『夜の写本師』に始まる異世界ファンタジイ・シリーズ〈オーリエラントの魔道師〉も2020年刊行の『イスランの白琥珀』で10冊、「長すぎるシリーズは苦手」とか「どこから読んでいいのかわからない」という皆様のために、壮大な異世界〈オーリエラント〉に踏み込むためのガイドをお届けします。
1 年代順に読んでみる
様々な国が興り、繁栄し、そして滅亡する、地理的にも歴史的にも広がりのある〈オーリエラント〉の世界、そんな長い歴史のなかのひとつの国、ひとつの時代を切り取り物語っているのが、このシリーズの特徴です。
せっかくなら一番古い時代から読んでみたいと言う方にお薦めなのが
この3作は、覇権国家として繁栄を極めたコンスル帝国の創成期、繁栄期、没落期という、それぞれの時代に活躍する魔道師たちを描いた作品です。
2 主人公で読んでみる
1で挙げたコンスル帝国末期の時代を舞台にしたのが
の〈紐結びの魔道師リクエンシス〉を主人公にした4冊です。
こちらは、他の作品よりも明るく軽い読み心地が特徴(主人公リクエンシスの性格にもよるのだと思いますが)で、1冊1冊も薄めです。
3 いろんな国で読んでみる
2よりもさらに時代を下るのが、著者のデビュー作
- 『夜の写本師』(創元推理文庫)
こちらは完全にコンスル帝国崩壊後の物語。これまで帝国の属国であったいくつもの国や地方が独立している時代。大魔道師を戴く〈嘆きの地〉エズキウム、死者の呪いの魔法を使うマードラ、写本の街パドゥキアといった、旧コンスル帝国の領土からは西南にあたる国々が舞台です。
- 『イスランの白琥珀』(東京創元社刊)
長年コンスル帝国のライバルとして何度も侵攻したりされたりを繰り返してきた隣国イスリル帝国が舞台。時代は『魔道師の月』の少しあとくらいです。
黒衣の魔道士軍団を擁する東の大国の謎のベールがついに剥がされ、魔道帝国の全貌が明らかになります。
そして、そんな長編の間を縫うように描かれた短編を集めたのが
- 『オーリエラントの魔道師たち』(創元推理文庫)
その名のとおり、それぞれ違った魔法を扱う魔道師を主人公にした4編を収録。入門編としてもお薦めです!
2021年秋、満を持して11作目『久遠の島』が刊行されます!
今回は『夜の写本師』でも舞台になったパドゥキア、マードラ、そして初めてスポットが当たるフォト連合王国で繰り広げられる物語。どんな魔法が出てくるのか、楽しみな一冊です!