みなさんこんにちは。翻訳ミステリ班のSと申します。
編集者になってから13年めとなる今年、まさかこんなびっくりなニュースが舞い込んでくるとは……。いまだに信じられないのですが、な、なんと編集を担当した『007/カジノ・ロワイヤル【新訳版】』(イアン・フレミング著、白石朗訳)が、宝塚歌劇団宙組の2023年上演作品「カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド~」の原作となりました!!!



えっと、このニュースを聞いてからしばらく経つのですが、まだ驚いております。映画化とかは経験があるのですが、なんとなんと宝塚さん……なんということだ。弊社は宝塚ファンが多く(通称「ヅカ部」として活動中)、編集部にはなぜか宝塚歌劇団のフライヤーがたくさん貼ってあったりするのですが……あとわたくしは〈HiGH&LOW〉シリーズのファンなので、宙組さん公演の『HiGH&LOW -THE PREQUEL-』はもうめっちゃ楽しみにしているわけなのですが、まさか宝塚さんの『007』シリーズが観られようとは……。超絶格好いいボンドが見られる(断言)とは……。

なんかもう、ありがたすぎて天を仰いでしまいますね!!!

そんなわけで、この素敵なニュースを受けてとってもハッピーなので、原作となる『007/カジノ・ロワイヤル』の紹介をさせていただきます!! 

『007/カジノ・ロワイヤル』はイギリスの作家イアン・フレミングが1953年に発表したスパイ小説で、英国秘密情報部の腕利きのスパイ、ジェームズ・ボンドが主人公です。任務中の殺人許可証=殺しのライセンスを与えられた優雅な英国紳士、007のコードをもつボンドの物語は、長編12冊と短編集2冊が刊行されました。
著者のフレミングは大手通信社のロイター通信に勤務しており、第二次世界大戦中に諜報員として活動していた経験を活かして〈ジェームズ・ボンド・シリーズ〉を執筆しました。シリーズは映画化され、特にショーン・コネリーがボンドを演じた「007/ロシアより愛をこめて」が全世界で大ヒットとなり、一躍、作者と007の名を高めました。この映画、めちゃめちゃ面白いのでご興味のある方はぜひ……!! ショーン・コネリーが格好良すぎて、もう……!!!

話がずれました。さて、『007/カジノ・ロワイヤル』はそんな超・超・大人気シリーズ1作めです。そしてスパイ小説の里程標といえる作品で、その後のエンターテインメントにさまざまな影響を与えました。創元推理文庫からは1963年に井上一夫先生の翻訳が刊行されましたが、2019年に〈名作ミステリ新訳プロジェクト〉の一冊として、白石朗先生による新訳が発売となっております。

そんな『007/カジノ・ロワイヤル』のあらすじとは……。

イギリスが誇る秘密情報部で、ある常識はずれの計画がもちあがった。ソ連の重要なスパイで、フランス共産党系労組の大物ル・シッフルを打倒せよ。彼は党の資金を使いこみ、高額のギャンブルで一挙に挽回しようとしていた。それを阻止し嘲笑の的に仕立てて破滅させるために送りこまれたのは、冷酷な殺人をも厭(いと)わない007のコードをもつ男――ジェームズ・ボンド。巨額の賭け金が動く緊迫の勝負の裏で密かにめぐらされる陰謀!

ボンド・シリーズの面白さというのは、徹底的に娯楽作品であるということです。特に、本書の魅力はなんといってもタイトルにもなっているカジノ!! ボンドが敵を破滅させるためにバカラというカードゲームで勝負します。あまり馴染みのない人が多いと思いますが、原作ではゲームのやり方や流れ、どうやって相手を打ち負かそうとするのか、といったことがしっかりと描かれているのでご安心を。豪華なカジノで巨額の金を賭けた大勝負の行方は――。特に新訳ではこのカジノでのゲームの緊迫感が増していて、ドキドキしてページをめくる手が止まらなくなります。

そして数々の敵キャラクターによってもたらされる危機をボンドがどう乗り越えるのか? という点にもご注目を。ギャンブルの達人ル・シッフルをはじめ、ソ連政府の殺害実行機関SMERSH(スメルシュ)の所属工作員たちがボンドを狙います。ハラハラする迫力満点のアクションがすごい! 特に本作はボンドがとてつもないピンチに陥るので、舞台でどう表現されるのか気になって仕方ありません!!

