3日後の2月28日、相模原ギオンスタジアムにてサッカーJ2リーグの開幕戦の一つがキックオフとなります。SC相模原vs.京都サンガのカードですが、きっと『ホペイロの憂鬱』の著者・井上尚登さんも楽しみにされていたかと思います。


 実は、二年前の2月25日に、井上尚登さんはご逝去されました。しばらく御連絡が取れないでおりましたところ、思いもよらぬ訃報に接したのが、御逝去から一年ほど経過してからのことでした。しかしその後も、新型コロナウイルスの影響もあり、なかなか詳細情報が確認できず、御遺族および関係者の皆様にはご面倒をおかけしてしまい、また読者の皆様への御報告も遅れ大変申し訳ございませんでした。
 改めて謹んでお悔やみ申し上げます。今回、井上さんの中学時代の同級生の皆さんをはじめ、インターネットテレビ「テレビさがみはら」の間所さんのご尽力もありまして、ここに御報告させていただきます。

 井上尚登さんは、1959年神奈川県相模原市生まれ。99年に『T.R.Y.』で第19回横溝正史賞を受賞しデビュー。『T.R.Y.』は織田裕二さん主演で映画化し、話題となりました。井上さんは、読売ジャイアンツの原辰徳監督と同級生ということもあってか、野球はもちろん、サッカー、自転車ととてもスポーツ観戦がお好きな方でした。2002年日韓ワールドカップの際に井上さんがスポーツ紙にコラムを連載(確か開催期間中毎日掲載だったはず)されており、当時別の会社にいた私はその軽妙でいて的を射た表現が非常に楽しみでした。その後、東京創元社に入社し、スポーツ紙の連載コラムの件もあり、ホペイロを探偵役にしたミステリ『ホペイロの憂鬱』を依頼することになりました。以来、等々力競技場や味の素スタジアムに御一緒しJリーグの試合を観戦しました。ほとんどの試合でスコアレスゲームという、なかなか渋い試合が多かったことを憶えています。JFLからJ3に昇格した2014年にはSC相模原の試合も是非一緒にとお話しさせていただいてはいたのですが、実現できなかったのが悔やまれます。

「ビックカイト相模原」という架空のサッカークラブの用具係を主人公にした謎解きシリーズ『ホペイロの憂鬱』を井上さんがスタートさせたのが2007年秋頃。サッカー元日本代表の望月重良さんが「SC相模原」を創設させたのが2008年。偶然に同じような時期に、同じ相模原にて誕生したサッカークラブ。井上さんの小説では、第一作が「JFL篇」、第二作が「J2篇」、第三作が「J1篇」と昇格(当時はJ3がなく、JFLからJ2に昇格というレギュレーション)していきました。少し遅れてSC相模原の方は、昨年J3リーグを2位で終え見事J2へと昇格、3日後の開幕戦という流れになっています。

『ホペイロの憂鬱』に登場する精神的支柱である元日本代表のヤマケンという選手のように、名ゴールキーパーの川口能活選手(16~18シーズン)や、ブンデスリーガ経験のある元日本代表の稲本潤一選手も在籍(19~)されているなど、不思議と『ホペイロの憂鬱』を想起させるような雰囲気の選手が所属・活躍しているところが個人的には気になっています。ひょっとしたらSC相模原の「J1篇」もそう遠くないかもしれません。ちなみに開幕戦の開催されるSC相模原のホームスタジアム・相模原ギオンスタジアムは、映画版の『ホペイロの憂鬱』(白石隼也さん主演 2018年公開 DVD発売中)でも実際に試合のシーンにて使用されました。同じ相模原市をホームタウンとした、ノジマステラ神奈川相模原(女子サッカー)や、ノジマ相模原ライズ(アメリカンフットボール)、三菱重工相模原ダイナボアーズ(ラグビー)、とSC相模原と併せて“球技の町”としてもPRしていく計画や新スタジアム建設の話もあるそうですので、そちらも注目です。

 また、「くまざわ書店相模大野店」さんにて、『ホペイロの憂鬱』三部作を揃えた追悼のミニコーナーを開催中です。SC相模原の開幕戦を現地で迎える方、お近くの方はぜひ足を運んでいただければと思います。お近くに書店のない方は、電子版も販売しておりますので、そちらをぜひ。


ホペイロの憂鬱 JFL篇 (創元推理文庫)
井上 尚登
東京創元社
2010-07-10






ホペイロの憂鬱
白石隼也、水川あさみ、永井大、郭智博、小室ゆら、菅田俊、川上麻衣子、佐野史郎
2020-07-15