を覚えた。徳川夢声から「ああ利口じゃ、気の毒だ」と評される。やがて大人になる。三十歳で助監督と結婚。本を読みながら、わからない字があると新聞を出してきて同じデザインの文字をみつけて、意味と読み方を察する、という独学法を見た夫が、仰天して、「国語辞典」の存在を教えてくれる。以降は毎日おどろくほどの本をひたすら読み続け、作家や画家などとの親交も深い。<br />
　読み始めてすぐにこりゃすごいと気づいてあとはずっとひたすら襟を正して読んだ。観察力、描写力、客観視、構成力、含羞……。<br />
　ずいぶん前、日本初のカラー長編映画<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000FHVVBA?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B000FHVVBA" target="blank">『カルメン故郷に帰る』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=B000FHVVBA" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>を観たときに感じた、あの正体のわからない違和感を思いだした。ラスト「田舎の人ってかわいいわよね～」と言いながら、カルメンがゴトゴトとリヤカーに揺られて都会に帰っていくとき、フッ、と青い知性が匂った。村人たちから笑われてるけど、本人はいかれてて気づいてない、という単純な構図でつくられているはずの映画が、それまでもところどころ、そしてラストではっきりと反転して、不安定で複雑な物語として脳内で完成した。<br />
　あのときスクリーン越しにはっきりと感じ取った、あの知性のことを思いながら、ひたすら読み続けた。<br />
<br /></font> </td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
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</ul>
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    <title>また桜庭一樹読書日記　【第12回】(1/3)［2010年6月］</title>
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    <published>2010-06-07T04:01:00Z</published>
    <updated>2010-06-07T10:08:47Z</updated>

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        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><img height="320" alt="道徳ノート" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1006_01.jpg" width="240" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【道徳ノート】</b>『道徳という名の少年』イベント後のサイン会で配った小冊子。プロット・ノートをコピーしたもの。途中で足りなくなって、池袋ジュンク堂さんのコピー機を借りて急遽、増やしました。ご来場いただいたみなさん、ありがとうございました！（桜庭撮影）</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>
<tr>
<td><br />
<p><font size="3"><b>糸井　やはりどこかのところで、「私（僕）に芝居の責任を負わせないでくれ」という顔を、全部俳優さんはしていますね。たまに松田優作みたいに、俺に負わせてくれというタイプもいる。<br />
久世　そう、そう。ああいうのは若死にしちゃうから。<br />
<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『久世塾』</font></div><br /></td></tr>
<tr>
<td><font size="3"><b>５月某日</b></font><br /><br /><font size="3">
　ゴールデンウィークど真ん中の、暑い日。<br />
　夕方までにろにょろと仕事して、で、ちょっとだけ化粧して出かけた。<br />
　編集さんと待ち合わせだけど、その前に、ちょうど届いていた<b>〈活字倶楽部〉</b>の本紹介欄で（全部きっちり読んで、私的感想ふくめて熱く紹介しててよい～）気になったところを漢らしく（？）破りとって、鞄にイン。いつもの紀伊國屋書店に入っていって「えーと、これは……」と、自慢のあいふぉんで「紀伊國屋Bookweb」を検索。新宿本店の何階の何コーナーにあるか地図まで出てきてよくわかるので、あいふぉんを覗きこみ、破った活字倶楽部のページもトランプのカードのように握りながら、「えぇぇーと……」と、ふらふら歩く（ものすごい方向音痴なのだ）。<br />
　とこのように、最近、世界の機械化になんとかついていっているのか、ガッツリ乗り遅れてるのか、それともひとり袋小路に迷いこんだのか、自分でもさっぱりわからないオリジナルの超進化を遂げた。……あったぁ！　と、それでも無事にいろいろみつけて、買いこむ。<br />
　オッ。二階の文庫コーナーで、酒見賢一さんの短編集を発見する。どこかで聞いて気になっていた<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062636883?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4062636883" target="blank">「童貞」</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4062636883" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>という中篇が載ってるので、買う買う。<br />
　大荷物で書店を出て、いつもの「面影屋珈琲店」へ。<br />
　待ち合わせ相手の角川書店Ｋ子女史に「混んでるから地下の席にいる」とあいふぉんでメール。すると「道も混んでる！　ちょい待ち！」と返信。<br />
　フンフンと<b>「童貞」</b>を読んでいると、しばらくしてＫ子女史が現れた。<br />
　全身コム・デ・ギャルソンに、角川書店のロゴの入ったおおきな紙袋。そこから、新刊<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/404874058X?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=404874058X" target="blank">『道徳という名の少年』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=404874058X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>の見本が１０冊、どぉーんと出てくる。<br />
　装丁を愛でたり、苦労をいたわりあったり、なんだかんだと言ってから、本をしまい、やっぱり短編はいいですね、という話になる。そういえば、今日買いこんだ本もちょうど短編集ばかりだった。
Ｋ子女史に「いちばん好きな短編は？」と聞くと、すでに脳内で熟考したことのある議題だったのか、間髪いれず、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ子女史「レイモンド・カーヴァーの<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4122029570?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4122029570" target="blank">『足もとに流れる深い川』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4122029570" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>っ！」<br />
わたし「なになに、知らない。どんなお話ですか」<br />
Ｋ子女史「まず、気のいいおじさんＡとＢがいて、両方とも妻帯者なんです。釣りが好きでね、休みの日は二人で遠くの川まで遊びにいく。奥さんが『家の近くにもちいさな川があるってのに、わざわざねぇー』とぐちる」<br />
わたし「フンフン」<br />
Ｋ子女史「ある日のこと、待ち合わせたＡは、Ｂの様子がいつもとちがう、と気づく。どこがどうとはわからない。でも、目つきも、返事も、どこかしら……。川で二人は、若い女二人組と出会って仲良くなる。するとＢがとつぜん『おまえはブルネットにしろ。俺はブロンドのほうにする』と言って、おおきな石を拾って、持ちあげ……（ネタバレ自粛）」<br />
わたし「おぉぉぉぉ」<br />
Ｋ子女史「まだ二十代のころに読んだんですけどね、好きなんですよ。タイトル、もう一度……<b>『足もとに流れる深い川』</b>っ！」<br />
</blockquote><br />
　タイトルも“怖良い（こわいい）”ですねぇ、とマジで感心して、考えこむ。それから「……すっごくよくわかるなぁ、Ｂの気持ちが！」と呻くと、一瞬置いて、Ｋ子女史が息を飲んで、心底、傷ついたような顔つきで、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ子女史「わたし、そういう意味ではわかってないのかも。レイモンド・カーヴァーが読者に伝えたかったこと」<br />
わたし「でぇぇっ？」<br />
</blockquote><br />
　あらすじ聞いただけだし、そんなはずないんだけど。ちょっと感情移入しすぎたかも、悪いことした、と思う。<br />
　そういや自分も、お勧めした本や映画を、友達に後からすごい乗りだして語られて、なぜかざっくり傷ついたことがあるなぁ（ちなみに映画<a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B001RN8W4U?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B001RN8W4U" target="blank">『アメリカン・ビューティー』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=B001RN8W4U" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" />。後から見た子に両手で“奪われて”以来、まだ、胸にもどってこない）。<br />
<b>「足もとに流れる深い川」</b>は、この人のものである。乗りだしすぎて、ちょっと行儀が悪かった……。<br />
　そのあと、小腹が減ってきたので、居酒屋「ちりんぼう」に移動。軽く飲む。Ｋ子女史は、最近ここの小樽ワインが気に入っているらしい。わたしは日本酒の梅酒。うーん、うまい。<br />
　へんな具のグラタンを小皿に取り分けながら、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ子女史「最近、気になる男の人がいるんですけどね」<br />
わたし「おぉーっ？」<br />
Ｋ子女史「でも、名前がどうも出てこなくて。思いだそうとすればするほど、呪われたように、顔までどんどん曖昧に。何回か会ったはずなんですけど。こりゃ、おかしいなぁと」<br />
わたし「おぉっ……？　（真顔）いや、Ｋ子さんはその人のこと、気になってないですよ」<br />
Ｋ子女史「いいえ、気になっています（←断言）」<br />
わたし「うっそだぁ」<br />
Ｋ子女史「ただ、己のパワーが衰えてるだけ」<br />
わたし「いや、衰えてない、ない。だって今日も元気いっぱいだ。保証します」<br />
Ｋ子女史「でもねぇ、十代のころは、好きな人の名前を緑のマジックで１００回書いて、その紙を食うと両思いになれるって占いを信じて、やったものですよ。ところがいまでは、そんな思春期パワーは、とてもじゃないけど……」<br />
わたし「えぇーっ！　食ったぁ？　紙を？　山羊かっ！　シンジラレナーイ。……でも、試験勉強とかでも、書くと覚えるって言いますよね。１００回書いたら名前を忘れることもないし、写真を持ち歩けば、顔もぜったい忘れない……。それだぁ！」<br />
Ｋ子女史「ちょっと！　いま、とつぜん音を立てて話の趣旨が変わりましたよ！　誰が効果的な暗記方法の話をしてるんですか！　パワーですよっ、生きるパワーの話をしてたのっ」<br />
わたし「あれ、そうだった」<br />
</blockquote><br />
　巨大なサラダもきたので、取り分ける。梅酒、二杯目。だいぶ酔ってきて、「だから、生まれ変わったらですね、こんどはもっと女らしく……」と滔々と語るＫ子女史の顔を指差して、<br />
<br /><blockquote>
わたし「とかいって、猪に生まれ変わったらどうします？　カナダでグリズリーに転生したら？　ガォ～！　ガォ～！　あははのは！」<br />
Ｋ子女史「（マジでムッ）あらぁ～、作家らしくもなく、ベタなことを仰いますねぇ～（怒）。それとね、人の顔を指差すなっ！」<br />
わたし「（真顔）いや、わたしは作家として、物語における普遍性と、“ベタの腕力”というものを信じておるのです。眼鏡を取ったら美少女だったり、すごい美人がオトコ嫌いだったり、それに『あの転校生、どうやら有名作家の娘らしいぜ』とか……」<br />
Ｋ子女史「（目、すわってる）変な言い訳」<br />
わたし「うぅ、ばれたか……」<br />
</blockquote><br />
　出だしはＫ子女史のほうが圧倒的に不利だったはずの話題で、なぜか、また言い負かされる。おかしいな。<br />
　トイレに行こうと立ちあがりかけたとき、Ｋ子女史が急に「桜庭さん、ケッコンしてよかったことってなんですか」と真剣な顔で聞いてきた。うーん、と言いつつ、トイレに行って、用をたし、手を洗って、出てきて、席に着き、店員さんを呼んで日本酒の梅酒をお代わりしてから、<br />
<br /><blockquote>
わたし「死んだときに……」<br />
</blockquote><br />
　と言うと、ここ数十分のあいだ、パワフルなつっこみマシーンと化していたＫ子女史が、まるで背後から狙撃された人みたいに椅子から転がり落ちそうになった。<br />
<br /><blockquote>
Ｋ子女史「な、なにそれ？　この五分あまりの長い溜めのあいだ、ずっと考えてて、ようやく発した第一声が……“死んだとき”って、何！？」<br />
わたし「死んだときに……」<br />
Ｋ子女史「そ、その出だし、さてはマストだな。えぇい、聞きましょう、聞こうじゃないですか、あぁもうまったく」<br />
わたし「死んだときに……きっと、しばらく誰からもみつけてもらえないじゃあないですか。こういう仕事してて、ずっと仕事場に篭もってるし。連絡が取れなくても、なにか書いてるのかなぁと。で、残念ながらちょっと腐っちゃった場合、新聞の死亡記事に、はりきってこう書かれるわけですよ。“女性作家、孤独な死！”。……まるで孤独が悪いことであるかのように」<br />
Ｋ子女史「へぇ～……？（と、無納得）」<br />
わたし「ンー。ちょっと前にね、吉屋信子さんの死亡記事について田辺聖子さんが情熱的につっこむ文章を読んだら、一緒にキャーンとエキサイトしちゃって。で、いろいろとね……」<br />
Ｋ子女史「へぇぇ？」<br />
わたし「きっと想像力のない書き方をされる。それって、なんか、やだなって……」<br />
Ｋ子女史「でもさぁ～、死んだ後のことなんて、自分にゃ～なんも～わかりませんよ～（と、小樽ワインを飲み干す）」<br />
わたし「……ま、そりゃそうだ。おっ、梅酒きた」<br />
</blockquote><br />
　今夜はなにを言っても、Ｋ子女史、全力で打ち返してくる……（思春期パワーが衰えたなんて、うそだー……）。<br />
　それで、だいぶ酔って帰ってきた。<br />
　恋愛やらなにやら、こうやって編集さんといろんなことを話すのが、案外、小説のスタートになることもある。確か<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/404428105X?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=404428105X" target="blank">『少女七竈と七人の可愛そうな大人』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=404428105X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>も、初対面のＫ子女史の恋愛トークから始まったような記憶が……。うーむ。今夜の会話がなにかの物語の萌芽になること、あるだろか……。<br />
　で、帰って、風呂に入って、出てきて、酔ってて小説は読めなさそうなので<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4582833489?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4582833489" target="blank">『久世塾』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4582833489" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>を出してきて、読んだ。「第二の向田邦子を」という趣旨で始まったシナリオ塾を一冊にまとめたものだ。大石静、内館牧子、金子成人などの講義や、久世塾長との対談がぴっちり詰まっている。<br />
　向田さん、早坂さんの台本が遅れて現場がじりじりしているときの描写で「――なぜ遅いかと言うと、自分をごまかす、自分が嘘をついているのを剥がしているからなのです」のところで、自分の心からもじりじりじりじりっと音を立ててなにかの皮がまたもや剥がれる気がする（生きてるだけで生えるから、痛いけどいつも剥がさないといけない。確かにそうだ）。<br />
　昔からなぜか気になって、考えてたことこそが物語になる、というお話も出てくる。<br />
<br />
<b>「今って、何が求められていたっけ？　身障者、イケてるよな」とかいう会議をやっていると、おそらく全滅しますね。「昔から考えていたんだよ。気になってしょうがなかったんだよ」というテーマが、たぶん嫌々ながらでも皆さんの中にもあると思うのです。例えば、「俺は体のでかい女を見るだけで、ちょっと嫌なんだよね」という固有の個性があったとします。（略）徹底的に考えていくと、そこから何かとんでもないものが見つかるかもしれない。そこから価値観とか人生観が見えてくるような気がします。</b><br />
<br />
　あっ、そうだよなぁ、と反射的になぜか、偏愛するキム・ギドクの作品群を連想する。<br />
　固有の個性が、物語の力で普遍性を持って、せかいに悪夢のように拡散する……。それが物語る努力の成果だと思う。<br />
　と、だんだん酔いが回ってくる。<br />
　なんとか最後まで読んで、でももうだめだー。寝た。<br />
<br /></font> </td></tr></tbody></table><br />
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</ul>
<br />

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    <title>また桜庭一樹読書日記　【第11回】(1/2)［2010年5月］</title>
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    <id>tag:www.webmysteries.jp,2010://6.661</id>

    <published>2010-05-07T04:00:00Z</published>
    <updated>2010-05-06T11:01:34Z</updated>

