『鬼滅の刃』の“鬼”に続いて、『呪術廻戦』の“呪い”が流行中ですが、この〈千蔵呪物目録〉も、呪われた品物“呪物”を管理する一族唯一の生き残りの少年が遭遇する、呪いがらみの事件を描く傑作ファンタジイ。『呪術廻戦』で“呪い”にハマった読者の皆さんにお薦めの三部作。
『天地明察』『魔女をまもる。』の槇えびし先生による朱鷺と冬二のカバーと、登場人物の挿絵も魅力的です。

 とある深い山奥に、倉持村という村があった。村の大地主である千蔵家は、代々呪物、――つまり呪いによって,存在するだけで周囲になんらかの危害を及ぼす、あるいは不可思議な現象を引き起こす物――を管理し、人々を呪いから守ることを使命とする一族だ。 千蔵家の分家である村の農家に生まれた朱鷺は、五歳のときに本家の養子になった。
 朱鷺には呪いに関わるものを見通すことにできる、千蔵家の血筋に伝わる不思議な力が備わっていたのだ。
 だが、ある事件で千蔵家の血は朱鷺をのぞいて途絶え、千蔵家が管理していた呪物は散逸してしまった。以来、朱鷺は各地に散らばった呪物を集めるために、獣の姿をした兄冬二と共に終わることのない旅を続けているのだ……。

●最新作〈千蔵呪物目録3〉『見守るもの』

 知り合いからの依頼で、ある呪物を回収しに向かう旅の途中、珍しく体調を崩した朱鷺。直前に兄冬二(獣のすがたをしている)とも喧嘩別れしてしまったせいで、ひとり倒れているところを、通りかかった時藤蓮香という女性に助けられる。
 蓮香がひとり住む家の一間で目を覚ました朱鷺は、救い主である蓮香が何かに呪われていることに気づく。実は、時藤家には一族の危機を予告し守ってくれるといわれる〈石〉が伝わっており、その〈石〉に選ばれた蓮香は〈石〉のある家から離れて住むことができないのだ。そして、常に〈石〉の視線を感じ続けるせいで他人の視線に過敏になり、人付き合いもできず、引きこもって暮らしていた(そもそも人付き合いが得意な性格ではないのだが)。
 時藤家に伝わる〈石〉が呪物であれば、蓮香を呪いから解放し、〈石〉を千蔵の蔵に収めて、これ以上誰かに呪いを及ぼさないように封じるのが朱鷺のつとめだ。朱鷺は本来の目的である呪物の回収を後回しにして、蓮香に〈石〉の所在を尋ねるが……。

 一方、激しい口げんかの末、朱鷺の元を去った冬二は、怪我をして獣医に連れていかれていた。とりあえず飼い主の見つからない迷子犬(?)として、獣医の家に保護された冬二だったが、その家の幼い息子に自分の声が聞こえることを知って驚愕する。冬二の言葉を聞くことができるのは、呪われた人間だけのはずなのだ。こんな子どもがなぜ?

 呪物を求めて旅をする不死の少年朱鷺と、獣の姿をした兄冬二の運命を描く、三部作完結。
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 呪物を求めて旅をする少年朱鷺とその兄冬二が遭遇する不思議な出来事を描く、シリーズ第二弾。
創元の国内ファンタジイは他にも面白い作品が盛りだくさん! ご紹介はこちらから)

東京創元社の国内ファンタジイ見出 (1)

「願いの桜の話って本当だと思う?」秋穂町で駄菓子屋兼骨董店清鈴堂を営む宗助は、馴染みの中学生亜咲美からそう聞かれた。通学路から離れた寂しい場所に一本だけ立つ桜の木、その木に願い事をすると叶うことがあるという。
 奇妙な言い伝えや曰くつきの品物に目がない宗助は、早速その桜を調べ始めた。すると亜佐美の周辺で理由もなく体調を崩した生徒がいることがわかる。嫌な予感を覚えた宗助は、祖父の代からの知り合いで呪物に詳しい少年朱鷺に助けを求めた。
 昔なじみの頼みを断れず、また呪いに関わるものが絡むとあればほうっておけず、清鈴堂にやってきた朱鷺と冬二だったが、そこでわかったのは、件の桜は呪われているが、事の発端となった亜咲美は呪いには関わっていないということだった。
 では、呪いに関わっているのは、誰なのか?
 
 高校3年生の少女遠野美弥。とりたてて勉強ができるわけでも、綺麗なわけでもない。何事にも真面目に取り組むのだが、要領が悪いせいか、必死で勉強していてもなかなか成果がでない。自分の目標をしっかり定めている友人たちと比べて、ふがいない自分がつくづく嫌になってる今日このごろだ。。
 そんなある日、クラスメイトの男の子に「遠野、おまえ一昨日、旧校舎に行ったりしてないよな?」と聞かれた。
 聞けば、旧校舎には学校の七不思議のひとつ、呪われた鏡があり、その鏡に姿を映すと鏡の中の自分が抜け出して襲いにくるのだとか。
旧校舎は現在部室などに使われている古い建物で、部活をしていない美弥が立ち入ったことなどない。それにそもそも美弥は鏡を見るのが怖いのだ。
 最初は男子生徒の見間違いだろうくらいに思っていた美弥だったが、その後も行った覚えのないところで美弥を見たという話が続いた。
 そんなある日の夕方、黄昏どきに自宅へと向かっていた美弥の行く手に、自分とそっくりの少女の姿が……
 そんなことがあるはずがないと、頭ではわかっている。見間違いだ、人違いだ。だが、ずっと見るのを怖れていた自分がそこにいる。
 いきなり踵を返し遠ざかるもうひとりの自分を夢中で追った美弥は、階段をふみはずしてしまう。
 そんな彼女を救ったのは、一頭の大型犬とその犬を兄とよぶ不思議な少年朱鷺だった。

 受験を目前の少女周辺で起きる怪現象、呪われた品をあつめる奇妙な少年と犬、『魔導の系譜』のシリーズの著者がおくるシリーズ第一弾。

著者のデビュー作『魔道の系譜』のコミック版はマグコミで絶賛配信中です。
単行本1、2巻も発売中。単行本3巻は、配信のみで発売。漫画も傑作です!




魔導の福音 (創元推理文庫)
佐藤 さくら
東京創元社
2017-03-11