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『夜の写本師』から『神々の宴』までのコンスル帝国版図(クリックで拡大)

オーリエラント年表202201
『夜の写本師』から『神々の宴』までの〈オーリエラントの魔道師〉年表(クリックで拡大)


●最新刊 文庫版『久遠の島』


〈久遠の島〉そこは昔四百人の魔道師が力を結集させて造った魔法の島。そこには世界の宝ともいうべきものがある。この島では、世界中の書物を手にとり、読むことができるのだ。
〈久遠の島〉に入るために必要なのは、書物に対する深い愛情と、「とき」を失う覚悟。なぜなら魔法の島と外の世界では「とき」が流れる早さが違うのだから。
 島に住んでいるのは、島を護り、森を護り、本を護る使命を帯びたジャファル氏族。そんなジャファル氏族に生まれたネイダルとヴィニダルは仲のよい兄弟だった。氏族の慣習で、15歳になったネイダルは外の世界を経験するために島を出ていくことになった。
 残されたヴィニダルは、島を訪れた客であるサージ国の王子セパターに出会う。話がおもしろく気さくなセパターは、あっという間にヴィニダルと打ち解けたが……。

 島を襲う驚天動地の出来事、離ればなれになったネイダルとヴィニダルの兄弟と幼なじみの少女が辿る数奇な運命。

 連合王国フォト、呪法の国マードラ、そして砂漠に花開いた写本の都パドゥキア……。デビュー作『夜の写本師』へと連なる本の魔法と復讐の物語。本を愛するすべての人に贈る物語。

『神々の宴』


 ロックラントの小さな村はずれで静かに暮らす魔道師の夫婦。彼らにはいわれなき差別と暴力を逃れてきた過去があった……「セリアス」。平和が続くコンスル帝国で剣闘士たちの脱走が。助けるのは四人の女魔道師……「運命女神(リトン)の指」。若き本の魔道師ケルシュが街で拾った怪我をした少年は、狐に似た獣を連れていた……「ジャッカル」。瀕死の者を助ける力をもつ生命の魔道師チャファが向き合う過去の亡霊とは……「ただ一滴の鮮緑」。風と大地の申し子ヴィテスの民を征服せんとするコンスル帝国軍。兵を率いるのは弱冠14歳の臆病な少年皇子だった……「神々の宴」の5編を収録。
 自らのうちに闇を抱え、人々の欲望の澱を引き受け、黒い運命を呼吸する魔道師たち。ときに迫害を受け、ときに体制に反抗する人々に手を貸し、栄光に包まれることもなく、賞賛を浴びることもない。そんな市井に生きる魔道師たちの姿を描く短編集。
 本作に登場する魔道師たちは神々との関わりが深い者が多いので、これまであちこちで言及されていたコンスル帝国の神々についての資料を掲載。


●文庫版『イスランの白琥珀』


 コンスル建国に遅れること450年、東の地に、星読みディバドールはイスリル帝国をつくった。ティバドールは道半ばで斃れたが、妻で魔道師のイスランがその志を継ぎ、多数の部族をまとめ国の礎を築いていった。
 国母イスランは、拡大しつつあるコンスル帝国に対抗するために魔道師軍団をつくるべく、国中から魔道師候補をあつめていた。ヴュルナイは、イスランに魔道の才を見いだされた者のひとり。イスランに心の奥底に眠る闇の殻を砕かれ、大魔道師となり、軍を率いてコンスル軍を相手に幾多の戦いを勝利に導いた。
 だが、いまわのきわのイスランに国の行く末を託されたものの、後継者となった王族たちの争いで裏切りにあい、大魔道師ヴュルナイの名声も地に堕ちた。
 ……それから数十年、皇帝の座に座るのは雷を落とすだけが取り柄の若造の魔道師、国の中枢には欲にまみれた連中がはびこり、イスリル帝国は存亡の危機に瀕していた。
 密かにオーヴァイディンと名を変えて生きていたヴュルナイは、偶然無実の罪で捕らえられた若い女族長を助けるが、それが運命を大きく動かすことに……。
 コンスル帝国長年のライバルとして覇権を争ってきた魔道帝国イスリル中興の祖を描く待望の物語。
 巻末に国母イスランにまつわる書きおろし短編「イスランの黒猫」を特別に収録。


