「同じ名前でも、その人となりであだ名って全然ちがうよね」という会話から生まれたのがこの『白野真澄はしょうがない』です。この地球上にいる同姓同名の人たちはどんな人生を送っているんだろう……そんなことを考えたことはありませんか? 


 たとえば著者、奥田亜希子さんの“あきこ”という名前でも、“あーちゃん”“あっちゃん”“あっきー”“あきちゃん”……。“あーちゃん”はおっとりした可愛い感じ、“あっきー”“あきちゃん”はしっかり者のイメージでしょうか。書いていて、小学校時代、足が速い同級生が“あっちゃん”と呼ばれていたのを思い出しました。あるいは下の名前で呼ばれず苗字で呼ばれる場合もありますよね。私も強気な性分のせいか、苗字を変形させたあだ名で呼ばれていたので、下の名前で呼ばれる子は可愛い感じがしていいなぁとうらやましく思っていました。きっと性分が先の場合もあるでしょうが、呼び名から性分が形成される場合もあるのではないかと思っています。自分で選べないのにこんなに人生を左右される「名前」ってなんだか面白い。

 この本は日本の色んな場所に住んで、色んな年齢の、色んな立場の「白野真澄」5人の物語です。同じ名前でも呼び名も違えば抱える悩みも違います。共通しているのは、少し頑固で悩みや秘密を抱えていること。どの白野真澄も、もう少し平坦な道もあったであろうに、なぜか茨の道を選んで全力で突っ走っていってしまうのです。そんな不器用で愛しい白野真澄の日常を丁寧に描き、悩みを掬い取る奥田さんの眼差しはどこまでも優しく、読後は爽快感に溢れています。

 同じ名前でも、人生はひとりひとり唯一のもの。みんなに大事なものがあって、踏ん張りながら生きている。日常をそっと照らしてくれる作品集です。

 特設サイトからは第一話「名前をつけてやる」を一話丸ごと試し読みいただくことができます。

白野真澄.001