みなさまこんにちは、国内SF担当のSF班(妹)です。
8月末発売の『Genesis  されど星は流れる』のご紹介、第四弾をお送りします。
《Genesis》シリーズは、各作品の扉裏に担当編集者による内容紹介とプロフィール紹介を掲載しています。今年はふだん主に海外SFを担当しているSF班(兄)も編集人として加わり、SF班全員で書かせていただきました。今回は特別に、刊行前にその扉裏紹介をお目にかけたいと思います。
四編目は松崎有理さんの「数学ぎらいの女子高生が異世界にきたら危険人物あつかいです」です。
今まで担当してきたなかで最長のタイトルかもしれません。それではどうぞ!

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タイトルからお察しの方も多いかと思いますが、今回の松崎作品は“異世界トリップもの”です。
主人公は高校二年生のエミ。名門の進学校に通い、憧れの谷山くんの志望校と同じ、超難関の国立大学を目指していますが、数学が大の苦手でした。小テストで三点という壊滅的な点数をとってしまったエミは、下校途中、校門を出た橋の上で思わずこうこぼします。
「数学なんて、やらなくてすむようになればいいのに」
すると、橋の下を通る列車の音にまぎれるように辺りに不思議な声が響き渡り、気づくと周りの風景は一変、エミは異世界の田舎町に立っていました。
なんとそこは数学を学ぶこと・使用することが厳しく禁じられ、背いた者は拷問の末に処刑されるという恐ろしい世界でした。そうとは知らず農夫の前でうっかり解の公式を使ってしまったエミは、駆けつけた騎馬隊に捕らえられてしまいます。橋の上でつぶやいた願いごとがとんでもないかたちで叶えられてしまったわけですが、元の世界に帰る手段を探すどころか、いきなり命の危機が迫っており……⁉︎
いまや一つのジャンルともなった「異世界トリップ」テーマを、アイデアSFの名手・松崎有理があざやかに描き上げます。

松崎有理さんは、一九七二年、茨城県生まれ。東北大学理学部卒。二〇一〇年「あがり」で第一回創元SF短編賞を受賞しました。著書は同作を表題とした『あがり』(創元SF文庫、二〇一三年)のほか、《代書屋ミクラ》シリーズ(光文社、一三、一六年)、『嘘つき就職相談員とヘンクツ理系女子』(角川文庫、一八年)、『5まで数える』(筑摩書房、一七年)など多数。一九年にはSF短編集『イヴの末裔たちの明日』(東京創元社)を上梓しました。

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『Genesis  されど星は流れる』は8月31日頃発売です。お楽しみに!


あがり (創元SF文庫)
松崎 有理
東京創元社
2013-10-31