『仮題・中学殺人事件』の衝撃からちょうど50年の今年、辻真先最新ミステリの登場です。
一昨年の年末ミステリランキング3冠を獲得した『たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説』の続編にあたる今作。主人公はひき続き、風早勝利(高校時代のニックネームはカツ丼)。『たかが~』では、ミステリ作家を目指す高校生でしたが、12年後の今回はミステリ作家としてデビューはしたものの、ヒット作はなく、各社で細々とした依頼をこなしている状況です。
一方、風早の同級生・大杉日出夫(ニックネームはトースト)は、CHK(某公共放送がモデル)で、テレビ楽劇課のPD(プロデューサー・ディレクター)をつとめています。まだ、ラジオがお茶の間の娯楽の中心で、テレビよりもステイタスが上の時代。試行錯誤を繰り返しながら、放送をこなしている日々です。
そんな大杉が、ミステリドラマの新作脚本を風早に依頼するところから物語はスタートします。風早は、四苦八苦しながら、ミュージカル仕立ての脚本を完成させ、さあ放送という中で事件は起こります。まだこの当時、ビデオは非常に高価で、ドラマであっても生放送が当たり前です。その放送真っ最中に、なんと主演女優が殺害されていたのです。果たして、事件の真相は? 風早は、大道具の看板書きとしても参加していた那珂一兵とともに事件を調査していくと……。

副題にある昭和36年(1961年)という時代は、高度経済成長期で、ある意味日本が元気だった頃です。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』(昭和34年が舞台)のすぐあとぐらい。1964年(昭和39年)の東京オリンピックの少し前です。大杉の語る、テレビ業界のあれこれは、実際に辻真先自身が体験したことがほとんど。ミステリとしての面白さだけでなく、歴史的なリアリティも、ぜひ味わってください。

また、今年は著者の辻真先、卒寿の記念すべき年です。
記念出版はまだ続きますので、発表をご期待ください。