ラウンジ
2007.07.05
対談 桜庭一樹・道尾秀介「祝・日本推理作家協会賞・本格ミステリ大賞受賞」(3/4)
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(〈ミステリーズ!vol.23〉より) | |
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桜庭 面白かったです。ちっとも予測がつきませんでした。小説を読むとき、ある程度は展開を想像しながら読み進めることが多いんです。でも『シャドウ』は、奇抜な文章で書かれているわけではないのに「新しいものを読んでいる」という感じがずっと消えなくて。いままで読んできたものと比べて「この人に似てる」というものが全然ない。だからといってすごく奇抜というわけでもなく、本当に新しい。「本格ミステリ界に突然現れた天才だ!」と盛り上がってました。 道尾 技巧を駆使したいがために小説を書いているのではない、というのはまさにそのとおりかもしれません。どこかでも話したと思いますが、表現したいのは人間の感情で、それを書く手段として最も有効なのがミステリというシステムだと考えているんです。 ――作品を書くときにプロットは最後まで立ててお書きになるんですか? こことここで読者をだましてやろう、というポイントを設けたりしませんか。 道尾 プロットは作りますが、作品が完成してみると、いつもどこかしら違っています。大きく変わるわけではないんですが。書いているうちに、キャラクターが動きだしたらあとは彼等にお任せ、という感じですね。読者としては自分以外に想定していないので、「ここでだましてやろう」というよりは「ここでこっちに話が動いたら面白いだろうな」という感覚です。 ――道尾さんは非常に技巧が巧みなので全部計算ずくで書いていると思う読者は多いようですが、そうではないというわけですね。 桜庭 『シャドウ』だけでなく、道尾さんの作品って「怖い」んですよね。「急に振り向かされる怖さ」というか。思いもしないところで思いもしないものを見せられる感じ。コースが決まっているジェットコースターの怖さじゃなくて、乗ったことのない乗りものに乗る怖さ。 ――桜庭さんは大変な読書家でもあるわけですが、道尾作品を読むのは純粋に読者としてですか、それとも作家の目でも? 桜庭 自分ではこうは書けない、と思うので、純粋な読者として読んでいます。最初は同業者からすすめられたこともあって、そういう目で読みはじめたんですが、途中からやっぱり読者になってしまいました。音楽でも何度も何度も聞く曲がありますが、それと同じような感じ。それはやっぱり、似たものがないことによるんじゃないかと。 道尾 本格ミステリは過去の作品を踏襲して書かれることがありますよね。「意図的にこの作品を踏まえて書きました」というような。それが個人的には理解できなくて。なんでも自由に書いていいのに、なぜあえて亜流であろうとするのかな、と。でも最近いろいろな人とつきあうようになって、そういう感覚もわかるようになってきました。書評家の佳多山大地さんと話していたら、それは「基礎屋と内装屋の違い」じゃないだろうかと。別の土地に基礎から造ろうとするか、すでにある建物を改良するかは異なるけど、いい建物を造ろうとする気持ちは同じだと。なるほどと思いました。 ――その分類だとご自分は基礎屋だと。 道尾 意図的に誰かを踏襲することは今後もやらないでしょう。ただ、前衛性を主張するつもりはまったくないので、逆に「それはもう誰それがやっているよ」と言われたとしても、自分が書きたければ書くと思います。 桜庭 わたしは自分が読んできたものの影響を受けて書いていますが、それをそのまま持ってくることはせず、まったく違うものを書きたいというふうには考えています。だから喩えると「建物をいったん解体して、同じ材料で全然違う建物を建てる人」かな。 道尾 『少女には』で、過去の作品を連想させる意外なモノを凶器にするくだりがありましたね。あっさり一エピソードとして惜しげもなく使うところに唸りました。 桜庭 売れてなかったころ、「話がヘンすぎてわからない」と言われたことがあって、それ以来、おかしな物語になって転がっていくのだから、スタート地点ではよくある設定にして書きはじめることが多くなりました。 道尾 あの、アイラ・レヴィンは意識されてましたか? 桜庭 とても好きな作家です。『ブルースカイ』も『赤朽葉家』も3部構成ですが、3部構成が好きなのは、レヴィンの『死の接吻』の影響が大きいです。語り手が変わって、雰囲気も変わって、でもひとつの事件を追っていくような形式。あの作品は本当に好きだったので。ほかにも、混ざっているものはあると思います。パット・マガー『七人のおば』やスチュアート・ウッズ『警察署長』、あとはSFや幻想文学も混ざっていたりしますね。 道尾 そうしたものすべてが作品として結実しているイメージがあります。 |
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