娘が1歳11ヶ月のとき、理想の家族環境を求めて東京からスウェーデンへ家族3人で移住した翻訳家の久山葉子さん。

無理なく共働きで子育てできるとされる国での移住・子育て・日常生活を綴った、楽しく気軽に読めるエッセイ『スウェーデンの保育園に待機児童はいない――移住して分かった子育てに優しい社会の暮らし』が好評発売中です。

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今回はその『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』から、久山さんが特に皆さんにお伝えしたい部分を抜粋して、5日連続で特別公開します。

第5回はお金の使い道について。高い税率と手厚い社会保障で知られるスウェーデンで、人々は普段どのような生活を送っているかというと――。


【子供は社会が育てるもの──スウェーデン人のお金の使い道】

 日本に住んでいたころは、保険会社から〝子供を大学まで出すのに必要な資金は○千万〟なんていう恐ろしい広告が送られてきて、憂鬱になったものだ。
 一方でスウェーデンでは大学まで学費が無料だから、学費の貯金に頭を悩ませる必要はない。わが家も子供の教育のために貯金などしていないので、子供が日本の大学に行きたいなどと言い出さないことを祈っている。そんなお金はない。
 スウェーデンでは子供は社会が育てるという意識が強い。親だけに教育を任せるのは、社会として無責任だと考えるのだ。子供には生まれる家を選ぶことができないのだから。貧しい家庭に生まれることもあれば、教育に無関心な家庭に生まれることもある。だから、どの子供にも平等な教育の機会を与えるのが、社会の重要な役割なのだ。
 医療についても同じことが言える。すでに書いたように、お金持ちだけがよい医療を受けられるというシステムを、スウェーデンという社会は容認しない。
 その代わり、ご存じの通り税金が非常に高い。所得が多いほど税率は高くなるし、消費税(付加価値税)は25パーセントだ(ただし食料は12パーセント、書籍は6パーセントなど、生活に必要なものは税率が低い)。
 所得にかかる税金を払って、生活に必要なものの支払いをしたら、普通の人は毎月それほどお金が残らないのが現実だ。SBAB銀行が20歳から80歳の1,038人に行ったアンケートによると、銀行口座に20万クローネ(約240万円)以上の貯金があると答えた人はわずか30パーセントにとどまった。将来の年金への不安が高まり、銀行貯蓄平均額は上昇を続けている状況にして、この結果だ。



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 普段の生活は質素で

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