読みながら疎遠になった友達や、親しくならなかったけれど印象に残っている同級生らを思い出したのが、山内(やまうち)マリコ『一心同体だった』(光文社 1800円+税)。さまざまなタイプ&形の女性同士の友情が描かれていく連作集だ。

 一話目の主人公の友達が二話目の主人公となり、その友達が三話目の主人公となり……と連なっていくロンド形式。彼女たちはみな一九八〇年生まれで、一話進むごとに時も進み、十歳から四十歳までの光景が描かれる。一話目、十歳の千紗は裕子ちゃんと仲良しだが、同じクラスの阿部美香ちゃんから何かと誘われるようになり……。ああ、自分もこういう友達内の三角関係があったなあと思い出す。二話目の主人公は十四歳の裕子で、恋愛を意識しはじめる年頃の心情が語られる。第三話では十八歳の主人公が高校時代を眩(まぶ)しく振り返り、第四話では映画サークルで先輩男性の自己満足的作品の制作を手伝わされてばかりの状況が描かれ……。

 次第に浮かび上がるのはジェンダー問題。そのなかで、女性たちが時に助け合ったり、異なる立場ながら共鳴しあったり。ずっと仲良しな関係だけが友情を表すものではなく、刹那(せつな)的な関係でも、友達未満の間柄でも、〝一心同体〟だと思える瞬間は育(はぐく)まれると教えてくれる。また、女の子から女の子へと受け継がれるものがある、と伝わってくるロンド形式も効果的だ。一九八〇年生まれでなくても、自分の来(こ)し方(かた)と重ね合わせられる箇所は多い。

 飛鳥井千砂(あすかい・ちさ)『見つけたいのは、光。』(幻冬舎 1700円+税)でも、女性同士の間に友情が生まれる瞬間がとらえられている。しかし、登場する三人はまったく異なる環境にいる。亜希は妊娠と同時に契約社員として働いていた会社から雇い止めにあった。息子が一歳半となり、再就職したいのだが保育園も仕事も決まらない。一方、既婚だが子供のいない茗子(めいこ)は職場で産休や育休、妊娠休暇を取る女性たちのフォローにまわる状況が長年続き、疲弊(ひへい)している。人員不足のために新規採用を行うが、面接にきた女性に「もし妊娠したら育休制度を活用したい」と言われて腹立ちを抑えきれない。そんな二人がよく覗(のぞ)いているのが、シングルマザー、ヒカリによる育児ブログだ。昨今の子育てをめぐる厳しい状況に疑問や異議を唱えつつ、上手にストレス発散している様子に亜希は素直に称賛をおぼえ、茗子は鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように中傷コメントを書き込んでいる。

 この亜希、茗子、ヒカリが思わぬ形で顔を合わせ、本音と疑問をぶつけあっていく。この会話劇が生々しくて面白い。異なる立場の相手を非難する内容ではなく、互いの悩みの根っこは同じではないか、と気づいていく過程が痛快だ。そんな邂逅(かいこう)を得た彼女たちの、後日譚にも胸が熱くなる。


■瀧井朝世(たきい・あさよ)
フリーライター。1970年東京都出身。文藝春秋BOOKS「作家の書き出し」、WEB本の雑誌「作家の読書道」ほか、作家インタビューや書評などを担当。著書に『偏愛読書トライアングル』『あの人とあの本の話』『ほんのよもやま話 作家対談集』、編纂書に『運命の恋 恋愛小説傑作アンソロジー』がある。

紙魚の手帖Vol.06
ほか
東京創元社
2022-08-12