創元推理文庫のファンタジイ部門が自信を持ってお送りするキャサリン・アーデンのファンタジイ〈冬の王〉三部作(金原瑞人、野沢佳織訳)をご紹介します。


 ルーシ北部の領主ピョートルの末娘ワーシャは、変わった少女だった。ピョートルの最初の妻であった生母はその命と引き換えにワーシャを生み落とし、ワーシャは母を知らないものの、森や自然を友として育った。そして幼い頃から人には見えない精霊を見る力をもっていた。だが、そんなワーシャの奔放で幸せな日々は終わりを告げることになる。新しい母アンナがやってきたことで、彼女の運命は一変した。モスクワ大公の娘であるアンナは信心深く、精霊を悪魔と言って怯え嫌ったのだ。さらに都から派遣された神父が村人の精霊信仰を禁じたため、本来人々を悪しきものから守っていた精霊たちの力が弱くなってしまった。ある年、村を冬の寒さと夜の魔物が襲った。ワーシャは精霊を助け、魔物と戦うが……。
 世界20カ国で刊行、ローカス賞最終候補作。運命の軛(くびき)に抗い心のままに自由に生きようとする少女ワーシャの闘いと成長を描く、三部作開幕。

【海外の書評より】

最初の1ページから読者を魅了する、素晴らしい物語。主人公ワーシャは、女性であるがゆえに課せられた束縛から自由になろうと、運命に闘いを挑んでいる。
パブリッシャーズ・ウィークリー 

アーデンのデビュー作である本書は、おとぎ話のもつ美しいリズムがありながらも、より昏く詩的な雰囲気に満ちている。
ワシントン・ポスト 

魔法と魔物が存在する美しい冬の奥深くの物語。主人公の少女の成長物語としても秀逸。
ナオミ・ノヴィク(作家) 


『塔の少女』〈冬の王2〉(仮題)2023年春刊行予定

 冬の王に与えられた馬を供に旅に出たワーシャは、盗賊討伐に向かうモスクワ大公の一行に男のふりをして加わるが……。運命に逆らい生きる少女の成長と戦いを描く、三部作第二弾。

『魔女の冬』〈冬の王3〉(仮題)2023年秋刊行予定