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        <name>東京創元社</name>
        
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><img height="320" alt="ダルタニャン！" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1005_01.jpg" width="240" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【ダルタニャン！】</b>「一人は、みんなのために！　みんなは、一人のために！」と、誓っていた……わけではなさそうな、謎の棒をやたらと振りあげる子どもたち。君たち……男かッ！？（桜庭撮影）</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>
<tr>
<td><br />
<p><font size="3"><b>「僕ですか？」とラインハルトは答えた。「睡蓮のところへ行こうと思ったのですが、だめでした」<br />
「そりゃまた風変わりな話じゃないか！」エーリッヒは言った。「いったい君はその睡蓮と、どういう関係があるのかね？」<br />
「僕は以前この花と親しかったことがあるんだ」とラインハルトは言った。「もう遠い昔のことだがね」<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――「みずうみ」</font></div><br /></td></tr>
<tr>
<td><font size="3"><b>４月某日</b></font><br /><br /><font size="3">
　<b>『伏』</b>の原稿が上がったので、さいきんは毎日、<b>〈小説すばる〉</b>連載のサスペンスの資料を読んだり、プロットを作ったりしている。<br />
　外はめっきりあったかくなって、桜まで咲き始めた。<br />
　と、あいふぉんにとつぜん「お花見やるよ！」と友達からメールが届いた。「行く行く！」「じゃ、きなさい」「えっ、いつ？」「明日の昼１２時、新宿御苑の新宿門に集合。各自持ち寄り。お酒係とお肉係はもういるので、炭水化物かデザートを受け持ちなさい」１２時なんて、寝起きだ、ま、まにあわんかも……と心配になったので、寝坊しても迷惑がかからないように、デザート係にしてもらった。<br />
　で、当日。１１時半に起きて、妖怪のように呻きながら顔を洗って、着替えて、近所になぜかある立派な文明堂のショップで、めずらしい（気がする）ウコッケイの卵のカステラを買った。べつのお店で苺シュークリームもこんもりと購入して、よろよろと公園に向かった。<br />
　おっ。友達が生んだちいさい人間（三歳男児）もきてる！　ずいぶん久しぶりだ。元祖・ちいさい人間は、さすがにだいぶおおきくなり、代わりに二代目、つまりその弟もきていた。乳母車の奥にちんまりと白く沈んでいる。<br />
　二代目は、目を開けたと思ったら、わたしがついでに家から持ってきたキャラメルコーンの袋（真っ赤で、かわいい目と鼻がおっきく描いてある）に食いついて、黙ってギューッと抱きしめ、また固く目を閉じた。……へ、へんなの。<br />
　友達から、男の子の親と女の子の親がいかにかちがうか、とか（女の子の親のほうが優雅らしい。男の子の親は、いつも「コラーッ！」の顔をしている）、公園でのママ友とのつきあいについて聞く。「ね、弟ができてから、ちいさいにん……いやっ、えっと、その、お兄ちゃんは変わった？」と質問すると、元祖・ちいさい人間を指差して、「それが、なぜか、変わらないんだよねぇ……」と不思議そうに答える。<br />
　指差されたほうを見ると、確かに、ちいさい人間は前と同じく、一人で楽しそうに駆け回ったり、一座に混ざっていたフランス人の膝によじよじとよじのぼったり、シュークリームをすさまじい形相で睨み続けたりと、自由だ。弟の存在を気にしたり、やきもちを焼いたりする様子は微塵もない。なんというか、安定した上機嫌で、でもちょっとばかり上の空だ。<br />
　その様が、とても他人とは思えず、つい叫ぶ。<br />
<br /><blockquote>
わたし「ねぇ、この、ちいさいにん……いや、えっと、お兄ちゃんの胸には……一人っ子の魂が、赤々と燃えてるよー！」<br />
友達「えぇー……？（←い、いやそう）」<br />
わたし「ほんとだよー！」<br />
</blockquote><br />
　そういえば、友達も彼女の旦那さんも、もともとは一人っ子だった。とはいえもう大人なので、マイペースに過ごしつつ、自己の責任はちゃんと果たす、という危険な綱渡りからめったに落ちない。<br />
　……おっ？　元祖・ちいさい人間が辺りをうろうろし始めた。どうやら大人たちの相手に飽きたらしい。拾った桜の枝を振り回したり、遠くにいるほかの団体の男の子たちと絡みだした。ほかの子が持っている特大の棒をほしそうに見やり、その子の後を黙ってずーっとついていく。ようやくその子が棒を離すと、ワァすごい棒っ、とうれしそうに拾って、乱暴に振り回して遊んで、でも、手にしてみたらすぐ飽きたらしく、ポイッと投げて、にこにこしながら駆けもどってきた。<br />
その様を眺めていた、別の友達（美人。苦い恋愛中）が、<br />
<br /><blockquote>
友達「男かッ！？」<br />
</blockquote><br />
　と、とつぜん野太い声でつっこんだので、きゃっと飛びあがる。「男だよー」と言うと「そうよねっ！」と、また声が大きい。立膝をついたまま、ビールをゴクリ。「さいきん、どう？」「くぅー……」と、そっちの話をフンフンと聞く。<br />
　そのうち、ちいさい人間の姿が見えなくなったので、おやっ、どこ行った、と心配になって見回した。と、ずいぶん遠くで、棒を振り回す三人組に、同じような棒を握りしめて果敢に絡んでいくところだった。みんなでチャンバラしてるのかぁ、と眺めていると、おっ、三人組が棒を高く掲げてあわせた。それにつられて、ちいさい人間も勇ましく棒を振りあげた。<br />
　四本の棒が、四人の頭上でカチャーンと合わさる。<br />
　どっかで見たポーズだな、と考えていて、あっ、と気づく。「一人は、みんなのために！　みんなは、一人のために！」でおなじみの三銃士とダルタニャンにそっくりじゃないか。おぉ、懐かしいなぁ。悪女ミレーヌがいないのが惜しい。と、おもしろいのでついつい写メを撮る。<br />
　夕方、解散する。ところで、乳母車を押してると、エレベーターで改札まで降りられる駅じゃないとたいへんらしい。どの駅のどの改札で帰ればいいんだー……と頭を振りしぼりながらも、友達がのしのしと帰っていく。<br />
　帰宅して、コタツ（まだ片づけてない）にもどり、仕事のノートを広げた。<br />
　で、夜。<br />
　風呂から出て、<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4003242416?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4003242416" target="blank">『みずうみ　他四篇』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4003242416" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>（シュトルム）を読んだ。これは、今月の頭から紀伊國屋書店新宿本店二階でやっている「世界文学ワールドカップ」というフェアで買ってきたものだ。著者は１８１７年に北ドイツのちいさな町で生まれた。判事として働く傍ら小説を執筆。７１歳で死去。<br />
　表題作<b>「みずうみ」</b>は、幼なじみの少女エリザベートとの初恋と、大人になってからの別れ、そして老人になってから思いかえすひと時が描かれている。青年時代、彼女の面影を求めて夜の森を行き、みずうみを泳ぐシーンだけが気味悪くて、うつくしい。<br />
　月は梢を照らし、ナイチンゲールが密やかに啼き、蛙の腹が光っている。青年と、生き生きと思い返される初恋の思い出のほかは、なにもない。石を投げたら届くぐらいのところに白い睡蓮をみつけ、それが思い出のようで、青年は衣服を脱いでみずうみを泳ぎだす。ところが、近づくととつぜん睡蓮の茎がぬらぬらと生々しく手足にまとわりつき、青年は急に気味悪くなって、岸に向かってまた泳ぎだす。手の届かぬところまで遠ざかってから、振り向くと、やはり睡蓮は、女は、静かに、清純にただそこにあった――。<br />
　古典を「若いころにたくさん読んだほうがよい」とも聞くし、自分も十代のころに出会った本の影響を色濃く受けてるけれど……。これは、もしかしたら、もっと年齢がいってから読んだほうが、胸にぬらぬらとした気味の悪い根を下ろしてくれる小説かもしれないと思った。若者が夢見た未来と、老人が反芻する過去の、光が、まるで同じ遺伝子を抱える兄弟のように似ていた。<br />
本棚においておいて、だいぶ経ってからまた読もう、と思いながら、桜に当たったのか眠たくて仕方ないので、もう寝た。<br />
<br /></font> </td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
<li><a class="current" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba1005-1.html">1</a></li>
<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba1005-2.html">2</a></li>
</ul>
<br />

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    <title>また桜庭一樹読書日記　【第10回】(1/3)［2010年4月］</title>
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    <id>tag:www.webmysteries.jp,2010://6.628</id>

    <published>2010-04-05T05:00:00Z</published>
    <updated>2010-04-05T01:56:12Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><img height="320" alt="魅惑のもくじ" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1004_01.jpg" width="240" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【魅惑のもくじ】</b>創元クライム・クラブとか、ポケミスとか、縦長のミステリを見るといまだにドキドキする。中学校の図書室の、いっちばん上のガラス棚にあって、よじのぼっては獲った（取ったというより獲った）記憶が！　後ろは、新刊『道徳という名の少年』用に届いたモノクロのほかほかの挿絵……。（桜庭撮影）</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>
<tr>
<td><br />
<p><font size="3"><b>あと三ヵ月の命だとあの専門医は宣言した――もってもせいぜい六ヵ月と！<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『殺人の朝』</font></div><br /></td></tr>
<tr>
<td><font size="3"><b>３月某日</b></font><br /><br /><font size="3">
<br /><blockquote>
わたし「どうして、口に、ナマコを貼りつけてるんですかー！？」<br />
Ｉ本女史「ワハハハハ！」<br />
</blockquote><br />
　夜である。<br />
　いつもの、近所の日本酒バー。<br />
　物静かに杯を重ねる、<b>〈小説現代〉</b>Ｋ村女史と、両手を上げてビックリのポーズをするわたしにはさまれて、酔っ払ったＩ本女史がどーんと鎮座し、携帯電話の画面を見せている。<br />
　画面には、自分撮りした写メ。自室らしき白っぽい空間で、なぜだか口に真っ黒なナマコをまるごと貼りつけ、満面の笑みを浮かべた、女史が……。<br />
<br /><blockquote>
Ｉ本女史「この写メをですね、会う人に必ず、見せることにしてるんっすよ！」<br />
わたし「どうして？　まず、どうしてナマコを口に？　買ったんですか、魚屋で？　そして写メを撮り、さらに担当の作家さんたちに見せて回る……ウーン、謎が、謎を呼ぶ……アイリッシュ<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150705518?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150705518" target="blank">『幻の女』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4150705518" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>や、モズリイ<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4151702512?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4151702512" target="blank">『ブルー・ドレスの女』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4151702512" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" />
</b>に匹敵する、この、のっけからの謎めきっぷり……講談社の副部長（←けっこうな偉い人）、『ナマコの女』……」<br />
Ｉ本女史「やだなぁー、だから、ナマコなんかじゃないっすよー、よく見て、よく見て」<br />
わたし「えぇ～？（よく見る）……イヤ、ナマコです」<br />
Ｉ本女史「ワハハハハ！」<br />
</blockquote><br />
　夜、十時。<br />
　まず八時に、Ｋ村女史と待ち合わせして、飲みながら打ち合わせ。その後、ほかの作家さんとの会食が終わったＩ本女史がほろ酔いでやってきた。で、座って早々の、ナマコである。<br />
<br /><blockquote>
Ｉ本女史「トイレの水が詰まったときに、ずっぽんっ、ってやる装置があるでしょ、柄がついてて、先が丸くて、黒い……」<br />
わたし「って、どこに話が飛ぶんですかっ」<br />
Ｉ本女史「飛んでない、飛んでない～。見て、見て」<br />
</blockquote><br />
　指差すので、Ｋ村女史といっしょに、しぶしぶ（？）もう一度写メを見ると、あれ、確かに……女史の口に貼りついたナマコ状の黒くて丸いつるつるのものに、白く細長い柄がついていて、携帯電話を持っていないほうの手は、勇ましく虚空に拳を振りあげて……るんじゃなくて、その、白い柄を握っているのである。<br />
<br /><blockquote>
わたし「な、なんですかァ～、これェ～（←うっかり、ちょっと訛った）」<br />
Ｉ本女史「センセイ、いま、訛りましたよ」<br />
わたし「おどろいたからだっ！　田舎者は、限界を超えると過去にもどるんだぁ！　それにしても、どうして、口に、トイレずっぽんを張りつけてるんですか！？」<br />
Ｉ本女史「やだなぁ、トイレずっぽんなんかじゃないっすよ～。よく見て、よく見て」<br />
わたし「やだ。もう見ません……」<br />
Ｉ本女史「これはですね……“おうちで楽々、ひとりカラオケ機”なんですよ！」<br />
Ｋ村女史「（ぼそっと）Ｉ本はこう見えてプロ級の歌唱力の持ち主なんです。いっしょにカラオケに行くと、みんな、のけぞりますよ」<br />
わたし「……へぇ～」<br />
</blockquote><br />
　説明によると、こうである。<br />
　おそらく（忘れちゃった）この機械をパソコンに取りつけてどうにかすると、イヤホンに歌の演奏と、ナマコ状のものに向かって歌う自分の声が聞こえてきて、しかもその声は外にほとんど漏れないので、近隣に迷惑をかけることなく思うままに歌えるのである……。確か……。<br />
<br /><blockquote>
Ｉ本女史「もうね、朝の八時まで、一人で歌っちゃいましたよ～」<br />
Ｋ村女史「だけど、わざわざ家で歌わなくても、カラオケスナックによく行くじゃないですか」<br />
Ｉ本女史「でもね～、人前じゃ、歌いにくいのもあるからね～」<br />
わたし「なんですか、たとえば？」<br />
Ｉ本女史「筆頭は、森高千里の『私がオバさんになっても』ですよ！」<br />
</blockquote><br />
　あの、昔、聞いたかわいくて毒のある歌が残響のように耳元で鳴る。<br />
　と、Ｉ本女史はカラオケ機の件をしゃべるだけしゃべり、さっきまでの<b>〈小説現代〉</b>の打ち合わせ内容をＫ村女史から聞くと、安心したように、ひとつ、深い吐息をついた。冬眠する動物のように背をぎゅっと丸め、小声で「さっき～、ちりめん山椒を二袋もらったんで、桜庭さんにあげますよ……。帰りに……」「だ、誰になぜもらったんですか？　突然、ちりめん山椒をくれたの？」「ぐ～……」と、わっ、急にスイッチが切れた。<br />
　編集者という職業、いや、生き方は、忙しい（いや、作家もまぁばたばたしてるけど……）。みんな、毎日、たいへんである……。<br />
　ところで、今夜はわたしは、帰りは大荷物である。なぜかというと、数日前のこと。絶版になったオスカー・ワイルドの<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4042119026?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4042119026" target="blank">『獄中記』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4042119026" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>を探していて、この人なら持ってるかも、とＫ村女史に聞いてみた。すると「角川文庫の、薄いやつですね。あぁ、ありますよ」と、ドラえもんが片手をポケットにつっこんだときみたいな顔をしてうなずくので、やったー、とこんど貸してもらうことにしたのだ。<br />
　すると、数時間後。帰宅して部屋の本棚を見たＫ村女史から携帯にメールがあった。曰く「オスカー・ワイルドの<b>『獄中記』</b>もありましたが、そばになぜかジェフリー・アーチャーの<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4042938019?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4042938019" target="blank">『獄中記』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4042938019" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>もありました。さらに探すと、大杉栄のも、佐藤優のも……ありとあらゆる獄中記がうちの本棚にあります。しかしいったいどういう心理の結果でしょうか。この時期、わたしは、捕まるような気がしてたのか……」<br />
　と、いうわけで、その秘蔵（？）のありとあらゆる獄中記を一気に貸してもらうことになったのだ。<br />
　十二時過ぎ。酒豪二人は平気だがわたしが潰れたので、シメに雑炊を食べさせてもらって、店を辞した。<br />
　歩きながらＫ村女史が「このへん（新宿三丁目）で飲んでばかりいるんで、いっそ引っ越そうかと思ってるんですよねぇ」と言うので、「荷物も多いし、広めの部屋がいいんですよね。６、７０平米ぐらい？」と聞く。すると、「神などいない！」とでっかい声で言われた牧師のように、静かに首を振り、「書庫がどんどん侵食してきたので、最低８０平米はないと、もうまともに暮らせませんね……」とつぶやく。<br />
　わっ。Ｉ本女史が覚醒した。「ちりめん山椒！　二袋ともあげます！　家でご飯炊かないので！」（←飲兵衛なので、つまみ専門でたいへん料理上手である）「どうしたんですか、そのちりめん山椒」「一軒目の会食の店で、おみやにもらったんですよ～」<br />
　家に着いた。<br />
　片手に獄中記の山、片手にちりめん山椒で、玄関に倒れる。<br />
　飲みすぎた……。<br />
　で、この日は、酔い過ぎて風呂にも入れないので（あぶないから）、ちょっと前に川出正樹さんからお借りした、昭和３２年刊行のＣ・ロバートスン<b>『殺人の朝』</b>を読んだ。<br />
　裕福で冷酷な夫と、弱みを握られ結婚した、若い妻、そしてその愛人。ある朝、夫がとつぜん死んだ……。<br />
　帯に、<br />
「第一部　計画<br />
　第二部	罠<br />
　第三部	動機」<br />
　とあって、これだけでもう、ミステリだー！　と、ワクワクする。解説によると、“アイルズの<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488124014">『殺意』</a></b>タイプに新しいバリエーションを生みだした”とある。最後まで面白く読んで、この解説に触れて、あと巻末広告まで読んでいたら、だんだん、あぁ、いいなぁ、この時代に生まれて、リアルタイムで読んだらどんなに楽しかったろう、と思ってきた。<br />
<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488506018">『吸血鬼カーミラ』</a></b>の広告では、“レ・ファニュの作品はディケンズやコリンズが天下の奇書と激賞し、本国でも再評価高まっている”とある。なるほど、この時代に再評価されて、それきりずっと怪奇文学の祖としていままで残ってるのかぁ……。おっ、アンブローズ・ビアスは、このころはビアースと訳されてたらしい。“ポオの死後、ポオの再来と言われる二人の怪奇作家、ビアースとラグクラウトが出た。最後はメキシコの洞窟の中に消えて身をもって神秘を立証したビアース！”って、ビアスよりビアースのほうが褒句も怪奇的に盛りあがる（？）ような。うわっ、デ・ラ・メアの長編（<b>『死者の誘い』</b>）がある！　読みたい……。でも、ぜったい絶版だよナァ。<br />
　怪奇物アンソロジーの褒句“最高の怪奇コンクール！　魔界の奇、吸血鬼、人狼、はては鳥虫草魚の怪――”を読んでたら、これ編集したのＦ嬢（薙刀二段）かな、という気がしてきた。いやいや、五十年以上前の本だから、そんなはずはないんだけど……。なにか、こぅ、メールの文面がそっくりだ。そうか、この時代のこういうのが好きだから、めぐりめぐって創元にいて、ああやって今日も本をつくっているのだな。<br />
　いつの時代に生まれても、いまここで書かれたのではない本は存在して、それに焦がれて胸が、ぎゅーっ、となるものなのだろう。<br />
　だから、今日も、本を……。<br />
　本を、つくる。売る。買ってくる。で、読む。<br />
　胸が、ぎゅーっ、ぎゅーっ、となりながら。<br />
　ま……。幸せ、だなァ。<br />
　酔ってるので、なんだかよくわかんない。<br />
　しかし、８０平米ないと、女一匹、暮らせないほどの蔵書とはすげぇな、確かになにを聞いても、くわえ煙草で、ドラえもんの顔をして「あ、持ってますよ」って言うしなぁ……。<br />
　Ｋ島氏も、倉庫だかコンテナだか借りてるって聞いたことあるし。<br />
　それに比べると、わたしの本棚はあまりにささやかである。<br />
　しかし、日本酒は骨にくる。読みながら、軟体動物みたいにぐにゃぐにゃになってきた。<br />
　もう寝た。<br /></font> </td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
<li><a class="current" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba1004-1.html">1</a></li>
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<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba1004-3.html">3</a></li>
</ul>
<br />

