こんにちは。SF班(弟)です。

早くも入社から半年弱が経過し、作家さんとのお打ち合わせに同席させていただく機会も増えてきた今日このごろです。
ある日の喫茶店での打ち合わせ前に、先輩社員のFさんからこんなアドバイスをいただきました。

「特にミステリ作家さんとの打ち合わせは、血なまぐさいワードが飛び交うこともある。周りに配慮して少し奥まった席をとるようにね」

その時点では「そこまで気にするほどのことだろうか?」と思っていたのですが、社内のおしゃべりに耳を傾けるにつけ、なるほどと納得させられたのでした。

「それもう、さらって殺しちゃえばいいんじゃない?」

「生首ってそのサイズのかばんに入る?」

「海面に飛び込んだとき、確実に死ぬためには何メートルあればいいですかね?(※)」

確かに街なかで隣の席から聞こえてきたら、いささかぎょっとしそうな会話ばかりです。

それではSF作家さんとの打ち合わせであれば、場所を気にせずにお話できるのかというと……これがそうでもないのでした。

「人智を超越した存在がいることが次第にわかっていくんですよ」

「爆発させちゃいましょうよ、宇宙」

「それじゃあね、急に大金が転がりこんでくるとしたらどうです?」

何かの勧誘がはじまったのか、はたまた白昼堂々と行われている謀議なのか……SFはSFで時にはやはり、怪しげな会話が差し挟まることもあるのです。

どうか読者のみなさんは、お出かけの折にこうした場面に出くわしたとしても、温かい目で見守って頂けましたら幸いです。
それではまた、次回の日誌でお会いしましょう。

(※)海面に飛び込んだとき……の会話が交わされるきっかけになった、夕木春央さん「今際の際の断崖から」〈紙魚の手帖〉vol.09 に掲載されています! 崖から突き落とされた語り手が、海面への衝突までの短い間に繰り広げる推理をお楽しみください。


紙魚の手帖Vol.09
ほか
東京創元社
2023-02-13