過ちの雨が止む (創元推理文庫)
この夏、ある男の死が、僕を本当の大人に変えた。
 
自分と同じ名前の男の不審死を通して、青年は家族の秘密に向き合う。
心ふるえるミステリ『償いの雪が降る』続編!



みなさまこんにちは。翻訳ミステリ班Sでございます。
2022年4月28日、ついにアレン・エスケンス『過ちの雨が止む』が刊行となります! 前作『償いの雪が降る』の主人公、ジョー・タルバートがふたたび不可解な事件に巻き込まれ、家族の秘密に向き合う物語です。

2018年翻訳版刊行の『償いの雪が降る』は、アメリカの作家アレン・エスケンスのデビュー作です。そしてバリー賞ペーパーバック部門最優秀賞、レフトコースト・クライム・ローズバッド賞デビュー作部門最優秀賞、シルバー・フォルシオン賞デビュー作部門最優秀賞と3冠に輝き、エドガー賞、アンソニー賞、国際スリラー作家協会賞の各デビュー作部門で最終候補作となりました。

主人公は大学生のジョー。彼は大学の授業の課題で、30数年前の少女暴行殺人で有罪となったカールにインタビューすることになります。ジョーの一人称で描かれた本書は、務台夏子先生のみごとな翻訳で、瑞々しい青春ミステリとして高評価を得られ、何度も重版することができました。

そんなジョーが大学を卒業し、AP通信社の記者として働いているところから始まるのが、『過ちの雨が止む』です。アルコール依存症など問題を抱えた母親から離れ、自閉症の弟ジェレミー、恋人のライラと暮らし、記者として活躍していたジョーは、前作の状況と比べるとたいへん立派になっているように見えるかもしれません。しかし『過ちの雨が止む』の冒頭でジョーは仕事に関わる大きな問題に直面し、そしてさらにある男の死がきっかけで、ふたたび自分の愚かさや過ちに向き合う必要に駆られるのです。

さて、『過ちの雨が止む』のあらすじは……。

大学を卒業し、AP 通信社の記者となったジョーは、ある日、自分と同じ名前の男の不審死を知らされる。死んだ男は、ジョーが生まれてすぐに姿を消した、顔も知らない実父かもしれない。ジョーは凶行の疑いがあるという事件に興味を抱いて現場の町へ向かい、多数の人々から恨まれていたその男の死の謎に挑むが……。家族の秘密に直面する青年を情感豊かに描く『償いの雪が降る』続編。

今回のジョーは自分の家族にかかわる秘密を知ることになります。『償いの雪が降る』でも、ジョーは30数年前に起きた事件を調べることで己の抱える問題と向き合い、成長しました。続編も、青春ミステリとして素晴らしい魅力のある作品になっています。
今まで目をそらしていたものを見つめることは、ひどい痛みをともなうこともあります。しかし苦難の末にジョーが選んだ「答え」は……。ぜひ、悩みながら前に進もうとするジョーの姿を、見届けていただきたいと思います。

もう、こうして記事を書いている最中にも、本文中のある場面を思い出して泣きそうになってしまうんですよね……。エスケンスさん、とにかくエモーショナルな描写が得意な作家さんなので……。ミステリとしての謎解きの面白さはもちろん、登場人物のかけあいとか、何気ない台詞とかがぐっとくるのですよ……。ジョーの弟のジェレミーも相変わらず素敵な青年で、読んでいると癒やされます。また、ジョーとライラの関係性の描写にも、ぜひご注目くださいませ。

アレン・エスケンスの翻訳作品は、刑事と弁護士、親友同士の正義が激突する法廷ミステリ『たとえ天が墜ちようとも』も発売中です。こちらは、『償いの雪が降る』に登場した刑事マックスと弁護士のボーディ、そして法学部の大学生のライラが活躍する物語です。
かつて刑事弁護士であった著者が、検察官と弁護士のテクニカルな駆け引きを巧みに描いています。刑事による捜査小説とリーガル・サスペンスの面白さ、両方をしっかり味わうことができますし、単発で読むこともできる作品ですので、こちらもぜひお手にとっていただけますと幸いです。

『過ちの雨が止む』は4月28日ごろ発売です。青春ミステリがお好きな方、頑張る主人公が好きな方、とにかく面白いミステリが読みたい! という方、さまざまな方にお薦めの一冊です。どうぞお楽しみに!

(東京創元社S)