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    </content>
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    <title>また桜庭一樹読書日記　【第9回】(1/3)［2010年3月］</title>
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    <published>2010-03-05T04:00:00Z</published>
    <updated>2010-03-04T03:47:40Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><img height="240" alt="まるでフェリーニ" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1003_01.jpg" width="320" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【まるでフェリーニ】</b>〈すばる〉に載っていたインタビュー写真。まるでフェリーニの映画から抜けだしてきたようなかっこよすぎる風貌。昨年ノーベル文学賞を受賞したルーマニアの女流作家ヘルタ・ミュラーの肖像（で、後ろのテレビは、なぜか草加煎餅をかじる和田アキ子さん……）。（桜庭撮影）</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>
<tr>
<td><br />
<p><font size="3"><b>「咼の刑」またの名を「凌遅の刑」という。囚人の指、腕、足の関節、さいごに頸をだんだん斧できってゆく古い支那の刑罰である。<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『妖異金瓶梅』</font></div><br /></td></tr>
<tr>
<td><font size="3"><b>２月某日</b></font><br /><br /><font size="3">
<br />
　<b>〈週刊文春〉</b>で<b>『伏　－贋作・里見八犬伝－』</b>が始まったときのこと。Ｋ島氏としゃべってたら、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「八犬伝といえば、作者の馬琴が探偵役を勤める時代小説<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4167168359?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4167168359" target="blank">『へんこつ』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4167168359" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>（平岩弓枝）がおもしろかったですよー。あと、山田風太郎版もありますね。実際に八犬伝を執筆中の馬琴の“実の世界”と、八犬伝のストーリー“虚の世界”を物語が行き来する、という……」<br />
</blockquote><br />
　と言われて、いま読んで影響を受けちゃったらいけないから、執筆が終わったら読もう、とメモメモした。<br />
　それで<b>『へんこつ』</b>は文庫版をみつけて買ったけど、風太郎版<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4331606538?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4331606538" target="blank">『八犬傳』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4331606538" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>上下巻は絶版で、なかった。<br />
　という話を、文春のＨ鳥氏（偉い人で、シュッとしたダンディである）にしていたら、<br />
<br /><blockquote>
Ｈ鳥氏「<b>『へんこつ』</b>の単行本版は、挿絵もたくさんついた豪華版でしたよ。いまは入手困難だけど……」<br />
</blockquote><br />
　と聞いた。<br />
　へぇー、とうなずきつつ、そういえば<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488023935">『赤朽葉』</a></b>で直木賞を落ちたときの平岩先生の選評に「日本語を大事に」とあったのを急に思いだした。そうだった、そうだった！　勢いは殺さないようにしつつ、でも、日本語を大事に！<br />
　で、その数日後。角川のＫ子女史から「うちで山田風太郎の復刊をするんだけど、好きなのがあったら推薦帯を書きませんか？」と連絡があった。とはいえ、<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062639440?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4062639440" target="blank">『甲賀忍法帖』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4062639440" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>を読んだのと<a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B002VNE6U4?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B002VNE6U4" target="blank">そのアニメ</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=B002VNE6U4" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" />を見たぐらいでじつはぜんぜんわからないジャンルなのだ……。と、断りながらも、ここまでの話をすると、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ子「風太郎版八犬伝？　じゃ、それお送りしますよー」<br />
</blockquote><br />
　と言われた。<br />
　なんだ、Ｋ子さんが持ってたのかー、と思いつつ電話を切って、さらに数日後のこと。近所を歩いていて、いつものバラックみたいな古本屋の百円ワゴンを眺めていたら、なんと、上巻だけが忽然と現れた（先週はなかった！）。ウーン、でも、上巻だけじゃなぁ、いつもは上下巻でみつかるのに、なにかの呪いかな、と思って、そこでふと閃いた。<br />
　もしかして、Ｋ子さん、持ってたんじゃなくて、アマゾンで買ってくれようとしてるのでは……！？<br />
　先日、Ｈ内編集長が言ってた「それ、きっとアマゾンで買ってくれてるんだよ」って、まさにこれのことなんじゃ……。<br />
　と閃いたまま、Ｋ子女史に連絡すると、はたして、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ子「なにっ、上巻だけ、例のワゴンに現れたって？　でかした！」<br />
わたし「へっ？　なんで？」<br />
Ｋ子「いや、ちょうどよかったですよ。さっき、アマゾンからなぜか下巻だけ先に届いたんで、こっち先に送ってもなーとガッカリしてたんです。じゃ、その上巻買ってください、下巻だけ送っときます」<br />
わたし「ア、アマゾンー！？　やっぱり……」<br />
Ｋ子「ん？」<br />
わたし「あ、いや……。あの、ありがとう……」<br />
Ｋ子「ついでに同じ風太郎の<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4594032648?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4594032648" target="blank">『妖異金瓶梅』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4594032648" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>も入れときますからー」<br />
わたし「なに！？　金瓶梅も！？　え～、やだ～、Ｋ子さんの～エッチ～（←いまありがとうって言ったのに！）」<br />
</blockquote><br />
　からかうと、電話の向こうから、いつになく真面目な大人声がかえってくる。<br />
<br /><blockquote>
Ｋ子「なに、言ってんですか。なにを隠そう、風太郎版金瓶梅はですね、あの北村薫先生がおもしろかったっておっしゃってた本なんですよ」<br />
わたし「エッ！？（←と、声が裏返る）」<br />
Ｋ子「た、確か、そうだったと……」<br />
わたし「そうですか、ありがとうございます。さっそく読んでみよう」<br />
Ｋ子「でも、最初に、Ｋ子さんの～エッチ～って言いましたよね」<br />
わたし「言ってません（キリッ）」<br />
</blockquote><br />
　と、いうわけで。<br />
　二月のある日。今日の分の執筆が終わって、喫茶店に行って、本屋も寄って、帰ってきて、さて本を読もうと床に座りこんだとき。目の前には風太郎版の八犬伝上巻（廣済堂文庫版）、下巻（朝日文庫版）、金瓶梅の三冊がドーンとあった。<br />
　八犬伝のほうは書きあげてから読むことにして、金瓶梅から手に取った。あれっ……。例の精力絶倫の主人公、西門慶（でも、昔、わたなべまさこ版の漫画でしか読んだことがなくてじつはよくワカラナイ）と八人の夫人、太鼓持ちの語り手が出てくるのだけど、紹介文に「日本推理小説史上に残る名作<b>『赤い靴』</b>」とあるように、なんと、連作ミステリだった！！（金瓶梅なのに！　中国四大奇書なのに！）<br />
　カリスマ西門慶と、個性豊かな八人の夫人が住む豪奢な館を舞台に進む密室劇で、女が殺され、その犯人と、犯行方法、さらになによりおどろくべき動機がつぎつぎ明らかにされる。ちゃんとミステリだけど、謎が解けたあとに、人の心、欲望の恐ろしさといういちばんの謎がむきだしでゴローンと、切られた女のおみ足のように、投げだされる。<br />
　お、おもしろい……。<br />
　いいのかな……と不安に思いつつ、誰も見てないので、こっそり、本棚のミステリコーナーの凄くいいところ（しかもカーのとなり）にしまって、そしたらけっこういい時間になってたので、もう寝た。<br /></font> </td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
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<br />

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    <title>また桜庭一樹読書日記　【第8回】(1/3)［2010年2月］</title>
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    <id>tag:www.webmysteries.jp,2010://6.560</id>

