治承四年(一一八〇年)。平清盛は、高倉上皇や平家一門の反対を押し切って、京から福原への遷都を強行する。清盛の息子たち、宗盛・知盛・重衡は父親に富士川の戦いでの大敗を報告し、都を京へ戻すよう説得しようと清盛邸を訪れるが、その夜、邸で怪事件が続発する。
 清盛の寝所から平家を守護する刀が消え、「化鳥を目撃した」という物の怪(もののけ)騒ぎが起き、翌日には平家にとって不吉な夢を見たと喧伝していた青侍が、ばらばらに切断された屍で発見されたのだ。
 邸に泊まっていた清盛の異母弟・平頼盛は、甥たちから源頼朝との内通を疑われながらも、事件解決に乗り出すが……。

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 平清盛の異母弟にして、平家滅亡後も生き残った一族の裏切り者・平頼盛。日本史ではマイナーな存在である彼は、実は名探偵だった――という視点から、デビュー連作集『蝶として死す 平家物語推理抄』は生まれました。
 第15回ミステリーズ!新人賞受賞作「屍実盛(かばねさねもり)」などを収録した『蝶として死す』は、刊行後に大きな反響を呼びました。『週刊新潮』をはじめ多くの書評が出たり、『読売新聞』で宮部みゆき先生のレビューが掲載されたり、第四回細谷正充賞を受賞したりと、歴史ミステリとして高く評価されました。

 本書『揺籃の都』は、『蝶として死す』に続く長編歴史ミステリです! 舞台は、福原(現在の兵庫県神戸市)に遷都した平清盛邸。アニメ『平家物語』第6話でも描かれた、都や平清盛邸で起こった怪事件の謎に、平頼盛が挑みます。
 敵対する異母兄・清盛だけではなく、彼の息子たち、宗盛・知盛・重衡からも源頼朝との内通を疑われる中、頼盛はどうやって手掛かりや証拠を集めていくのか? 密室から犯人が消えた謎は? 多くの者にアリバイがある中、どうやって青侍は殺されたのか? 物の怪の正体とは? この時代かつ平家ならではの、トリックや真相を描いています。

 また、アニメ『平家物語』&大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で描かれたエピソードも含まれているので、読み応えも抜群。歴史ミステリの新たな傑作を、どうぞお見逃しなく!