ラウンジ

2009.11.05

『堀井雄二ミステリー三部作』インタビュー[全文]

スクウェア・エニックス本社入口
スクウェア・エニックス本社入口
 面白いミステリは小説だけでなく、ゲームの世界にもあるはず! 「ミステリーズ!」では、ミステリ・ゲームの世界も紹介してきます。
 今回はミステリ・ゲームの話をする際必ず登場する、伝説のゲーム『ポートピア連続殺人事件』および『オホーツクに消ゆ』『軽井沢誘拐案内』の携帯版アプリについて、藤本広貴プロデューサーにお話をうかがいに、スクウェア・エニックス本社にお邪魔してきました。

――まずはお仕事の内容を教えていただけますでしょうか。
藤本プロデューサー(以下藤)
:スクウェア・エニックスのモバイルサイトには、ドラゴンクエスト(ドラゴンクエスト モバイル)とファイナルファンタジー(ファイナルファンタジー モバイル)に特化したサイト、そしてそれ以外のものを扱ったサイトの3種類があります。私はその3番目のポータルサイト(スクエニMobile。2007年に現在の形に)のプロデューサーをしています。メインは携帯ゲーム制作ですが、ほかにも着メロや着うたなど、どんなコンテンツを扱うかなど、統括的に見ています。

■携帯ゲーム全般について
――扱われているゲームは、どんなものが中心なのでしょうか。
藤:
過去のゲームをモバイルに移植したものがやはり多いですが、携帯でしか遊べない新しいゲームもたくさんあります。
――移植に際して、なにが一番大変でしょうか。
藤:
やはりグラフィックですね。家庭用のゲームソフトでも、携帯用のゲームソフトでも画面が横長なので、縦長の携帯の画面で遊ぶことを考えると、どうしてもグラフィックの部分に調整が必要です。また、当時のグラフィックのまま移植してほしい! という要望もいただくのですが、そのまま移植すると、「うわ、なんだこれ!」となってしまいかねないんですよ。気持ちは非常にわかるのですが……。
 さらに、ゲームバランスをいじらないまま提供することも、重要です。時折「敵と出会いすぎ!」といった声が寄せられたりするんですが、決してそういった遭遇率はいじっていません。皆さん昔遊んだときの記憶でおっしゃっているんですが、当時は「そういうものだ」というつもりでやっていたりするので、気になっていなかったんだと思います。かくいう私もそうでした(笑)
 バグ処理に関しても、ストーリー進行上問題となるようなバグは移植の際に取りますが、たとえば「このものすごく強いボスは、××を使うと一撃で倒せる」みたいな、皆さんの記憶に残っているようなバグは、あえてそのまま残してあります。ゲームが配信されると、皆さん「あのバグはどうなっているのか?」とバグ探しからされるようです(笑)
――他にはどんなところが大変ですか。
藤:
携帯電話の機種がどんどん出てくることでしょうか。全ての機種で問題なく動くように確認するのが大変ですね。
 iPhoneでは、最低日本語と英語。出来れば7ヶ国語同時配信をしなければならないので、翻訳が大変です。現在はまだ2タイトルしか対応していませんが、随時増やしていきます。