●文庫版『青炎の剣士』〈紐結びの魔道師Ⅲ〉


 束の間の平穏は春の訪れとともに去り、リクエンシスたちが身を寄せた、星読みトゥーラの故郷オルン村に、元コンスル帝国軍人ライディネス率いる軍が押し寄せてきた。
 リクエンシスとトゥーラは、リクエンシスを追ってきた邪悪な化物に立ち向かうべく〈死者の谷〉に下り、戦線を離脱。拝月教の元軌師エミラーダはある目的を胸にライディネス軍に寝返る。だが、事態はエミラーダの思惑を超えてとんでもない方向に動き出していた。
 侵略軍を率いるライディネスの思惑は? リクエンシスにつきまとう化物を操る黒幕は?
 リクエンシスと仲間たちは事態を収拾し、1500年の長きにわたって続いた魔女国の呪いを解くことができるのか。〈紐結びの魔道師〉三部作ここに完結。


●文庫版『白銀の巫女』〈紐結びの魔道師Ⅱ〉


 悪意に満ちたイスリルの魔道師が甦らせた邪悪な魂と、もとコンスル帝国軍人ライディネス率いる侵略軍。追いつめられたエンスたちは、トゥーラの暮らすオルン村に難を逃れる。
 雪に閉ざされた冬には、さすがに敵軍も攻め寄せてはこない。ひとときの休息を得てエンスたち一行はオルン村で冬を越すことに。
 ならば時間を無駄にすることはなかろうと、星読みのトゥーラ、もと排月教の巫女エミラーダ、知恵者の祐筆リコ、そこにウィダチスの魔道師エイリャも加わってさまざまな文献をあさり、議論を重ね、1500年前にかけられた魔女の呪いを解く方法を探す。
 そこで浮かんだのは、1500年前の星読みネスティが記した、オルン魔国とその最後の女王トゥリアラルの血塗られた歴史だった。

 そして冬が過ぎ去り、雪が解けたとき、ライディネスの軍が攻め寄せてくる。多勢に無勢、しかもオルン村側は戦になれない村人ばかり。リクエンシスは彼らを率いてどう戦うのか? そしてライディネス軍の真の目的は?

 好評〈紐結びの魔道師〉三部作第二弾。




 単行本版『オーリエラントの魔道師たち』収録の短編で初めて登場した、紐を結んで魔導をあやつるテイクオクの魔道師リクエンシス。短編ひとつにおさまらず、文庫版の連作短編集『紐結びの魔道師』で時をまたいでの活躍を見せました。
 そして今回さらに長編、しかも三部作となって再登場!

 時はコンスル帝国凋落の時代。〈オーリエラント〉の年表でいうと、『太陽の石』の直前くらいでしょうか。連作短編集『紐結びの魔道師』では掌編「水分け」と「形見」のあいだにあたる時期の出来事。
 コンスル帝国の一地方、ローランディアの町サンサンディアに居を構えていたリクエンシスが、隣国イスリルの侵攻で住み慣れた屋敷をあとにするところで、物語は幕をあける。
 イスリルの先発隊といえば、禍々しい漆黒の頭巾つきの長衣を着た魔道師軍団。紐結びの魔道師といえど、多数の魔道師と事を構えるつもりはない、ここはいったん難を逃れ、ほとぼりが冷めたころに戻ってくればいい。
 だが、避難先で一人の少年を助けたことから、リクエンシスは世界の命運をゆるがすとんでもない謎にかかわる羽目になる。

 連作短編集『紐結びの魔道師』でお馴染みのエンスとリコの名コンビが復活。他には気のいい剣闘士マーセンサス、気が強く凶暴な星読みトゥーラ、排月教の巫女エミラーダ、そして『夜の写本師』に登場した“ある魔道師”(誰かはお読みになってのお楽しみです!)。
 スケールの大きいリクエンシスらしく、今回関わるのはなんとコンスル帝国建国以前、1500年もの昔に滅んだオルン魔国の魔女の呪い、月の巫女が幻視した文明の崩壊の予兆、そして悪意に満ちたイスリルの魔道師が呼び覚ました、リクエンシスを狙う悪霊……。

 リクエンシスは自らの闇と対決し、さらにもつれた紐をほぐすように、すべての謎を解きほぐすことはできるのか?