    <published>2010-02-05T06:00:00Z</published>
    <updated>2010-02-14T06:23:22Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><img height="240" alt="蟹の爪とわたし" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1002_01.jpg" width="320" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【蟹の爪とわたし】</b>『私の男』の取材で紋別に行ったときの写真。おっ、まだ髪が短い。撮影は紋別君。背景は、自分でとっ散らかしたままなすすべもなく年を越した仕事部屋の一部……。（桜庭撮影）</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>
<tr>
<td><br />
<p><font size="3"><b>昔は、ある小路をはいってゆくと、物干し台が残っていたものです。真っ暗闇の中でその前を通ると、これは怖かった。物干し台が絞首台に見えるんです。<br />
<br />
いまの若い人も、三業地だった雰囲気を感じ取っているんじゃないか。心が傷ついてしまった人間は、町の昔が見えることがあるんです。<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『人生の色気』</font></div><br /></td></tr>
<tr>
<td><font size="3"><b>１月某日</b></font><br /><br /><font size="3">
<br />
　お正月が明けた！<br />
　もう～、ヘロヘロである……。<br />
　ようやくお仕事（<b>〈小説すばる〉</b>の編集さんに送る、六章仕立ての長編の二章め）が一段落したのが、年末の２９日。で、元旦の夜中に、地元のマックでアップルパイを齧りながら必死で書いた年賀状への……苦情（？）が、あちこちの編集さんから、正月明けにどんどん届いた。<br />
　まず、いちばん乗りは、角川書店Ｋ子女史である。<br />
　トゥルルルル……。<br />
<br /><blockquote>
わたし「（ガチャ）はい、はい」<br />
Ｋ子「あけましておめでとうございます！　あの不気味な大仏の年賀状ですけど、やっぱり、桜庭さんのしわざなんですよねっ？」<br />
わたし「おぉ！　大仏の写真で、大仏型にくりぬいてある定形外のハガキですか。えぇ、わたしです」<br />
Ｋ子「自分の名前、書き忘れてますよっ！」<br />
わたし「えぇーっ！」<br />
Ｋ子「ウーン（と、態度を軟化）、でも、新年いっぱつめに編集部に出社して、自分の机に置かれた年賀状の四角い束から、ひとつだけ変な形のハガキがはみだしてるのを見た瞬間、名前なんて見なくても、『桜庭さんだ！』となぜかピンときましたよ」<br />
わたし「い、以心伝心……？」<br />
Ｋ子「それに、新作のこと（四月に角川書店から、耽美な連作短編集が出るのである）も、わーっと走り書きしてあったし」<br />
</blockquote><br />
　そうだった。年末、仕事の合間に、ハガキを買いに世界堂に走っていったら、大仏型のおもしろいのをみつけてしまって、つい、Ｋ子女史と講談社のＩ井女史の二人分だけこれにしたのだった。<br />
　ついで、ちょっとの時間差で、文春の紋別青年からも、いつになくおそるおそるの連絡がきた。<br />
　トゥルルル……。<br />
<br /><blockquote>
わたし「（ガチャ）はい、あけましておめでとうございます～」<br />
紋別君「おめでとうございます！　あのねぇ……<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4003114515?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4003114515" target="blank">『山月記』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4003114515" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>のような猛々しさの、虎の判子がベタベタと押してあって……ボールペンで、蟹の爪の絵が描いてあって……『天下国家！』『今年も４６４９！』とあり、なおかつ消印が、なぜだか鳥取で……堂々たる無記名の……今年いちばん謎めいていた年賀状は、桜庭さんのなんですよねっ？」<br />
わたし「あぁ……ちがいます！　と言いたいところですけど、わたしなんです……」<br />
紋別君「やっぱりー！　あらためまして、あけましておめでとうございます。今年も４６４９」<br />
</blockquote><br />
　虎の判子は、同じく世界堂でえらく気に入って買ったもので、どこまでも男らしく猛々しい。１２年後も（もし生きてたら）使おうと思って、大事にしまってある。蟹の爪は、その昔、紋別君と<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4163264302?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4163264302" target="blank">『私の男』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4163264302" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>の取材旅行に行った折り、三階建ての家ぐらいある巨大な蟹の爪のオブジェ（夏祭の夜には海に浮かべてライトアップするらしい。隣に、貝のフタが開け閉めできるホタテのステージと、切り口を下にして屹立するシャケの頭もあった）を見て記念写真を撮ったものの、世界観がちがいすぎて作品中には使えなかったものだ。<br />
　名前を書き忘れるなんて……さっき、Ｋ子女史からも……という話から、名前の話題で、なぜか盛りあがる。<br />
　先月から<b>〈週刊文春〉</b>で連載中の<b>『伏　－贋作・里見八犬伝－』</b>を書くとき、「どうして大事な娘に、伏姫なんてつけちゃったのかなぁ？」と考えるところから始まった。原作にいろいろ理由は書いてあるけど、結局、人にして犬に従うという名前の呪縛か、姫は犬と夫婦になって、森で苦労して、八つの弾を放って夭逝しちゃうのだ。<br />
　ところが、資料を読んでたら、なんと信長の妹なんか、もっともっとすごい名前で……娘も、あと側室も……と、盛りあがっているうちに、<br />
<br /><blockquote>
紋別君「うちの本誌三月号での、巻頭エッセイコーナーで書いてみませんか。名前と、運命のお話」<br />
わたし「本誌？　あぁ！」<br />
</blockquote><br />
　そうだった。紋別君は<b>〈週刊文春〉</b>と<b>〈別冊文藝春秋〉</b>を経て、いまは<b>〈文藝春秋〉</b>編集部にいるのだった。そのため、あだ名も紋別君から、最近、天下国家君に代わったのだ。<br />
　締切と枚数を聞いて、部屋のどこかにあるその雑誌のバックナンバーをうろうろと探しながらも、名前の話が続く。<br />
<br /><blockquote>
わたし「子どものころ、同じ小学校に、確か、大西洋くんって子がいたんですよ。そんな大規模な名前をつけられちゃって、どんな運命になったのかな、と気になってきました」<br />
紋別君「ヘェ。そういや、ぼくも、黄金栄さんという名前を聞いたことがありますよ」<br />
わたし「親が、知恵と言うかとんちをひねった名前ですねぇ。でも、子どもが自分の名前のいわれを聞いて、気に入ってることって、案外、少なくないですか。あっ、こないだね、<b>〈ＡＥＲＡ〉</b>に載ってた中山美穂のインタビューがおもしろかったんですけど。いまフランスで暮らしてて、生まれた息子の名前を“意味をもたせてしまうとこの子を縛ることになるから”と、意味がなくて日本語でもフランス語でも自然な響きの名にした、と言ってて、ヘェ、いいなと思ったんですよねぇ」<br />
紋別君「ひょー」<br />
わたし「でも、その、肝心の名前を忘れちゃったなぁ……。なんだっけ、中山ムニャムニャ……」<br />
</blockquote><br />
　と、電話を切ったら、あれっ、締切が一本増えていた。ひゃあ……。<br />
　この日はまとめて届いた<b>『伏』</b>のゲラをチェックしたり、連絡事項をまとめてしたりして、夜までばたばたしていた。<br />
　夜。年が明けてから、近所のスーパーの三階にある本屋でふらっとみつけた本<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4103192089?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4103192089" target="blank">『人生の色気』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4103192089" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>（古井由吉）を読んだ。<br />
　スーパーには、いつも小銭入れだけをポケットに入れて、四、五千円ぐらいしかもたずにふらふらと行くので、たまに、うっかり三階のゆるめの本屋さんでいい本をみつけると、悩む。た、足りなくなる……。あと、さいきんは携帯もなにももたずにいくので、もしも、帰りに車に轢かれたりしたら身元不明になっちゃうと思うと、背中の産毛がぞわぞわと立つ。でもそのぞわぞわをあえて維持（？）して、いつも、身元不明の買い物客になって、夕方、ふらふらと歩きだすのだ。<br />
　そういや、<b>『私の男』</b>が直木賞の候補になりましたと連絡があったのも、夕方、この本屋でだったなぁ。あの日は、携帯、もってたのか。<br />
　それはともかく、<b>『人生の色気』</b>は、前書きのエッセイがどえらいかっこよくて（七十代の自分が、眠りながら、耳元で誰かが話しかけるのを聞いてて、それは自分の幼少時の身の上話なのだが、はて、これは誰だろう……？）、そこだけ立ち読みしていさんで買ったのだけど（で、一階と二階で買いたかった、おいしそうないいお肉とかはあきらめた）、家で開いたら、エッセイなのはその前書きだけで、あとの本編は聞き書きだった……。や、やられた（？）……。がっくりくる。<br />
　しばし本を閉じて肩で黙って耐えたものの、気を取り直して読み始めたら、文章こそあの羊水のでっかい海のようなすっばらしい文体ではないけど、中身はどこも、ビリビリ震えるほどおもしろかった。<br />
　エロスとは男女の差異から生まれるものである、とか、家や親族との関係を背負いこんだ二人だからこその物語、とか、あぁ、あぁ、と思いながら、読む。<br />
　同棲する男女や、飼主とペット、ともに暮らす家族は、相手がいなくなると、とても辛い。ひとり死ぬと後を追うようにほかのものもこの世から消えていったりする。学者は伝染病だとかいろいろ言うけれど、それぞれの体内細菌とでもいうものをまぜあわせて、ある種の系をつくっていたものの、バランスがくずれるのであって、だから、別れたくて別れたはずの男女がそれぞれ辛かったり、親元を離れた子も親もしばらくひどく寂しかったり、する……。<br />
　おもしろいなぁー。それに、こんなに年も、性別もちがうのに、おぉ、その通り、そうー、そうー、と思いながら読むって、なんじゃらほい。と、布団に寝転がって（床だとさすがに季節柄、寒い）読み進めていたら、最後のほうに、<br />
<br />
<b>　僕らの仕事は、社会の留守宅を預かったようなものなんです。一人で部屋にこもって書いているようでも、別世界に生きているわけではありません。やっぱり、現代特有の忙しさの中に入っているんです。道路端に机を置き、座布団一枚持ってきて、座って物を書いているんじゃないかという心持です。昔の代書屋さんみたいなものです。あの人、何をしてるの、と通る人はよけて歩く。全然周りを構っていないようだけれど、人に見られているのは意識していて、あ、いいな、とか、おかしいんじゃないの、とかいう声を聞いている。</b><br />
<br />
　このくだりを読んだら、急に、部屋で寝転がって本をめくっている自分の、耳元にまで、車の排気音や人の話し声、足音が近づいてきて、顔を上げたら、路上にひとりで寝ていて、通りすぎる人たちが「それ、どうなの」「面白いの？」「あ、そうー」とときどき覗きこんでくる……という幻が浮かんだ。こりゃ、お、落ち着かん。<br />
ふっ、と起きあがって、コーヒーを入れに行った。<br />
　で、<br />
<br />
<b>　儲けるということは、誰かから奪うことです。</b><br />
<br />
　この一行で、ふいにこみあげてくるものがあり、この悲しいような生き辛いような気持ちの正体はいったいなんだろ、と、コーヒーがさめるのを待ちながら（猫舌なのだ）、からだのあちこちをごりごりと掻いてみる。<br />
　天下国家。<br />
　４６４９。<br />
　大仏。<br />
　屹立する、蟹の爪。<br />
　四月の耽美な短編集。<br />
　と、いろんなイメージまで頭の中をぐるぐるしだす。<br />
　――それに名前をつけたものは、まだ、いない。<br />
　よし、今年も小説書くぞ、それやこれにばんばん、しかし下から謙虚に、名を、つける、と思いながら、コーヒーがさめるのを、いつまでも、ぼぉーっ、と待っていた。<br /></font> </td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
<li><a class="current" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba1002-1.html">1</a></li>
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</ul>
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<entry>
    <title>また桜庭一樹読書日記　【第7回】(1/3)［2010年1月］</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba1001-1.html" />
    <id>tag:www.webmysteries.jp,2010://6.509</id>

