猫の街から世界を夢見る

猫の街ウルタールの大学女子カレッジに、存亡にかかわる一大危機がもちあがった。大学理事の娘であり学生のクラリーが、“覚醒する世界”からやってきた男と駆け落ちしてしまったのだ。かつて“遠の旅人”として“夢の国”を冒険したことのあるカレッジの教授ヴェリットは、“覚醒する世界”にむかったクラリーを連れもどすため、気まぐれな神が支配し危険な生き物が徘徊する“夢の国”をめぐる、長い長い旅に出る。ヒューゴー賞・ネビュラ賞受賞作「霧に橋を架ける」の著者が、H・P・ラヴクラフトの諸作品に着想を得つつ自由に描く、世界幻想文学大賞受賞作。

『霧に橋を架ける』の才人キジ・ジョンスンの作品ひさびさの邦訳『猫の街から世界を夢見る』は、ラヴクラフトの短編「未知なるカダスを夢に求めて」を下敷きにしつつ、そこから自由に想像力を羽ばたかせた物語。ラヴクラフト作品の魅力を現代的に語りなおす試みであると同時に、不思議に満ちあふれた未知の世界と旅と冒険(と、なんといってもかわいい猫!)を描いたすばらしいファンタジイとして、ラヴクラフトのファンにもそうでない人にもお読みいただきたい作品です。

世界幻想文学大賞中編部門を受賞した傑作ファンタジイである本作は、創元SF文庫より6月下旬刊行。おたのしみに!