人外。
 人間より優れた能力をもつ獣たちのことです。
 人外たちは強く、賢く、長生きで、さまざまな言葉、さまざまな力を操ります。姿を変えたり、影に溶けこんでしまうものもめずらしくはありません。
 わたしたちの第五合衆大陸には、星の数ほどの人外がいます。
 そして、それぞれの種を束ねる特別強力な存在人外王も、銀河系とおなじ数ほど発見さ
れています。
 人間に友好的な王もいますが、ほとんどは人間を避け、あるいは嫌っていました。なかでも、人間を滅ぼすかもしれないほど危険な人外王は、六体。そのことから、第五系人はいつしか、大陸を六つの地域にわけてよぶようになりました。
 東域(イースト)の、月雷王(げつらいおう)。
 西域(ウェスト)の、走訃王(そうふおう)。
 南域(サウス)の、番狼王(ばんろうおう)。
 北域(ノース)の、氷山王(ひょうざんおう)。
 空域(ヘヴン)の、隕星王(いんせいおう)。
 地下域(ヘル)の、地動王(ちどうおう)。
 六地域六体六災の人外王を駆除すること。それが、わたしたち第五系人帝国の存在理由なのです。そしてその偉業をなした英雄は、まだ、いないのでした。
(「帝国のなりたち」『帝国議会認定・初等教育書』より抜粋)  
 
 第五系人帝国の皇帝、ウーゼル=レッドコメット・ブラックケルピイの末娘、アルスル=カリバーンは、上の姉エレインのように恋に生きるほどの情熱も、下の姉ヴィヴィアンのように芸術に身を捧げるほどの才能もなく、なにをやってもうまくいかず、いつも父をはじめ皆をがっかりさせてきた。ついた綽名が〈レディ・がっかり〉。母親であるグニエプルは夫しか目に入っておらず、夫が認めない娘に対しては無関心だ。
 そんなアルスルだったが、なんとか父親に認められ、母親に愛されたいと思っていたのだ……。
 だが、ある日舞踏会で父が殺害された。偶然にも直後に現場に足を踏み入れたアルスルが皇帝殺しの容疑者にされてしまう。無実の主張も空しく首都の裁判で死刑を宣告されたが、第五系人帝国の貴族は首都だけでなく、一族の領地でも裁判を受けなければならない。
 ブラックケルピイ家の所領である城郭都市ダーヴィーズにそびえる、通称鍵の城。その城主にして、ブラックケルピイ家の陰の采配者とよばれるリサシーブの裁判を受けることになったアルスルは、ダーウィーズに護送されるが……。

 ブラックケルピイ家はイヌ人外を操るイヌ使い部族。人間よりも大きなケルピー犬を使って狩り(ハンティング)を行います。第五系人帝国には他にもテリア犬を使うテリア家、シェパード犬を使うシェパァド家などのイヌ使い部族のほか、ラグドオル家、アビシニアン家などのネコ使い部族も存在、おまけにイヌ使い部族とネコ使い部族は仲が悪いというおいしい設定です。

 第3回創元ファンタジイ新人賞で佳作になった『忘却城』でデビューを飾った著者が(そういえば、『忘却城』シリーズにも巨大なウサギが登場しました)、もふへの愛の全てを注いだ独自の世界観が秀逸な異世界ファンタジイ!
 カバーと挿絵は動物と少女のイラストで大人気のねこ助先生。
 ねこ助先生の描く人外と少女もぜひお見逃しなく!

 犬好き、猫好き、もふ好きの皆様必読です。