    <published>2010-01-06T05:00:00Z</published>
    <updated>2010-01-31T04:53:36Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><img height="320" alt="謎のFax……" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba1001_01.jpg" width="240" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【謎のFax……】</b>この読書日記の単行本はＳＦ班Ｋ浜氏が、Web連載は海外ミステリ班Ｍ澤氏が担当してくれてるのですが、三冊目『お好みの本、入荷しました』製作中にＫ浜氏より届いた謎のFax。一枚目には「カバ丸です」としか書いてないのだけど……（つづく）。（桜庭撮影）</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>
<tr>
<td><br />
<p><font size="3"><b>なぜこんなに淋しいのだろう？　部屋の戸口に立ち止まり、そのままドアの枠に肩をもたせる。こんなに淋しいのになぜ人間が嫌いなのだろう？　こんなに淋しいのに人間が嫌いなら、いったいどうすればいいのだろう？<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『彼女がその名を知らない鳥たち』</font></div><br /></td></tr>
<tr>
<td><font size="3"><b>12月某日</b></font><br /><br /><font size="3">
<br />
　もうすっかり、冬だ。<br />
　ところでＫ島氏は、いま、たいへん忙しそうである。まぁ編集さんはみんな、年末なのもあってかヘロヘロで、Ｋ子女史からも「いま生涯でいちばん前髪が長い！（けど、美容院に行けない！）」という連絡がきていた。Ｋ島氏とはよく、いま読んでる本の報告をしあってるんだけど、ここしばらくというもの、くる連絡というと、<br />
「佐藤正午の本（<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4334926711?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4334926711" target="blank">『身の上話』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4334926711" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>）を読んでます。おもしろいです」→「まだ佐藤正午を読んでます」→「まだ途中です。しかしやっぱりおもしろい……」→「いまですか？　だから、佐藤正午をっ！」
と、仕事の合間に、一生懸命、プライベートの読書をはさみつつもなかなか一冊が終わらないという状態が続いていた。<br />
　わたしのほうは〈週刊文春〉の連載<b>『伏　－贋作・里見八犬伝－』</b>が始まって、一週間に一回締切がくるというのが初めてなのでどきどきはしているのだけれど、相変わらず本はぐいぐい読めている。<br />
<b>『このミス』</b>をぱらぱらしてたら話題に上がってた、飴村行という人の本を探しに、単行本のミステリ棚に行ったら、ぜんぜんなくて（文庫書き下ろしだったらしい）、代わりに、同じアの棚で泡坂妻夫の怪しい短編集<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4334734421?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4334734421" target="blank">『鬼子母像』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4334734421" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>をみつけて読んだり。そしたら、こう、幻想的で罪深くって、こう、皆川博子風というか、すっごくよかったり。あと、Ｋ島氏が「ぜったい桜庭さん、好きですよ！」と言っていた創元推理文庫の新刊<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488102029">『ソフィー』</a></b>と<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488154028">『閉じた本』</a></b>も読んだし、川出正樹さんにいただいた、生まれるずっと前に出たポケミス（スタンリイ・エリンの<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000JAYCRS?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B000JAYCRS" target="blank">『ニコラス街の鍵』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=B000JAYCRS" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>）もおもしろくて、同じ著者の作品を探したけども軒並み絶版だったり。やはりアマゾンで買い物できる人間に進化するべきかと、また、迷ったり。その二人にお勧めされた、イギリス人のメイドが主人公のゴシックサスペンス<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4270005424?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4270005424" target="blank">『リヴァトン館』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4270005424" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>（3000円もする）を読み終わった直後に、版元の人が一冊送ってくれて、悔しかったり。人にそのあらすじを話してる途中でなぜかロバート・ゴダードの<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4167218097?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4167218097" target="blank">『リオノーラの肖像』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4167218097" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>と混ざって、うっかり、嘘っこを教えてしまったり。トマス・Ｈ・クックをいまごろ一人でまとめ読みしたり……解説にある“雪崩を精緻なスローモーションで再現するような”どおりの作風でやっぱりすごかった……。あと、近所の書店の“詩人の小池昌代さんがお勧めする本”コーナーでみつけた、沢木耕太郎が自身の父について書いたノンフィクション<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4344408284?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4344408284" target="blank">『無名』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4344408284" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>……。佐々木丸美の新装版もアリ塚のように積んで、一気に再読……。もう、とにかく毎日、当たりの本ばかり引き当てては読んでて、楽しいー……。<br />
　といっためくるめく日々を（って、長くてすみませんでした……）、ゲラの山に囲まれて身動き取れないＫ島氏に、にたにたしながら逐一、報告していた。<br />
　で、そろそろ「キーッ！　なんなんですかっ、ぼくは大好きな佐藤正午をちょっとしか読めてないのに！」と、壁をたたいて怒るかなぁ、と思ってたら（←その<b>『身の上話』</b>という本も、結局、わたしが先に読み終わっちゃった）、年末近くになって、「例のサスペンス復興委員会の忘年会でも開きますか」と急に連絡がきた。<br />
　メンバーは、オツボメン、Ｆ嬢（薙刀二段）、書評家の川出氏、わたしである。四人の共通点は「カーとアメリー・ノートンが好き」だろうか……。ちがうだろうか……？　ともかく、飯田橋《鳥どり》で夜七時に待ち合わせ。<br />
　当日、大雨の中を、まず西新宿にちょっと用があったので出かけて、最近ようやく入れるようになった西口の〈ブックファースト〉（コクーンビルという銀色の要塞の地下にあり、入り方がちょっと難しい）に寄った。すると、海外ミステリーフェアの棚があって、誰がセレクトしたのかものすっごくマニアックな、誰かの家の本棚みたいな並びになっていた。<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4794927452?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4794927452" target="blank">『最後の審判の巨匠』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4794927452" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>が普通にあるし、それに、えぇと、えぇと……。<br />
　せっかくなのでiPhoneで撮影して、今夜の忘年会でそれを見せてお勧めを聞いて、明日もう一回こようか、と思う。単行本で失敗すると辛いので（財布が）、ポケミスの棚から、とりあえず、シャーロット・アームストロングの<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150002339?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150002339" target="blank">『疑われざる者』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4150002339" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>、あと<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150012873?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150012873" target="blank">『ママは何でも知っている』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4150012873" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>を選んだ。クリスチアナ・ブランドもたくさんあるけど、文庫でもいろいろ出てて未読が残ってるからなぁ、と迷って、吟味して<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150004722?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150004722" target="blank">『猫とねずみ』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4150004722" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>一冊だけ買った。<br />
　飯田橋に移動。〈鳥どり〉の入口で、まずＦ嬢と、ついで川出さんとばったり会う。三人とも時間ぴったりにきたということだろうか……？　Ｋ島氏はゲラの山に囲まれてすこし遅れるとのことで、さきに始める。<br />
　フィリップ・マーゴリンが知らないうちに絶版になってるらしい。<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150408734?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150408734" target="blank">『黒い薔薇』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4150408734" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>と<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150410011?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150410011" target="blank">『葬儀屋の未亡人』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4150410011" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>を持ってるので、引越しなどでなくさないように大事にしとこう、と思う。<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150409145?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150409145" target="blank">『暗闇の囚人』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4150409145" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>というのもお勧めだったらしい。Ｆ嬢からトム・リーミイの<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4480026479?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4480026479" target="blank">『沈黙の声』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4480026479" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>というＳＦをもらい、著者とハーラン・エリスン（<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150103305?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150103305" target="blank">『世界の中心で愛を叫んだけもの』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4150103305" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>の人）の交友について聞く。川出さんから、一冊しかないので要返却だが、と（Ｋ島氏からもそう言われて借りることが多い。わたしたちは絶版の海で戦ってるのだ……）<b>『殺人の朝』</b>と<b>『消えた犠牲』</b>を借りる。さっき書店で迷ったクリスチアナ・ブランドはというと、<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150730024?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150730024" target="blank">『ジェゼベルの死』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4150730024" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>が作風の極北でお勧め、と聞いて、それは昔読んだので、いちばんいいのをもう読んじゃったのだろうかと思うと、知らない間に蜜月がひゅんっと終わってたようで、ちょっとだけ不安になる。あ、Ｋ島氏がきた。ピンク色で、南国の派手な花が幾つもささっている、謎の飲み物をいそいそと頼んだぞ。そういや、いつもそれを頼むなぁ。なんだか、古い翻訳で名探偵ポアロを読むたびにかならずポアロが飲んでる、ものすごく甘いという“黒スグリのシロップ”を思いだすなぁ。たぶんカシスのリキュールのことじゃないかな、と、大人になってから推理してみたけど、どうなんだろ……。<br />
　デイヴィッド・イーリイが好きそうだけど、<a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4309463290?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4309463290" target="blank">来年辺り文庫になるから</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4309463290" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" />、ちょっと待ちなさい、とか。昔、Ｋ島氏がお勧めしてた<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4881357379?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4881357379" target="blank">『悪魔に食われろ青尾蠅』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4881357379" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>という素敵タイトルの本と同じ著者による<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4093565813?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4093565813" target="blank">『殺意のシナリオ』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4093565813" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>もお勧めだとか。ボアロー＆ナルスジャックがなかなか復刊しないぞとか。アメリー・ノートンの<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4163165304?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4163165304" target="blank">『殺人者の健康法』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4163165304" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>が好きなら、鳥飼否宇さんの<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4562041374?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4562041374" target="blank">『官能的』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4562041374" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>もいいかも、とか。「メアリー・ノートンと紛らわしいからあまり売れないんですかねぇ」とか（←これを言ったのはＫ島氏）。「あ、<b>『リヴァトン館』</b>２冊あるんですけど、誰か……」と、わたしが取りだしてみたら、四人とももう読んでたりとか。で、結局、創元の海外ミステリ班新人、Ｓ嬢が「これからたくさん読んで勉強する！」と言っていたので、Ｋ島氏に預けたりとか。<br />
　そんなことをしてる間に11時ぐらいになったので、帰ることにした。買った本と、借りた本と、もらった本で、鞄がずっしりと文字で重たかった。<br />
　帰りの電車で、読みかけのままもってた沼田まほかる<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4344413784?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4344413784" target="blank">『彼女がその名を知らない鳥たち』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4344413784" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>を読んだ。<br />
　悪い男、黒崎に利用されて傷ついた十和子は、下品で貧相な年上男、陣治のもとに転がりこんで暮らしていた。黒崎が行方不明とわかり、十和子は陣治が殺したのではと疑い始めるが……。<br />
　わざと書割のように書いてみせる町、部屋、そして、いわゆるずるい人間たちの中で、陣治という不気味な男のその存在感だけが、すぐそこにいるようにものすごく生々しく迫ってきて、こ、わー、い。女の心とからだの傷から、気味の悪い形の花が、やっぱり気味の悪い造形の虫を呼ぶように、フェロモンが出て、女以上に傷ついた男が、くんくんしながら寄ってくる。二人は離れられなくなる。いやな姿なのに、そこまで絡みつくようにして一緒にいるのが、なんだか暗くて重たくて、眩しい。<br />
　どうなってしまうんだろう、と思いながらページをめくる。四ッ谷駅で乗り換えて、赤いラインが目印の地下鉄丸の内線に揺られながら、またページを開く。どうなってしまうんだろう。<br />
　二人の破滅が近づいてくる。でもまだ、読んでるわたしも、本の中の十和子も、気味の悪い陣治の部屋に、もうちょっとだけ、いたい。永遠にいっしょにいたくはないけど、まだ別れ別れにはなりたくない。ゆっくりページをめくりながら、地下鉄の、ゴォォーッという鈍い音を聞いている。<br /></font> </td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
<li><a class="current" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba1001-1.html">1</a></li>
<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba1001-2.html">2</a></li>
<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba1001-3.html">3</a></li>
</ul>
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    <title>また桜庭一樹読書日記　【第６回】(1/3)［2009年12月］</title>
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    <id>tag:www.webmysteries.jp,2009://6.459</id>

    <published>2009-12-07T03:30:00Z</published>
    <updated>2009-12-24T19:16:20Z</updated>

    <summary>＜PR＞最新刊『製鉄天使』の特設ページ公開！【ここをクリック】 ＜PR＞読書日記第３弾の刊行日が変更になりました【ここをクリック】 【謎の道行き】※注意：音が出ます　大阪のサイン会にて。控え室から会場...</summary>
    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><object width="320" height="265"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/NOlQbCu8YT0&hl=ja_JP&fs=1&rel=0"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><param name="allowscriptaccess" value="always"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/NOlQbCu8YT0&hl=ja_JP&fs=1&rel=0" type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always" allowfullscreen="true" width="320" height="265"></embed></object></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【謎の道行き】※注意：音が出ます</b>　大阪のサイン会にて。控え室から会場に移動する様子をば。撮影はＳ嬢（海外ミステリ班新人）。今月から試験的に動画日記を採用してみました。四角い魔物（iPhone）で……。（編集部・Ｓ撮影）</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>
<tr>
<td><br />
<p><font size="3"><b>「一つだけあるんだ。きみは自分の人生は虚しいといつもわたしに言っていた。それはきみに本当の家族がなかったからだ――というか本当の友達が。戦争に耐えられたのも、きみには戻っていくべきものがなかったからだ」<br />
「それは今も変わっていないよ」<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『リオノーラの肖像』</font></div><br /></td></tr>
<tr>
<td><font size="3"><b>11月某日</b></font><br /><br /><font size="3">
<br />
　<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024505">『製鉄天使』</a></b>のサイン会である。<br />
　今週は大阪。午後二時からなので、各自好きな時間に東京から新幹線に乗って、一時ちょっと前に新大阪駅でざっくりと集合である。<br />
　到着して、Ｋ島氏の携帯にかける。と、駅内の書店にて待っていてくれたらしく、手ぶらにて、「あっ、桜庭さん！」と、ちょこちょこと改札まで走ってくる。<br />
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「ぼく、ちょうどそこで、吸血鬼と人狼のことを考えてました！」<br />
わたし「へ？」<br />
Ｋ島氏「トワイライトですよー、トワイライト」<br />
</blockquote><br />
　歩きながら、書店で販促用の動画が流れていたという人気の海外ＹＡ<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4863320132?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4863320132" target="blank">『トワイライト』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4863320132" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" />
</b>（さいきん映画化された）の話になる。どうやらＫ島氏は、20分近くも、その動画に謎の釘付けになってたらしい。<br />
　身振り手振りもまじえて、夢中で、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「主人公のＢＦが吸血鬼でしてね、でも、もう吸血鬼の国に帰らないといけない、だから君とはつきあえない、みたいなことになって。そしたら主人公が『危険な目にあえば彼が助けにきてくれるはず』と、崖から海に飛びこむんです」<br />
わたし「そんなことしたら死んじゃうじゃないですか！（←って、愛の奇跡を信じられない人の発言？）」<br />
Ｋ島氏「すると、なんと別の男が現れて彼女を助けてくれるんですけど。その男が、あるとき、走ってたら、急に、狼に……そう、こんどの男は人狼だったのです！」<br />
わたし「えっ！」<br />
Ｋ島氏「“優しい彼と、激しい彼、どっちを選べばいいの？”と主人公は慟哭するわけですけど、でもね……」<br />
</blockquote><br />
　おや。なにか急に不満そうである。話しながら電車に乗って、大阪駅へ。《紀伊國屋書店梅田本店》に向かいながら、拳を振りあげ、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「優しいとか激しいとかの問題じゃなく“吸血鬼の彼と人狼の彼、どっちを選べばいいの？”じゃないですか！」<br />
わたし「エッ、なんで、そこで怒りの導火線に火がつくんですか。わからん……」<br />
Ｋ島氏「それにしても、よりによって、こっちは吸血鬼、こっちは人狼……。この子は、普通の男の子からは好きになってもらえないんでしょうか……」<br />
わたし「いや、変人受けするんじゃないですか。でも、なんにしろ、モテてるんだからいいじゃないかよ……」<br />
Ｋ島氏「いま大ヒット中なんです！」<br />
</blockquote><br />
　そういや、と、ふと、何年も前に見始めたら止まらなくなった海外ドラマがあったことを思い出す。
ＵＦＯで有名な街、ロズウェルの普通の女子高生が、危険な目にあったところを助けてくれた謎の転校生マックスと恋に落ちるが、マックスはじつは宇宙人だった……。このマックスが、主人公の部屋に忍びこんで壁におおきなハートを書いたり、宇宙人の着ぐるみで変装して（自分だってもともと宇宙人なのに!?　二重に！）後をつけたりと、恋愛ドラマのはずなのにストーカーっぽくて変だったのだ。一時期、謎の釘付けになって夢中で見ていた。<br />
　と、Ｋ島氏がはっと現実に帰ってきたように、わたしを見て、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「あれっ、そんなことより、桜庭さん、荷物をひとつ持ちましょうか。そっちのシールのほうだけでも」<br />
わたし「いや、大丈夫です」<br />
Ｋ島氏「でも、ぼく、いま、手ぶらですけど……？」<br />
わたし「いやいや」<br />
</blockquote><br />
　<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000VVQEW6?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B000VVQEW6" target="blank">『ロズウェル』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=B000VVQEW6" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>のことを考えてるうちに、会場に到着。書店員さんがつくってくれた真っ赤なリボンつきのおおきな「製鉄天使」看板が控え室のドアに貼ってあった。おぉ！<br />
　特攻服と地下足袋に着替える。特攻服は後ろ姿が派手で、前から見るとさびしいので、と、サイン会用に営業Ｓ沢氏が前側に薔薇や髑髏のアップリケをたくさんつけておいてくれた。着替えて、店頭用のサイン本をつくって、控え室を出ると、会場まで地下の繁華街をけっこう長く歩く。女の人たちがみんなおしゃれして休日のお出かけを楽しんでいる中を、行く。けっこう恥ずかしい。<br />
<br /><blockquote>
わたし「わ、わたし、なんに見えるでしょうか……」<br />
書店員さん「バイクが壊れてやむなく電車で移動中の、ごく普通の暴走族に見えております。大丈夫！（冷静）」<br />
</blockquote><br />
　そ、そうか……。<br />
　サイン会は無事に進んだ。作家が不思議な扮装をしていることを除いては……。大阪は三回目なので、見覚えのある顔もちらほらいてくれた。<br />
　終わって、また控え室にもどって、着替える。中華屋さんであんかけ焼きそばを食べて、駅に向かおうとすると、Ｋ島氏がまた荷物を持ちましょうかと言うので、また断る。<br />
　すると、しばし、不満と不審の混ざったうろんな目つきでわたしを観察していたが、急にひらめいたらしく、はっ、と息を飲んだ。<br />
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「（眼鏡に指を当て、うさんくさそうに）桜庭さん、もしかして、いま、『人に荷物を持ってもらうほど軟弱な己ではない！』みたいなことを考えてるんじゃないでしょうね」<br />
わたし「あれっ、図星です……」<br />
Ｋ島氏「この場合、『強がっちゃって、かわいー』とか言いかえされたら、こんどはいったいどうなってしまうんですか」<br />
わたし「（鬼の形相で）むかーっとします！」<br />
Ｋ島氏「うへ。桜庭さんって、ある意味、めんどくさい人なんですねぇ……」<br />
わたし「（弱気に）そ、そんなことありません……。扱いを覚えたらじつにかんたんな人です」<br />
</blockquote><br />
　電車に乗る。<br />
　席が一つだけ空いてる。<br />
　それを横目で見たＫ島氏が、また眼鏡に指を当て、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「もしかして、座ればと言ったら、またもや『そんなに軟弱な己では！』が、始まるとか？」<br />
わたし「はい、もちろん」<br />
Ｋ島氏「うーん、やっぱり、ある意味、めんどくさいなぁ、もう……」<br />
</blockquote><br />
　わたしは一人のときも、電車に乗ったらなるべく座らない。すいていても立ったまま本を読む。<br />
　これには、じつは深いわけがある。昔<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4396380410?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4396380410" target="blank">『花のあすか組！』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4396380410" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>を読んでいたら、こんなシーンがあった。一人で族をはるあすかが、大勢にボコられて家に帰ってきて、ふぅ、と椅子に座ったところ、あまりにも痛くて（アバラが折れてた？）それきり三日立てなくなった。あすかは「以来、電車でもどこでも、座らねぇことにしてる。人間、てめぇの二本の足で立ってたほうがいいにきまってんだ」と渋く語った。<br />
　これを中学のころに読んでひどく感化を受け、<br />
<br /><blockquote>
わたし「以来、電車……は残念ながら鳥取になかったんですけど、バスに乗ったときはガラガラでもぜったいに座らない、そんな謎の女学生になったのです。……って、聞いてます？」<br />
Ｋ島氏「つきましたよっ。立ったままっ。新大阪にっ」<br />
</blockquote><br />
　そろそろ怒られそうので、意地を張るのをやめる。とはいえ、後はもう新幹線に乗るだけだ。<br />
　と、思ったら、まだ終わってなかった。新幹線のホームでまたはっとＫ島氏がつぶやき、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「もしかして、グリーン車がよかったですか？」<br />
わたし「（鬼の形相）いやだ！」<br />
Ｋ島氏「って、なんなんですかっ！　気を使ってるのにーっ！」<br />
</blockquote><br />
　双方、ぷりぷりしながら新幹線に乗る。<br />
　寝る。<br />
　家について、いただいたおみやげを開いたりお手紙を読んだりして、それから<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4167218097?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4167218097" target="blank">『リオノーラの肖像』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4167218097" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>を取りだした。<br />
　ロバート・ゴダードはずっと、ルース・レンデルと同じく、好きそうだなーと思いつつ、何冊か読んだけども当たりの作品に出会えてないような変な感じで、もじゃもじゃした気持ちになる相手だった。誰だかのお勧めで（誰かは忘れちゃった）リオノーラを探してて、でも絶版だったところ、当時の<b>〈小説すばる〉</b>担当嬢がみつけて、送ってくれたのだ。それを読もう読もうと思いつつずっと積んでいた。<br />
　読み始めたら、するすると流れだした。老女リオノーラは、初老になった娘を連れて、少女時代をすごした屋敷にもどってくる。ずっと心に押し隠していた疑問、出生の謎を知るために。娘に語りかけるリオノーラの語りの中に、さらに、戦争で死んだ父について話にきた戦友の語りが始まり、まるで、箱の中に、さらに箱があって、またさらに……無限に、ミクロになっていく過去の情景に連れていかれて、帰りの道に迷いそうな、わくわくする不安さがある。<br />
　やがてゆっくりと現在にもどってきて、娘とともに老女リオノーラは歩きだし、そこで、最後の謎がふわりと解けて、あとは老境を迎えたいまのゆったりした時間だけが残る。<br />
　設計図のように書きだしてみると、歪んで、エッシャーの騙し絵みたいに変な感じがするようで、でも、おもしろかった。うーん、これがベストなのかな、でもまたどれか読んでみよう、と悩みながら、とりあえず今日はもう、寝た。<br /></font> </td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
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</ul>
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<entry>
    <title>また桜庭一樹読書日記　【第5回】(1/3)［2009年11月］</title>
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    <id>tag:www.webmysteries.jp,2009://6.417</id>

