2018年、羽生飛鳥さん(受賞時の名義は齊藤飛鳥さん)は、「屍実盛(かばねさねもり)」で第15回ミステリーズ!新人賞を受賞されました。本作は『平家物語』や謡曲『実盛』にも取り上げられている斎藤別当実盛の最期を題材にしており、特異な状況下での「被害者当て」を描いた本格ミステリとして高く評価されました。

そして2021年4月、同作を収録した連作短編集『蝶として死す 平家物語推理抄』でデビューします! 主人公は、平清盛の異母弟にして、平家滅亡後も生き残った一族の裏切り者・平頼盛。日本史ではあまりスポットライトが当たることのない彼は、実は名探偵でもあった――という視点から、五編のミステリが生まれました。
都の民から恐れられた、平清盛配下の童子はなぜ惨殺されたのか? 絶対的な権力者の義兄・清盛に借りを作るため、頼盛は童子殺害事件の解決に乗り出すが……。歴史ミステリならではの、フーダニットとホワイダニットで魅せる「禿髪(かぶろ)殺し」(第14回ミステリーズ!新人賞最終候補作を改稿)。

高倉天皇の庇護下にあった用心深い寵姫は、どのようにして毒を盛られたのか? 天皇に相談された頼盛が、推理の果てに辿り着いた、盲点の経路とは。毒薬ミステリとしても楽しめる「葵前(あおいのまえ)哀れ」

木曾義仲から依頼され、首のない五つの死体からある人物の死体を特定した方法とは?前代未聞の「被害者当て」とその顚末を描いた、第15回ミステリーズ!新人賞受賞作「屍実盛」

遠く離れた場所にいたはずの大姫が、父・源頼朝の話の内容を言い当てられた秘密とは? 頼朝を頼り鎌倉に疎開した頼盛が、源氏一族の人間関係に絡む謎を解き明かす「弔千手(とむらいせんじゅ)」

北条時政から、「清盛の後継者を匿っている」という嫌疑をかけられた頼盛の打開策とは? 頼盛の最大の危機と、彼が貫いてきた矜持を表した最終話「六代(ろくだい)秘話」

どの短編も、『平家物語』の時代ならではの謎と、その真相を描いています。平家の全盛期から源平の争乱へとなだれ込んでゆく時代に、推理力を武器に生き抜いた頼盛の生涯を書き切った本書は、立原圭子さんによる美麗なカバーイラストが目印です。傑作歴史ミステリ連作集を、どうぞよろしくお願いいたします。

また、羽生飛鳥さんに詳細な作品解説をしていただいた、「ここだけのあとがき」を後日掲載します。お楽しみに!