2023年10月27日、飯田橋のホテルメトロポリタン エドモント〈悠久の間〉にて、〈第33回鮎川哲也賞〉ならびに〈第1回創元ミステリ短編賞〉の贈呈式が開かれました。
〈第33回鮎川哲也賞〉には岡本好貴氏の『帆船軍艦の殺人』が正賞受賞作として選ばれ、優秀賞には小松立人氏『そして誰もいなくなるのか』が選出されました。
〈第1回創元ミステリ短編賞〉には、小倉千明氏の「嘘つきたちへ」と水見はがね氏の「朝からブルマンの男」が、それぞれ受賞作として選ばれました。

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贈賞式では〈第33回鮎川哲也賞〉の選評を、選考委員を代表して東川篤哉先生が述べられました。
「候補作五作いずれもレベルが高く、非常に楽しい選考になった。(…)候補作を読んだ時点で『今年は鮎川賞を出せる』という感触を持っていた」と選考を振り返られ、正賞受賞作の『帆船軍艦の殺人』については「これぞ本格ミステリと思える作品で、その意味で最終候補作の中で最も優れていた」、優秀賞受賞作の『そして誰もいなくなるのか』については「非常にスリリングで、意外な結末などの面白みもあった。突っ込みどころもあったものの、選考委員の中で好評を得た」と、受賞理由を述べられました。

選考委員の東川篤哉先生
【鮎川哲也賞選考委員の東川篤哉先生】

選評の後、受賞者の岡本好貴氏が登壇され、小社社長・渋谷健太郎より賞状の授与が行われ、正賞のコナン・ドイル像が選考委員の麻耶雄嵩先生より贈呈されました。

受賞の挨拶で岡本氏は、伊坂幸太郎さんの『オーデュボンの祈り』との出会いが読書と執筆の原点となった思い出に触れつつ、「大人になってから小説に興味を持つようになった読者に、小説の面白さを発見してもらえるような作品を書いていく、という気持ちを忘れずに、執筆に励んでいく所存です」と、今後の目標を語られました。

岡本氏の『帆船軍艦の殺人』は現在好評発売中、小松氏の『そして誰もいなくなるのか』は改稿ののち、2024年に刊行予定です。

続いて、〈第1回創元ミステリ短編賞〉の選評を、選考委員を代表して辻堂ゆめ先生が述べられました。
「三者三様に推す作品が割れ、とても難しい選考になった」と、選考の経過を振り返られ、「嘘つきたちへ」については「非常に綱渡りなトリックを使っているのだが、それが読者を騙すための道具にならず、きちんとフェアなものとして成立している」、「朝からブルマンの男」については「非常に面白い日常の謎が提示される冒頭から勢いが衰えることなく、『おっ』と言わせる展開があった」と、それぞれ受賞の決め手を述べられました。

選考委員の辻堂ゆめ先生
【創元ミステリ短編賞選考委員の辻堂ゆめ先生】

選評の後、受賞者の小倉千明氏と水見はがね氏がそれぞれ登壇され、小社社長・渋谷健太郎より賞状の授与が行われ、正賞の懐中時計が選考委員の米澤穂信先生より贈呈されました。

受賞の挨拶で小倉氏は「受賞作のよい部分を見出してくださった皆さまに『あの時選んでよかった』と思っていただけるように、魅力的な作品を一つでも多く生み出していきたい」と抱負を語られ、水見氏は「自分の書くものを通じてミステリのファンを一人でも多く増やせれば」と意気込みを語られました。

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第1回創元ミステリ短編賞受賞作「嘘つきたちへ」「朝からブルマンの男」および、第33回鮎川哲也賞・第1回創元ミステリ短編賞の選評は、『紙魚の手帖 vol.13』に掲載されています。また、「嘘つきたちへ」「朝からブルマンの男」および、第1回創元ミステリ短編賞の選評は、単体電子書籍としても配信中です。

現在募集中の〈第35回鮎川哲也賞〉は2024年10月末日〆切、〈第2回創元ミステリ短編賞〉は、2024年3月末日〆切で、それぞれ投稿を受け付けております。
〈第2回創元ミステリ短編賞〉では、前回まで選考をご担当されていた米澤穂信先生に代わり、北村薫先生が選考委員に加わられます。

また、〈第15回創元SF短編賞〉(2024年1月9日〆切)も、ただいま投稿を受け付け中です。
多数のご応募をお待ちしております。

帆船軍艦の殺人
岡本 好貴
東京創元社
2023-10-10


紙魚の手帖Vol.13
桜庭 一樹ほか
東京創元社
2023-10-10


嘘つきたちへ 創元ミステリ短編賞受賞作
小倉 千明
東京創元社
2023-10-10