    <published>2009-11-05T04:00:00Z</published>
    <updated>2009-11-27T21:06:18Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><img height="320" alt="サイン本！" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba0911_01.jpg" width="240" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【サイン本！】</b>500冊……の一部。誰かが、ふと「積むと鉄の塊みたいだな～！」と。（桜庭撮影）</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>
<tr>
<td><br />
<p><font size="3"><b>　村岡版『赤毛のアン』では、第37章が大胆に書き換えられているのである。<br />
　純粋にページ数という観点から、他の章と比較してみよう。原作の第20章は、第37章とほぼ同じ長さである。ところが翻訳では、第20章は約9.5ページであるのに対して、第37章は４ページほどしかない。<br />
<br />
　しかし、問題はそこでは終わらない。（略）村岡花子が翻訳する際に省略するのが適切であると判断した箇所を、原作の作者であるモンゴメリーはなぜ省略しなかったのだろうか？<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『東大の教室で『赤毛のアン』を読む』</font></div><br /></td></tr>
<tr>
<td><font size="3"><b>10月某日</b></font><br /><br /><font size="3">
<br />
　先日、携帯電話をなくしたので、iPhoneという名の、四角い、白い魔物を買った。<br />
　……いや、携帯電話、といったのは、いまちょっと見栄をはったので、ほんとうはついこないだまで、友達から「なにそれ、ガンダム？」と呼ばれる、四角くてでっかいPHSを使っていた。なぜなら壊れないからで、なぜ壊れないかというと、ほとんど使わないからだ。<br />
　それで、一昨日の朝。<br />
　ぐぅぐぅ寝ていたら、どこからか、やけに規則正しい太鼓の音が聞こえてきた。日本のじゃない、ちょっとおかしな……アフリカの太鼓みたいな音色である。近所の誰かが楽器を買って、練習してるのだなー、と思った。翌日、また同じ音が聞こえた。また練習してるんだなー、と思った。そして、今朝も、また……。<br />
　きっと中央線ちっくな、チリチリパーマで布を巻いたような服装の若者だ、吉祥寺の古道具屋で買ったのだ、練習に熱中してるぞ、とかなり具体的にイメージまでできたのだけど……。<br />
　これが、じつは、自分のiPhoneのアラームだった。<br />
　と、これぐらいひどく、機械オンチすぎて使い方がまったくわからない。映画<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B001DKBJJW?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B001DKBJJW" target="blank">『2001年宇宙の旅』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=B001DKBJJW" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>の冒頭に出てくる猿みたいに、四角い魔物をフンフンといじってるうちに、どうやらアラーム機能でなにかをやってしまったらしい。ちなみに「サウンド」に入っている「ティンバ」という音です（そばにiPhoneを持ってる人がいたら聞かせてもらってください……）。<br />
　このままでは、『2001年』の猿みたいに、最終的に、四角い魔物を「わからん！」と上に放り投げてしまう……。と悩みつつも、電話をかけることと、受けることと、メールと充電だけなんとか理解して、一旦、休憩とした。<br />
　で、この日は、いつもと同じように夕方まで仕事して、夜、ご飯食べて、お風呂に入りながら<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4130830511?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4130830511" target="blank">『東大の教室で『赤毛のアン』を読む』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4130830511" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>（山本史郎）を読んだ。最初はお風呂用にしようと思っていたのだけれど、<br />
<br /><blockquote>
・有名な村岡花子訳の<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/410211341X?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=410211341X" target="blank">『赤毛のアン』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=410211341X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>には、じつはごっそり抜けてる部分があった！<br />
・犯人（村岡花子）の動機は！？<br />
</blockquote><br />
　という謎がおもしろくて、出てきてからも引き続き読んでしまった。<br />
　風変わりな孤児、アンを引き取ったマリラとマシュー。やがて三人は心を通わせあうようになるが、ラスト近くでマシューが心臓発作を起こして死んでしまう。そこでマリラがアンに語りかけるという山場のシーンを、村岡訳はなぜか大胆にカット、内容を要約してるというのだ。<br />
　さて、それはなぜか、という謎解きを、探偵役である著者（東大の先生）がしてみせる。その後、
<br />
<br /><blockquote>
・被害者（モンゴメリー）はなぜ村岡花子が翻訳したように書かなかったのか？<br />
</blockquote><br />
　という謎に移って、これも解いてみせる。<br />
　それによって、どうして日本でこんなに長く、広く<b>『赤毛のアン』</b>が愛されているのかという謎まで解けてしまう。マリラをどう描くか……。人間（生々しい生身の存在）にするか、キャラクター（物語に合わせた平面的な人物）にするか、という箇所で、モンゴメリーと村岡花子はべつの道を選んだ、というのだ。<br />
　なるほどなぁ、と思って読んでいったら、本の後半は、リアリズムで書かれていた<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/433475113X?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=433475113X" target="blank">『ジェイン・エア』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=433475113X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>がラストでとつぜんオカルトになる（遠くにいるはずの相手役、ロチェスターが「ジェイン～！」と呼ぶ声がなぜか聞こえる）理由を、論理（当時の社会事情）で読み解いていて、こっちもおもしろかった。わたしは単純に「<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/410209704X?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=410209704X" target="blank">『嵐が丘』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=410209704X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>でも、キャサリンのお化けが窓の外で「開けて～！」と叫ぶし、荒野には不思議がつきものなんだろ」と思って、ぜんぜん気にしてなかったけど……。なるほど……。<br />
　本を読み終わったら、まだ時間があった。ジョセフィン・テイの歴史ミステリ<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150727015?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150727015" target="blank">『時の娘』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4150727015" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>の新訳と勘違いして、本屋で二、三度素通りしてて、今日の夕方、ようやく「……おい、ちがうぞ。ＳＦだ！」とはっと気づいて買ってきた<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488715038">『ロマンティック時間ＳＦ傑作選　時の娘』</a></b>を、寝転んで読み始めた。アンソロジーだから、長編とちがって、眠くなったら途中でふわっ、とやめられる。二冊目は短編集に限るゾ。<br />
　最初は「ジャック・フィニイのタイムトラベル物だったら、短編集で読んだ<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150200262?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150200262" target="blank">「ゲイルズバーグの春を愛す」</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4150200262" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>とか<b>「愛の手紙」</b>とかがよかったのにー……」とか思いつつ読み始めたけれど、どれもおもしろいし、未訳と、30年以上前に雑誌に載ったきりのと、現在入手困難なのだけで９編、外れナシ、順番も読みやすい、というすごくいいアンソロジーだった。<br />
　フィニイの短編集未収録の<b>「台詞指導」</b>は、お得意の古きよき映画界を舞台にした、ノスタルジックで皮肉な作風。「ゲイルズバーグ」と同じアイデアのタイムトラベル物だから、二編とも短編集には入れられなかったのかもしれないけれど、この作家が好きだったら読み逃したくない作品だった……。短編<b>「たんぽぽ娘」</b>で有名なロバート・Ｆ・ヤング<b>「時が新しかったころ」</b>も、さびしくて優しい話で、脳内で勝手に、湯田伸子の絵柄で少女漫画になる……。<br />
　結局、最後まで読んでしまって、やばいまた朝になる、と寝ることにした。<br />
　布団に潜ったら、ふっと、もう明日の朝になっても、あの、チリチリパーマで一心不乱にアフリカの太鼓を叩く、布を巻いたような服装をした、やばいテイストの隣人はどこにもいないんだな、と思った。<br />
　謎が解けて、不思議が消えて、また、明日がやってくる。<br />
　ちょっとさびしくなりそうなので、あの「ティンバ」というサウンドはもう使わないようにしよっかなぁ、と脳内で封印しながらそっと目を閉じた。<br /></font> </td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
<li><a class="current" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba0911-1.html">1</a></li>
<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba0911-2.html">2</a></li>
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</ul>
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<entry>
    <title>また桜庭一樹読書日記　【第4回】(1/3)［2009年10月］</title>
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    <id>tag:www.webmysteries.jp,2009://6.401</id>

