12月23日(金)から日本の一部劇場で上映され、来年1月6日からはNetflixで全世界に配信される映画『ほの蒼き瞳』。主演のクリスチャン・ベール、監督のスコット・クーパーほか、実力派キャストとスタッフが集結、ルイス・ベイヤードの原作小説The Pale Blue Eye(2006)を映像化した、この冬注目の一本です。

【予告編】


【映画公式サイト(上映劇場一覧もこちらでご確認ください)】


この映画の原作小説The Pale Blue Eyeの翻訳は、『陸軍士官学校の死』という題名で2010年に創元推理文庫から上下巻で刊行されました。それがこのたび、映画公開を受けての緊急重版が決定! 12月19日頃から、映画スチール帯つきの本が書店店頭やネット書店でもお買い求めいただけます(地域や店舗によって入荷日に差がありますので、お近くの店舗に見当たらないときはご注文ください)。

【あらすじ】
引退した名警官ガス・ランダーは、ウエストポイント陸軍士官学校のセアー校長に呼び出され、内密に処理したい事件の捜査を依頼される。同校の士官候補生の首吊り死体から、何者かが心臓をくり抜き持ち去ったというのだ。捜査の過程でランダーは、ひとりの年若い協力者を得る。士官候補生一年の彼は青白い顔の夢想家で、名をエドガー・アラン・ポオといった――青年時代の文豪ポオを探偵役に迎えた、詩情豊かな傑作謎解きミステリ。

本書の特長は、内容紹介にもあるとおりエドガー・アラン・ポオ(映画ではハリー・メリングが演じます)が主役のひとりとして登場すること。小説家・詩人として不滅の足跡を残したポオが、青年時代に軍人の卵だったのはまぎれもない歴史的事実ですが、ベイヤードはその史実を土台に、豊かで不気味で美しい――まさにポオ作品のような――物語をつむいでみせます。さらにそこに、謎解きの興趣も加わるという豪華さです。刊行時には日本でも高く評価され、以下のように各種ミステリランキングで軒並み上位入賞を果たしました。

 第2位『2011本格ミステリ・ベスト10』海外ランキング
 第2位『IN★POCKET』2010年文庫翻訳ミステリー・ベスト10/総合部門
 第2位『IN★POCKET』2010年文庫翻訳ミステリー・ベスト10/翻訳家&評論家部門
 第4位『ミステリが読みたい!2011年版』海外篇/【海外部門新人賞】
    /本格ジャンル 第1位/サプライズ部門 第2位/キャラクター部門 第4位
 第8位『このミステリーがすごい!2011年版』海外編
 第10位『IN★POCKET』2010年文庫翻訳ミステリー・ベスト10/作家部門


翻訳は『カササギ殺人事件』『メインテーマは殺人』など一連のアンソニー・ホロヴィッツ作品や『ポピーのためにできること』(ジャニス・ハレット、集英社文庫)でも知られる山田蘭先生。原作でベイヤードがポオの詩や文章を文体模写している箇所を、巧みに日本語へと移し替えた、物語の香気をそこなうことのない見事な訳文を味わっていただけます。

そして、今回の緊急重版にあたっては、(おそらく)創元推理文庫史上初となるできごとが!
こちらの写真をご覧ください。上が2010年に刊行した初版、下が今回の重版分です。

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おわかりいただけますでしょうか?
そう、実は上下巻のうち下巻だけ新カバーになっているのです。
上下巻の片方だけ新カバーになるのは過去に例がない……はず(もし前例をご存じのかたはお知らせください)。

本書の装幀は刊行時たいへん好評をいただいており、当初はそのまま重版する予定でした。ところが、海外の権利者が下巻で使用していた写真を各種フォトサービスから取り下げてしまったため、使用不可能な状況に。そこでデザイナーの柳川貴代さんにたってのお願いをして、新たな写真を用いた新カバーを作成いただいた……というしだいです。雰囲気はそのままに、上巻と合わせたときに違和感のない、すてきな一冊となりました。

小説『陸軍士官学校の死』、映画『ほの蒼き瞳』どちらも心ゆくまでお楽しみください!


陸軍士官学校の死 上 (創元推理文庫)
ルイス・ベイヤード
東京創元社
2010-07-10


陸軍士官学校の死 下 (創元推理文庫)
ルイス・ベイヤード
東京創元社
2010-07-10