突然の想い出語りで大変恐縮ですが、私は1991年、主人公と同じ12歳のときに、〈狩野俊介〉シリーズの第一作『月光亭事件』の徳間ノベルス版と出会いました。場所は、来年建て替えが予定されている、三省堂書店神田神保町本店の二階でした。
 他のいかついノベルスと異なる、末次徹朗さんの可愛らしいカバーイラストと、新興宗教が関わるらしいちょっとおどろおどろしいあらすじに惹かれて、そのときお財布に入っていた小遣いをはたいて購入しました。
 読み始めて、俊介君が孤児で(『赤毛のアン』で孤児とは何かを知っていましたが、個人的にこの設定は結構衝撃的でした)、家族ではない大人と「小さな大人」として話し合うことができる彼を素直に尊敬し、12歳の初対面の子供を対等な友人として扱い、同時に大人として守り導く野上探偵と高森警部が大好きになり、喫茶店の看板娘アキちゃんに憧れました。ちなみに俊介君には子猫のパートナーがいて、猫好きとしてはそこも羨ましかったです。
 そして内容は本格的なミステリ。ドラマがあり、トリックがあり、そして子供ならではの葛藤がありました。共感と言うにはあまりにも境遇も考え方も違う俊介君でしたが、旅先で出会った同い年の子の内面を勝手に覗いてしまったような決まりの悪さもありつつ、人の気持ちを推し量るということを、遅ればせながらこの本を通して学んだ……と言うと「まだ学んでないだろ!」と周囲から怒られそうです。
 その後も国内外を問わず、様々なミステリを読むようになりましたが、〈狩野俊介〉シリーズは、頻繁にノベルスコーナーをチェックして、出ていれば必ず買うシリーズの一つとなりました。

 その十数年後、まさか自分が文芸書の編集者となり(編集者なんていう職業があることすら知らなかった)、太田忠司さんと初めてパーティでお目に掛かって「小さい頃から〈狩野俊介〉を読んでいました!」と緊張しながら挨拶し(太田さんは「最近若い編集者と仕事すると、みんなそう言うんだよね」と笑っていました)、まさかまさかの担当編集者となり(最初にご一緒したのは『奇談蒐集家』の連載でした)、そして「(自分がどうしても読みたいから)狩野俊介の新作、書いてもらえませんか!?」と蛮勇をふるって依頼することになるとは……どんな占いにもそうなるなんて書いていなかった……
 積み上げた功徳をここらで使い果たした感もありますが、もしかすると『鬼哭洞事件』の続きも……!?などと目論んでいます。皆様、私の功徳の高さを証明するためにも『鬼哭洞事件』をぜひお買い求めいただければと思います。

 ここでようやく朗報です。『鬼哭洞事件』発売に伴いtwitterキャンペーンを開催いたします。
#俊介君おかえり」のハッシュタグで『鬼哭洞事件』の感想をつぶやくと、太田忠司先生書き下ろし・ここだけの〈狩野俊介〉シリーズ特別ショートショートが読めます!

方法は以下の通りです。

一.twitterで東京創元社のアカウントをフォローする。→ @tokyosogensha

二.『鬼哭洞事件』の感想を呟いてください。それだけで応募は完了です。その際、犯人の名前や事件の真相など、ミステリの核となる部分には触れないようお願いいたします!
(必ず「 #俊介君おかえり 」のハッシュタグをつけてくださいね)

三.最大で100名の方に、特別ショートショートの読めるURLを、ダイレクトメッセージにてお送りいたします(DMの発送をもって当選報告に代えさせていただきます。URLを送るまでには多少の時間を要する場合もございます)。

※ハッシュタグのない投稿は無効となります。
※非公開アカウントは対象外となります。
※本キャンペーンの応募期間は2021年12月31日までとなります。
※ショートショートは2022年1月31日までの限定公開になります。
※ショートショートURLの公開、拡散はご遠慮ください。

鬼哭洞事件
太田 忠司
東京創元社
2021-10-29


奇談蒐集家
太田 忠司
東京創元社
2014-02-28


怪異筆録者 (創元推理文庫 M お 6-13)
太田 忠司
東京創元社
2021-09-30