    <published>2009-10-05T04:30:00Z</published>
    <updated>2009-10-27T12:52:39Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><img height="323" alt="編集部の隅にて" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba0910_01.jpg" width="242" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【編集部の隅にて】</b>できあがった特攻服を試着したまま、Ｆ嬢（薙刀二段）とともに本棚の前で世間話を。「う～む。この格好でどの本を持ったら、おもしろいでしょう？」「Ｊ・Ｇ・バラードの『殺す』なんてどうでしょう？　それか『ライ麦畑でつかまえて』とか……」ちなみに、右端に写っているのはＦ嬢が会社に置きっぱなしにしているマイ薙刀。（Ｓ沢撮影）</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>
<tr>
<td><br />
<p><font size="3"><b>バスに乗っているとき、ふと窓の外を見て、一年も前に死んでしまったはずの人の姿を見たら、あなたはきっとびっくりすることでしょう。ましてそのときが、彼の未亡人の再婚祝いのプレゼントを買いに行く途中だったら……（略）……あなたならどうしますか？<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――「あなたならどうしますか？」</font></div><br /></td></tr>
<tr>
<td><font size="3"><b>９月某日</b></font><br /><br /><font size="3">
<br />
　　新刊<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024505">『製鉄天使』</a></b>の著者近影を撮るために、中野坂上にあるスタジオに行く。主人公の衣装と同じ、真っ赤な特攻服でうんこ座りしての撮影なのだ。<br />
　特攻服は、営業担当のＳ沢氏（<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488472016">『少女には向かない職業』</a></b>でもお世話になった）が、原稿を読んでコピーを考えて、厚木にある専門店まで、週末、家族四人で出かけて特注してくれたという、力作だ。<br />
　真っ赤だ！<br />
　着てみたら、ふっと、とつぜん蘇ってきた記憶があった。その昔、マレーネ・ディートリッヒみたいな男装の麗人に憧れてメンズスーツ風の服を買って、はりきって着てみたら、なぜかチャップリンそっくりになってしまった……というおそろしい過去だ。あれっ、特攻服も、ちいさいせいかぜんぜん怖くならない。お父さんのスーツをはおったみたいなことになっている。ま、いいか。<br />
　メイクを終えて、背中に入ったタイトル<b>『製鉄天使』</b>が見えるように後ろを向いたまま、首だけぐいっと曲げて横顔を見せる、というポーズを取る。カメラマン氏が「桜庭さんの首の回り次第ですよ、がんばって！」と言う。たいへんだ……。ものすごくがんばって首を回す。<br />
<br /><blockquote>
カメラマン氏「うーん。手に、なにか持ったほうがいいなー。あっ、タバコかな」<br />
わたし「わたし、バナナなら持ってますよ」<br />
カメラマン氏「バナナ!?」<br />
</blockquote><br />
　お腹がすいたときのために、うちの台所から一本、もぎって持参したバナナを握ってみると、なにかすごくシュールになって評判がいい。<br />
　何パターンか撮った後、本を読んでるところもいちおう撮っておこう、ということになる。特攻服のままで、しゃがんで、本を持ってみる。<br />
　撮影が無事に終わって、着替えて出てくる。編集、営業、デザイナーさんでなにか相談しているので、輪に入ろうと近づいた。<br />
すると、くるり、と振りかえったＫ島氏が、真顔で、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「あっ、いま、大人の話をしてますからあっちにいっててください～！」<br />
わたし「あ、はいはい……」<br />
</blockquote><br />
　引き下がろうとして、ハッと気づいて、反論する。<br />
<br /><blockquote>
わたし「ちょっと、わたしも大人ですよ！」<br />
Ｋ島氏「ははは」<br />
わたし「というか、Ｋ島さんのほうが年下じゃないですか!?」<br />
Ｋ島氏「はい、はい」<br />
</blockquote><br />
　ぜんぜん相手にされないので、おとなしく隅でお菓子を食べながら待つ。<br />
　その後、新宿のルノアールに移動して<b>〈Webミステリーズ！〉</b>用のインタビューを受ける。<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488023935">『赤朽葉家の伝説』</a></b>では“せかい＝ビューティフルワールド”という言葉で書かれていて、今回の<b>『製鉄天使』</b>では“せかい＝えいえんの国”になっているが、それはなぜ、とか。ビューティフルワールドは未来で、えいえんの国は過去なのかなぁ、とか。あの金ピカのラストシーンは、なんとＫ島氏が見たという夢を採用したのだ（←ほんとう）とか。いろいろ話す。<br />
　インタビューが終わって、バルト９が入っているマルイの上にあるお寿司屋さんで、Ｋ島氏、Ｆ嬢、海外ミステリ班のＭ澤氏と、食べ放題コースでがんばることにする。<br />
　食べながら、<br />
<br /><blockquote>
Ｆ嬢「最近、なにがおもしろかったですか」<br />
わたし「えぇと……あっ、ついに復刊されたヘレン・マクロイの<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488168056">『幽霊の２／３』</a></b>、おもしろかったですよ。飲みの席の余興で“幽霊の２／３”というゲームをしてるときに人気作家が変死して、その後、彼のおどろきの過去があきらかになっていくという……。タイトルが彼の秘密とじつはピッタリで、ぞくっとしますねー。たしか貫井徳郎さんがもとの創元推理文庫版を大事に持っておられたと聞いたような」<br />
Ｆ嬢「マクロイお好きなら、ほかに<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488168049">『家蠅とカナリア』</a><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488168032">『ひとりで歩く女』</a></b>もお勧めですが」<br />
わたし「なるほど、メモ、メモ……。あと、積み本にしてたシャーロット・アームストロングの短編集<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488263027">『あなたならどうしますか？』</a></b>がべらぼうにおもしろかったです。死んだはずの人間が生きてるのを目撃したのに、普段の行いが悪くて誰にも信じてもらえない表題作とか。<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4150724512?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150724512" target="blank">『毒薬の小壜』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4150724512" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>もですけど、やな女とか、追いつめられていく善意の人たちを描いたら、ほんとにいいなー。でも、これ、絶版ですよね？」<br />
Ｆ嬢「あっ、それ、今月復刊します」<br />
わたし「……ええ～！」<br />
</blockquote><br />
　苦労して手に入れたつもりで、復刊されるのは、微妙な気持ちだなぁ。いや、まぁ、おもしろいからいいんだけど……。<br />
　おや。そんなことを考えているうちに、Ｋ島氏とＦ嬢が、最近の日本の新刊で伊坂幸太郎さんの<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4198627797?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4198627797" target="blank">『あるキング』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4198627797" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>と津原泰水さんの<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4152090677?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4152090677" target="blank">『バレエ・メカニック』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4152090677" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>の話をキャッキャとしている。どっちも買ったきりになってたので、しまった、読まねばと思う。<br />
　ところでお寿司はというと、２時間制で、一度に20カンしか頼めない。どんどん頼んで、どんどん食べていく。と、思ったら、途中で急にお腹いっぱいになった。困ったなと思っていると、Ｋ島氏が菩薩のような笑顔を浮かべて、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「苦しかったら、ぼくらが食べますから残してもいいですよー」<br />
わたし「エッ!?　ほんとに!?」<br />
</blockquote><br />
　よ、よかった。<br />
　そういえば、まだ<b>『少女には向かない職業』</b>を出したころ。同じお寿司屋さんにきたとき、やはり途中でお腹一杯になった。しかしそのときのＫ島氏はおそろしい形相をして「桜庭さん、お寿司は食べ物じゃないですよ。お寿司は、お寿司は、じつは……飲み物です！」「エッ!?　嘘だ!?」「ほんとです。だから、液体だと思って流しこみなさいっ。ほらっ残すなっ」といって喉もとまでお寿司を押しこんだ。<br />
　Ｋ島氏は、もしや、ここ数年でちょっと丸くなったのかもしれない……。<br />
　時は、こうして、止まることなく、流れてゆく……。<br />
　と、しみじみと、どぅっと倒れているイクラ軍艦巻を眺めていると、同じくお腹いっぱいのＦ嬢が、<br />
<br /><blockquote>
Ｆ嬢「ところで、桜庭さんの好きな寿司ネタってなんだったんですか」<br />
わたし「エッ、好きな、寿司ネタ、ですか……」<br />
Ｆ嬢「はい……（←待ってる）」<br />
わたし「えー……（←考えてる）」<br />
</blockquote><br />
　好きな本とかだと自動的にしゃべりだすけど、寿司ネタ、と言われた途端に、なにが好きなのか、なんだか自分がよくわからない。そういやなんでもモリモリ食べるし（救急車で運ばれた宿敵の「カキ」以外は……）、あまり深く考えたことがない。舌も肥えてないし、四の五の言わずに、出されたものをうまいと思って黙って喰うのが漢だ、と思ってここまで生きてきた。<br />
<br /><blockquote>
わたし「……わ、わかりません」<br />
Ｆ嬢「えーっ、好きな寿司ネタがわからない!?　本気ですか!?」<br />
Ｍ澤氏「まさか！　さっき、お寿司が食べたいって、自分で言ったのに!?」<br />
</blockquote><br />
　と、びっくりされつつ、２時間経ったのでお開きとなり、帰ってきた。<br />
　帰宅して、風呂に入り、プロの人によるすごいメイクを落として、出てきた。<br />
　読みかけのままで、ものすごく続きが気になっていたパトリシア・ハイスミス<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4309460895?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4309460895" target="blank">『水の墓碑銘』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4309460895" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>に突進して、続きを読んだ。<br />
　資産家の夫と、うつくしくてわがままな妻。周囲は妻を敵視し、振り回される夫に同情している。
夫は、若いころの妻のわがままには、因習を打破してやるというガッツがあったけど、いまではただの破壊女になったとがっかりしている。妻のほうは、一見、穏やかに見える夫の心に潜む闇にとっくに気づいていて、「わたしが破滅させてやりたいのは、あなたのエゴなの！」と責める。<br />
　そんなある日、夫が妻の愛人をこっそり殺してしまって……。<br />
　被害者（愛人）でも、探偵役（妻）でもなく、殺人者（夫）の側から、その心理（これがなんともさりげなく狂気と共存してる）を静かな筆致で書いていて、怖、い。まるで、読んでる自分のとなりに、生まれながらの殺人者が座っていて、最初は普通の人だと思っていたのに、だんだんおかしさに気づいてきて、でも、もはやどうしようもない、このまま黙って殺されるしかない……と……いうような……。<br />
　ラストの２ページは、ほんとにすごい。<br />
　読み終わって、アームストロングの作品群もだけど、サスペンスと“夫婦”という関係は、なかなか相性がいいんだな、と思った。なんでかな……。<br />
　しばらくいい感じにミステリー漬けだったせいか、ふっ、と思いついた。結婚ってどういうことか説明できん、とこのところずっと頭をひねり続けていたけど、配偶者とは、もしや、ミステリー用語における、いわゆる「信用できない語り手」なんじゃないかな。相手だけじゃなくて、自分も、そうなのかも……。<br />
　とかなんとか考えながら、難しいので、布団をかぶって、考えるふりをしながら、じつはすぐ、寝た。<br /></font> </td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
<li><a class="current" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba0910-1.html">1</a></li>
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</ul>
<br />

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    </content>
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<entry>
    <title>また桜庭一樹読書日記　【第3回】(1/4)［2009年9月］</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba0909-1.html" />
    <id>tag:www.webmysteries.jp,2009://6.361</id>

    <published>2009-09-07T08:00:00Z</published>
    <updated>2009-09-11T16:17:02Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webmysteries.jp/">


   
      
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><img height="240" alt="運命の出会い" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba0909_01.jpg" width="320" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【運命の出会い】</b>〈花火〉と〈ハイウェイダンサー〉ってなんだ……？　と、自分で書いておいてとまどう夏の夜。Ｋ島氏も「こうやって、改めてゲラで見ると、すごい字面ですね～」と。（桜庭撮影）</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>
<tr>
<td><br />
<p><font size="3"><b>命がすっかり夫のからだから流れ出してしまっていた。年取ってやっかいになりつつあった夫のからだと、アリスと、ふたつの生命をつないでいたへその緒は、だんだんに細くなってほつれてきていた。そして今、それはぷつんと切れてしまった。<br /><br />
「まるで舌の上に天使がおしっこするみたい」<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『ジュールさんとの白い一日』</font></div><br /></td></tr>
<tr>
<td><font size="3"><b>８月某日</b></font><br /><br /><font size="3">
<br />
　いつも通りに仕事して、夕方。<br />
　<b><a href="http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488024505">『製鉄天使』</a></b>の打ち合わせである。ゲラが出たので、歌舞伎町のど真ん中の喫茶店でＫ島氏と会う。ゲラを広げてあれこれと話し合う。<br />
　真顔で、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「で、ここの『ちーん、ぱっぱっぱらっぱー』の部分ですが、喇叭を吹いている不良少女より、トライアングルを持っている少女のほうがオミソちゃんのはずなので、逆にして『ぱっぱっぱらっぱー』から『ちーん』に……。あーっ！」<br />
</blockquote><br />
　とつぜん話すのをやめ、子どものように突っ伏す。<br />
　あわてる。<br />
<br /><blockquote>
わたし「どっ、どうしましたっ？　誰かに、尻尾を踏まれましたか？　そうだ。そこの通路に尻尾を出さないほうがいいですよ……」<br />
Ｋ島氏「尻尾？　いや、こんな真面目な顔で、口にしている台詞を、ふと冷静に聞いて、自分が情けなくなっちゃって……。この、忙しいのに！」<br />
わたし「ちょっと！　わたしだって、まぁまぁ、忙しいですよ……」<br />
Ｋ島氏「なんなんでしょうか、この、泣いてることを隠そうとする主人公の台詞、『な、なんでもねぇよ。目に銀蝿が入ったのサ』って。人間の目にそんなもの入らないですよ……」<br />
わたし「すっ、素敵ないいわけじゃないですか。わたしだって都合の悪いことを言われたときに使いますよ。『いま、耳くそがいっぱいつまってて聞こえない！』とか……」<br />
Ｋ島氏「そんないいわけ、ぼくけっして許しませんけどね。うーん、うーん、パブリシティをいったいどうしよう……」<br />
</blockquote><br />
　つっぷしたままピクリとも動かなくなった。<br />
　困ったなぁ。<br />
　もしかすると、わたしのせいだろか。<br />
　とりあえず、自分もなにかで悩むことにする。とはいえ、原稿も無事に上がって、ゲラも出て、後は本になるのを待つだけだし、悩み事はぜんぜんないんだよなぁ。でもなにかで悩まないと、ええと……。<br />
　あっ。<br />
　いいことを思い出す。<br />
<br /><blockquote>
わたし「そうだ。わたし、今回のサイン本のシール、どうしよう……」<br />
</blockquote><br />
　と、試しにつぶやいてみると、のっそりと起きあがったＫ島氏が、<br />
<br /><blockquote>
Ｋ島氏「タイヤとかで、いいんじゃないですか」<br />
わたし「なるほど、タイヤ柄……って、そんなシール売ってないですよ！」<br />
Ｋ島氏「フン」<br />
</blockquote><br />
　なんだかんだと揉めながらも、無事に打ち合わせ終了。Ｋ島氏は、最近、どうもあるような気がしてならない幻の尻尾（斑か三毛の模様であろう……）をブンブン振りながら、新宿の雑踏を忙しげに去る。<br />
　帰宅して、ご飯食べて、風呂に入って、<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4870140519?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4870140519" target="blank">『ジュールさんとの白い一日』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4870140519" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>（ダイアナ・ブロックホーベン／赤ちゃんとママ社）を読んだ。<br />
　ある朝、いつもどおりの朝食の時間に、突然死した夫、ジュール。妻のアリスは、長い時間をかけて夫と繋がってしまった、なにか（繊維の一本一本で、とか、へその緒で繋がっている、とか描写される）が離れるまで、誰にも、夫の死を伏せていつもどおりの一日を過ごす。近所に住む自閉症の少年だけが事態に気づくが、なぜか彼もアリスの共犯者になってくれて……。<br />
　反社会的というか、最初から社会と隔絶された、ぐんにゃりとやわらかい小説。読んでいると自分も、社会だと思ってるものからどんどん切り離されて漂い始めるような、妙な感じが、する。<br />
　しかし、夫婦というものは時間をかけて、男と女じゃなくなって、それで、他人にもどってしまえばくっきりした別れが訪れて、親子や兄弟のようなべつの近しさを得れば続いていくんだろうか。うーん。<br />
　まぁ、わからん。と思いながら、目を閉じてぐったりと寝た。<br /></font> </td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
<li class="caption">続きを読む……</li>
<li><a class="current" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba0909-1.html">1</a></li>
<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba0909-2.html">2</a></li>
<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba0909-3.html">3</a></li>
<li><a href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/page/sakuraba0909-4.html">4</a></li></ul>
<br />

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    </content>
</entry>

<entry>
    <title>また桜庭一樹読書日記　【第2回】(1/3)［2009年8月］</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.webmysteries.jp/sakuraba/sakuraba0908-1.html" />
    <id>tag:www.webmysteries.jp,2009://6.330</id>

    <published>2009-08-05T03:00:00Z</published>
    <updated>2009-08-22T19:24:30Z</updated>

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    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webmysteries.jp/">


   
      
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<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="middle"><img height="240" alt="模様替え" hspace="12" src="http://www.webmysteries.jp/images/sakuraba0908_01.jpg" width="320" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tbody>
<tr>
<td align="left"><font color="#000000" size="1"><b>【模様替え】</b>ついに仕事部屋のカーテンを架けかえる！　普通の、色の、ものに……。すると、野性時代のＭ宅氏曰く「えっ、変えちゃったの!?　えーっ、せっかく面白かったのに……」「それは人の部屋だからだっ！　毎日いたら、ほんとーに居辛かったんですよー……」カーテンが普通の色になった途端に、嘘のように居心地よくなった。ホッ。（桜庭撮影）</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>
<tr>
<td><br />
<p><font size="3"><b>「かつては大空を自由に飛びました。私の翅は強く、大きな山をいくつも越えることができました。私の翅はあなたたちよりもずっと大きく、強かったのです。この翅で、生まれた山から何十キロも旅したのです。私は今も思い出します。春の山を、野を。まさに緑の炎が燃えるように葉が吹き出していました。茶色い土がみるみる美しい緑色に変わっていくようでした。風は暖かく、山には霞がかかっていました。高く舞い上がると、下界が見渡せました。ああ、もう二度と見ることはない景色――」<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――『風の中のマリア』</font></div><br /></td></tr>
<tr>
<td><font size="3"><b>７月某日</b></font><br /><br /><font size="3">
<br />
　夜の帳が、下りたころ。<br />
　場所は新宿。雑踏。<br />
　伊勢丹の前辺りを、所在無くぶらぶらと歩いている。<br />
　今日の分の執筆が終わって、散歩がてら本屋を見回りし、喫茶店で仕事の続きをして、出てきた……そんないつものぶらぶらっぷりである。<br />
　夏の途中で、暑くて、気だるい。そんな空気が雑踏に満ちている。<br />
　と、六十がらみの男性が、なにか楽しい予定でもあるのか、翅でも生えたように軽々と走ってわたしを追い越していった。その後ろから、連れらしい同世代の男性が、短く呼び止めた。<br />
<br /><blockquote>
おじさん「急ぐな～！　疲れる～！」<br />
</blockquote><br />
　そうだよなぁ～、と、周りの若者たちが無言で一斉に、二人目のおじさんに同調した気配がする。わたしも、まったくだ、のんびりいこうぜ、とうなずきながら、いつまでもたどり着かないようなゆっくりの歩調で、家に帰った。<br />
　とはいえ、急がないとまにあわないぐらいいろんな締切が重なりあって追っかけてきている。明日中にやることってなんだったっけ、えーと、と考えながら、帰宅して、<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062153645?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4062153645" target="blank">『風の中のマリア』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4062153645" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>（百田尚樹／講談社）を読んだ。<br />
　これは先日、朝日新聞紙上での俳優の寺田農さんとの読書対談でお勧めしていただいた本だ。寺田さんは、百田さんの作品だと<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4778311345?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4778311345" target="blank">『BOX!』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4778311345" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>や<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/406276413X?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=406276413X" target="blank">『永遠の０』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=406276413X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>もよいけれども、働きバチのマリアを主人公にした変り種のこれがいちばんお勧めだそうだ。あと、吉田修一さんなら、<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/402250272X?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=402250272X" target="blank">『悪人』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=402250272X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b><b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4104628042?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4104628042" target="blank">『さよなら渓谷』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=4104628042" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>などはもちろんだが、<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/410128752X?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=410128752X" target="blank">『長崎乱楽坂』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=410128752X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" />
</b>（新潮文庫）がよいとか。……そうだよなぁ、一人の作家の、自分がいちばん好きな本って、すごく評判になったものとは限らないよなぁ、と思いながら、対談の帰りに本屋に寄ってこの二冊を買った。<br />
　<b>『風の中のマリア』</b>は、（そういえば久しぶりに）スペースオペラを読んでるかのような帝国興亡史と（蜂だけど……）、女性の（蜂だけど……）生き方と、個人と国家のあり方（は、蜂だけど……）などが渾然一体となっていて、ものすっごく面白い。どんなに感情移入できる場面でも、涙する場面でも、作者と読者の間には常に、でも、蜂なんだけどね……と半笑いの顔を見合わせているような妙な共感があって、それが共犯意識となって、読んでる間ずっと、変に楽しい。<br />
　しかし、よくこんなお話を思いついて、しかも見事に着地できたものだなぁ……と、不思議な本に出会ったときの、あの不思議な感じが胸に滓のように残った。それをそこらへんに自由にぶわぶわと漂わせたまま、眠くなったので、ぱたんと寝た。<br /></font> </td></tr></tbody></table><br />
<ul class="pageNavi">
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    <title>また桜庭一樹読書日記　【第1回】(1/3)［2009年7月］</title>
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    <id>tag:www.webmysteries.jp,2009://6.309</id>