 『紐結びの魔道師』でリクエンシスの虜になってしまった皆様、ぜひぜひお楽しみにお待ち下さい。
 もちろん他の〈オーリエラントの魔道師〉シリーズ同様、この巻からお読みいただいても大丈夫です!
『夜の写本師』で登場した“あの魔道師”の過去が気になる皆様も是非!)

創元の国内ファンタジイは他にも面白い作品が盛りだくさん! ご紹介はこちらから)

東京創元社の国内ファンタジイ見出 (1)




 右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠。三つの品をもって生まれてきたカリュドウ。
 だが、育ての親であるエイリャと、淡い恋心を抱いていた少女フィンが、目の前で大魔道師に殺されたことで、彼の運命は一変する。
 女を殺してはその魔法の力を奪う、呪われた大魔道師アンジスト。
 月の巫女シルヴァイン、闇の魔女イルーシア、海の娘ルッカード、アンジストに殺された三人の魔女の運命が、数千年の時をへてカリュドウの運命とまじわる。
 育ての親エイリャの、そしてアンジストに殺され魔力を奪われた女たちの敵をうつべく、カリュドウは魔法ならざる魔法、不可思議な力を操る〈夜の写本師〉としての修行をつむが……。

 魔法ならざる魔法、本という名の魔術を操るもの、運命に翻弄される人々の姿を壮大なスケールで描く、本格ファンタジーの金字塔!



 書物を用いるギデスティンの魔法を編み出した、本の魔道師キアルス。
 姉とも妹とも想い深い絆で結ばれていた少女の悲惨な死を防ぐことができず、無力感と喪失感にうちのめされたキアルスは、逃げるように住んでいた街を飛び出した。心の傷を忘れようと、安酒をあおり酔っぱらい、気がついたところは牢の中。いくらなんでも投獄されるほどのことをしただろうか?
 身に覚えがないのも当然、人違いだったのだ。
 人違いの相手は、繁栄を謳歌するコンスル帝国のお抱え魔道師、レイサンダー。
 痩身、黒髪、緑の瞳までは同じだったが、片や小柄でかたや長身、どうして間違われたものやら。

 ある日コンスル帝国の皇帝のもとに幸運のお守りとして献上された漆黒の円筒“暗樹”。それを見て、コンスル帝国の皇位継承者に仕える大地と天候の魔道師レイサンダーは戦慄する。こんなにも禍々しく、これほど強烈な悪意を発散する恐ろしい太古の闇に、なぜ誰も気づかないのか? 恐怖に囚われたレイサンダーは、そのまま宮廷を出奔した。
 だが、皇帝に献上された「闇樹」は、次第にコンスル帝国の中枢を蝕みはじめる……

 出会うべくして出会ったふたりの魔道師。若きふたりの運命が、人々の心に潜み棲む影を操る太古の闇を巡って交錯する。
『夜の写本師』で読書界を瞠目させた著者の第二弾。




●文庫版
『太陽の石』
 平和と繁栄を謳歌し、歴史に名を轟かせたコンスル帝国も、長い年月を経て内乱や疫病、隣国の侵攻によって衰退し、いまや見る影もない。
 霧岬はそんな帝国の最北西に位置する。
 今から三百年ほど前、強力な力を誇る魔道師、イザーカト九きょうだいのひとりリンターが空からふってきて、地の底に達する穴をうがち、ゴルツ山を隆起させたのだという。
以来、それまでの温暖な気候はどこへやら、岬は海霧か火山煙におおわれ、陽の目をみることのまれな寒冷の地となった。
 そんな霧岬の村に住むデイスは十六歳、村の門の外に捨てられていたところを姉ネアリイに拾われ、天文学者である父と優しい母、そして姉に慈しまれて育った。
 だが、最近はなんだかよくわからない焦燥といらいらが胸の中を吹き荒れて、ついつかかっては憎まれ口をきき、思っていることと反対の態度をとってしまう。
 挙げ句の果てに父と大げんかし、勢いにまかせてゴルツ山に登ったデイスは、土の中に半分埋まった肩留めを拾う。金の透かし彫りに、〈太陽の石〉と呼ばれる鮮緑の宝石。ひと目見てわかった。これは自分に属するものだ……。
 だが、それがゴルツ山に眠る魔道師を目覚めさせ、デイスを宿命の真ん中にたたき込むことになろうとは、知るよしもなかったのだ。

