●最新刊『幻影の戦』


 砂ノ領の支配者である、イシヌ王国の女王が逝去した。死ぬ間際に王家の女に代々伝わる秘術〈万骨の術〉の書の在処を、次期当主アラーニャと、双子の姉ラクスミィに残して。
 水を統べるイシヌ王家の代替わりを、隣り合う草ノ領の支配者である野心的なカラマーハ帝国が見逃すはずはなく、ほどなく帝軍出陣の知らせと、アラーニャにカラマーハの皇帝ジーハのもとに嫁すようにという要求が届く。次期女王のアラーニャとの婚姻によってイシヌを乗っ取り、イシヌの女王がもつ治水の権限を手にしたいのだ。
 ジーハ帝は〈残虐帝〉の異名を持ち、血腥い噂が絶えない。そのような相手にアラーニャを嫁がせるわけにはいかない、一旦は籠城を決意したイシヌだったが、帝国の手段を選ばぬ攻撃に、万骨の術をその身に収めた姉姫ラクスミィは重大な決断を下す……。
 一方西の果てに広がる深い森に住む〈水蜘蛛族〉、水を自在に操る謎に包まれた彼らのもとにもカラマーハ帝国の軍が迫っていた。

 魔法と策略と陰謀が渦巻く異世界ファンタジイ、第4回創元ファンタジイ新人賞優秀賞受賞の『水使いの森』続編。

〈火の国〉の西部に位置する〈砂ノ領〉。イシヌ王家の治めるその地は、その名の如く、豊富にあるのは砂ばかりだ。その東隣には穀倉地帯である〈草ノ領〉があり、国主カラマーハ帝家が治めている。イシヌ王家は水を統べる力をもち、代々の女王は青河の水量を操るため、強大なカラマーハ帝家も、イシヌをないがしろにはできないのだ。
 そんなイシヌ王家に双子の女の子が生まれた。姉姫をラクスミイ(ミイア)、妹姫をアラーニャ(アリア)という。
 双子は不吉だと、家を絶やす、国を滅ぼすと言われたが、母である女王は娘を二人とも育てることを選んだ。イシヌ王家は女系一族、代々一番下の姫が王位を継ぐ。妹姫アリアが次代の女王、姉のミイアはその補佐をするはずだった。だが、アリアが奥手なのに対し、ミイアは早くから類い稀な水使いの力を示していた。このままでは、臣下が二つの派に割れ、本当に国を滅ぼすことになってしまう。
 幼いながらも、国の乱れを怖れたミイアは、単身城を出る。
 そんなミイアを偶然助けたのは、水蜘蛛族の天才的な水使いタータと、その親友で長のラセルタだった。水蜘蛛族は、水荒れ狂う森の奥深くに棲む伝説の一族で、半人半獣の水の精とも言われている。
 身分を隠したまま、森の奥、水蜘蛛族のもとに身を寄せたミイアは、そこでタータがもつ凄まじいまでの水使いの技に心を奪われる。
 一方、イシヌ王家は消えた姉姫の行方を捜していた。だが、ミイアを捜すのは彼らだけではなかった、かつてイシヌ王家に国を奪われたと恨みを抱く風ト光ノ民の末裔も、彼女の水使いの力を狙っていたのだ。
 水を制するものは、全てを制す。
 水の覇権をめぐる争いに、幼い王女は……。

 スケールの大きな異世界ファンタジイ、是非お楽しみください。


主な登場人物

ラクスミイ(ミイア、ミミ)
……イシヌ王家の双子の姉姫。早熟で早くに水使いの力を発揮する
アラーニャ(アリア)
……イシヌ王家の双子の妹姫。おっとりした性格
女王
……〈砂ノ領〉の支配者。イシヌの当主。国を滅ぼすと危惧された双子の姫を育てる
南将
……イシヌに使える公軍の大将。双子の姫をかわいがる
北将
……イシヌに使える公軍の大将。気難しく、姉姫の存在を危惧している
タータ
……水蜘蛛族の天才的な彫り手
ラセルタ
……タータの親友。水蜘蛛族の長
カラ・マリヤ
……水蜘蛛族の彫り手。タータに敵愾心を燃やしている
ウパ
……水蜘蛛族の年老いた舞い手
アナン
……ウパの孫。舞い手
ハマーヌ(式要らず)
……見ゆる聞こゆる者の風丹術士。式を唱えずに丹導術を使う
ウルーシャ
……ハマーヌの相棒。光丹術士。調子のいい性格
カンタヴァ
……見ゆる聞こゆる者の頭領。風丹術士
リタ
……カンタヴァの妻。光丹術士
アニラン
……見ゆる聞こゆる者の風丹学士