    <published>2009-07-06T07:00:00Z</published>
    <updated>2009-12-26T12:37:59Z</updated>

    <summary>    「そやけど、ほんまに好きおうて、あの世でいっしょになりたいゆうて、心中しはるんやろか。うちはそやないちゅう気がします」 「ほなら、なんで死ぬんや」 「おかねや。おかねに責められて死ぬんや」 「...</summary>
    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.webmysteries.jp/">


   
      
        <![CDATA[   <table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td><br />
<p><font size="3"><b>「そやけど、ほんまに好きおうて、あの世でいっしょになりたいゆうて、心中しはるんやろか。うちはそやないちゅう気がします」<br />
「ほなら、なんで死ぬんや」<br />
「おかねや。おかねに責められて死ぬんや」<br />
「恋やのうて、かねで死ぬんか」<br />
「ちがいますか。近松はんのような心中は、人形のなかの世界やからできるんや」<br />
「まあ、たしかにお初と徳兵衛も、小春と治兵衛も金銭がらみやなあ」<br />
<br />
「夢の夢こそあはれなれ」<br /></b></font></p>
<div align="right"><font size="3">――「川に沈む夕日」</font></div><br /></td></tr>
<tr>
<td><font size="3"><b>６月某日</b></font><br /><br /><font size="3">
<br /><blockquote>
Ｋ子「どうして、人生の大事な局面で“ドナドナ感”が出ちゃうんですかね……？」<br />
</blockquote><br />
　夜である。<br />
　いつもの、飯田橋。<br />
　網からタン塩を救出しては、頬張りながら、一匹娘が二人（作家と角川書店の編集者）、ぼそぼそと話している。<br />
<br /><blockquote>
わたし「ド、ドナドナ感って、な、何……？」<br />
Ｋ子「だって、去年の直木賞のときも、パーティーの二次会が終わって、ハイヤーに乗せられて去っていくとき、窓から顔を出して両手を窓枠に乗せた瞬間、『あっ、ドナドナみたい』『ほんとだー！』って編集者たちに指摘されてましたよね。今回の結婚パーティーでも、のっけから、発泡スチロールを突き破ったかと思うと、売られたくない子牛のように、ずるずる、ずるずると……」<br />
わたし「ドナドナ感……（と、タン塩を食う）」<br />
Ｋ子「不思議でならない！（と、タン塩を食う）」<br />
わたし「うーむ。どうやったら、世間に胸を張って堂々と、こう、牛じゃなくてむしろ牛飼い寄りの空気を出せるんでしょうねぇ」<br />
Ｋ子「牛飼い寄り……になる方法……。うーむ、そういやわたしもわからない……」<br />
わたし「生きるってむずかしい（と、タン塩を食う）」<br />
Ｋ子「たしかに（と、タン塩を食う）」<br />
</blockquote><br />
　あっというまに最初のタン塩を片付けたので、つぎはカルビである。いやっほぅ。ハラミもタレでー。<br />
　パーティーのつぎの週である。ようやく<b>『GOSICK』</b>シリーズが角川文庫で再刊されるので、女二人でその打ち合わせ諸々をしている。<br />
　パーティーは無事に終わった。帰りに、北方先生が夫と握手して、「コレ（わたしを指してる）、タイヘンだぞ。がんばれよ」とおっしゃったのと、浅田先生が「幸せにしてやってくれ」と言ってくださったのと、北村先生と道尾画伯がチョークを探してきて黒板にたくさん絵を描いたのと、大沢先生が「芸人と編集者って雰囲気がけっこう似てるぞ」とすげぇ鋭い指摘をされたのと、東野先生の関西弁のスピーチが軽やかでおもしろかったのと、新郎と紛らわしい招待客がこちら側に約二名いたこと、などが脳裏をぐるぐるしている。ちなみにその招待客とは、一人目は文春の“リボン王子”こと、全身コム・デ・ギャルソン、レースとフリルの美青年、Ｓ水君。<b>〈CREA〉</b>から<b>〈週刊文春〉</b>に移動になって、秋からのわたしの新連載の担当に。彼は、開始直前にうろうろしてたら一部の人に新郎と間違えられたらしい。もう一人は嶽本野ばらさん。こちらもお洒落で、阿鼻叫喚の会場でキラキラと異彩を放っていた。<br />
　サンチュサラダを、野菜のことが面倒にならないうちにがっつり片付けながら「でも、無事に終わってよかったです……」と呻く。<br />
　ほんとに、よかった……。<br />
　帰り。<br />
　ぷらぷらと駅まで歩いて、地下鉄に乗って、読みかけの本を開いた。辻原登<b><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/410456303X?ie=UTF8&tag=wwwtsogecojp-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=410456303X" target="blank">『夢からの手紙』</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=wwwtsogecojp-22&l=as2&o=9&a=410456303X" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></b>。時代物の短編集で、最初に入ってる<b>「川に沈む夕日」</b>がすごいのだ。<br />
　どうしても心中する、と思いこんだ男の、状況による心理の変化が短く、的確に、おそろしく追ってあって、背筋を這いあがってくるものがある。あぁ、心中するよりしないほうがはるかに残酷なお話だったのだなぁ、と、一度ゆっくりと本を閉じた。<br />
　一方、記憶のない女を妻とした菊師。妻がある日、とつぜん姿を消し……。敵討ちを題材にした<b>「菊人形異聞」</b>は、逆に、死が登場人物たちを救う。<br />
　帰宅してからも同じ本を読み続けた。<br />
　読み終わって、反芻しながら、いつのまにか眠ってしまった。<br /></font> </td></tr></tbody></table><br />
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<li class="caption">続きを読む……</li>
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    <title>続々・桜庭一樹読書日記　【第1回】(1/2)［2008年5月］</title>
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    <id>tag:www.webmysteries.jp,2008://6.78</id>

    <published>2008-05-07T07:21:08Z</published>
    <updated>2009-12-24T19:19:37Z</updated>

    <summary> 【桜庭一樹写真日記◎くす玉の夜】 ３ヵ月ぐらい前の写真。くす玉で受賞を祝ってくれる某社の担当氏（新婚）。携帯のストロボの使い方がわからずこのような写真に……。（桜庭撮影）  　ありふれた丘の花はいち...</summary>
    <author>
        <name>東京創元社</name>
        
    </author>
    
        <category term="620 桜庭一樹読書日記" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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        <![CDATA[<table cellspacing="0" cellpadding="0" border="0">
<tbody>
<tr>
<td><img height="10" src="http://www.tsogen.co.jp/img/spacer.gif" width="2" border="0" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle"><img height="320" alt="くす玉の夜" hspace="12" src="http://www.tsogen.co.jp/web_m/img/sakuraba0805_1.jpg" width="240" vspace="10" border="1" /></td></tr>
<tr>
<td align="middle">
<table cellspacing="0" cellpadding="2" width="320" border="0">
<tbody>
<tr>
<td><font color="#000000" size="1"><b>【桜庭一樹写真日記◎くす玉の夜】</b> ３ヵ月ぐらい前の写真。くす玉で受賞を祝ってくれる某社の担当氏（新婚）。携帯のストロボの使い方がわからずこのような写真に……。（桜庭撮影）</font> </td></tr></tbody></table></td></tr>
<tr>
<td><img height="25" src="http://www.tsogen.co.jp/img/spacer.gif" width="2" border="0" /></td></tr>
<tr>
<td><font size="3"></font>
<p><font size="3"><b>　ありふれた丘の花はいちどはしぼむが、また花を咲かせる。きんぐさりは来年の六月にもまたいまと同じ黄色に輝くことだろう。もう一月もたてば、せんにんそうには紫色の花が咲き、くる年ごとにその葉は緑の夜のように同じ紫色の星を抱き続けるだろう。けれど、人間はその若さをとり戻しはしない。二十歳のときに烈しく高鳴った歓喜の鼓動はやがて鈍り衰える。四肢は力を失い、五感は朽ちてゆく。こうしてわれわれは醜悪な人形となり果て、恐れのあまり逃した過去の情熱や、おもいきって身を委ねることのできなかった誘惑の思い出につきまとわれるようになる。若さ！　若さ！　若さを除いたらこの世になにが残るというのだ！</b></font></p>
<p><font size="3"><b>　そうだ、いつかはこの顔も皺が寄ってしなび衰え、眼は霞んで色つやを失い、優美なからだつきも崩れて醜くなってしまうのだ。唇からは紅が消え、金髪も色褪せることだろう。今後、自分の魂を形成してゆく生命は、肉体にたいしては傷を与えることになり、自分は怖ろしく、醜く、そして無骨になってゆくのだ。</b></font></p>
<p></p>
<div align="right"><font size="3">――『ドリアン･グレイの肖像』</font></div>
<p><font size="3">　四月である。<br />　桜、咲いてる……。<br />（時間泥棒にあったようだー……）</font></p>
<p><font size="3">　取材を受けたりするのは、きりがないような気がしてきたので３月いっぱいでやめて、今月から、机で小説を書いて床で本を読むいつもの生活に戻ることにした。一ヶ月のあいだにあったことというと、</font></p>
<p><font size="3">・文春の担当Ｓ藤女史と打ち合わせ中、とつぜん「未来は、変えられるんだぜっ！」という若い男の声が響いて飛び上がった……ら、Ｓ藤女史の携帯電話の着信音だった。</font></p>
<p><font size="3">・角川の担当Ｋ子女史と「我々が目指すべき大人の女は、女性誌に載っているエイジレスな女とかモテ系なんとかではない。オツボウーメンだ！　今年はがんばろう！」と拳を振り上げ歩いていたら、二人で赤坂サカスのビルの外壁にぶつかった（上まで総ガラス張りで、真ん中に黒い縦線が入っていたので自動ドアだと思った）。</font></p>
<p><font size="3">・そのオツボメンとご飯（餃子と枝豆とトムヤムクン）を食べていて、うっかり「広瀬正を知らない」とカミングアウトしたら、ものすごく叱られた。司馬遼太郎がめちゃめちゃ褒めていた超すごいＳＦ作家らしい。うぅ。</font></p>
<p><font size="3">・上野にて花見。夜桜と黒糖梅酒。数ヶ月ばたばたしていた間に、なんと友達の彼氏が変わっていた。「忙しそうだから報告しそこなってたけど……」仲間内のホットな話題に乗り遅れていた。ショック。</font></p>
<p><font size="3">　さて、４月８日。めずらしく大雨の一日。<br />　窓をたたく風の強さに、目を覚ます。仕事を終えて床でごろごろしていたら、母から電話。「魚送ったわよー。魚」。へらへら返事していると、受話器の主が父に代わった気配。と、父が「おまえの仕事は水商売だから、いつ収入があっていつなくなるかわからない。パッと遣ったりせずに今年もいつもどおり暮らしなさい」と言うので真顔になる。<br />　娘がやくざ者になってしまったので、父の心配の種は尽きない。「わかってるよー……。いまも本読んでた」と答える。読んでいたのは、こないだ<b>〈めざましテレビ〉</b>の取材で訪れたブックカフェで買った古本<b>『ヒースクリフは殺人犯か？　19世紀小説の34の謎』</b>（ジョン・サザーランド／みすず書房）だ。<br />　この日。夕方、文藝春秋で新刊の打ち合わせをしてから、明治記念館に向かった。（ここで友達が結婚式を挙げたことがある！）受付でＫ島氏とも待ち合わせてたので、Ｓ藤女史とＫ島氏、あと、今日はわたし係（？）を務めてくれるという顔見知りの書店員さんと四人で会場に入る。<br />　今日は本屋大賞のパーティーだ。<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/detail.do?goods_id=3648"><b>『赤朽葉家の伝説』</b></a>が７位に、<b>『私の男』</b>が９位に入ったのと、あまり知られていない作家だったころから、みつけて推してくれた書店員さんたちがたくさんいるので、お礼のためもあって出席したのだ。おっ、すごい人ごみ。前のほうに行ったら、おっ、近藤史恵さん発見。マゾヒストのお侍さんが出てくる<b>『巴之丞鹿の子』</b>（幻冬舎文庫）が、喜国雅彦さんの<b>『月光の囁き』</b>（小学館）とおんなじぐらい好きなので、その話をする。満足。<br />　万城目学さんも発見。去年、森見登美彦さんに「お友達パンチ」をもらったというので、「じゃ、じゃあ、今年はわたしが『極真パンチ』を……」。ヨドバシで買ったという腰痛に効く椅子について教えてもらう。情熱大陸でわたしが座っていた椅子（いまも座ってるけど）は腰に悪そう、だそうだ。十五年ぐらい前に無印良品で買った安い椅子だもんなー。確かにいまも腰、痛い。いい加減に買い換えようかな……。<br />　オーッ、壇上に伊坂幸太郎さん！　どうも作家をじかに見ると読者にもどってしまうらしく、針が振り切れるほどテンションが上がる。<br />　歓談の時間になると、書店員さんたちがＰＯＰや手紙を持って並んでくれる。<a href="http://www.tsogen.co.jp/np/detail.do?goods_id=3648"><b>『赤朽葉』</b></a>だから、赤いのが多い。すごい凝ってる……！　手紙をもらったり、一緒に写真を撮ったりする。テレビクルーもくる。ギャッ、と白いスポットライト。怖い。<br /></font></p>
<ul class="pageNavi">
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