こんにちは、編集部のIです。前回、編集者の仕事のひとつとして、編集部のFによる待機会のレポートが掲載されました。
今回は、その他の仕事として、本格ミステリ大賞の開票式レポートをお送りしたいと思います。

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「本格ミステリ大賞」とは、本格ミステリ作家クラブが主催する賞のこと。本格ミステリというジャンルの発展に貢献した作品を、毎年クラブ会員が選び表彰されます。「小説部門」と「評論・研究部門」のふたつがあり、まず会員の投票で各5作品を選出します。 そして、全候補作を読んだ会員が投票を行い、開票式にて読み上げ、大賞を決定する……という流れです。

弊社の作品も、過去には「小説部門」で道尾秀介さんの『シャドウ』(第7回)、有栖川有栖さんの『女王国の城』(第8回)、鳥飼否宇さんの『死と砂時計』(第13回)が受賞。
さらに、「評論・研究部門」で北村薫さんの『ニッポン硬貨の謎』(第6回)、笠井潔さんの『探偵小説と叙述トリック ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか?』(第12回)、福井健太さんの『本格ミステリ鑑賞術』(第13回)が受賞しました。本格ミステリの面白さを、より堪能できる作品ばかりです。

そんな本格ミステリ大賞も、今年で17回目。今年の開票式は5月12日(金)に行われました。場所は光文社会議室。クラブ会員の先生方や、各社の編集者が集まります。
第17回の候補作品は以下の通り。

【小説部門】
『涙香迷宮』竹本健治(講談社)
『誰も僕を裁けない』早坂吝(講談社)
『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』井上真偽(講談社)
『おやすみ人面瘡』白井智之(KADOKAWA)
『悪魔を憐れむ』西澤保彦(幻冬舎)
IMG_2755.jpg 【評論・研究部門】
『ぼくのミステリ・クロニクル』戸川安宣・著/空犬太郎・編(国書刊行会)
『顔の剝奪 文学から〈他者のあやうさ〉を読む』鈴木智之(青弓社)
『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』喜国雅彦、国樹由香(講談社)
『鉄道ミステリーの系譜 シャーロック・ホームズから十津川警部まで』原口隆行(交通新聞社)
『現代華文推理系列』全三集 稲村文吾(Kindle)
IMG_2756.jpg 16時、事務局長である東川篤哉さんの挨拶で開票式がスタート。開票式は、会長である法月綸太郎さんが投票用紙を開き、一枚一枚読み上げる形式。スクリーンに途中経過のグラフが映し出されるので、固唾を呑んで見守る、独特の緊張感があります。

静まりかえった会場に、読み上げる声のみが響きます。「小説部門」では、始めは『誰も僕を裁けない』『涙香迷宮』が接戦を繰り広げ、『悪魔を憐れむ』『おやすみ人面瘡』『聖女の毒杯』が追い上げていく形に。しかし、徐々に『涙香迷宮』が票を伸ばしていきます。
「評論部門」では、最初から『本格力』が票を伸ばし、それを『現代華文推理系列』が追い上げていきます。しかし『本格力』の票が続いていきます。

そして全ての投票の読み上げが終わりました。
IMG_2748.jpg 結果、第17回本格ミステリ大賞は「小説部門」は竹本健治さんの『涙香迷宮』、「評論・研究部門」は喜国雅彦さん、国樹由香さんの『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』に決定しました。竹本さん、喜国さん、国樹さん、おめでとうございます!

休憩を挟んでから(この時間を利用して、編集者の中には作家の方々と談笑する人もいれば、軽く打ち合わせする人もいるとかいないとか)、記者会見が17時にスタート。 司会は鳥飼否宇さん。竹本さんは会場には来られなかったため、担当編集者の方が代理で登壇しました。
IMG_2759.jpg それぞれ、受賞した喜びや作品への想いをお話しされました。個人的に印象に残ったのが、竹本さんの担当編集の方が「高校時代から竹本さんのファンだったため、担当できた作品で受賞したことが嬉しく、感慨深い」と語っていたこと。同じ編集者として、とても共感しました……。

最後に受賞者の方々の写真撮影をし、開票式はこうして無事に幕を閉じました。

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いかがでしたでしょうか? 他の賞の選考会とは異なり、公開開票式で受賞作が決まる本格ミステリ大賞の、ドキドキ感が伝わっていましたら幸いです。

(2017年5月23日)



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