ドラマ化もした〈大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう〉シリーズや、第6回大阪ほんま本大賞受賞作『阪堺電車177号の追憶』などの代表作を持つ山本巧次さん。そんな時代ミステリ&鉄道ミステリの旗手による、いいとこ取りをした〈開化鉄道探偵〉シリーズが、この度待望の文庫化をします!
まず、2月にシリーズ第1弾『開化鉄道探偵』を刊行(単行本版『開化鐵道探偵』より改題)。本書は単行本刊行時に、「明治時代という、鉄道黎明期に起こるミステリを描いた傑作」として、「このミステリーがすごい!2018」をはじめとしたミステリランキングにランクインし、好評を博しました。

舞台は明治12年。鉄道局技手見習の小野寺乙松は、局長・井上勝の命を受け、切れ者と名高い元八丁堀同心の草壁賢吾を訪れるところから、物語が始まります。「京都―大津間に建設中の、逢坂山トンネルの鉄道工事現場で、不審な事件が続発している。それを調査してほしい」という、井上の依頼を伝えるためでした。「日本の近代化のためには、鉄道による物流が不可欠だ」と訴える井上の熱意にほだされ、草壁は快諾。ところが調査へ赴く彼らのもとに、工事関係者の転落死の報が……。

「文明開化をしたばかりの日本が、欧米諸国と肩を並べるために、鉄道を普及させたい」という情熱に溢れた先人が奮闘していた当時。しかし新しい事業が興れば、それを受け入れるのが難しい人々との衝突も起こります。
事件現場では鉄道工事をめぐり、工事関係者、線路工夫、銀山の坑夫、線路沿いの住民など、様々な思惑を抱える者たちが対立。そのため、誰が犯人でもおかしくないという状況が、事件の謎を深めていきます。

そんな混沌とした状況を解決するのが、探偵役の草壁。現場の調査や関係者への聞き込みといった丹念な捜査で事件を追い、ラストでは鮮やかな謎解きを魅せます。助手として活躍する、生真面目な小野寺との軽快なやり取りは、王道のホームズ&ワトソン型コンビと呼べるもの。そのため、上品でクラシカルな英国推理小説のようなテイストも楽しめます。

アオジマイコさんによる、格好良い草壁&小野寺が描かれたカバーイラストが目印です。鉄道愛に溢れた香山二三郎さんの解説と共に、本書をじっくりご堪能いただけますと幸いです。
また、単行本刊行時の著者インタビューもご覧になっていただければと思います。



なお、シリーズ第2弾『開化鉄道探偵 第一〇二列車の謎』は8月に連続刊行予定ですので、そちらもお楽しみに!