そして〈ジェームズ・ボンド・シリーズ〉は、各巻に登場する美女も大いに気になるところです。宝塚さんの公演では、リリースによるとオリジナルキャラクターが登場するようでわくわくします!!
原作でボンドを援護するために現れるヴェスパー・リンドは、セクシーで知的な素晴らしい美女です。詳細なドレス姿の描写があるので、映像が浮かぶように読めるのが素晴らしい。ボンドも「きみはたとえようもない美しさだな」と讃えています。
ボンドに名前を尋ねられて、「黄昏時」という意味の「ヴェスパー」の由来を説明する場面とか、本当におしゃれなんですよ。そして彼女とボンドが食事をするシーンが、好きすぎてですね……。キャビアと山のように積み上げたトースト、子牛の腎臓肉のプレーンソテーの林檎スフレ添え。デザートには、クリームをたっぷりかけた野いちご。ああ美味しそう。フレミングは美食家だったらしく、本書以外も食事のシーンはとにかく美味しそうで、読んでいると嬉しくなるポイントです。
ボンドは独身主義で、最初は女性に対してもひどく冷淡です。しかし……というところも、本書の読みどころ。シニカルで辛辣な男がどのように変化するのかにもご注目ください。

軽快なエンターテインメントとしてとにかく楽しめる一冊ですので、この機会にぜひお手に取っていただけると嬉しいです。わたしも上演前にはしっかり復習して観劇に臨みたいと思います!!
そして〈ジェームズ・ボンド・シリーズ〉は白石朗先生の新訳『007/ロシアから愛をこめて』もございますので、こちらもどうぞよろしくお願いいたします。


●東京創元社ヅカ部の皆さんのコメント
(原稿到着順。上演される組の情報や公演解説が届く前に書かれたものもあります)

皆さまごきげんよう、ヅカ部Sです。(※翻訳班Sさんとは別人です)
この度は創元推理文庫『007/カジノ・ロワイヤル』、宝塚歌劇団宙組での上演決定おめでとうございます!
私は月組強火担として日々活動しているのですが、皆さまご存知の通り、『グレート・ギャツビー』宝塚大劇場公演は新型コロナウイルスの影響で公演の大部分が中止……!
めちゃめちゃめちゃ楽しみにしていた新人公演のチケットも天に召され、新人公演に合わせて、サイコーの夏にするぜ!!と一人ウッキウキで立てていたムラ遠征計画も水の泡になり、甲子園では地元のチームも敗れ、私の夏は終わった……と燃え尽きておりました。
そんなときに、『007/カジノ・ロワイヤル』が、創元推理文庫を原作に小池修一郎先生脚本で大劇場公演との一報を聞いた時の血圧の急上昇具合は今でも忘れられません。
報せを受けたときには、どの組で上演されるのか不明だったため、ヅカ部緊急有識者会議で議論され、宙組ではないか?との結論が導き出されました。

・宙組×ロシア(ソ連だけど……)!
・真風涼帆×スーツ物!
・潤花×ゴージャス美女!
(敬称略)
まさに鬼に金棒ではないですか!?
最高オブ最高。

俺はスーツにドレスが大好きなんだ……

ちなみに私は『007/カジノ・ロワイヤル』未読です。映画も観ていません。なんかジェームズ・ボンドというすごいスパイがすごいことして、美女も出てきて、とにかく暴力!酒!女!みたいな印象……
という残念な感じなので本当にひとりのヅカファンとしてどんな舞台になるのか楽しみにしたいと思います。
まずは予習のため原作を読んで、配役予想です。
それからチケットの当選率を上げるために友の会ポイントを集めていきたいと思います。

そして、ヅカ部の日頃の地下活動のおかげで東京創元社はもはや我々の支配下に置かれていると言っても過言ではありません。(過言かもしれません。)
引き続き、宝塚ファンの皆様に喜んでいただけるよう、地下活動を続けて参りますので、続報をお待ちください!

ちなみにちなみにですが、
弊社刊行物では過去にも『銀河英雄伝説』が小池修一郎先生×宙組にて上演されております! ご縁がありますね〜!
また、Sが宝塚ステージスタジオでマルグリットの扮装をするのが夢でおなじみの『スカーレット・ピンパーネル』も弊社から『紅はこべ』として刊行しております! そしてなんと9月に新訳版が出る!
こちらもよろしくお願いいたします。

果てしない余談ですが、
現在8月21日、『グレート・ギャツビー』(こちらも小池修一郎先生脚本ですね)のムラ遠征中です。
20日は東京宝塚劇場での花組11時公演に向かっている電車内で当日中止の一報を受けたりして、怒涛の土日を過ごしている中でのこのコメントです。

ヅカオタの
土日と情緒は
忙しい
(ヅカオタ川柳)

話を戻しますが、私は重版を担当しておりますので、
全国の書店さまにはヅカオタの念がこもりにこもったあっつあつの007をお届けいたします!
ヅカ好き書店員さん&読者さんに届けこの思い!

