有名無名問わず、死者の物語を宿した遺品ばかりを集めた『遺品博物館』。寄贈希望者が亡くなると、謎めいた学芸員、吉田・T・吉夫が収蔵する物を選定するべくやってくる――。

短編の名手である太田忠司さんがその技巧を凝らした作品集『遺品博物館』文庫化を記念して、2週連続で収録短編を全文公開いたします!

本日公開するのは、一話目に収録の「川の様子を見に行く」です。

鋭い舌鋒で注目を集める文芸評論家・佐野知久は、かつて世話になったという友岡八千代の家を訪れる。だが八千代は一週間前に亡くなっていて、代わりにそこにいたのは、出迎えた遺族と遺品博物館の学芸員を名乗る吉田・T・吉夫という男だけだった。
吉田は寄木細工の技法が施された秘密箱を遺品として選定したというのだが――。

謎めいた学芸員がもたらすのは救済か、それとも破局なのか。熟練の筆致で描かれた物語世界を、どうぞお楽しみください!

遺品博物館
https://www.yondemill.jp/contents/55751?view=1
(書影をクリックすると短編のページが開きます)

【内容紹介】
古今東西のさまざまな遺品を収蔵する遺品博物館。寄贈の希望者が亡くなると、謎めいた学芸員、吉田・T・吉夫が収蔵する物を選定するべくやってくる。それらは、死者自身の人生のみならず、残された人々にとっても重要な意味を持つ品々ばかりだった。彼が遺品と引き換えに残された者たちにもたらすのは、救済か破局か――。熟練の技巧が冴え渡る、死者と生者を繋ぐ八つの謎物語。解説=三島政幸

【収録作品】
「川の様子を見に行く」*全文公開中
「ふたりの秘密のために」
「燃やしても過去は消えない」
「不器用なダンスを踊ろう」
「何かを集めずにはいられない」
「空に金魚を泳がせる」
「時を戻す魔法」
「大切なものは人それぞれ」

【著者紹介】
太田忠司(おおた・ただし)
1959年愛知県生まれ。名古屋工業大学卒業。81年、「帰郷」が「星新一ショートショート・コンテスト」で優秀作に選ばれる。『僕の殺人』以下の〈殺人三部作〉などで新本格の旗手として活躍。2004年発表の『黄金蝶ひとり』で第21回うつのみやこども賞受賞。『刑事失格』に始まる〈阿南〉シリーズほか、〈狩野俊介〉〈探偵・藤森涼子〉〈ミステリなふたり〉〈名古屋駅西喫茶ユトリロ〉など多くのシリーズ作品を執筆。その他『奇談蒐集家』『怪異筆録者』『遺品博物館』『麻倉玲一は信頼できない語り手』『喪を明ける』など著作多数。


遺品博物館 (創元推理文庫)
太田 忠司
東京創元社
2023-02-27


奇談蒐集家
太田 忠司
東京創元社
2014-02-28


怪異筆録者 (創元推理文庫 M お 6-13)
太田 忠司
東京創元社
2021-09-30