シムリンゲ署のグンナル・バルバロッティ警部補は、風光明媚なゴッドランド島での休暇に出かけるところだった。
 昨年バカンス先で運命の出会いをした素晴らしい女性マリアンネとの胸躍る十日間。離婚を経験し、子どももいる中年の警部補に訪れた夢のようなチャンスだ。
 マリアンネと過ごし、幸せな気分で目覚めたゴッドランド島の朝、ふと出がけに郵便配達員から受け取った三通の封筒のうち一通がバルバロッティの目にとまった。
 手描きで宛名が記され、差出人の名前はない。中に入った用紙を開くとそこにあったのは「エリック・ベリマンの命を奪うつもりだ。お前に止められるかな?」という一文だった。
 殺人の犯行予告だろうか? だが、バルバロッティに心あたりはなく、エリック・ベリマンという知り合いもいなかった。悪戯かとも思ったが、無視することもできず、休暇先から署に連絡して調べてもらう。
 シムリンゲにはエリック・ベリマンという人物は五人いた。そのうち二人は休暇でシムリンゲを離れている。署では半信半疑のまま、その五人の住所にパトロールの巡回を行うことを決めた。悪戯の犯行予告は警察に山ほど来る。その全てに人材を投入するわけにはいかないのだ……。

 だが、予告は本物だった。本当に五人のエリック・ベリマンのうち一人の遺体が発見されてしまったのだ。急ぎ休暇を切り上げたバルバロッティのもとに新たな予告状が届く。
「次はアンナ・エリクソンだ。今度も邪魔はしないな?」

 そして殺人の予告状は、それだけにとどまらず、三通目、四通目と続いた。いずれも宛先はバルバロッティ。彼にはまったく心当たりがなかったが、予告状の件をマスコミに嗅ぎつけられ、自宅に押しかけてきた記者に乱暴をはたらいたと、捜査から外されてしまう。
 憔悴するバルバロッティ。だが、そんな彼を嘲笑うかのように、五通目の予告状には彼のファーストネーム「グンナル」が記されていた。
 そして、さらにバルバロッティのもとに送りつけられた手記らしきものに書かれていたのは、驚愕の記録だった。

 二転三転する事実が読者を翻弄する、スウェーデン推理作家アカデミーの最優秀賞に輝く傑作。