【子供に性差などの偏見を植えつけない】
 次に日本とはちがうなと思ったのが、子供を〝カテゴリー分けしない〟点だ。現在のスウェーデンでは多様化が重視され、子供だけでなく大人も含めて、相手にする人間を性別や国籍などの色眼鏡を通して見ないように気をつけている。職場で上司が「あなたは女だから」とか「あなたは移民だから」なんて発言をしようものなら、あっという間に訴えられるだろう。
 子供に対しても、先生や親が「女の子なんだから、お行儀よくしなさい」という言い方は絶対にしない。するとしたら、「他の人に迷惑だから、○○しなさい」という言い方になる。わたしなどは、ごみだらけの娘の部屋を見て、つい「女の子なんだし、もうちょっと……」と言いたくなるのをぐっとこらえることがある。そのたびに、自分自身はことあるごとに周りから「女の子なんだから」と言われて育ってきたのだなと実感する。
 また、「○○くんは╳╳なのに」というような、人と比べる言い方もタブーである。同じく、「お兄ちゃんなんだから」「もう○歳なんだから」といった世間の平均値を基準にした発言もしない。子供の個性を認める育て方をするのなら、その子のみを見つめるべきであり、他人との比較はやってはいけないことなのだ。
 この概念は社会においても徹底されており、入学試験や成績別クラスなど、子供を成績で振り分けるようなことは禁止されている。学校選びに初めて成績が関係してくるのは、高校入学時。高校では定員よりも希望者が多い場合は、成績順に入学が許される。つまり中学校までは、公立私立にかかわらず、成績によって合否を決めてはいけない。あくまで先着順(申し込んだ順)に入学を許されるのだ。



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