世界中でセンセーションを巻き起こしたヤングアダルトの傑作が、映画化されました。
 著者のパトリック・ネス自身が脚本に携わり、監督はダグ・リーマン、主役のトッドにはトム・ホランド(『スパイダーマン』シリーズ)、トッドが出会う少女ヴァイオラにデイジー・リドリー(『スター・ウォーズ』エピソード7、8、9)、プレンティスタウンの首長にマッツ・ミケルセン(『007 カジノ・ロワイヤル』、TVシリーズ『ハンニバル』)と、豪華キャストで、SFでありボーイ・ミーツ・ガールである、そんな原作の特徴を最大限に生かした作品です。原作では文字でしかあらわせなかった人々の思考“ノイズ”が映像であらわされ、考えていることが漏れてしまう異常な世界がリアルに描かれています。

映画『カオス・ウォーキング』11月12日公開
TOHOシネマズ日比谷ほか全国でロードショー


 原作〈混沌の叫び〉(パトリック・ネス著、金原瑞人・樋渡正人訳)は『心のナイフ』『問う者、答える者』『人という怪物』の三部作。映画ではそのなかで『心のナイフ』の部分を映像化しています。映画でいったん決着はつく……のですが、原作では物語はそこからさらにスケールアップし、想像を絶するほど壮大になり、また壮絶なラストを迎えます。
 映画で〈新世界〉に足を踏み入れた皆様、是非二部、三部までお読みください。

 1巻『心のナイフ』ガーディアン賞受賞
 2巻『問う者、答える者』コスタ賞受賞
 3巻『人という怪物』カーネギー賞受賞

 受賞歴だけが作品の質を保証するものではないけれど、この〈混沌の叫び〉三部作の受賞歴を見れば、この三部作がいかに多くの読者に読まれ、感動を与えたかがわかるでしょう。

 舞台は地球から遠く離れた惑星〈新世界(ニュー・ワールド)〉。プレンティスタウンは〈新世界〉のたったひとつの町。この星に入植した人々は土着の生き物スパクルと戦争になり、スパクルがまいた細菌のせいで女はすべて死に絶えて、生き残った男たちも互いの思考がすべて“ノイズ”として聞こえるようになってしまったという。
 トッド・ヒューイットはあとひと月で13歳、つまり正式な大人になる。プレンティスタウンで一番若い。女たちが死んでしまったということは、もう子どもは産まれないのだから、トッドは最後の子どもなのだ。町外れの農場に、親代わりのベンとキリアンと犬のマンチーと一緒に住んでいる。
 ある日、トッドは沼地でノイズを全く発しない不思議な存在に出会う。これは何? それとも誰? スパクルではない、それは死に絶えてしまったと思われていた女、いや、女の子だったのだ。

 たったひとりの少年とこの世にいないはずの少女、ふたりが出会ったとき、世界は動き始める……

 映画化を機に、〈混沌の叫び〉のスピンオフ短編のひとつ「新世界」(樋渡正人訳)を12月発売の『紙魚の手帖』vol.2に掲載します。『心のナイフ』の前日譚にあたる作品です。本編をお読みいただいていなくても、独立した短編としても楽しめます。

 同じくスピンオフ短編「広い広い海」「スノースケープ」(どちらも樋渡正人訳)も、後日web限定で公開します。こちらは本編のあとでお読みいただくことをお勧めします。作品世界がもっと広がること請け合いです。