藤本プロデューサー
藤本広貴プロデューサー
■『ポートピア連続殺人事件』『オホーツクに消ゆ』『軽井沢誘拐案内』について
――これらはどんなゲームなんでしょうか。
藤:ドラゴンクエストシリーズの生みの親である、堀井雄二氏によるアドベンチャーゲームです。過去にパソコン(PC)ゲーム、ファミコン(FC)ゲームとして発表されていたものを、携帯アプリとして移植しました。
『ポートピア連続殺人事件』は、1983年にエニックス(スクウェアと合併する前)がPCゲームで発表し、85年にFCへ移植しヒットした、この中で一番有名なゲームでしょう。アドベンチャーゲームの先駆けで、内容がとてもセンセーショナルです。プレイヤーが上司となって、部下にいろいろ指示しながら、金融会社の社長が殺された事件を捜査していく話なんですが、コマンド選択というシステムが、当時とても新しかったことでも話題になりました。あと、犯人がとても有名ですね(笑)
『オホーツクに消ゆ』はそれよりも知名度は落ちますが、かなり作り込まれています。こちらはもともとアスキー(現エンターブレイン)のPCゲームで、同じくFCに移植。東京で見つかった死体を調べていくと、北海道にたどり着き、その各地で起こる殺人事件に発展していく、というストーリーです。捜査を進めていく方法は『ポートピア』と一緒です。
『軽井沢誘拐案内』ですが、これだけはFCに移植されず、PC版のみの発売でした。こちらは、買い物に出かけたきり戻らない彼女の妹を捜して、進んでいきます。コマンド選択だけではなく、フィールド上での移動も加わった新しみがあります。前2作に比べてアダルトな要素が強いですね。
――どういった経緯で携帯に移植することになったのでしょうか。
藤:2000年前後に携帯でゲームを遊ぶといったことが、徐々に普及してきたのですが、当時の携帯電話の容量や性能はそこまで良くありませんでした。そこで、操作性などなにか親和性の高いゲームはないか、ということで、まずは01年にアドベンチャーゲームの『ポートピア』と『オホーツク』を移植することにしました。再現できない部分もあったのですが、その分グラフィックにはこだわろう、と当時できる最高のものを用意しました。
――携帯のアプリもリメイクされていますよね。
藤:やはり携帯電話の性能がどんどんあがっていきますので、できることが増えますから。05年にリメイクした際には、ムービーや3Dサウンドを追加し、現在でも配信されている形になりました。このときは先行して『ポートピア』と『オホーツク』を配信して、半年ほどあとに、PC版以来初めて『軽井沢』を配信しました。
――特にこだわられた点はありますか。
藤:携帯ゲームが普及し始めた当初、携帯会社のサービスとして、パケット定額制というものがありませんでした。ゲームを進めるたびに接続を要求されるようなものだと、何十万円というとても高額な請求が来てしまい、通称「パケ死」と呼ばれる状態になってしまったんです。だから一度のダウンロードですべてをおさめる「落としきり」ということに、こだわりました。着うたフルなど、一曲300円程度の課金ですが、容量はとても大きいので、定額サービスに入っていないと、パケット代だけで何千円もかかってしまうんですよ。
 いまでこそ携帯の性能も容量もとてもあがって、ユーザーの方もパケット定額制に加入されているので、あまりゲームの容量を気にせずに作れるようになりましたが、シビアな問題でしたね。
 あともう一つ、ファミコン版より難しくならないように気をつけました。今の新作ゲームだと、何かがありそうな場所は、それとわかりやすいように光っていたりしますが、そういったことはせず、「ヒントコマンド」を追加したり、ある場所を探すと地図が手に入るようになっていたりします。
『ポートピア連続殺人事件』タイトル画面
『ポートピア連続殺人事件』タイトル画面
――移植を発表した際に、なにか反響はありましたか。
藤:「あのポートピアが!」といった感想がたくさん寄せられました。ユーザーの年齢層も、他のゲームと比べて少し高めでしたね。だいたい携帯ゲームのメインのユーザー層は20代中ごろから後半なんですが、『ポートピア』は30代の方が中心でした。昔ファミコン版で遊ばれていた方が、もう一度遊んでくれたのではないでしょうか。
――ちなみにどのくらいのダウンロード数があるのでしょうか。
藤:07年にサイトをリニューアルしてからで、すでに10万ダウンロードありますので、かなりのヒット作ですね。05年に配信開始してから最初の2年間は、もっとたくさんの方に遊んでいただけていたと思いますし。
――どういった方に楽しんでもらえる作品でしょうか。
藤:
犯人を知らない方であれば、純粋に推理ゲームとして楽しんで、驚いてもらえるでしょうし、犯人の名前をご存じの方も、コロンボではないですが、どうやって追い詰めていくか、その過程を楽しんでもらえると思います。犯人の名前を知っていても、どうして犯人になったかという動機の部分を知らない方は多いと思いますし、そこも楽しみにしていただければ。さらにいつでも遊べて、いつでも中断できるという気軽さがあります。是非通勤・通学途中に遊んでみてください。アクションゲームなどと違って、降りる駅についたら、画面はそのままで中断できます(笑)
――藤本さんはどんなミステリがお好きですか。
藤:
横山秀夫さんの作品が好きです。『陰の季節』が一番かな。
――今後ミステリ・ゲームの提供はありますか。
藤:
携帯ゲームとの親和性は非常に高いので、是非やりたいです。過去のアドベンチャーゲームの移植はもちろんですし、たとえば時間を遡って、過去の殺人事件を調査していくニンテンドーDSソフトの『シグマハーモニクス』なんかも、やってみたいと思います。ほかにもご要望があれば、どんどんお寄せ下さい。
――ありがとうございました。

*この記事は2009年10月10日発売の「ミステリーズ!vol.37」掲載の記事の転載です。

■PROFILE
藤本広貴
1990年株式会社エニックス(現スクウェア・エニックス)入社。モバイルプロデューサー。


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(2009年11月5日)

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