エクスカリバー、円卓の騎士、石に刺さった剣、聖杯、魔法使いマーリン、湖の貴婦人……と、六世紀ごろの英国に生まれたとされるアーサー王伝説の登場人物やエピソードは、現代にいたるまで幾多の物語、詩、音楽、絵画、漫画やゲームやアニメに登場しています。
そんな中でも、アーサー王伝説の新たな金字塔となるであろう作品が、このフィリップ・リーヴの『アーサー王ここに眠る』です。魔法使いマーリンの原型を思わせる吟遊詩人ミルディンに拾われた、みなしごの少女グウィナの眼をとおして描かれた、アーサーの姿がここにあります。
アーサー王や彼を取り巻く人々は本当はこんなふうだったのではないかと思ってしまうほど、リアルなエピソードの数々。
そしてラストの章がなんとも素晴らしいのです。物語全体も,もちろん面白いし感動的なのですが、このラストの一章、一行のためだけにでも読む価値があります。
著者は星雲賞を受賞した『移動都市』(映画化された際のタイトルは『移動都市/モータル・エンジン』)のフィリップ・リーヴ。ちなみに、この『移動都市』の四部作の最終巻『廃墟都市の復活』ではガーディアン賞を受賞しています(この四巻目のラストも素晴らしいです)。
『アーサー王ここに眠る』がカーネギー賞を受賞していますので、リーヴは名実ともに英国を代表する作家の一人といえます。
そして忘れてはならないのが本書に収められた10枚の挿絵です。
物語の場面を生き生きと描いたイラストあり、中世の写本のように装飾的なイラストありで、読む者をアーサーとグウィナの世界に引き込みます。
最後の章を読み終えめくった先にあるラストを飾る一枚の挿絵……。
間違いなく心に残る作品になることでしょう。