宝塚版『007』がどんな舞台になるのか想像をふくらませつつ、
創元推理文庫『007/カジノ・ロワイヤル』もよろしくお願いします!
劇場で僕と握手!

皆様ごきげんよう。SF班(妹)です。この挨拶久しぶりに使いました。
実は何年か前に沼落ちしまして、ただご贔屓の退団にともなってここしばらくはヅカ部のなかでは末席も末席、半分幽霊部員なのではというくらいの低空飛行の活動を続けています(なぜなら退団したご贔屓ともうひとりのご贔屓という、別の沼を掛持ちしているからなのですが)。そんななかでも一番多く観劇しているのが宙組さんだったりします。
その宙組さんで(注:社内で第一報を聞いたときはどの組で上演されるかは知らされていませんでしたが、有識者会議の結果を鵜呑みにしました)、大好きな『007/カジノ・ロワイヤル』が上演されるとは……!! しかも小池修一郎先生の演出で!!
夢のようです。お祭りです。前の訳も新訳ももちろん読んでいます。あの小説が舞台化……日頃から一番遠いチケットの日付を「寿命」と呼んでがんばっているわたしですが、まだチケット発売前にもかかわらず寿命が延びまくっています。生きる。

幕が開く日を心待ちにしながら、予習をし、徳を積み、半幽霊部員ながらヅカ部の地下活動に邁進してまいりたいと思います。

皆様ごきげんよう、昨夏はデコったマカロンシャンシャンペンライトを振りまくっていた、宙担ヅカ部員Hです。
会社の机には真風涼帆さんのパーソナルカレンダーや宙組生の舞台写真を飾り、いつも活力をもらっています。

わたしは夢を見ているのでしょうか……?
大好きな宙組で弊社刊行物原作の作品が上演されるなんて……、大好きな真風さんがジェームズ・ボンドを演じられるなんて……、嬉しすぎて幸せすぎてまだ信じられません。

弊社からは昨年、朝美絢さん主演の雪組公演原作『ほんものの魔法使』を復刊いたしましたが、そちらは公演情報が発表された後に、以前他社から刊行されていた作品を引き継ぐ形で復刊したもの……いわば弊社の一方通行片想いでした。
ですが今回は、ある日突然、劇団様から『007/カジノ・ロワイヤル』を上演したい旨のご連絡をいただくという衝撃の展開!
これはもはや「両想い」と言っても過言ではない……?(過言です)

夜会服に拳銃を忍ばせ颯爽とカジノに向かう真風さん、絶対かっこいいに決まってるじゃないですか……!!!
そして潤花ちゃんがボンドガールに……? え、やばすぎません?
原作のページをめくりながら想像するだけでときめきのあまり息ができなくなりそうなのですが、どうしたらいいんですか劇団様本当に本当にありがとうございます!!!
ボンドと敵対組織とのスリリングな駆け引きや、きらびやかなカジノ・ロワイヤルの景色、リゾートに集う人々のゴージャスなお衣装の着こなし、宙組生の圧倒的コーラス力で表現される時代の空気感……すべてが楽しみです!

皆様ごきげんよう。
編集部所属、国内ミステリ&SF担当のTでございます。

先日、日傘の話題から書店員さんに宝塚ファンだと見抜かれました。
これが日常の謎か……(違う)。
J書店のNさん、弊社ヅカ部はこんな感じです!!

さて、宙組版『007/カジノ・ロワイヤル』への期待は
部員のみんなに完全同意。
真風さんのジェームズ・ボンド、小池修一郎先生の演出。
オタクの夢の結晶か……? 想像だけで幸せになれます。あとは……

すべての公演の幕が開きますように。
生徒さんをはじめ、宝塚歌劇団関係者の皆さまが
心身共に健康で、充実した日々を過ごせますように。

宝塚歌劇団がこの世に存在し、公演が無事実施されることが
どれほどありがたく尊いことか、改めて実感する約二年半。
いままさに公演を中止している花組さんのことを考えると胸が痛みます。
でも我らが元気がないと生徒さんが悲しむから(拡大解釈)、
各部員が日々できることを続けていきます。

原作がどこの版元から出ていても買いますが、
(本がない場合は復刊企画します)
弊社刊行物が原作になるという幸運が回ってきたからにはさらに全力応援!!!!

仕事をがんばり、徳を積み、お手紙を書き、チケットに応募する。
我ら宝塚ファン、この愛よ永遠に。


007/カジノ・ロワイヤル (創元推理文庫)
イアン・フレミング
東京創元社
2019-08-22