近年、『ジェリーフィッシュは凍らない』『屍人荘の殺人』『探偵は教室にいない』『時空旅行者の砂時計』といった、ミステリランキング上位の話題作を送り出してきた、鮎川哲也賞。その記念すべき第30回受賞作は、選考委員の満場一致で決定し、「これぞ本格ミステリ!」という謎解きの楽しさに満ちた傑作ミステリです。


何と言っても最大の魅力は、「犯人の服の色の目撃証言が五通り」という、シンプルだけれど本格ミステリらしい謎が描かれ、その不可解な状況にロジカルな解決が出される点。「なぜ、同じ部屋にいたのに、五人の目撃証言が食い違うのか?」というあり得ない事件に対し、「そうか!」とアッと驚く推理が描かれます。応募原稿を読んだ時に味わった、不可能犯罪の霧が晴れる快感は最高でした! 

また、リーダビリティが高く読後感も爽やかなので、ミステリ初心者にもオススメ。加えて、主人公は等身大の25歳の女性。個性的な利用者たちや同僚の協力で、事件に懸命に立ち向かっていく健気さがあり、応援したくなること間違いなしです。

目印は、有村佳奈さんが描くカラフルで艶やかなカバーイラスト。筋金入りのミステリ読者も、ミステリ初心者も満足保証の『五色の殺人者』を、ぜひお見逃しなく!

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高齢者介護施設・あずき荘で働く、新米女性介護士のメイこと明治瑞希(めいじ みずき)はある日、利用者の撲殺死体を発見する。逃走する犯人と思しき人物を目撃したのは五人。しかし、犯人の服の色についての証言は「赤」「緑」「白」「黒」「青」と、なぜかバラバラの五通りだった! ありえない証言に加え、見つからない凶器の謎もあり、捜査は難航する。そんな中、メイの同僚・ハルが片思いしている青年が、最有力容疑者として浮上したことが判明。メイはハルに泣きつかれ、ミステリ好きの素人探偵として、彼の無実を証明しようと奮闘するが……。
不可能犯罪の真相は、切れ味鋭いロジックで鮮やかに明かされる! 選考委員の満場一致で決定した、第30回鮎川哲也賞受賞作。






探偵は教室にいない
川澄 浩平
東京創元社
2018-10-11


時空旅行者の砂時計
方丈 貴恵
東京創元社
2019-10-11