 ゲイル、テシア、ナハティ、カサンドラ、リンター、ミルディ、ヤエリ、イリア、デイサンダー……。大地の力をあやつるイザーカト九きょうだいの、激しく、哀しい宿命の戦いの行き着く先は……。






 人はいかにして魔道師となるのか……。

 自らのうちに闇を抱え、人々の欲望の澱をひきうけ、黒い運命を呼吸する、それが魔道師。

 注文を受けて粘土をこね、ろくろを回して魔法を込めて焼き物に焼く。魔道師の仕事は善悪を裁くことではない。一旦引き受けたな完遂するべきなのだ。はたして魔道師は職人なのか?「陶工魔道師」
 人と人とのあいだのことでどうしようもなくなった女たち、窮状を訴えたくても声をあげることすらできない人たちを救うための密かな魔法組織を描く「闇を抱く」
 胸の内いっぱいに黒き花弁を広げ、漆黒の闇に咲く蓮華の花。死体を扱うプアダンの魔法で殺しを請け負う顔のない魔道師の復讐譚「黒蓮華(こくれんか)」
 そして魔法ならざる魔法をあやつるもの、もうひとりの〈夜の写本師〉イスルイールの若き日の物語「魔道写本師」
 それぞれに異なる四つの魔法にからむ魔道師たちの物語。

『夜の写本師』の世界オーリエラントを舞台にした4つの短篇を収録。
日本ファンタジーの歴史を変えた著者の初短編集。





●文庫版『沈黙の書』
火の時代、絶望の時代が近づいている。いさかいが起こる。戦がはじまる。荒廃とまやかしの繁栄、欲望と絶望、暴力と殺戮。穏やかな日々は吹き払われる。富めるものはさらなる富を求め、力を欲する。人々は踏み潰され、善き者は物陰に縮こまる。神々は穢され、理は顧みられることもない。

 予言者が火の時代と呼んだそのさなか、国と呼ぶにはあまりに小さな領域に、それぞれの覇者が名乗りをあげ、攻防を繰り返していた嵐の中で、いまだ傷つかず無垢なる〈風森村〉に、ひとりの赤子が生をうけた。〈風の息子〉と名付けられたその赤子が笑えばそよ風が吹き、泣けば小さなつむじ風が渦を巻いた。
 だが〈風森村〉にオロッコーの徴兵とともに〈長い影の男〉がやってきたとき、すべてが変わり、〈風の息子〉の運命も激変した。

 天と地のあいだ、オーリエラントの激動の時代を描く、人気ファンタジー〈オーリエラントの魔道師〉シリーズ。





 紐結びの魔道師リクエンシス。
 紐を蝶結び、漁師結び、釘結びとさまざまに結ぶことで、幸福をからめとり、喜びを呼びこむかと思えば、敵に対しては巧みに罠をしかけ、迷わせもする。
 あるときは腹に一物ある貴石占術師を煙に巻き、魔道師を目の敵にする〈神が峰神官戦士団〉の銀戦士たちと戦い(「紐結びの魔道師」)、あるときは猛犬を道連れに絶海の孤島での炎と大地の化け物退治に加勢する羽目になり(「冬の孤島」)、またあるときは必死にわがままな相棒の命を救わんとし(「水分け」)、美女と共に写本の国パドゥキア目指して危険な砂漠を横断、意外な人物に出会いもする(「魔道師の憂鬱」)。
 コンスル帝国衰退の時代、招福の魔道師とも呼ばれるリクエンシスの活躍を描く短編集。